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3章 国内小旅行。
第41話 孤児の世話1
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翌日。
いつも通り日が昇る前に目を開ける。
外に出て畑をたがや……。
ここには無いんだったな。
夜通し見張りをしていたメサと交代して、自由時間を与えておく。
屋根上から見張りをしていると、このスラムがよく見える。
家で寝れるのは良い方なんだろうな。
道端に寝ている老人ばっかりだ。
子供はみんなこの家に来ているのか。
早めに起きた子にいくつか質問してみた。
もともと街で暮らしていたり、近くも遠くも色々な村に住んでいたりと様々だ。
親がいなくなったり、一緒にスラムに来たりと事情もいろいろ。
他のスラムはすぐに売られてしまうから、ここにしか来ることが出来ない。
さすがに乳飲児《ちのみご》まではいない。
井戸も無いから、森近くの川で水を取ってくる。
その森の魔物に殺された子もいるようだ。
と話していると全員起きてきた。
「先に言っておくが、この拠点は数日後には捨てることになる」
「「「な、なんだってーー!?」」」
「すぐに襲われる家なんて意味が無いだろう。これから拠点を移す。心配ならたまに様子を見にくれば良いだろ」
さらに森で生活すると伝えたら難色を示してきた。
怖いんだろうが、毎日水取りに行くんだったら、森に慣れ切ったほうがかえって安全だ。
と説明すると反論も出来ないようだ。
しばらくは見張るという約束で納得していた。
しかし、なんで俺はここまで面倒見ているのだろうか?
勢いで言ってしまったが、仕方ないなぁ。
森に着いてすぐに水場の確認。
川を発見後、そこから1km程離れた場所に拠点を作る。
お得意のツリーハウスだ。
手斧はリーダーに渡して切っていてもらう。
力の無い子には蔦を渡して一緒に背負いカゴを作る。
器用な子がすぐに覚えたので、その子に他の子の指導もさせる。
メサに見張りを任せ、
「よし。10歳以上の年長組は俺と食材探しだ。リーダーはそのまま木こり」
数えるとちょうど10人だな。
後ろを付いて来させ、山菜を見つけるとその都度教えていく。
同じ山菜を何度でも言っていく。
川に到着すると、動物の気配がする。
あれは、イノシシ?にしては大きいな。
「あれはアタックボアです」
小さな声で教えてくれた。
俺も小声で話す。
「ちょうど良い。今は気づかれてないし、俺が見ているから、全員観察しておけ」
数分後、アタックボアが森の奥に離れていく。
観察の感想を聞いていくと、目は良いようだ。
端々に切られて治った後がある。
それに動く時に旋回が苦手そうだとわかった。
「そう。観察したことで、あいつの相手をする時は、横に行けば安全が高いとわかったな」
川魚の釣り方について。
糸と針は俺の物だが、餌の場所や魚の居付きやすい場所を教える。
初日で今まで人がいなかった為、50cm程のマスが5匹も釣れた。
拠点に戻り食事だ。
持ってきた大鍋に、汚れを除いて適度に切った食材をぶち込んでいく。
「さぁ飯だ」
みんなでがっついて食べていく。
泣いている子までいるなぁ。
「「「「「うまいうまい」」」」」
「みんなわかったと思うが、森は食材の宝庫だ。獣は怖いが対処を覚えてうまく棲み分ければ、お互いに良い関係になれるんだぞ」
「「「「「うんうん」」」」」
飯の後、少し休憩したらツリーハウス作りだ。
今日は2つの土台が出来た。
1つで子供5人くらいだから、10人か。
あと5、6位は欲しいところだな。
圧倒的に道具が足りない。
例の奴は確か、ギルド員の話では夕方以降は酒飲む為に来ないと言ってたな。
明日だけ薬草売って道具を買ってこようかな。
まだ少し早いが行ってこよう。
孤児達に話して、今日は早めにスラムへ戻る。
メサを見張りにして、俺は金具屋へいく。
「らっしゃい。もうすぐ閉めるから早めにねー」
急かしてくるが、問題無い。
「欲しいのは決まってるんだ。斧3本とクワ4本、あとスコップは2本。それに付け替え用の棒を多め。荷車もあれば買うよ」
「なんだよ。上客じゃねーか。それなら閉店後でも頑張っちゃうかねー」
ニコニコ顔の中年のザンバラ髷《まげ》の男。
「それなら探索者ギルドに行ってから、取りに戻って良いか?」
「探索者かギルド証で名前だけ確認させてくれ。ノールっと。代金は金4大銀3な。荷車はボロだがそれなりに頑丈だ。はいよ。丁度いただきましたっと。戻ったら店の扉叩いてくれよー」
仕事が早いのは助かるな。
あと前の街で貯めておいて良かった。
さて、探索者ギルドに行くか。
到着するとザワザワしている。
遠目に見てみると、例の男が喧嘩している。
嫌なタイミングで来てしまったようだ。
外に出て気配を消しておく。
5分程で例の男達が出て行った。
ニヤケ顔で勝ったんだろうか?
巾着をジャリジャリと鳴らしながら繁華街へ消えて行った。
ギルド館内に入ると、右腕の折れた猫人族と顔を腫らした犬人族、さらに気絶している者が何人もいる。
「ヒドイ有様だな。なんかあったのか?」
近くの人に聞いてみる。
貴族の息子と言うことで周りに居た奴も仲裁すら出来なかったらしい。
きっかけも獣人がムカつくから、だそうだ。
なんとも性根のひん曲がった奴だと思ったら、例の神人教徒だった。
おぅふ。
奴らもっと下っ端教育しとけよぉ。
もう神人教のやつらはいないというので、介抱してやった。
自家製の薬を塗って、賦活を行っておく。
これで普段より早めに治るだろう。
気絶してた奴が起きたので話しかけた。
「さっきの奴がいる間は、この街の探索者ギルドは辞めた方が良いんじゃねーか?」
「俺も今回のことで、それを強く思った。拠点を移すよ。治療ありがとな、少し良くなったよ」
そう言って大銀1を渡そうとしたが断っておく。
再度感謝を言って仲間を抱えて帰っていく。
その後、ギルドの受付へ行くと何食わぬ顔で対応した。
「受け付けます」
さらさらと書面に書き森で取ってきた薬草類を渡す。
思っていた通り、ここの報酬は良い。
全部で金5枚になった。
道具代は取り返したな。
用事は済んだと帰ろうとしたところで呼び止められてしまった。
「少しお話があります」
嫌な予感がするが、こちらも報酬貰ったばかりだし断れない。
「聞くだけなら」と座り直す。
「最近、薬草採取の報告が少なく、依頼が滞っています。その依頼をやって頂きたいのですが、どうでしょう?」
この職員は知らないのだろうか?
「失礼かと思いますが、私が草取りと呼ばれているのはご存知でしょうか?」
頷いている。
街道での一件も知っているらしい。
「例の男がギルドにいる限り、薬草類は受注する人いないと思います。私はたまたまですよ?」
その後もしつこく食い下がってきたが、依頼を確認するだけでも億劫なんだよな。
いろいろ条件をプラスするが食指がわかない。
獣人がダメで薬草採取も喧嘩売られるって、探索者ギルドヤバくね?
とか考えていると、後ろから髭面の男がやってきた。
「お前が草取りか」
ぶっきらぼうに話しかけてきたが、知らない人にいきなり話しかけられても、反応しづらいな。
「うちのギルドマスターです」
受付が間に入る。
今の俺は相当嫌な顔をしてるんだろう。
2人して苦笑いしている。
「薬草取ってきてくんねーか? 今のままだとヤバいんだよ」
「そこまでヤバいなら、あの男なんとかした方が良いですよ……」
「アイツ。前に締めたことあるんだが、現行犯じゃないとか、証拠あるのかって逃げやがるんだ。おまけに親の方もクソ野郎だから、話にならねぇ」
うわぁ。マジでヤベー奴じゃん。
「それ……。もうこのギルドの問題超えてますよ。領主様に相談した方が良いのでは……?」
「それもダメだった。話がそこまで通らねえ」
あ。終わった。
席を立って帰ろうとすると、肩を押さえつけられる。
「困るのは薬が必要な民間人なんだよ。頼む」
逃げられない。
なんとも困ったが、俺があいつと会わなければ良いのだから。
「じゃあ……」
信頼のおける探索者を森まで来させて、薬草を受け渡し、その薬草も受付を通さず受け取る形になった。
その探索者も、定期的に別の探索者に調査させるという念の入れよう。
これでダメだったら、逃げるしか無いな。
「俺としては、早めに埃を見つけて捕まえるか、逃げ出すかをお勧めします。では」
そそくさと退出し、金物屋へ急ぐ。
金物屋が待っていてくれて助かった。
頼んだ通り、棒は20本。十分だろうと荷車を引いて街を出る。
門番に聞かれたが、「新しい畑を作るんだ。」と言ったら納得していた。
間違ってはいないはず。
いつも通り日が昇る前に目を開ける。
外に出て畑をたがや……。
ここには無いんだったな。
夜通し見張りをしていたメサと交代して、自由時間を与えておく。
屋根上から見張りをしていると、このスラムがよく見える。
家で寝れるのは良い方なんだろうな。
道端に寝ている老人ばっかりだ。
子供はみんなこの家に来ているのか。
早めに起きた子にいくつか質問してみた。
もともと街で暮らしていたり、近くも遠くも色々な村に住んでいたりと様々だ。
親がいなくなったり、一緒にスラムに来たりと事情もいろいろ。
他のスラムはすぐに売られてしまうから、ここにしか来ることが出来ない。
さすがに乳飲児《ちのみご》まではいない。
井戸も無いから、森近くの川で水を取ってくる。
その森の魔物に殺された子もいるようだ。
と話していると全員起きてきた。
「先に言っておくが、この拠点は数日後には捨てることになる」
「「「な、なんだってーー!?」」」
「すぐに襲われる家なんて意味が無いだろう。これから拠点を移す。心配ならたまに様子を見にくれば良いだろ」
さらに森で生活すると伝えたら難色を示してきた。
怖いんだろうが、毎日水取りに行くんだったら、森に慣れ切ったほうがかえって安全だ。
と説明すると反論も出来ないようだ。
しばらくは見張るという約束で納得していた。
しかし、なんで俺はここまで面倒見ているのだろうか?
勢いで言ってしまったが、仕方ないなぁ。
森に着いてすぐに水場の確認。
川を発見後、そこから1km程離れた場所に拠点を作る。
お得意のツリーハウスだ。
手斧はリーダーに渡して切っていてもらう。
力の無い子には蔦を渡して一緒に背負いカゴを作る。
器用な子がすぐに覚えたので、その子に他の子の指導もさせる。
メサに見張りを任せ、
「よし。10歳以上の年長組は俺と食材探しだ。リーダーはそのまま木こり」
数えるとちょうど10人だな。
後ろを付いて来させ、山菜を見つけるとその都度教えていく。
同じ山菜を何度でも言っていく。
川に到着すると、動物の気配がする。
あれは、イノシシ?にしては大きいな。
「あれはアタックボアです」
小さな声で教えてくれた。
俺も小声で話す。
「ちょうど良い。今は気づかれてないし、俺が見ているから、全員観察しておけ」
数分後、アタックボアが森の奥に離れていく。
観察の感想を聞いていくと、目は良いようだ。
端々に切られて治った後がある。
それに動く時に旋回が苦手そうだとわかった。
「そう。観察したことで、あいつの相手をする時は、横に行けば安全が高いとわかったな」
川魚の釣り方について。
糸と針は俺の物だが、餌の場所や魚の居付きやすい場所を教える。
初日で今まで人がいなかった為、50cm程のマスが5匹も釣れた。
拠点に戻り食事だ。
持ってきた大鍋に、汚れを除いて適度に切った食材をぶち込んでいく。
「さぁ飯だ」
みんなでがっついて食べていく。
泣いている子までいるなぁ。
「「「「「うまいうまい」」」」」
「みんなわかったと思うが、森は食材の宝庫だ。獣は怖いが対処を覚えてうまく棲み分ければ、お互いに良い関係になれるんだぞ」
「「「「「うんうん」」」」」
飯の後、少し休憩したらツリーハウス作りだ。
今日は2つの土台が出来た。
1つで子供5人くらいだから、10人か。
あと5、6位は欲しいところだな。
圧倒的に道具が足りない。
例の奴は確か、ギルド員の話では夕方以降は酒飲む為に来ないと言ってたな。
明日だけ薬草売って道具を買ってこようかな。
まだ少し早いが行ってこよう。
孤児達に話して、今日は早めにスラムへ戻る。
メサを見張りにして、俺は金具屋へいく。
「らっしゃい。もうすぐ閉めるから早めにねー」
急かしてくるが、問題無い。
「欲しいのは決まってるんだ。斧3本とクワ4本、あとスコップは2本。それに付け替え用の棒を多め。荷車もあれば買うよ」
「なんだよ。上客じゃねーか。それなら閉店後でも頑張っちゃうかねー」
ニコニコ顔の中年のザンバラ髷《まげ》の男。
「それなら探索者ギルドに行ってから、取りに戻って良いか?」
「探索者かギルド証で名前だけ確認させてくれ。ノールっと。代金は金4大銀3な。荷車はボロだがそれなりに頑丈だ。はいよ。丁度いただきましたっと。戻ったら店の扉叩いてくれよー」
仕事が早いのは助かるな。
あと前の街で貯めておいて良かった。
さて、探索者ギルドに行くか。
到着するとザワザワしている。
遠目に見てみると、例の男が喧嘩している。
嫌なタイミングで来てしまったようだ。
外に出て気配を消しておく。
5分程で例の男達が出て行った。
ニヤケ顔で勝ったんだろうか?
巾着をジャリジャリと鳴らしながら繁華街へ消えて行った。
ギルド館内に入ると、右腕の折れた猫人族と顔を腫らした犬人族、さらに気絶している者が何人もいる。
「ヒドイ有様だな。なんかあったのか?」
近くの人に聞いてみる。
貴族の息子と言うことで周りに居た奴も仲裁すら出来なかったらしい。
きっかけも獣人がムカつくから、だそうだ。
なんとも性根のひん曲がった奴だと思ったら、例の神人教徒だった。
おぅふ。
奴らもっと下っ端教育しとけよぉ。
もう神人教のやつらはいないというので、介抱してやった。
自家製の薬を塗って、賦活を行っておく。
これで普段より早めに治るだろう。
気絶してた奴が起きたので話しかけた。
「さっきの奴がいる間は、この街の探索者ギルドは辞めた方が良いんじゃねーか?」
「俺も今回のことで、それを強く思った。拠点を移すよ。治療ありがとな、少し良くなったよ」
そう言って大銀1を渡そうとしたが断っておく。
再度感謝を言って仲間を抱えて帰っていく。
その後、ギルドの受付へ行くと何食わぬ顔で対応した。
「受け付けます」
さらさらと書面に書き森で取ってきた薬草類を渡す。
思っていた通り、ここの報酬は良い。
全部で金5枚になった。
道具代は取り返したな。
用事は済んだと帰ろうとしたところで呼び止められてしまった。
「少しお話があります」
嫌な予感がするが、こちらも報酬貰ったばかりだし断れない。
「聞くだけなら」と座り直す。
「最近、薬草採取の報告が少なく、依頼が滞っています。その依頼をやって頂きたいのですが、どうでしょう?」
この職員は知らないのだろうか?
「失礼かと思いますが、私が草取りと呼ばれているのはご存知でしょうか?」
頷いている。
街道での一件も知っているらしい。
「例の男がギルドにいる限り、薬草類は受注する人いないと思います。私はたまたまですよ?」
その後もしつこく食い下がってきたが、依頼を確認するだけでも億劫なんだよな。
いろいろ条件をプラスするが食指がわかない。
獣人がダメで薬草採取も喧嘩売られるって、探索者ギルドヤバくね?
とか考えていると、後ろから髭面の男がやってきた。
「お前が草取りか」
ぶっきらぼうに話しかけてきたが、知らない人にいきなり話しかけられても、反応しづらいな。
「うちのギルドマスターです」
受付が間に入る。
今の俺は相当嫌な顔をしてるんだろう。
2人して苦笑いしている。
「薬草取ってきてくんねーか? 今のままだとヤバいんだよ」
「そこまでヤバいなら、あの男なんとかした方が良いですよ……」
「アイツ。前に締めたことあるんだが、現行犯じゃないとか、証拠あるのかって逃げやがるんだ。おまけに親の方もクソ野郎だから、話にならねぇ」
うわぁ。マジでヤベー奴じゃん。
「それ……。もうこのギルドの問題超えてますよ。領主様に相談した方が良いのでは……?」
「それもダメだった。話がそこまで通らねえ」
あ。終わった。
席を立って帰ろうとすると、肩を押さえつけられる。
「困るのは薬が必要な民間人なんだよ。頼む」
逃げられない。
なんとも困ったが、俺があいつと会わなければ良いのだから。
「じゃあ……」
信頼のおける探索者を森まで来させて、薬草を受け渡し、その薬草も受付を通さず受け取る形になった。
その探索者も、定期的に別の探索者に調査させるという念の入れよう。
これでダメだったら、逃げるしか無いな。
「俺としては、早めに埃を見つけて捕まえるか、逃げ出すかをお勧めします。では」
そそくさと退出し、金物屋へ急ぐ。
金物屋が待っていてくれて助かった。
頼んだ通り、棒は20本。十分だろうと荷車を引いて街を出る。
門番に聞かれたが、「新しい畑を作るんだ。」と言ったら納得していた。
間違ってはいないはず。
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