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ボロ竿だろうが釣竿に変わりなし

洞窟キノコとフィーバータイム

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 相変わらず鉱山の2層は敵が多い。
 ネズミばっかりで代わり映えも無いが、2体に増えただけで倒しづらくなる。
 それにも慣れてきて、ノーダメで対処出来るようになってきた。

「最近覚えた回避スキル使えるぅ!」

 プレイヤースキル? ノンノン。
 そんなものは釣りに全振りしているよ。
 回避を覚えたら即効セット。
 次の竹林遠征の為に上げてる最中。

「あれ以来、謎鉱石は出ないし、他の魔物も出てこない。ムカデもレアだけど、もう一匹は超レアなのか?」

 ボヤきつつ掘ってると、そろそろ場所変えが必要になったか。探知の光が弱まってくると、石しか掘れなくなる。
 石も必要なら良いけど、だいたい余るからな。ツルハシを担いで新しい採掘場所へ向かうと、見たことない物がぴょこんと生えている。
 茶色い見た目が、背景と同化していて見づらいが、明らかなキノコ。
 ツルハシで突いても反応無く、もぎ取ってみた。

「おぉ? 新しい素材発見か?」

 すると、以前にもあったような音を聞き取った。
 だけど、前よりもハッキリとした足音でカサカサ鳴っている。

 黒い見た目でゾクリとしたが、スマートな形で一安心。
 と言っても50cm程はあるアリのお出まし。

「よし。今回は倒してやるぞ!」

 絡繰スリングを直撃させると、足が止まる。そこに鉈を振り下ろすと、足を一本落とすことに成功した。
 意外と楽に倒せそうだな。今度は反対をと。
 あれ? 逃げ出すのか?

 後ろ向きになって、逃げようとしている。
 スリングを構えて打とうとすると、お尻から飛沫が吹き出してくる。

「うおぉ! あぶねぇ」

 ジュウジュウ音を立てながら地面から煙が吹き出し、見ただけで危険とわかる。

「あ、待て!」

 すぐさま発射したが、パシュン!と乾いた音がするだけ。
 あちゃあ。当たらなかったかぁ。
 さっきのは蟻酸《ぎさん》ってやつかな? 何とか戦えたけど、初遭遇は厳しいな。
 まんまと逃げられてしまったが、キノコは死守出来た。
 こいつは持って帰ってリリーさんに渡すか。
 上手くいけば料理になって戻ってくるかも。



 その後はキノコも見つからず、ネズミと鉄の繰り返しだった。

「うっし! そろそろ帰ろう」

 それなりに掘れたから、クエスト品作った後でも、スコップチャンスは何回かあるだろ。
 鉱山からの帰り道。行き交う人たちも増えて賑やかになっている。
 ポックル族の比率が高くなってきて、そろそろハーフドワーフを超えそうかな。そういえば、ポックル達はどこからやってきたのかな。
 雑貨屋のポックルがいるな。聞いてみよう。

「ハッチさんは知らなかったんですね。真っ直ぐ行けば、ここから2日以内に到着しますよ」

 まさかの近距離だった。
 よくよく聞いてみると、テッケンさんは何度か行っているみたいで、彼から村の場所を聞いてきた者が多いらしい。
 初めて知ったんだけど、マップ共有というのがあって、教えてもらったらポックル村の場所に◆のマークが付いた。
 白地図で、詳細もわからないけど、そこにあるってことだけはわかる。

「みんなこんな点を目印にやってきたの? 山も谷も道もわからないのに?」

「ちっちっち。ハッチさん。そんなものじゃ、僕らの生産熱は消せませんよ」

 こいつが何を言ってるのかわからん。
 とにかくやる気だけでやって来たってことだろうか?
 そうこうしていると、雑貨屋に到着。

 リリーさんにキノコをプレゼントすると、とても喜んでいた。
 すぐさま親方を呼び、親方にもキノコを見せる。

「これは、……やるじゃねーか!」

 おぉ? 珍しく親方が褒めている。
 機嫌が良くなった2人が、全員にご祝儀として1000ゴールド渡す。
 その直後、謎の生産バフが掛かり、詳細欄を確認する。
 2時間だけ成功率2倍。

「うぉぉぉぉ! 今生産しないでいつやるんだ!」

「さすがハッチさん!」「いやっふぅ!」「やっぱり兄弟子やるねー!」

 そこかしこで金属の音が鳴り響き、離れた場所からも奇声が飛んできた。

「抜い速度を上げろー!」「ぬおぉぉ!」「カタカタカタカタカタ」
 最後のは、たぶん機織りだと思う。

「ハッチさん手が止まってますよー!」

「しまった! ぬぉぉぉぉ!」



 俺の周りには、燃え尽きた奴らが所狭しと転がっていた。
 跨ぐように裁縫部屋へ向かうと、こちらも同じように白い奴らばかり。

「あれ? 親方こっちにいたんですか」

「おう。お前のおかげで、予定を繰り上げられた。それじゃあ、ちょっくら行ってくるわ」

「はぁ、いってらっしゃい。ん?」

「明日には戻るわ」

 次の瞬間。強制ブラックアウトし、気づくと雑貨屋の前に弟子達が山積み。
 村の入り口方面に、親方とリリーさんの後ろ姿。

「もしかして、今日は宿無し?」

「「「ハッチさん!」」」

 これは不可抗力だよ。
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