ぼっち後輩と屋上先輩

星しぐれ

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季節と共に移りゆく

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 まだまだ暑いけど、ちょっとずつ冷たい風も感じてきたこの季節。
 通学路を歩きながら、ぼんやりと考える。
 過ごしやすいのは少しの間。このままどんどんと寒くはなっていくんだろう。それ自体は何時ものことだけど今年は決定的に違うことが一つある。それは──
「なぁ白泉」
「先輩……名前で呼んで欲しいって言ってるじゃないですか。もう何度も言って来たと思うんですけど」
 先輩との進展。
 きっかけは夏休みの終わり頃。不器用すぎてかっこよくは無かったけれど、しっかりした先輩からの告白。
 初めの印象は台無しだったのに。それが今や二人で登校する程の仲まで進展しているんだから、人生ってどう転ぶか分からないものだとつくづく思う。家も意外と近所で今まで出会わなかったのが不思議なくらい。……こうやって一緒に過ごす時間が多いのは嬉しいけど。
「すまん。どうも慣れない。それに、白泉だって僕の事を先輩って呼んでるじゃないか。不公平だと思うんだが……」
「だってわたしは後輩なんですし。先輩なんだから良いでしょう? 呼び方変えなくても」
 先輩が照れくさいのは分かってる。
 というかわたしだって名前で呼ぶのは恥ずかしい。
 でも、名前で呼ばれたい。
 だから後輩って立場を狡く使わせてもらう。先輩にはちょっと悪いけど……いつか、ちゃんと呼べるようにはなるはずから、それまで我慢してもらおう。
「はい先輩もう一回!」
「……冬華」
 顔を赤くして逸らす先輩が可愛い。
 でも、声が小さいのは頂けない。
 分かってます? 先輩。わたしたちはカップルなんですよ?
「先輩もう一回ですよ!」
「勘弁してくれ。こんなところを見られたらバカップルだと思われる」
 人目が気になるのか、辺りをキョロキョロと見る先輩。
 心配しなくてもこの時間、そんなに人通りないんですけどね。まぁ同じ学校の生徒には見られちゃうかもしれませんけど。
「今更な気がしますけどねー」
「お前、そんなキャラだったか?」
 ……そんなに呆れないでください。ちょっと恥ずかしくなるじゃないですか。
 思わず口に出しそうになったけれど、何とか飲み込む。少しでも弱みを見せたらきっとこんなチャンスはもう来ない。
「あ、先輩。赤信号ですよ」
「分かってる」
 信号で立ち止まって会話が途切れる。ほんの少し流れる沈黙。
 そこから先輩は意を決したようにわたしの目を見つめて、声を張る。
「冬華! ……これでいいんだろ」
「顔、赤くなってますよ」

 きっとわたしの顔も真っ赤なんだろうな。
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