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飛び出せ!
出発スペースタキタロウ
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宇宙へのぼる時、Gが掛かるとびっちりシートベルトをしていると、安全帯を何もつけない笹森さんが通りかかる。
「危ないですよ! 転んだらバッキバキのボッキボキになっちゃいます!」
「大丈夫だよー。周り見てもそこまでガチガチにしてるのって……思ったよりみんなベルトつけてるね」
「当然です。ばっちりウンコも出してきましたので、脱糞対策も万全ですから」
「まぁ、僕は実体験も仕事のうちだから」
なんて危険な仕事なんだ。笹森さんの上司は悪魔だな。
<発進30秒前……3、2、1>
席の前にあるハンドルをがっちり掴んで待っている。
待ってる。
発進はいつだ?
周りもザワつき始めている。
<大気圏を通過しました。これより館内の自由スペースが開放されます。>
なんだと?
急いで外を覗き込みに行く。
同じ考えの人たちもいっぱいで、揉み合いへし合いなんとか隙間から外が見れる。
「ホワッツ? アメージング!」
「いつの間に?」
<これより加速シークエンスに入るため、外部鑑賞スポットは所定の映像へと切り替わります>
見ていた宇宙空間が謎のCMに切り替えられてしまった。
「我が社のコマーシャルじゃないか」
さっきから煩い奴がいると思って顔を横に向けると、興奮した様子のジャック氏がいる。
なるほど、思っていた通り大企業のお偉いさんだったか。
やはり俺の住む世界とは違うらしい。
「海老名君。所持品で確認したいものがあるんだけど」
「ほいほい。行きましょー」
早く連れて行ってほしい。
さっきから突き刺さる『お前は何者だ』という視線が痛い痛い。
貨物スペースと思われる部屋に案内されると、忙しなく動き回るロボットが目に入る。
白衣を着た集団にあれこれと持ってきてくれと言われれば、数十秒以内に荷物を持ち出し、それを抱えた人が笑顔で出ていく。
「彼らは最新船でどのような結果になるか研究するチームなんだ」
「何を研究するんです?」
「さぁ?」
「は?」
「僕はただの責任者だから、専門分野のことは知らないよ。後で報告されたらすごい結果ってことはあるけどね」
「そんなものですか」
「そんなものだよ」
部下が優秀ならそれで良いのかな。
まぁ、この人の下に着いたら自然としっかりするかもしれない。
なんとなくそんな気がした。
貨物スペースもいくつかに区切られているようで、先ほどまでいたのは機械とかの無機物が置かれているところ。
俺たちが向かっているのは生物スペースで、檻に入った家畜やペットたちがたくさん並んでいる。
「いたいた。問題ないと思うけど一応確認してくれる?」
「おっほ。間違いありません」
惚れ惚れするね。
何でも言ってくれと言われたから無理かと思ってたけど、素晴らしい。
もっと近くで……ガラスが邪魔くさいな。
「あんまり張り付くと魚が興奮するんじゃない?」
「は!? 俺としたことが」
「しかし、僕も実物は初めて見たなぁ」
俺が頼んだのはチライ。わかりやすい名前だとイトウって魚だ。
日本有数の大型魚で、俺も数回しか見たことは無い。
今回持ってきてもらった個体は1m弱の個体を雄雌で2匹。
「それにしてもよく伝手があったね」
「以前知り合ったアイヌっ子が長老《エカシ》と繋げてくれまして……やっべぇ。マジこのまま1週間過ごせるわ」
「それはやめてね。一応食品管理もしてるから、衛生面で問題だし。それで本題なんだけど」
「ん?」
「このイトウをさ。鑑賞スペースに移しても良いかな?」
なんでだ?
頼んで持ってきてもらったと言っても一応個人の私物扱いだし、下手に他の魚と混ぜたら食ってしまう可能性もある。
「結構面倒な魚ですよ?」
「どこから話を聞きつけたのか、スポンサー様たちが見たいと言ってねぇ。一応水質や生息データはあるし、一部を専用にするからさ」
「まぁ……そういうことでしたら。だけど、ウーゴたちへのサプライズ用ですから、そこんところ忘れないでくださいよ?」
「任せてくれたまえ」
かくしてイトウは観賞用の大水槽へと移されることになった。
移った直後は警戒してあまり動かなかったが、数日もすると元気よく餌を捕らえに動き回り、お偉方たちを楽しませてくれる。
ただ、船が出発してから1週間ほどの時におかしいと思った。
1mだった個体が1.3m程に成長している。
横を通った研究者の話では、宇宙空間で異常成長した可能性があると言っていた。
それから4日。
2.5mほどに成長したイトウが悠然と泳いでいる。
隣にいたどこぞのミセスが言った言葉に、俺も同意する。
「オゥ。ザッツ タキタロー」
このまま行くと、ウーゴと会う時にはタキタロウ伝説と同じくらいの大きさになるのではないかと心配になる。
なんでかって?
こいつとファイトしてもらおうと思ってたからだよ。
ウーゴ食われないかな?
「危ないですよ! 転んだらバッキバキのボッキボキになっちゃいます!」
「大丈夫だよー。周り見てもそこまでガチガチにしてるのって……思ったよりみんなベルトつけてるね」
「当然です。ばっちりウンコも出してきましたので、脱糞対策も万全ですから」
「まぁ、僕は実体験も仕事のうちだから」
なんて危険な仕事なんだ。笹森さんの上司は悪魔だな。
<発進30秒前……3、2、1>
席の前にあるハンドルをがっちり掴んで待っている。
待ってる。
発進はいつだ?
周りもザワつき始めている。
<大気圏を通過しました。これより館内の自由スペースが開放されます。>
なんだと?
急いで外を覗き込みに行く。
同じ考えの人たちもいっぱいで、揉み合いへし合いなんとか隙間から外が見れる。
「ホワッツ? アメージング!」
「いつの間に?」
<これより加速シークエンスに入るため、外部鑑賞スポットは所定の映像へと切り替わります>
見ていた宇宙空間が謎のCMに切り替えられてしまった。
「我が社のコマーシャルじゃないか」
さっきから煩い奴がいると思って顔を横に向けると、興奮した様子のジャック氏がいる。
なるほど、思っていた通り大企業のお偉いさんだったか。
やはり俺の住む世界とは違うらしい。
「海老名君。所持品で確認したいものがあるんだけど」
「ほいほい。行きましょー」
早く連れて行ってほしい。
さっきから突き刺さる『お前は何者だ』という視線が痛い痛い。
貨物スペースと思われる部屋に案内されると、忙しなく動き回るロボットが目に入る。
白衣を着た集団にあれこれと持ってきてくれと言われれば、数十秒以内に荷物を持ち出し、それを抱えた人が笑顔で出ていく。
「彼らは最新船でどのような結果になるか研究するチームなんだ」
「何を研究するんです?」
「さぁ?」
「は?」
「僕はただの責任者だから、専門分野のことは知らないよ。後で報告されたらすごい結果ってことはあるけどね」
「そんなものですか」
「そんなものだよ」
部下が優秀ならそれで良いのかな。
まぁ、この人の下に着いたら自然としっかりするかもしれない。
なんとなくそんな気がした。
貨物スペースもいくつかに区切られているようで、先ほどまでいたのは機械とかの無機物が置かれているところ。
俺たちが向かっているのは生物スペースで、檻に入った家畜やペットたちがたくさん並んでいる。
「いたいた。問題ないと思うけど一応確認してくれる?」
「おっほ。間違いありません」
惚れ惚れするね。
何でも言ってくれと言われたから無理かと思ってたけど、素晴らしい。
もっと近くで……ガラスが邪魔くさいな。
「あんまり張り付くと魚が興奮するんじゃない?」
「は!? 俺としたことが」
「しかし、僕も実物は初めて見たなぁ」
俺が頼んだのはチライ。わかりやすい名前だとイトウって魚だ。
日本有数の大型魚で、俺も数回しか見たことは無い。
今回持ってきてもらった個体は1m弱の個体を雄雌で2匹。
「それにしてもよく伝手があったね」
「以前知り合ったアイヌっ子が長老《エカシ》と繋げてくれまして……やっべぇ。マジこのまま1週間過ごせるわ」
「それはやめてね。一応食品管理もしてるから、衛生面で問題だし。それで本題なんだけど」
「ん?」
「このイトウをさ。鑑賞スペースに移しても良いかな?」
なんでだ?
頼んで持ってきてもらったと言っても一応個人の私物扱いだし、下手に他の魚と混ぜたら食ってしまう可能性もある。
「結構面倒な魚ですよ?」
「どこから話を聞きつけたのか、スポンサー様たちが見たいと言ってねぇ。一応水質や生息データはあるし、一部を専用にするからさ」
「まぁ……そういうことでしたら。だけど、ウーゴたちへのサプライズ用ですから、そこんところ忘れないでくださいよ?」
「任せてくれたまえ」
かくしてイトウは観賞用の大水槽へと移されることになった。
移った直後は警戒してあまり動かなかったが、数日もすると元気よく餌を捕らえに動き回り、お偉方たちを楽しませてくれる。
ただ、船が出発してから1週間ほどの時におかしいと思った。
1mだった個体が1.3m程に成長している。
横を通った研究者の話では、宇宙空間で異常成長した可能性があると言っていた。
それから4日。
2.5mほどに成長したイトウが悠然と泳いでいる。
隣にいたどこぞのミセスが言った言葉に、俺も同意する。
「オゥ。ザッツ タキタロー」
このまま行くと、ウーゴと会う時にはタキタロウ伝説と同じくらいの大きさになるのではないかと心配になる。
なんでかって?
こいつとファイトしてもらおうと思ってたからだよ。
ウーゴ食われないかな?
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