ネオ・アース・テラフォーミング〜MRMMOで釣り好きドワーフの生産奮闘記〜

日本初イベント大会

優勝者発表と終わり

　１位　ガンビット　コミッタークラブ：２２４０kg

　おっと、これはどういうことだ？
　親方の名前が誤表記されていたってことか？

「ガンビットさーん！」
「儂だぁ！　よがったよがった。まさか儂の成績が盗まれたのかと思ったわ」
「すみませんでした。ランキングの誤表記について説明させてください」
「おう！」

　みんなもその事実が知りたいんだと言わんばかりに身を乗り出している。
　さぁさぁ、教えてもらおうじゃないか。

「まず、先ほどのドーイン様も２２４０kgのコミッタークラブを釣り上げていることをお伝えします」
「どういうことだ？」
「ん？」

　聞いてた俺も疑問に思う。全く同じ重量の同じ生物がいるのか？
　ここの運営がそんなミスを……。

「あ！」
「ハッチさん、どうかしましたか？」
「いえ！　ちょっと思い出したことがあっただけです。ミングスさんもどうぞ発表を見ててください」

　そのミスをやったのか。
　あまり公に言うのもどうかと思うが、会場の中にも俺と同じ反応をする人がチラホラと見えている。

「今回の１位は同率、さらに同種で同重量となりました！　本来であればドーイン様も並ぶ予定でしたが、失格という形となり、ガンビット様の単独優勝です！」
「お、おぉう。ドーインと同じってのはいけ好かねぇが、１位だしよしとするか」

　ドーインって呼び捨てにしてるけど知り合いか？

「ミングスさんミングスさん。ガンビットさんって有名な人ですか？」
「いや、僕は初めて聞いたかな」
「私は知ってるわ」

　エミリーさんは知ってるのか。
　詳しく教えてもらいたい。

「どんな人なんですか？」
「ミズガルズの鉱山都市で生産組合の副組合長をしてるのよ。私がスポーンしたのもそこだからね」
「なるほど、ドーイン親方を知ってるのも生産士繋がりということですか」

　優勝トロフィーを持ちながら、人族プレイヤーたちに胴上げされている様子が見える。先ほど「よしとする」と言ってたが、満面の笑みでそのような気配すらなく、こうして見ると親方に似ている気がする。
　変わってグレンディル親方は非常に悔しそうに、何度も膝を叩いている。

「中島さーん！　１位の賞品って何だったんですか！？」
「そうでしたそうでした！　１位の方にはこちらの池生成オブジェクトが贈与されます！」
「おっしゃぁぁぁああああ！」
「副組合長さっすがー！」

　ガンビットさんやエミリーさん、さらには一部のプレイヤーが大喜びしているが、いまいちその凄さがわからない。

「エミリーさん。大喜びするほどすごいんですか？」
「君たちわかってないなぁ。ここは解説者としてしっかりと教えてあげようじゃないの」

　是非是非お願いしますと両手と頭を目の前のテーブルに擦り付ける。
　隣のミングスさんは、自分もやるのかと慌てふためいており、ちらり横目でエミリーさんを見ると良くやったと言いたげに２人でニヤケ合う。
　メールボックスがピコピコと着信音を連続で鳴らし、タイトルには「許す」だの「良し」だのとお褒めの言葉をいただけた。

「このオブジェクトってのは、私たちのいるイアンダービーで広まってる物なんだけど、ホームに追加できるオブジェクトみたいなものよ」

　言っていることはわかるが、このゲームでは地面を掘れるし木も伐れる。

「時間をかければできることじゃないんですか？」
「チッチッチ。ハッチ君は甘いな。君も土地にも特性があるのは知っているでしょう」
「一応」
「イアンダービーは鉱山都市所以の土壌汚染があるのさ。そしてこのオブジェクトは、一度ホームにしてしまえば環境に作用されず設置することができる。つまり、持っていれば置いた場所だけ、どこでも環境を変化させられるんだよ」

　聞いてみればかなりすごい機能な気がしてきた。

「確かに、それは色々使い道がありそうですね」
「そういうことさ。改めて副組合長おめでとー！！」
「「「「おめでとー！！」」」」

　プーピープーピーと、そこかしこで指笛が鳴り、優勝者を褒め称える。途中トラブルもあったが、みんなの歓声を聞けば、おおむね成功したと言えるだろう。
　中島さんがマイクを持ち、息を大きく吸い込んでいる。

「これをもって！　『Neo Earth Terraforming』日本初の釣り大会、1st フィッシングを終了とします！　皆様ご参加ありがとうございましたー！」

　巨大湖から花火が上がり、みんなの視線がそちらへ向くと、中島さんが笑顔でやってくる。

「御三方の仕事もこれで終わりとなります。お疲れ様でした」
「「「お疲れ様でした」」」