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間奏曲
lamentazione(33)
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キャンベルは小さく息を吐くと握り締めていた手をほどいて、デスクの引き出しから真新しいモバイルを2つ取り出すとグレンの前に置いた。
「グレン、心配しなくていい。このモバイルを持って君の行くべき場所へ向かうんだ。もちろんキャロルも連れて。行く先はモバイルがその都度君に伝えるだろう」
「これは……」
グレンは目の前のモバイルとキャロルを交互に見やった。
「これは君たちの新しいモバイル、新しいID、新しい人生だ。このモバイルを持つことで、もう君たちはグレン・ケイヴィスでも、キャロル・ケイヴィスでもなくなる。新しい人生を二人で始めるんだ。このモバイルには当面、君たち二人が移動や衣食住に困ることがない金額も用意されている」
「どうして僕たちに……あなたは何が目的ですか」
「君が君として生きること。そしていつか君と同じ境遇の仲間の為に働いてほしい。君たちと我々の新しい世界のために」
「新しい世界……」
「そうだ。誰もが選択することができ、選択されることのない新しい世界。そこで我々は真の人間、いや、新しい姿の人間として人類の歴史を刻むんだ。新たな人類の歴史はなにもゲーターズだけのものじゃない。グレン、君にも使命があり、君の進む道は新たな人類の歴史の一歩でもあるんだ」
グレンは何も言わず、キャンベルの姿から発せられるハンドラーの声を聞き、話の内容を反芻した。そして一度、口の中にあふれた唾液を喉の奥へと流し込み「あの」と小さく声を出した。
キャンベルは頷きグレンの言葉を待った。
「そこは……その、僕たちが向かう先は、キラキラと……光り輝く場所でしょうか」
「もちろんさ。虹の生まれる場所のようにね」
キャンベルの顔の男は、微笑みを浮かべグレンに手を出すようにいった。グレンが素直に右手を差し出すと、モバイルの一つを握らせた。
「さあ、このモバイルを受け取って。そして今君が持っている、グレン・ケイヴィスとしてのID、モバイルは私が預かろう。キャロルのモバイルは自宅に置いたままにするんだ」
グレンは渡された真新しいモバイルをしばらく眺め、そして深く息を吸い込みポケットに収めるとバックパックの中から使い古したモバイルをキャンベルに差し出した。キャンベルはそれを手元に引き寄せるとともに、キャロルの分のモバイルをグレンに渡した。
「決してキャロルの手を離さないように」
グレンはキャロルの新しいモバイルをしっかりと手にとり「はい。約束します」と真っ直ぐにキャンベルの目を見て応えた。
キャンベルが次に会える日を楽しみにしていると、席を立ちグレンの手を握った。はたから見れば、未来に旅立つ生徒への激励の握手に見えたかもしれないが、同時に立ち上がったグレンの手を握る手には力がこめられ、いっそいましめのような力強さだった。
「グレン、くれぐれも見知らぬ子供には気を付けて」
「子供?」
「そう。人間の子供の皮をかぶった怪物に気を付けるんだ。怪物の王子と王女、そしてその護衛たちにね。君はまだ全てを思い出していないだけなのかもしれない、あの襲撃のとき、あそこに何がいたのかを。いつか、思い出すことがあってもそれを夢だなんて否定しなくていい。怪物はもうおとぎ話の世界からこの現実へ飛び出してしまったんだ。だから、モバイルの声に耳を澄ましよく聞いて、何より用心して君の進むべき道を進むんだよ」
「グレン、心配しなくていい。このモバイルを持って君の行くべき場所へ向かうんだ。もちろんキャロルも連れて。行く先はモバイルがその都度君に伝えるだろう」
「これは……」
グレンは目の前のモバイルとキャロルを交互に見やった。
「これは君たちの新しいモバイル、新しいID、新しい人生だ。このモバイルを持つことで、もう君たちはグレン・ケイヴィスでも、キャロル・ケイヴィスでもなくなる。新しい人生を二人で始めるんだ。このモバイルには当面、君たち二人が移動や衣食住に困ることがない金額も用意されている」
「どうして僕たちに……あなたは何が目的ですか」
「君が君として生きること。そしていつか君と同じ境遇の仲間の為に働いてほしい。君たちと我々の新しい世界のために」
「新しい世界……」
「そうだ。誰もが選択することができ、選択されることのない新しい世界。そこで我々は真の人間、いや、新しい姿の人間として人類の歴史を刻むんだ。新たな人類の歴史はなにもゲーターズだけのものじゃない。グレン、君にも使命があり、君の進む道は新たな人類の歴史の一歩でもあるんだ」
グレンは何も言わず、キャンベルの姿から発せられるハンドラーの声を聞き、話の内容を反芻した。そして一度、口の中にあふれた唾液を喉の奥へと流し込み「あの」と小さく声を出した。
キャンベルは頷きグレンの言葉を待った。
「そこは……その、僕たちが向かう先は、キラキラと……光り輝く場所でしょうか」
「もちろんさ。虹の生まれる場所のようにね」
キャンベルの顔の男は、微笑みを浮かべグレンに手を出すようにいった。グレンが素直に右手を差し出すと、モバイルの一つを握らせた。
「さあ、このモバイルを受け取って。そして今君が持っている、グレン・ケイヴィスとしてのID、モバイルは私が預かろう。キャロルのモバイルは自宅に置いたままにするんだ」
グレンは渡された真新しいモバイルをしばらく眺め、そして深く息を吸い込みポケットに収めるとバックパックの中から使い古したモバイルをキャンベルに差し出した。キャンベルはそれを手元に引き寄せるとともに、キャロルの分のモバイルをグレンに渡した。
「決してキャロルの手を離さないように」
グレンはキャロルの新しいモバイルをしっかりと手にとり「はい。約束します」と真っ直ぐにキャンベルの目を見て応えた。
キャンベルが次に会える日を楽しみにしていると、席を立ちグレンの手を握った。はたから見れば、未来に旅立つ生徒への激励の握手に見えたかもしれないが、同時に立ち上がったグレンの手を握る手には力がこめられ、いっそいましめのような力強さだった。
「グレン、くれぐれも見知らぬ子供には気を付けて」
「子供?」
「そう。人間の子供の皮をかぶった怪物に気を付けるんだ。怪物の王子と王女、そしてその護衛たちにね。君はまだ全てを思い出していないだけなのかもしれない、あの襲撃のとき、あそこに何がいたのかを。いつか、思い出すことがあってもそれを夢だなんて否定しなくていい。怪物はもうおとぎ話の世界からこの現実へ飛び出してしまったんだ。だから、モバイルの声に耳を澄ましよく聞いて、何より用心して君の進むべき道を進むんだよ」
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