4 / 4
か
しおりを挟む
side シスタ
昨日のことがあってから、ミリスさんはずっとアルフさんにくっついて離れないし、グリモアさんはいつもの毒舌を封印しています。
私はいつもアルフがやっていた家事や雑用を代わりにやってアルフさんには日中ゆっくりしてもらおうとしていたんです。していたんてますが……
「……はぁ」
全然終わりません。
それはそうです。私なんかにアルフの代わりが務まるわけがありません。
私はミリスやグレイアより早く起きるのですが、そんな私におはようと声をかけて、アルフは飲み物を出してくれます。その季節や気温にあったスープやジュースを、飽きないように毎日違う種類のものを作ってくれます。
驚くべきことに、ミリスやグリモアにも飲み物を出しているのですが、その飲み物は私のものとは別のものです。
本人曰く、みんなの口に合わせて味を少し変えてるんだとか。少しとは。もう別物ですが。
これは朝ごはんやお弁当にも言えることです。
グレイアは基本わがままですので、毎日ご飯をアルフにリクエストしています。
アルフは嫌な顔一つせず毎日リクエスト通りにご飯を作り、グレイアに出しています。
私やミリスはアルフが作ってくれるものならなんでもいいんですが、アルフは私やミリスの言葉や目線に敏感なのでしょうか?
毎日その日、私達が食べたいものを出してくれます。
一日三食で、毎回三人とも違うメニューを作り続ける。
これはものすごく大変なことです。
一度ミリスと私で、
『私達もグレイアと同じメニューでいいですよ?アルフも大変でしょう?』
と、言いに行ったのですが、
『みんなは命がけでお金を稼いでいるんだ。この位はやらせてくれ』
と言って聞いてくれませんでした。
ある日を境に、ご飯に使われている食材が高級なものに変わっていました。
アルフは嬉しそうに言います。
『主夫の知恵でお金が浮いたんだ。今日からは最高級の食材が使えるぞ!』
そんなある日の朝、アルフに変化がありました。
毎日四人で一緒に食事をしていたのですが、今日はアルフの前にはご飯はありません。
本人曰く、作っている間にたくさん味見をしたらお腹いっぱいになっちゃったんだとか。
その日の朝はそれで納得しました。
そういうこともあるのだろうと。
でもそれはその日の夜もアルフの前にご飯はありません。次の日の朝も夜もその次の日も、さらにその次の日も――
それがきっかけでさすがにおかしいと、私達三人はダンジョンに行くとアルフに嘘をつき、ミリスに透明化の魔法をかけてもらい、その日、アルフを一日中見ていました。
彼は休むことなく家事をしていました。
自分で言うのもなんですが私たちは結構稼ぎがいいほうなので当時住んでいた家は小さなお城くらい大きく、掃除などは手伝ってくれる人を雇っていると聞かされていました。
が、その人が来る気配は一向にありません。
『まさかアイツ……一人でやってたの?』
『僕達のご飯の食材が豪華になったのってもしかして……』
二人の顔がサーと青ざめて行きます。
多分私の顔も似たようなことになっているのでしょう。
膨大な敷地内を掃除した後、他の家事もテキパキとこなしていきます。
辺りはだんだんと暗くなってきました。
彼は一秒も休むことはありませんでした。
『ねぇ、アルフお昼食べてないわよね』
小声でそう言いながらグレイアさんはこちらを見つめてきます。
『何あれ。こんなこと毎日やってるの?アルフ壊れちゃうわよ』
グレイアさんは今にも泣き出しそうな顔をしていました。
『多分……もう壊れてますよ。普通の人はこんなことを……あんな笑顔ではできません』
ミリスさんは虚ろな瞳でアルフを見つめています。
『どうして気づけなかったの?僕が一番そばで見ていたはずなのに。なんで相談してくれなかったの?ううん違う。アルフのせいじゃない。僕がただ気づかなかっただけだ。僕のせいで――』
ずっと何かを呟き続けていました。
何あなたも壊れようとしてるんですか。ちゃんと逃げずに見てください。私たちのせいでアルフはこうなってるんですよ。
✿✿✿✿✿✿✿✿✿✿✿✿✿✿✿✿✿✿✿✿
完全に日が落ちた頃、私達三人分の料理を作り終えた後、アルフさんは自分の部屋へ戻って行きます。
よかった!やっと休んでくれる。
って、働かせてる私が何を思っているんだか。
少し扉が空いていたので悪いと思いつつもアルフさんの部屋を覗き込みます。
アルフさんは何かをモグモグ頬張りながら自分の部屋を掃除し始めました。
その掃除はかなり雑で、私たちの部屋やリビングの掃除をしている時とは大違いでした。
アルフが自分の部屋から出た後、私は嫌な予感がしてアルフの部屋へ入ることにしました。
『ちょっとシスタ、アルフを追わなくていいの?』
慌てたようにグレイアも私に続きます。
ミリスは虚ろな目をしたまま、ゆっくりと後ろをついて行きます。
アルフの部屋は普段鍵がかかっていて入ることはできません。
なので今まで、私たちはアルフの部屋に入ったことはありませんでした。
その部屋はベットと小さな机と椅子しかない、質素な部屋でした。
昨日のことがあってから、ミリスさんはずっとアルフさんにくっついて離れないし、グリモアさんはいつもの毒舌を封印しています。
私はいつもアルフがやっていた家事や雑用を代わりにやってアルフさんには日中ゆっくりしてもらおうとしていたんです。していたんてますが……
「……はぁ」
全然終わりません。
それはそうです。私なんかにアルフの代わりが務まるわけがありません。
私はミリスやグレイアより早く起きるのですが、そんな私におはようと声をかけて、アルフは飲み物を出してくれます。その季節や気温にあったスープやジュースを、飽きないように毎日違う種類のものを作ってくれます。
驚くべきことに、ミリスやグリモアにも飲み物を出しているのですが、その飲み物は私のものとは別のものです。
本人曰く、みんなの口に合わせて味を少し変えてるんだとか。少しとは。もう別物ですが。
これは朝ごはんやお弁当にも言えることです。
グレイアは基本わがままですので、毎日ご飯をアルフにリクエストしています。
アルフは嫌な顔一つせず毎日リクエスト通りにご飯を作り、グレイアに出しています。
私やミリスはアルフが作ってくれるものならなんでもいいんですが、アルフは私やミリスの言葉や目線に敏感なのでしょうか?
毎日その日、私達が食べたいものを出してくれます。
一日三食で、毎回三人とも違うメニューを作り続ける。
これはものすごく大変なことです。
一度ミリスと私で、
『私達もグレイアと同じメニューでいいですよ?アルフも大変でしょう?』
と、言いに行ったのですが、
『みんなは命がけでお金を稼いでいるんだ。この位はやらせてくれ』
と言って聞いてくれませんでした。
ある日を境に、ご飯に使われている食材が高級なものに変わっていました。
アルフは嬉しそうに言います。
『主夫の知恵でお金が浮いたんだ。今日からは最高級の食材が使えるぞ!』
そんなある日の朝、アルフに変化がありました。
毎日四人で一緒に食事をしていたのですが、今日はアルフの前にはご飯はありません。
本人曰く、作っている間にたくさん味見をしたらお腹いっぱいになっちゃったんだとか。
その日の朝はそれで納得しました。
そういうこともあるのだろうと。
でもそれはその日の夜もアルフの前にご飯はありません。次の日の朝も夜もその次の日も、さらにその次の日も――
それがきっかけでさすがにおかしいと、私達三人はダンジョンに行くとアルフに嘘をつき、ミリスに透明化の魔法をかけてもらい、その日、アルフを一日中見ていました。
彼は休むことなく家事をしていました。
自分で言うのもなんですが私たちは結構稼ぎがいいほうなので当時住んでいた家は小さなお城くらい大きく、掃除などは手伝ってくれる人を雇っていると聞かされていました。
が、その人が来る気配は一向にありません。
『まさかアイツ……一人でやってたの?』
『僕達のご飯の食材が豪華になったのってもしかして……』
二人の顔がサーと青ざめて行きます。
多分私の顔も似たようなことになっているのでしょう。
膨大な敷地内を掃除した後、他の家事もテキパキとこなしていきます。
辺りはだんだんと暗くなってきました。
彼は一秒も休むことはありませんでした。
『ねぇ、アルフお昼食べてないわよね』
小声でそう言いながらグレイアさんはこちらを見つめてきます。
『何あれ。こんなこと毎日やってるの?アルフ壊れちゃうわよ』
グレイアさんは今にも泣き出しそうな顔をしていました。
『多分……もう壊れてますよ。普通の人はこんなことを……あんな笑顔ではできません』
ミリスさんは虚ろな瞳でアルフを見つめています。
『どうして気づけなかったの?僕が一番そばで見ていたはずなのに。なんで相談してくれなかったの?ううん違う。アルフのせいじゃない。僕がただ気づかなかっただけだ。僕のせいで――』
ずっと何かを呟き続けていました。
何あなたも壊れようとしてるんですか。ちゃんと逃げずに見てください。私たちのせいでアルフはこうなってるんですよ。
✿✿✿✿✿✿✿✿✿✿✿✿✿✿✿✿✿✿✿✿
完全に日が落ちた頃、私達三人分の料理を作り終えた後、アルフさんは自分の部屋へ戻って行きます。
よかった!やっと休んでくれる。
って、働かせてる私が何を思っているんだか。
少し扉が空いていたので悪いと思いつつもアルフさんの部屋を覗き込みます。
アルフさんは何かをモグモグ頬張りながら自分の部屋を掃除し始めました。
その掃除はかなり雑で、私たちの部屋やリビングの掃除をしている時とは大違いでした。
アルフが自分の部屋から出た後、私は嫌な予感がしてアルフの部屋へ入ることにしました。
『ちょっとシスタ、アルフを追わなくていいの?』
慌てたようにグレイアも私に続きます。
ミリスは虚ろな目をしたまま、ゆっくりと後ろをついて行きます。
アルフの部屋は普段鍵がかかっていて入ることはできません。
なので今まで、私たちはアルフの部屋に入ったことはありませんでした。
その部屋はベットと小さな机と椅子しかない、質素な部屋でした。
76
この作品の感想を投稿する
あなたにおすすめの小説
俺が死んでから始まる物語
石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていたポーター(荷物運び)のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもないことは自分でも解っていた。
だが、それでもセレスはパーティに残りたかったので土下座までしてリヒトに情けなくもしがみついた。
余りにしつこいセレスに頭に来たリヒトはつい剣の柄でセレスを殴った…そして、セレスは亡くなった。
そこからこの話は始まる。
セレスには誰にも言った事が無い『秘密』があり、その秘密のせいで、死ぬことは怖く無かった…死から始まるファンタジー此処に開幕
勇者に全部取られたけど幸せ確定の俺は「ざまぁ」なんてしない!
石のやっさん
ファンタジー
皆さまの応援のお陰でなんと【書籍化】しました。
応援本当に有難うございました。
イラストはサクミチ様で、アイシャにアリス他美少女キャラクターが絵になりましたのでそれを見るだけでも面白いかも知れません。
書籍化に伴い、旧タイトル「パーティーを追放された挙句、幼馴染も全部取られたけど「ざまぁ」なんてしない!だって俺の方が幸せ確定だからな!」
から新タイトル「勇者に全部取られたけど幸せ確定の俺は「ざまぁ」なんてしない!」にタイトルが変更になりました。
書籍化に伴いまして設定や内容が一部変わっています。
WEB版と異なった世界が楽しめるかも知れません。
この作品を愛して下さった方、長きにわたり、私を応援をし続けて下さった方...本当に感謝です。
本当にありがとうございました。
【以下あらすじ】
パーティーでお荷物扱いされていた魔法戦士のケインは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもないことを悟った彼は、一人さった...
ここから、彼は何をするのか? 何もしないで普通に生活するだけだ「ざまぁ」なんて必要ない、ただ生活するだけで幸せなんだ...俺にとって勇者パーティーも幼馴染も離れるだけで幸せになれるんだから...
第13回ファンタジー小説大賞奨励賞受賞作品。
何と!『現在3巻まで書籍化されています』
そして書籍も堂々完結...ケインとは何者か此処で正体が解ります。
応援、本当にありがとうございました!
友人(勇者)に恋人も幼馴染も取られたけど悔しくない。 だって俺は転生者だから。
石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていた魔法戦士のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもない状態だった。
だが、此の状態は彼にとっては『本当の幸せ』を掴む事に必要だった
何故なら、彼は『転生者』だから…
今度は違う切り口からのアプローチ。
追放の話しの一話は、前作とかなり似ていますが2話からは、かなり変わります。
こうご期待。
俺の好きな人は勇者の母で俺の姉さん! パーティ追放から始まる新しい生活
石のやっさん
ファンタジー
主人公のリヒトは勇者パーティを追放されるが別に気にも留めていなかった。
ハーレムパーティ状態だったので元から時期が来たら自分から出て行く予定だったし、三人の幼馴染は確かに可愛いが、リヒトにとって恋愛対象にどうしても見られなかったからだ。
だから、ただ見せつけられても困るだけだった。
何故ならリヒトの好きなタイプの女性は…大人の女性だったから。
この作品の主人公は転生者ですが、精神的に大人なだけでチートは知識も含んでありません。
勿論ヒロインもチートはありません。
他のライトノベルや漫画じゃ主人公にはなれない、背景に居るような主人公やヒロインが、楽しく暮すような話です。
1~2話は何時もの使いまわし。
亀更新になるかも知れません。
他の作品を書く段階で、考えてついたヒロインをメインに純愛で書いていこうと思います。
A級パーティから追放された俺はギルド職員になって安定した生活を手に入れる
国光
ファンタジー
A級パーティの裏方として全てを支えてきたリオン・アルディス。しかし、リーダーで幼馴染のカイルに「お荷物」として追放されてしまう。失意の中で再会したギルド受付嬢・エリナ・ランフォードに導かれ、リオンはギルド職員として新たな道を歩み始める。
持ち前の数字感覚と管理能力で次々と問題を解決し、ギルド内で頭角を現していくリオン。一方、彼を失った元パーティは内部崩壊の道を辿っていく――。
これは、支えることに誇りを持った男が、自らの価値を証明し、安定した未来を掴み取る物語。
【完結】兄の事を皆が期待していたので僕は離れます
まりぃべる
ファンタジー
一つ年上の兄は、国の為にと言われて意気揚々と村を離れた。お伽話にある、奇跡の聖人だと幼き頃より誰からも言われていた為、それは必然だと。
貧しい村で育った弟は、小さな頃より家の事を兄の分までせねばならず、兄は素晴らしい人物で対して自分は凡人であると思い込まされ、自分は必要ないのだからと弟は村を離れる事にした。
そんな弟が、自分を必要としてくれる人に会い、幸せを掴むお話。
☆まりぃべるの世界観です。緩い設定で、現実世界とは違う部分も多々ありますがそこをあえて楽しんでいただけると幸いです。
☆現実世界にも同じような名前、地名、言葉などがありますが、関係ありません。
英雄一家は国を去る【一話完結】
青緑 ネトロア
ファンタジー
婚約者との舞踏会中、火急の知らせにより領地へ帰り、3年かけて魔物大発生を収めたテレジア。3年振りに王都へ戻ったが、国の一大事から護った一家へ言い渡されたのは、テレジアの婚約破棄だった。
- - - - - - - - - - - - -
ただいま後日談の加筆を計画中です。
2025/06/22
【完結】魔王を倒してスキルを失ったら「用済み」と国を追放された勇者、数年後に里帰りしてみると既に祖国が滅んでいた
きなこもちこ
ファンタジー
🌟某小説投稿サイトにて月間3位(異ファン)獲得しました!
「勇者カナタよ、お前はもう用済みだ。この国から追放する」
魔王討伐後一年振りに目を覚ますと、突然王にそう告げられた。
魔王を倒したことで、俺は「勇者」のスキルを失っていた。
信頼していたパーティメンバーには蔑まれ、二度と国の土を踏まないように察知魔法までかけられた。
悔しさをバネに隣国で再起すること十数年……俺は結婚して妻子を持ち、大臣にまで昇り詰めた。
かつてのパーティメンバー達に「スキルが無くても幸せになった姿」を見せるため、里帰りした俺は……祖国の惨状を目にすることになる。
※ハピエン・善人しか書いたことのない作者が、「追放」をテーマにして実験的に書いてみた作品です。普段の作風とは異なります。
※小説家になろう、カクヨムさんで同一名義にて掲載予定です
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる