幼なじみ三人が勇者に魅了されちゃって寝盗られるんだけど数年後勇者が死んで正気に戻った幼なじみ達がめちゃくちゃ後悔する話

妄想屋さん

文字の大きさ
6 / 7
第1章

もし、違う未来があったなら……

しおりを挟む
「会いに来たぞ。ミリス」

 そう言って俺は今日も受け止められなかった現実を受け止める。

 ミリスの入っている棺おけを撫でながら、今日あった何気ないことを話す。

 俺達が話ているとたびたび、ミリスの笑い声や相槌が聞こえてくる気がする。

「そろそろ行くよ。また来るからな、ミリス」

 一時間ほど話して、俺達は家へ帰ろうとする。

『もういいよ。アルフ』

 懐かしい声が聞こえた――気がした。
 もう聞くことができないはずの大切な人の声が。

『僕のことはもういいから。幸せになってね』

 俺は急いで振り返るがそこにはただ棺桶があるだけだった。

「ああ。……わかったよ」

「? 何がわかったんですか?」

 俺の車椅子を押しているシスタが不思議そうにこちらを見てくる。

「なんでもない。行こうぜ」

 俺はそう言って前を向いた。
 そして、俺が振り返ることはもうなかった。

✿✿✿✿✿✿✿✿✿✿✿✿✿✿✿✿✿✿✿✿

グレイアside

 もうとっくに夜なのだが、アタシはどうも寝付けなくて、寝室から抜け出した。

 何か暖かいものでも飲もうかしら。

 そう思いながらアタシはリビングに向かう。

 しかし、リビングには既に先客がいた。

「グレイア、あなたも眠れなかったんですか?」

 アタシに微笑み合うかけてくる。眼帯をつけた少女、シスタだ。

「……ええ」

 アタシはシスタの隣に腰掛ける。

「ねぇシスタ」

「なんでしょう?」

「もしあの時、アタシ達がミリスを止めて、アルフに合わせなければ、あの子は死なずに済んだのかしら」

 アタシの言葉に、シスタは少し考えこんでから口を開く。

「そうかもしれませんが……。今更何を言っても、過去は変わりませんから」

 シスタはそう言って寂しそうに笑う。

「……それもそうね」

「ええ、そうですよ」

 シスタは眠そうにあくびをする。

「私はそろそろ眠くなってきました」

「そう、じゃあ、おやすみ」

「ええ、おやすみなさい」

 シスタが寝室に消えていって一人の取り残されしまったアタシはその場に突っ伏してしまう。

「もし……もし、あのクソ勇者が来なければ、アタシは達はどうなってもいたのかしら」

 きっと考えるだけ無駄なことだ。
 しかし、考えずにはいられない。

 だって、アタシ達はもっと幸せになれるはずだった。

 あの勇者が来なければアタシがアルフを傷つけることなんてなかった。

 シスタが片目を失う必要なんてなかった。

 ミリスが命を落とすことなんてなかった。

「……悔しいよ」

 アタシは我慢できなくなり、泣いてしまった。

 こんなに自分に素直になったのは何時ぶりだろう。

✿✿✿✿✿✿✿✿✿✿✿✿✿✿✿✿✿✿✿✿

「……グレイア、なんでこんなところで寝てるんだ?」

「さあ?何故でしょう?」

 何故かリビングで寝ているグレイアを見ながら俺とシスタは顔を見合わせる。

「シスタ、なんか知ってるだろ」

「さあ、なんのことでしょう?」

 シスタがわざとらしく首を傾ける。
 可愛いなちくしょう。

「それよりも!今日の朝ごはんは私が作ったんです!冷めないうちに召し上がって下さい!」

「え!?……そういえばいい匂いが……そうだな、冷めないうちにいただくよ」

「はい。そうしてください♪」

✿✿✿✿✿✿✿✿✿✿✿✿✿✿✿✿✿✿✿✿

 いつかの今日、俺は一人の幼なじみを家の裏庭に呼んでいた。

 俺は深呼吸をして、乱れた心を落ち着かせる。

「本当にいいのかな」

 誰に言うわけでもなく、俺はそう呟いた。

『僕のことはもういいから。幸せになってね』

 不意に、のミリスの声を思い出す。
 もっとも、聞こえた気がするだけなので、十中八九俺の幻聴だが、それでも俺は前に進むことにした。

 もう振り返らない。

 そう心に決めた。

 草が踏まれる音が聞きこえてくる。
 俺は車椅子を動かして、その幼なじみの方に体を向ける。

「突然呼び出して悪かったな。それで……その……」

 落ち着け!俺!
 ここまできてビビるな!!

 俺は緊張してカチカチになった表情筋を無理やり動かして笑顔をつくる。
 上手く作れていたかはわからない。
 でも、今俺ができる中ではこれがベストだったと思う。

 俺は再び大きく深呼吸をして――











































「俺と結婚してください」





















 幼なじみは幸せなそうにこくんと頷き、俺の手をとってくれた。

「よろこんで」





























































































































































『おめでとう。アルフ』

 


しおりを挟む
感想 12

あなたにおすすめの小説

【完結】魔王を倒してスキルを失ったら「用済み」と国を追放された勇者、数年後に里帰りしてみると既に祖国が滅んでいた

きなこもちこ
ファンタジー
🌟某小説投稿サイトにて月間3位(異ファン)獲得しました! 「勇者カナタよ、お前はもう用済みだ。この国から追放する」 魔王討伐後一年振りに目を覚ますと、突然王にそう告げられた。 魔王を倒したことで、俺は「勇者」のスキルを失っていた。 信頼していたパーティメンバーには蔑まれ、二度と国の土を踏まないように察知魔法までかけられた。 悔しさをバネに隣国で再起すること十数年……俺は結婚して妻子を持ち、大臣にまで昇り詰めた。 かつてのパーティメンバー達に「スキルが無くても幸せになった姿」を見せるため、里帰りした俺は……祖国の惨状を目にすることになる。 ※ハピエン・善人しか書いたことのない作者が、「追放」をテーマにして実験的に書いてみた作品です。普段の作風とは異なります。 ※小説家になろう、カクヨムさんで同一名義にて掲載予定です

友人(勇者)に恋人も幼馴染も取られたけど悔しくない。 だって俺は転生者だから。

石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていた魔法戦士のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもない状態だった。 だが、此の状態は彼にとっては『本当の幸せ』を掴む事に必要だった 何故なら、彼は『転生者』だから… 今度は違う切り口からのアプローチ。 追放の話しの一話は、前作とかなり似ていますが2話からは、かなり変わります。 こうご期待。

最難関ダンジョンをクリアした成功報酬は勇者パーティーの裏切りでした

新緑あらた
ファンタジー
最難関であるS級ダンジョン最深部の隠し部屋。金銀財宝を前に告げられた言葉は労いでも喜びでもなく、解雇通告だった。 「もうオマエはいらん」 勇者アレクサンダー、癒し手エリーゼ、赤魔道士フェルノに、自身の黒髪黒目を忌避しないことから期待していた俺は大きなショックを受ける。 ヤツらは俺の外見を受け入れていたわけじゃない。ただ仲間と思っていなかっただけ、眼中になかっただけなのだ。 転生者は曾祖父だけどチートは隔世遺伝した「俺」にも受け継がれています。 勇者達は大富豪スタートで貧民窟の住人がゴールです(笑)

魔王を倒した手柄を横取りされたけど、俺を処刑するのは無理じゃないかな

七辻ゆゆ
ファンタジー
「では罪人よ。おまえはあくまで自分が勇者であり、魔王を倒したと言うのだな?」 「そうそう」  茶番にも飽きてきた。処刑できるというのなら、ぜひやってみてほしい。  無理だと思うけど。

大好きな幼なじみが超イケメンの彼女になったので諦めたって話

家紋武範
青春
大好きな幼なじみの奈都(なつ)。 高校に入ったら告白してラブラブカップルになる予定だったのに、超イケメンのサッカー部の柊斗(シュート)の彼女になっちまった。 全く勝ち目がないこの恋。 潔く諦めることにした。

後日譚追加【完結】冤罪で追放された俺、真実の魔法で無実を証明したら手のひら返しの嵐!! でももう遅い、王都ごと見捨てて自由に生きます

なみゆき
ファンタジー
魔王を討ったはずの俺は、冤罪で追放された。 功績は奪われ、婚約は破棄され、裏切り者の烙印を押された。 信じてくれる者は、誰一人いない——そう思っていた。 だが、辺境で出会った古代魔導と、ただ一人俺を信じてくれた彼女が、すべてを変えた。 婚礼と処刑が重なるその日、真実をつきつけ、俺は、王都に“ざまぁ”を叩きつける。 ……でも、もう復讐には興味がない。 俺が欲しかったのは、名誉でも地位でもなく、信じてくれる人だった。 これは、ざまぁの果てに静かな勝利を選んだ、元英雄の物語。

無能なので辞めさせていただきます!

サカキ カリイ
ファンタジー
ブラック商業ギルドにて、休みなく働き詰めだった自分。 マウントとる新人が入って来て、馬鹿にされだした。 えっ上司まで新人に同調してこちらに辞めろだって? 残業は無能の証拠、職務に時間が長くかかる分、 無駄に残業代払わせてるからお前を辞めさせたいって? はいはいわかりました。 辞めますよ。 退職後、困ったんですかね?さあ、知りませんねえ。 自分無能なんで、なんにもわかりませんから。 カクヨム、なろうにも同内容のものを時差投稿しております。

戦場帰りの俺が隠居しようとしたら、最強の美少女たちに囲まれて逃げ場がなくなった件

さん
ファンタジー
戦場で命を削り、帝国最強部隊を率いた男――ラル。 数々の激戦を生き抜き、任務を終えた彼は、 今は辺境の地に建てられた静かな屋敷で、 わずかな安寧を求めて暮らしている……はずだった。 彼のそばには、かつて命を懸けて彼を支えた、最強の少女たち。 それぞれの立場で戦い、支え、尽くしてきた――ただ、すべてはラルのために。 今では彼の屋敷に集い、仕え、そして溺愛している。   「ラルさまさえいれば、わたくしは他に何もいりませんわ!」 「ラル様…私だけを見ていてください。誰よりも、ずっとずっと……」 「ねぇラル君、その人の名前……まだ覚えてるの?」 「ラル、そんなに気にしなくていいよ!ミアがいるから大丈夫だよねっ!」   命がけの戦場より、ヒロインたちの“甘くて圧が強い愛情”のほうが数倍キケン!? 順番待ちの寝床争奪戦、過去の恋の追及、圧バトル修羅場―― ラルの平穏な日常は、最強で一途な彼女たちに包囲されて崩壊寸前。   これは―― 【過去の傷を背負い静かに生きようとする男】と 【彼を神のように慕う最強少女たち】が織りなす、 “甘くて逃げ場のない生活”の物語。   ――戦場よりも生き延びるのが難しいのは、愛されすぎる日常だった。 ※表紙のキャラはエリスのイメージ画です。

処理中です...