ぼっち後輩と屋上先輩

星しぐれ

文字の大きさ
2 / 4

猛暑の一日

しおりを挟む
「こんな暑い日にここに来るなんて白泉も物好きだな」

「先輩に言われる筋合いはないですね。そもそも呼んだの、先輩じゃないですか?」

 夏。それもテレビで猛暑だって言われてる日に屋上に来るわたし達はお互いどうかしてるんだと思う。蝉の鳴き声が屋外というのもあってよく聞こえる。

 普段あぐらをかいてる先輩も照りつける日に焼かれた地べた座りたくないのか今日は立っていた。

 これでもまだ日陰に居るから耐えれてる方だけど、日向の方に立ってたら二人揃って倒れてたかもしれない。 

「……確かに返す言葉がない。すまん」

 困ったように苦笑いする先輩。

「それで今日持ってきた本ですけど──」

「ああ。僕はこれ」

 最近わたし達はお互いの好きな本を貸し合うということにハマっている。

 初めは先輩もわたしも軽い気持ちだった。

 でも不思議と先輩との持ってくる本はわたしの趣味に合うものばかり。それは先輩も同じようで気づけば二人の習慣。

 先輩から渡された本は最近アニメにもなって有名な作品だった。超能力と青春の融合……をキャッチコピーにCMは見た覚えがある。こういうジャンルはきっかけが無いと読まないから嬉しい。

「ライトノベルですか。わたし、あんまり読んだことないです」

「こっちは童話かぁ。僕もあまり読んだことないジャンルだ」

 先輩の方も最近は楽しいと思ってくれてるのかよく笑顔を見せてくれるようになった気がする。
「ここで読みます?」

 わたしが地べたに視線を送ると先輩は嫌そうに首を横に振る。やっぱり座りたくないんだ。

「いや、こんなに暑いと集中して読めない。図書室にでも場所を移そうと思う」

「じゃあ何でわざわざこの暑い中屋上に来させたんですか。連絡先は交換してるんですし、一言くれれば良かったと思うんですけど」

 ……なんでそこで黙るんですかね。
 無言で先輩を見つめてるとバツが悪そうに顔を伏せた。

 まさか、思いつかなかった。なんて言いませんよね?

「確かにそれはそうすれば良かったか……思いつかなかった」

「先輩。バカなんですか?」

「先輩にそういう口の利き方は良くないぞ。後輩」

 はぁ……思わずため息が出る。話を逸らそうとしないで下さい。それで誤魔化せると思ったんですか?

「ならもっと先輩らしい振る舞いをしてください。私のクラスメイトより頼りないですよ。先輩」

「……ほんと、すまん」

 先輩としての自覚、持ってください。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

あるフィギュアスケーターの性事情

蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。 しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。 何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。 この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。 そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。 この物語はフィクションです。 実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

身体の繋がりしかない関係

詩織
恋愛
会社の飲み会の帰り、たまたま同じ帰りが方向だった3つ年下の後輩。 その後勢いで身体の関係になった。

離婚すると夫に告げる

tartan321
恋愛
タイトル通りです

離婚した妻の旅先

tartan321
恋愛
タイトル通りです。

幼馴染の許嫁

山見月あいまゆ
恋愛
私にとって世界一かっこいい男の子は、同い年で幼馴染の高校1年、朝霧 連(あさぎり れん)だ。 彼は、私の許嫁だ。 ___あの日までは その日、私は連に私の手作りのお弁当を届けに行く時だった 連を見つけたとき、連は私が知らない女の子と一緒だった 連はモテるからいつも、周りに女の子がいるのは慣れいてたがもやもやした気持ちになった 女の子は、薄い緑色の髪、ピンク色の瞳、ピンクのフリルのついたワンピース 誰が見ても、愛らしいと思う子だった。 それに比べて、自分は濃い藍色の髪に、水色の瞳、目には大きな黒色の眼鏡 どうみても、女の子よりも女子力が低そうな黄土色の入ったお洋服 どちらが可愛いかなんて100人中100人が女の子のほうが、かわいいというだろう 「こっちを見ている人がいるよ、知り合い?」 可愛い声で連に私のことを聞いているのが聞こえる 「ああ、あれが例の許嫁、氷瀬 美鈴(こおりせ みすず)だ。」 例のってことは、前から私のことを話していたのか。 それだけでも、ショックだった。 その時、連はよしっと覚悟を決めた顔をした 「美鈴、許嫁をやめてくれないか。」 頭を殴られた感覚だった。 いや、それ以上だったかもしれない。 「結婚や恋愛は、好きな子としたいんだ。」 受け入れたくない。 けど、これが連の本心なんだ。 受け入れるしかない 一つだけ、わかったことがある 私は、連に 「許嫁、やめますっ」 選ばれなかったんだ… 八つ当たりの感覚で連に向かって、そして女の子に向かって言った。

幼馴染

ざっく
恋愛
私にはすごくよくできた幼馴染がいる。格好良くて優しくて。だけど、彼らはもう一人の幼馴染の女の子に夢中なのだ。私だって、もう彼らの世話をさせられるのはうんざりした。

つかまえた 〜ヤンデレからは逃げられない〜

りん
恋愛
狩谷和兎には、三年前に別れた恋人がいる。

処理中です...