サバイバル能力に全振りした男の半端仙人道

コアラ太

文字の大きさ
56 / 165
3章 国内小旅行。

第55話 7級試験(裏)

しおりを挟む
 ワルシャ北部の山。
 ここらは森の切れ目で、いくつも洞窟が見られる。

「アレク。あそこの洞窟が怪しいわ」
「ローズのスキルなら間違いないだろう」
「僕は後ろを警戒しつつ回復していくね」
「「「我々も一緒に戦います」」」

 兵士達の声が響く。

「ここまで来たらしょうがねぇだろう。俺も手伝う」

 監督も頭をかきつつも乗ることになった。



「俺が先頭で行く。ローズもスキルの遠見を使って俺に続け。他のみんなはその後に!」
「「「「おう」」」」

 入り口ではわかりづらかったが、洞窟の中はそれなりに整備されている。
 奥には粗末な扉がつけられており、声が漏れてくる。

「今日の奴ら戻ってきませんね」
「どっかで遊んでいるんだろ?」
「そんなことより、早く売っ払って別の場所行かねーとな」
「そろそろ足がつきそうだ」

 野盗達の声だ。
 他にも扉が見えるので、そちらにも兵士を送る。

「さぁ、行くぞ」

 アレクが合図して中へ突撃。
 ずがぁぁん。と扉を蹴飛ばし中に入るや野盗達を切っていく。

 すぐに制圧し、奥へ奥へ。
 すると野盗の頭《かしら》らしき大男が現れた。

「なんだてめぇら? 鎧着て兵士か? くそっ、ヘマやりやがったな」

 悪態をつく。

「俺は悪事を許さない」

 アレクが言う。

「ん? 何だおめぇ?」

 頭《かしら》は違和感を感じたようだ。

「お貴族様か? そうだろ! はは!」
「だったら何だ!」
「別に何でもねぇよ? でもお貴族なら逃げるのは辞めだな。出来るだけ道連れだぁ!」

 そう言って手当たり次第に刃物を投げつけてくる。
 その一瞬で兵士が5人死に、ローズも腕にナイフが刺さった。

「いきなり卑怯だぞ!」

 アレクが切り掛かり。

「お前もいきなり乗り込んで来て卑怯だなぁあああ!」

 頭も斧で応戦する。
 何度も剣戟が繰り返されるが、勝負はつかない。
 だが、次第にアレクが押され始めた。

「力の差だな!」

 頭が笑い出す。

「外も……兵士が詰めている。お前は逃げられん」

 苦しそうにアレクが告げる。

「お貴族様は道連れよぉ!」
「そこまで貴族が嫌いか!?」

 アレクが言うと、頭が止まった。

「白けた」

 そう言って、下がると液体を撒き出し、火を付ける。

「あばよ。先に地獄に行ってるぜ。はははははは!」

 そう言って頭は笑いながら死んでいった。
 生きてる人を抱えながら、やっと入り口に戻ってくると、監督が何人も救助した後だった。
 捕まえた野盗を探してみると、どこにもいない。

「あいつらは、決死だったな」

 監督が言う。
 兵士を見かけると、いきなり奇声をあげ出したそうだ。
 その後は気絶した仲間も殺して周り、起きてる者は死ぬまで戦ってきたという。
 兵士は30人近く息を引き取り、捕まっていた者も半分は殺された。

「なんという非道を。くそ!」

 アレクは憤る。

「お前の役割は終わった。あとは兵士達の仕事だ」
「もちろんです。穴蔵含めて痕跡を洗い出します」

 隊長らしき人が進み出た。



 王都への帰り道。

「残った奴達がちゃんと仕事してくれたよ」

 ミハエルが伝えるが、みんな浮かない顔だ。

「そうか。それは良かった」
「俺はもっと強くなりたい。強くなって守れるようになる!」

 アレクは決意した。

「私も修行するわ」
「僕もするよ」

 光剣は新たな目標に向かって力をつけることになった。

 ———————————————

 それから1週間後。
 王都のある屋敷に険しい顔した老人がいる。

「父上。久しぶりに呼ばれましたが、何か用ですか?」

 痩せギスのメガネ男が言う。

「まぁ座れ」

 私が座るのを待っている。

「他のみんなにはもう言っているが、ワルシャ北部で野盗と戦闘があってな」

 最近聞いた話だな。

「その話は、噂だけ聞きました。なんでもサンダールの小僧が参加したとか。結構活躍したそうですね?」
「そういうことになっている」

 そこで、ジールは言い方が気になった。

「なっているとは?」
「これから話すことは、伯爵以上の爵位にしか伝わっておらぬ。そして、直接仕事する者以外は話してもならぬ」

 厳しい顔をしているな。
 大事な話なのだろうと俺も頷く。

「あの事件の中身はかなり凄惨だ。盗賊全員の死亡、兵士30名以上死亡。捕虜だった者は15名救出し、20名死亡した。捕まった盗賊は0だ」

 いくら抵抗したとしても、そんな結果はひどすぎる。

「そんな馬鹿な。せめて1人は捕まえているのでは?」
「0だ。サンダールの小僧が盗賊全てを切り捨てていった。他の場所に向かった兵士達も捕まえようとしたが、起きてる盗賊が気絶した仲間や捕虜を殺して回ったそうだ」
「作戦などなかったのか!?」
「あっただろうが、お粗末だったのだろうな。その時の隊長は死に、外で待機していた副隊長が後を次いだという。ふぅ」

 ここで一度ため息を入れ、話を続ける。

「戻った小僧も反省はしているが、何を血迷ったか力を求めている。サンダールも賛同し、聖教国側の奴らは協力すると言い出した。頭を鍛えぬ脳筋の出来上がりだ。さぞ扱いやすい勇者だろうよ」
「私たちはいかが致しましょう」
「あっち側の奴とは手を切れ。お前は探索者と繋がりがあったな?」
「バートのことですか?」
「そうか獣王国の小倅がいたな。そいつを連れて国を出ろ。そうだな、亡くなったジークの子供も一緒に連れてってやれ」

 ジークは4男だったが、南部山間地帯の魔物討伐時に亡くなっている。
 だが、あまりにもいきなり過ぎる。

「な、急すぎませんか?」
「今なら聖教国も通れるが、数年以内にこの国は戦場だ。もはや緩衝地帯は必要ないのだ。その前に、遺跡探索の旅に出れたら良いだろう?」
「兄上達はどうされるのです?」
「長男は帝国へ向かわせる。次男は、すまぬがもう行かせた。今は海を渡っているだろう。もはや穏健派が邪魔なのだ。帝国も聖教国も土地が欲しい。この国の貴族にはかなり前から手を回しているのだろうな」

 寂しそうに話している。

「すでに動かれていたとは……。父上は行かぬのですか?」
「儂は侯爵だから、最後まで見届ける必要がある。穏健派の面倒も見ないといけないしな……。ギリギリまで息子に譲らなくて良かったと、初めて思っている」

 胸が痛くなる。

「父上……」
「なぁに。最悪、無法となったブルーメンに逃げてやるわ。すでに儂の若い手駒を何人か送っている。魔鴨団とかいうのが出張っているらしくてな。子供と老人を囲っているらしいぞ?」
「変わった者達ですね。考えがあるのなら、私が言うことはありませんね。私は準備が出来次第、出発いたします」
「執事長にお前の支度金を用意させた。多めに入れたから使用人も何人か連れてってやれ。良き日々を……」

 父上も寂しそうな顔しないでくれ。

「良き日々を……」

 お辞儀して退出する。
 扉を開けると執事長が待っていた。

「ジール様、こちらが支度金でございます」

 俺が子供の時から世話になっていた爺だ。
 ほとんど家族のようなものだから、なおさら寂しく感じる。

「行きの依頼料含めて、何人連れて行けそうだ?」
「5人程かと」

 思ったより少ないな長い旅になるかもしれないな。

「希望者を募ってくれ。選ぶのは任せる」
「かしこまりました」
「世話になったな。良き日々を……」
「良き日々を……」
しおりを挟む
感想 3

あなたにおすすめの小説

生贄にされた少年。故郷を離れてゆるりと暮らす。

水定ゆう
ファンタジー
 村の仕来りで生贄にされた少年、天月・オボロナ。魔物が蠢く危険な森で死を覚悟した天月は、三人の異形の者たちに命を救われる。  異形の者たちの弟子となった天月は、数年後故郷を離れ、魔物による被害と魔法の溢れる町でバイトをしながら冒険者活動を続けていた。  そこで待ち受けるのは数々の陰謀や危険な魔物たち。  生贄として魔物に捧げられた少年は、冒険者活動を続けながらゆるりと日常を満喫する!  ※とりあえず、一時完結いたしました。  今後は、短編や別タイトルで続けていくと思いますが、今回はここまで。  その際は、ぜひ読んでいただけると幸いです。

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

雑用係の回復術士、【魔力無限】なのに専属ギルドから戦力外通告を受けて追放される〜ケモ耳少女とエルフでダンジョン攻略始めたら『伝説』になった〜

霞杏檎
ファンタジー
祝【コミカライズ決定】!! 「使えん者はいらん……よって、正式にお前には戦力外通告を申し立てる。即刻、このギルドから立ち去って貰おう!! 」 回復術士なのにギルド内で雑用係に成り下がっていたフールは自身が専属で働いていたギルドから、何も活躍がないと言う理由で戦力外通告を受けて、追放されてしまう。 フールは回復術士でありながら自己主張の低さ、そして『単体回復魔法しか使えない』と言う能力上の理由からギルドメンバーからは舐められ、S級ギルドパーティのリーダーであるダレンからも馬鹿にされる存在だった。 しかし、奴らは知らない、フールが【魔力無限】の能力を持っていることを…… 途方に暮れている道中で見つけたダンジョン。そこで傷ついた”ケモ耳銀髪美少女”セシリアを助けたことによって彼女はフールの能力を知ることになる。 フールに助けてもらったセシリアはフールの事を気に入り、パーティの前衛として共に冒険することを決めるのであった。 フールとセシリアは共にダンジョン攻略をしながら自由に生きていくことを始めた一方で、フールのダンジョン攻略の噂を聞いたギルドをはじめ、ダレンはフールを引き戻そうとするが、フールの意思が変わることはなかった…… これは雑用係に成り下がった【最強】回復術士フールと"ケモ耳美少女"達が『伝説』のパーティだと語られるまでを描いた冒険の物語である! (160話で完結予定) 元タイトル 「雑用係の回復術士、【魔力無限】なのに専属ギルドから戦力外通告を受けて追放される〜でも、ケモ耳少女とエルフでダンジョン攻略始めたら『伝説』になった。噂を聞いたギルドが戻ってこいと言ってるがお断りします〜」

【完結】剣の世界に憧れて上京した村人だけど兵士にも冒険者にもなれませんでした。

もる
ファンタジー
 剣を扱う職に就こうと田舎から出て来た14歳の少年ユカタは兵役に志願するも断られ、冒険者になろうとするも、15歳の成人になるまでとお預けを食らってしまう。路頭に迷うユカタは生きる為に知恵を絞る。

【一時完結】スキル調味料は最強⁉︎ 外れスキルと笑われた少年は、スキル調味料で無双します‼︎

アノマロカリス
ファンタジー
調味料…それは、料理の味付けに使う為のスパイスである。 この世界では、10歳の子供達には神殿に行き…神託の儀を受ける義務がある。 ただし、特別な理由があれば、断る事も出来る。 少年テッドが神託の儀を受けると、神から与えられたスキルは【調味料】だった。 更にどんなに料理の練習をしても上達しないという追加の神託も授かったのだ。 そんな話を聞いた周りの子供達からは大爆笑され…一緒に付き添っていた大人達も一緒に笑っていた。 少年テッドには、両親を亡くしていて妹達の面倒を見なければならない。 どんな仕事に着きたくて、頭を下げて頼んでいるのに「調味料には必要ない!」と言って断られる始末。 少年テッドの最後に取った行動は、冒険者になる事だった。 冒険者になってから、薬草採取の仕事をこなしていってったある時、魔物に襲われて咄嗟に調味料を魔物に放った。 すると、意外な効果があり…その後テッドはスキル調味料の可能性に気付く… 果たして、その可能性とは⁉ HOTランキングは、最高は2位でした。 皆様、ありがとうございます.°(ಗдಗ。)°. でも、欲を言えば、1位になりたかった(⌒-⌒; )

備蓄スキルで異世界転移もナンノソノ

ちかず
ファンタジー
久しぶりの早帰りの金曜日の夜(但し、矢作基準)ラッキーの連続に浮かれた矢作の行った先は。 見た事のない空き地に1人。異世界だと気づかない矢作のした事は? 異世界アニメも見た事のない矢作が、自分のスキルに気づく日はいつ来るのだろうか。スキル【備蓄】で異世界に騒動を起こすもちょっぴりズレた矢作はそれに気づかずマイペースに頑張るお話。 鈍感な主人公が降り注ぐ困難もナンノソノとクリアしながら仲間を増やして居場所を作るまで。

異世界転生、防御特化能力で彼女たちを英雄にしようと思ったが、そんな彼女たちには俺が英雄のようだ。

Mです。
ファンタジー
異世界学園バトル。 現世で惨めなサラリーマンをしていた…… そんな会社からの帰り道、「転生屋」という見慣れない怪しげな店を見つける。 その転生屋で新たな世界で生きる為の能力を受け取る。 それを自由イメージして良いと言われた為、せめて、新しい世界では苦しまないようにと防御に突出した能力をイメージする。 目を覚ますと見知らぬ世界に居て……学生くらいの年齢に若返っていて…… 現実か夢かわからなくて……そんな世界で出会うヒロイン達に…… 特殊な能力が当然のように存在するその世界で…… 自分の存在も、手に入れた能力も……異世界に来たって俺の人生はそんなもん。 俺は俺の出来ること…… 彼女たちを守り……そして俺はその能力を駆使して彼女たちを英雄にする。 だけど、そんな彼女たちにとっては俺が英雄のようだ……。 ※※多少意識はしていますが、主人公最強で無双はなく、普通に苦戦します……流行ではないのは承知ですが、登場人物の個性を持たせるためそのキャラの物語(エピソード)や回想のような場面が多いです……後一応理由はありますが、主人公の年上に対する態度がなってません……、後、私(さくしゃ)の変な癖で「……」が凄く多いです。その変ご了承の上で楽しんで頂けると……Mです。の本望です(どうでもいいですよね…)※※ ※※楽しかった……続きが気になると思って頂けた場合、お気に入り登録……このエピソード好みだなとか思ったらコメントを貰えたりすると軽い絶頂を覚えるくらいには喜びます……メンタル弱めなので、誹謗中傷てきなものには怯えていますが、気軽に頂けると嬉しいです。※※

異世界勇者のトラック無双。トラック運転手はトラックを得て最強へと至る(トラックが)

愛飢男
ファンタジー
最強の攻撃、それ即ち超硬度超質量の物体が超高速で激突する衝撃力である。 ってことは……大型トラックだよね。 21歳大型免許取り立ての久里井戸玲央、彼が仕事を終えて寝て起きたらそこは異世界だった。 勇者として召喚されたがファンタジーな異世界でトラック運転手は伝わらなかったようでやんわりと追放されてしまう。 追放勇者を拾ったのは隣国の聖女、これから久里井戸くんはどうなってしまうのでしょうか?

処理中です...