サバイバル能力に全振りした男の半端仙人道

コアラ太

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4章 国の波乱

第59話 半亜人村1

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 俺たちが辿り着いた村は小さく、人口は30人程度。
 の、はずだが……。

 今、俺たちはデカイ扉を見上げて立ち尽くしている。

「村だと聞いてたけど、砦だった」
「昔はタダの小さな村だったのじゃ!」
「儂も聞いたこと無いのう」
「私《わたくし》もでございます」

「ほらほら、目的地に着いたんだから、早く中に入るよ!」

「ノール様、入って休みましょう。おいしいお団子があるのですわ!」

 門に近づく。

「交換しにきましたわー!!」

 エルザが叫ぶと頭上から声が帰ってきた。

「なんじゃ。まーた欲しい物があるんかぁ?」

 長い髭をたくわえた男が覗き込んできた。

「なんぞ知らん顔が多いのぉ」
「いつものガキ共だろ?」
「こら、押すな!」
「私にも見せて見せてー」

 他にもワラワラと現れてきた。

「この人は私たちの仲良しさん! 中に入って良い!?」

 狼少女が声を張る。

「良いよー!」

 間髪入れずに子供の声が帰ってきた。

「こら、もそっと粘らんかい」
「でも、いつも入れてるよ?」
「こういうのは雰囲気じゃ雰囲気」

 という声が聞こえて来たのと同時に、ゴゴゴゴと低い音を鳴らしながら門が開いた。


「ようこそ亜人の村へ。中へどうぞ」

 若い女性が迎え入れてくれた。

「よーろしくー!」
「お邪魔しますわ!」

 小さな先導に着いて行く大人達。
 中はイアさん達に聞いていた通り簡素で、小さめの家がポツポツと建っている。

「門だけ異様に強化されておるな。あと儂が聞いていたのは人族の村だったぞ?」

 ジルさんが話し出した。

「それについては後ほどお話しましょう。まずは休憩小屋まで案内します」

 女性が答える。

 何件か家を通り過ぎると、少し大きめの家が建っており、俺たちはその中へ案内された。
 この村の家は、石材と土で作られていたり、木材の家だったりとバラバラだ。

 ……
 …………

 大人組は、大きめのテーブルを囲むように座っている。
 子供達は物々交換中だ。

「お待たせしました。先程の質問にお答えします」

 そう言って、1人いた手伝いにお茶を配らせている。

「なぜ亜人の村か……でしたね。そちらのお方が話されていた通り。以前は人族だけの村でした。ですが、1年以上前に街の治安が悪化しまして」

 貴族君の事件だろうな。
 と思い当たることがあったので頷く。
 他のみんなも頷いていた。

「亜人達が村から出て行くように、この村からも人族を招集していたようです。それでこの村から人族が消え、もともと居た亜人と逃げてきた亜人が、今も残っているということです」

 なるほど、と俺は頷いていたが、他の人は違うようだ。
 ここは空気を合わせるべきだろうと、腕を組んで少し俯《うつむ》いておく。

「それはわかるが、逃げるなら逃げ場の無いここではなく、ニールセンや王都もあっただろう? しかも言ってはなんだが、昔からここは魔物の出没も多い。居心地はよく無いと思うが?」

「ジル。違うのじゃ。こやつらは王都には行けぬ」
「どういうことですか?確かに以前より神人教は大きくなりましたが……」
「そうでは無いのじゃ。こやつらはハーフ、言わば半亜人なのじゃ」

 イアさんが言い切った。

「だからなんだと言うのだ」
「お待ちくださいジル様」

 執事が間にはいる。

「む」
「私も噂でしか聞きませんでしたが、半亜人を聞いたことがあります。あってはいけないことだと思いますが、人族からも……亜人からも差別されていたと」

 執事が痛ましそうに話した。

「なんだと!? 聞いてないぞ!」
「だからでしょう。私にも不確かな噂程度しか届かぬように、工作されていたのでしょう。話を聞いてやっと確信が持てました」
「むぅ」

 そこでゴンゴンと扉がノックされ、誰か入ってきた。

「お待たせー。お偉いさん方はいるー?」

 軽快な話し方は聞いたことあるような気が・・。

「もう話しはじめてますよ。半亜人の村まではわかっていただけたようです。」

 そうなのか、うんうん、頷いておこう。

「私はアルゲンだよ!みなさんよろしく!」

 挨拶してきた鳥人と目があった。

「って、なんでノールがいるの?」
「あ、お久しぶりです。お元気してました?」
「元気元気! それが私の取り柄だからねー! 話があるってダインが探してたよー」
「あ、街道で聞きました。色々あって先にブルーメンに戻ったんですよ」

 和かに会話しているとイアさんに止められた。

「待て待て!久しぶりに会ったのはわかったが、話の背骨が折れかかっているのじゃ」
「そうでした。なんか大事そうな話をしてましたね」
「しっかり大事な話なのじゃ」

 イアさんの言葉にみんなが頷いている。
 俺も頷いておこう。

「ごめんねー。じゃあ話そうか。と言っても簡単な話だよ。『長命会』は半亜人が住みやすい土地を作りたいと考えている。それだけ」

 なんだそれだけか。

「言うは簡単なのじゃ。それが出来なかった為に、今まで差別が日常だったのじゃ」

 そうなんですよ。

「ノール。いちいち反応しなくて良いぞ。話を振られたら返事すれば良いのう」

 了解です。
 わかったから、みんなこっち見ないでよ。

「おほん。『長命会』はそこを理解しているつもりです。だから今、この場所を半亜人に支配させているの。直接の道はブルーメンしか無く、今そこはトップを奪い合う犯罪都市となっている」
「どこの邪魔も入らぬうちに勢力を整えるというのじゃな?」
「そういうこと。私が知ってるだけでも、300人はここに向かっているよ」
「長生きの癖して、ここぞと言う時は動きが早いのじゃ」
「はは!あなたに言われたく無いなぁ」
「ふん」

 アルゲンさんとイアさんの会話に着いていくのがやっとだ。
 隣にいるジルさんは何か言いたそうにしているな。

「長命会か……。侯爵としては関わってはいけないのだが、何もせずにはいられぬ! 何か手伝えることはあるだろうか?」
「ちょっと思いつかないかな。こういうのは私の役じゃないんだよね」
「そうか」
「戻ったら誰かに聞いてみるよ。わかったらどこに伝えようか?」
「むぅ」

 そこでイアさんが助け舟を出した。

「ブルーメンの森なのじゃ」
「しかし、あそこは……」
「良いんじゃない? ダメなら他に作るし」

 俺、久しぶりにしゃべったんじゃない?

「そういうことなのじゃ」
「了解っと。あそこの子供達に話通しておいてね。軽い雰囲気のくせに警戒心めちゃんこ強いんだから」

 そんな強いかなぁ。

「確かにのう。しっかり伝えておこう」

 強かったらしい!

「そうだノール」
「はい?」
「ダインには早めに会いに行きなよ。大事な渡す物があるんだから」
「そうなの? ちょっと散策しておこうと思ったんだけどなぁ」
「ダーメ。後々動きやすくなるから。散策はその後でいくらでも出来るでしょ?」
「そうだね。早めに行くとするよ」

アルゲンさんは俺だけじゃなくイアさんにも。

「うんうん。イアさんも一緒に行ってペトラに会っておけば?」
「行かんぞ! ふん! まぁ、あやつから来るなら会ってやらんでも無いのじゃ」
「はは! じゃあ私は忙しいから、もう行くね。またねー」

 アルゲンさんは風のように去って行った。

「ちょっと疲れたのじゃ。少し休んでおくのじゃ」
「儂もちょっと動けぬのう」
「では私が持参のお茶をお返しに振る舞いましょう」

 俺は……。

「俺はちょっと村を見回りたいかな」
「好きに見てくださって構いませんよ。」

 放任してくれた。
 気ままに動けるので何気に嬉しい対応だ。
 じゃあ、と外に出て散策しだす。

 ……
 …………

 色々見回ってるとエルザ達を見つけた。

「やぁ、交換はうまくいった?」

「あ、もう終わったんだね。交換ばっちし!」

 炭と鉱石を見せてくれる。

「なるほど。それと野菜を交換したのね」
「私《わたくし》達の野菜は結構人気なんですのよ!」

 エルザも自慢げだ。

「あと狼少女ちゃんの持ってるのは?」
「これ? ってか私の名前また忘れたの? ルーファよ。ルーファ!」
「ごめんよルーファ」
「もう。これはお香ね。街でも人気があって高く売れるの」

 良い香りしそうだよね。

「私も好きな種類ですわ。形も星みたいで可愛いですの」

 俺も見たことある。

「八角ここにあったかー」
「ハッカク? ドライスターだよね?」
「ですわね?」
「違う名前で覚えただけだから、ははっ。それ交換してくれた人教えてくれない?」
「たくさん取らないでよ?」

 怪訝な顔をされてしまった。

「わかった」

 真面目な顔で答えておく。

「まだ広場にいると思うけど、そこに居る変わったトカゲ尻尾の人だよ」
「じゃ、さっそく行ってくるー!」
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