初恋の相手は最も親しい友達にとられたので泣き虫の私は逆襲します

第1話「初恋と裏切り」

　リリアンは、春の陽光が優しく降り注ぐ庭園を歩いていた。
　彼女の軽やかなステップは、心の中で踊る蝶のように、幸せで満たされていた。
　彼女の幼なじみであり、結婚を約束された貴族の息子、エドワードへの深い愛情が、彼女の日々を彩っていた。彼女の瞳にはいつも彼の姿が映り、彼の声が耳に残っていた。
　エドワードのために選んだドレス、彼への手紙、そして夜な夜な繰り返される甘い夢。
　リリアンの世界はエドワードで満たされていた。

　ある穏やかな午後、彼らは庭園の隠れた角で出会った。
　リリアンは、心を固く決めて、エドワードに向かって歩み寄った。

「エドワード、私…あなたのことをずっと…」

　彼女の声は震え、言葉は途切れ途切れだった。エドワードは優しく彼女の手を取る。

「リリアン、君は本当に純粋だね」

　優しく微笑んだ。
　彼の言葉は彼女の心に甘い期待を植え付け、彼女の初恋の夢はより色鮮やかに、そして現実味を帯びてきた。


　リリアンの幸せは、彼女の親友セリーナにも伝わっていた。

「セリーナ、実は私…エドワードのことが好きなの」

　リリアンは打ち明けた。彼女の声はわくわくとした喜びで満ちていた。

　セリーナはリリアンの肩を優しく抱く。

「それは素晴らしいわ、リリアン。エドワード君となら、きっと幸せになれるわ」

　しかし、セリーナの心の中では、まったく異なる感情が渦巻いていた。
　セリーナは、リリアンの純粋な喜びを見て、自分の中に湧き上がる嫉妬と野望を隠していた。

　部屋に戻ったセリーナは、窓辺に立ち、遠くの空を見つめながら独白した。

「リリアンはいつも幸せそう…でも、私も幸せになりたいの。エドワードは素晴らしいわ。私にも、そんな素晴らしい恋が必要なの」

　彼女の顔には決意が浮かび上がっていた。セリーナは、エドワードに近づき始め、彼女の美しさと知性を巧みに使って、エドワードの注意を引き始めた。


　リリアンは、ある日、偶然にもエドワードとセリーナが一緒にいるのを目撃した。彼らは笑いながら話をしており、その光景はリリアンの心を痛めつけた。

「信じていたのに、どうして…」

　彼女は自分の目を疑い、混乱し、そして深く傷ついた。

　エドワードに真実を問いただすために、リリアンは彼のもとへ向かった。

　彼女の目は涙で濡れていた。

「エドワード、私たちは…?」という問いに、エドワードは少しの間を置いてから、「ごめん、リリアン。私の気持ちは変わったんだ」と静かに答えた。リリアンの心は、その一言で砕け散った。

　セリーナとの直面で、リリアンはさらに深い傷を受ける。

「私たちは親友だったはずよ」

　リリアンが訴えると、セリーナは冷静に答える。

「ごめんなさい、リリアン。でも、私たちは皆、自分の幸せを追求する権利があるの」

　リリアンは、その言葉にさらなる痛みを感じた。


　リリアンはセリーナの言葉を受け止め、心の中で彼女との長年の友情を振り返った。彼女たちは幼い頃から互いを支え合い、数え切れないほどの思い出を共有していた。

　しかし、今、セリーナの前に立っているのは、かつての親友ではなく、自分の初恋を奪った冷酷な女性だった。

「どうして私たちの友情を壊したの？」

　リリアンは涙ながらに問い詰めた。セリーナは一瞬ためらいを見せたが、すぐに表情を固めて、「リリアン、私たちの人生は自分で決めるもの。あなたもいつか理解できるはずよ」と答えた。

　リリアンはその場を去り、一人で自宅へ戻った。彼女の心は痛みと悲しみ、そして失望でいっぱいだった。彼女は自室に閉じこもり、一夜中涙に暮れた。しかし、次の朝、彼女は自分自身に新たな決意を固めた。

「もう、これ以上、自分を傷つけさせない」

　彼女は自分自身を立て直すために。


　リリアンは庭園の一角で立ち尽くし、その場所がかつての幸せな記憶で満たされていたことを思い出していた。彼女はセリーナとエドワードの姿を思い浮かべ、心の中で彼らの裏切りを何度も繰り返し再生した。彼女は自分がどれほど純粋に彼らを信じていたか、そしてそれがどれほど愚かだったかを悟った。彼女の心は痛みでいっぱいだったが、同時に怒りも湧いてきた。

　後日、リリアンはセリーナと対面する機会を得た。セリーナは表面上は謝罪の言葉を述べたが、その笑顔には勝ち誇りのようなものが見え隠れしていた。

「ごめんなさい、リリアン。でも、愛は予測不可能なものよ」

　リリアンはその冷たさにショックを受け、セリーナの真の性格を理解した。

　エドワードもまた、リリアンに対して謝罪を試みたが、彼の言葉は空虚で感情がこもっていないように感じられた。

「リリアン、ごめん。でも、人の心は変わるものだ」

　リリアンは、エドワードがもはやかつての彼ではないことを悟り、彼女の初恋が完全に終わったことを受け入れた。

　リリアンは彼らの姿が見えなくなるまで、その場に立ち尽くした。そして、涙が止まらなくなり、彼女は激しい泣き声をあげた。彼女の涙は、失われた初恋と裏切られた友情の痛みを流し出していた。しかし、この悲しみの中で、リリアンは自分自身の強さを発見し始めていた。彼女はこれからの人生で、自分自身を信じ、自分の道を歩んでいくことを誓った。この瞬間、リリアンの涙は、彼女の新しい人生の始まりを告げるものとなった。