ネオ・アース・テラフォーミング〜MRMMOで釣り好きドワーフの生産奮闘記〜

コアラ太

文字の大きさ
69 / 111
新しい都市

竹を買うまでが長かった

しおりを挟む
「機獣の何が知りたいんだ?」

 何がと言われると困る。
 知らないことが多いから、何でも知りたいというのが本音なんだけど……。

「とりあえず、機獣が魔法を使ったようなので、それについて」

「まず、基本的な機獣は魔法を使わない。ということを念頭に置いてくれ」

 え? 魔法使わないのか?
 だとすると見間違いだったのか?

「それで、魔法を使う機獣は特殊な餌を与えられた奴が考えられる」

 教授の話では、魔石や属性のある餌を与えられると、魔法がインプットされることがあるようだ。
 知らずのうちに与えていた水魔石で成長したことで、魔法を習得したのだろう。
 ここで問題なのは、魔法を使うと稼働時間が減るということ。その都度、魔力を補充すれば良いんだが、なかなか面倒な話だ。
 解決策としては、魔石を多く与えて総量を増やすことと、機獣専用の防具をつけることがある。
 ちなみに専用防具の値段は100万Gもするくせに、防御力はほとんど無い。性能としては、小さな魔石2つ分のエネルギーが蓄えられるということだった。

「値段の割に性能悪く無いですか?」

「買う奴はほとんどいないな。とうか、ドワーフなんだから自分で作れ」

 あぁ。
 またそういうパターンか。

「性能の低いやつなら、ここの資料棚にもあるはずだ。それこそ、お前たちはそれを学びに来たんだろう?」

「それを学びにって……」

「魔法陣を使った防具だよ」

 そういうことかぁ。
 少し面倒だと思い始めていたが、隣のグスタフさんは目をギラギラしている。

「ハッチ氏! とうとう念願の魔道具までたどり着きましたよ」

「いやぁ。俺は先に釣竿が」

「だったら早く作ってしまいましょう! 素材売って竹買いに行きましょう!」

 引きずられながら買取所へたどり着くと、大蛇皮と新鉱石を残して全部売ることになってしまった。
 カエルの皮も残したかったが、4500Gにしか届かず、泣く泣く手放すことになる。
 2度目の大蛇は勘弁だが、カエルはまた取りに行かないとな。
 魔石と皮でなかなか美味しい敵だった。

「まいどありー」

 肉類はどれも安い。
 まぁ、食材を買う時も常に安いので、そんなものなのかもしれない。
 手放したカエルのおかげで残金が7000Gを超えた。

「さぁ! 竹を買いに行きますよ!」

 かなり強引に推し進められているが、釣竿を作れると考えたらテンションが上がってくるものだ。そのテンションでドリアード広場の木材店へ直行。



「ここがその店ですか。なかなか面白い店ですねー」

 グスタフさんは来たことが無かったようで、陳列されている樹木を観覧している。

「それでー。買えるだけお金持ってきたの?」

「もちろん!」

 ニヤリと笑うドリアードが竹ゾーンに向かい始めたので、その後ろについていく。
 改めて見ても、真っ直ぐ上に伸びる竹は力強く感じる。
 店員と太さや長さを確認していた時に思い出したのが、ケットシーが使うということ。
 彼らの身長や手の大きさを考えていなかったな。
 それを確認するために出直そうとしたが、それには及ばないと言われた。

「ケットシーだったら……これくらいかな?」

 見せてもらった竹は、どれもちょうど良いサイズ。ただし、どれも小さめで、他の竹からすると少し見劣りする。
 どこから取り出したのか、ソロバンを取り出して玉を弾き出す。

「このサイズで5本なら……値下げかおまけつける?」

「良いの!?」

 というか値下げしてくれるなら、5000Gいらなかったじゃないか!
 まぁ、今それを言っても仕方ないが、ウーゴの竿も作る約束したからな。
 大きめの竹1本と、ケットシーサイズのを1本追加。

「今度はもっといっぱい買ってよ? 最近お客さん少ないんだからさぁ」

「お金必要なの? ドリアードが金使うイメージなんて無かったけど、何を買うんですか?」

「それは偏見だぞ! 高級肥料はどこ行っても品薄で高価なんだ!」

 肥料か!
 確かにそれなら納得だな。
 もしかして良い堆肥でも見つければ、売りつけられるか?
 なんて考えてみたけど、広場の土もかなりフカフカだから、下手な土を持ってきてもなぁ。
 心に留めておくだけにしておこう。
 そして、本日の長旅を終える為、工房へ戻ることになる。



 ホクホクしながらドワーフ広場までたどり着くと、魔法工房前でパッドともう一体のケットシーに出会った。

「あ、パッド!」

「ハッチか。釣竿作れそう?」

「やっと素材用意できたよ。あと数日だけ待ってくれ」

 パッドの尻尾がゆれて嬉しそうにしている。隣のケットシーも目がキラキラしているので、彼も釣竿を受け取る一人なのかもしれないな。

「なーん、ななーん」

「うなん、にゃー」

 ケットシー同士で話し始めたのは見ていたけど、全く内容がわからないな。猫の挨拶にしか見えない。
 そしてカワイイ。

「じゃあ、よろしく頼みゃー」

 うみゃみゃと楽しげに去る2人を見送った後、工房に入ろうとする時、グスタフさんが「猫語を翻訳する魔道具」と言ったのを聞き逃していない。
 俺もとても欲しいと思ったけど口には出さず、心の中でつぶやくだけにしておいた。
(是非作っていただきたい。)
しおりを挟む
感想 3

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

おばさんは、ひっそり暮らしたい

波間柏
恋愛
30歳村山直子は、いわゆる勝手に落ちてきた異世界人だった。 たまに物が落ちてくるが人は珍しいものの、牢屋行きにもならず基礎知識を教えてもらい居場所が分かるように、また定期的に国に報告する以外は自由と言われた。 さて、生きるには働かなければならない。 「仕方がない、ご飯屋にするか」 栄養士にはなったものの向いてないと思いながら働いていた私は、また生活のために今日もご飯を作る。 「地味にそこそこ人が入ればいいのに困るなぁ」 意欲が低い直子は、今日もまたテンション低く呟いた。 騎士サイド追加しました。2023/05/23 番外編を不定期ですが始めました。

裏切られ続けた負け犬。25年前に戻ったので人生をやり直す。当然、裏切られた礼はするけどね

竹井ゴールド
ファンタジー
冒険者ギルドの雑用として働く隻腕義足の中年、カーターは裏切られ続ける人生を送っていた。 元々は食堂の息子という人並みの平民だったが、 王族の継承争いに巻き込まれてアドの街の毒茸流布騒動でコックの父親が毒茸の味見で死に。 代わって雇った料理人が裏切って金を持ち逃げ。 父親の親友が融資を持ち掛けるも平然と裏切って借金の返済の為に母親と妹を娼館へと売り。 カーターが冒険者として金を稼ぐも、後輩がカーターの幼馴染に横恋慕してスタンピードの最中に裏切ってカーターは片腕と片足を損失。カーターを持ち上げていたギルマスも裏切り、幼馴染も去って後輩とくっつく。 その後は負け犬人生で冒険者ギルドの雑用として細々と暮らしていたのだが。 ある日、人ならざる存在が話しかけてきた。 「この世界は滅びに進んでいる。是正しなければならない。手を貸すように」 そして気付けは25年前の15歳にカーターは戻っており、二回目の人生をやり直すのだった。 もちろん、裏切ってくれた連中への返礼と共に。 

虚弱生産士は今日も死ぬ ―遊戯の世界で満喫中―

山田 武
ファンタジー
今よりも科学が発達した世界、そんな世界にVRMMOが登場した。 Every Holiday Online 休みを謳歌できるこのゲームを、俺たち家族全員が始めることになった。 最初のチュートリアルの時、俺は一つの願いを言った――そしたらステータスは最弱、スキルの大半はエラー状態!? ゲーム開始地点は誰もいない無人の星、あるのは求めて手に入れた生産特化のスキル――:DIY:。 はたして、俺はこのゲームで大車輪ができるのか!? (大切) 1話約1000文字です 01章――バトル無し・下準備回 02章――冒険の始まり・死に続ける 03章――『超越者』・騎士の国へ 04章――森の守護獣・イベント参加 05章――ダンジョン・未知との遭遇 06章──仙人の街・帝国の進撃 07章──強さを求めて・錬金の王 08章──魔族の侵略・魔王との邂逅 09章──匠天の証明・眠る機械龍 10章──東の果てへ・物ノ怪の巫女 11章──アンヤク・封じられし人形 12章──獣人の都・蔓延る闘争 13章──当千の試練・機械仕掛けの不死者 14章──天の集い・北の果て 15章──刀の王様・眠れる妖精 16章──腕輪祭り・悪鬼騒動 17章──幽源の世界・侵略者の侵蝕 18章──タコヤキ作り・幽魔と霊王 19章──剋服の試練・ギルド問題 20章──五州騒動・迷宮イベント 21章──VS戦乙女・就職活動 22章──休日開放・家族冒険 23章──千■万■・■■の主(予定) タイトル通りになるのは二章以降となります、予めご了承を。

ネグレクトされていた四歳の末娘は、前世の経理知識で実家の横領を見抜き追放されました。これからはもふもふ聖獣と美食巡りの旅に出ます。

☆ほしい
ファンタジー
アークライト子爵家の四歳の末娘リリアは、家族から存在しないものとして扱われていた。食事は厨房の残飯、衣服は兄姉のお下がりを更に継ぎ接ぎしたもの。冷たい床で眠る日々の中、彼女は高熱を出したことをきっかけに前世の記憶を取り戻す。 前世の彼女は、ブラック企業で過労死した経理担当のOLだった。 ある日、父の書斎に忍び込んだリリアは、ずさんな管理の家計簿を発見する。前世の知識でそれを読み解くと、父による悪質な横領と、家の財産がすでに破綻寸前であることが判明した。 「この家は、もうすぐ潰れます」 家族会議の場で、リリアはたった四歳とは思えぬ明瞭な口調で破産の事実を突きつける。激昂した父に「疫病神め!」と罵られ家を追い出されたリリアだったが、それは彼女の望むところだった。 手切れ金代わりの銅貨数枚を握りしめ、自由を手に入れたリリア。これからは誰にも縛られず、前世で夢見た美味しいものをたくさん食べる生活を目指す。

友人(勇者)に恋人も幼馴染も取られたけど悔しくない。 だって俺は転生者だから。

石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていた魔法戦士のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもない状態だった。 だが、此の状態は彼にとっては『本当の幸せ』を掴む事に必要だった 何故なら、彼は『転生者』だから… 今度は違う切り口からのアプローチ。 追放の話しの一話は、前作とかなり似ていますが2話からは、かなり変わります。 こうご期待。

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

モブは転生ヒロインを許さない

成行任世
恋愛
死亡ルートを辿った攻略対象者の妹(モブ)が転生ヒロインを断罪します。 .

処理中です...