78 / 165
4章 国の波乱
第77話 進化? いいえ。変色です。
しおりを挟む徐々に光がおさまってくると、中から1匹の鳥が現れた。
一回り大きくなった足、鍵爪までついて凶暴になっている。
緑、青、茶、黒、白等の様々な色合いのコントラスト。それに頭部には赤の差し色まで入っている。
「なんか見たことある柄だなぁ」
ピィーーー!!
凄まじい音量を出している。
「なんて禍々しい色合いしてやがるんだ」
「声までおぞましいぞ」
「やはり本当に悪魔だったか!」
「オレらが成敗してやる!」
怖気付いていたチンピラ共も、やる気を取り戻すが、すでに鳥は動き出していた。
鮮やかな羽を振りかざし、敵を斬っていく。
そう、斬っている。
「なんて凶暴な……」
騒がしくしてると、街から続々と野次馬がやってくる。
(どうした?)
(新しく来た奴らと争ってるみたいだ。)
(いつものか。)
(それが、今回は街道の悪魔とやりあってるらしいぞ!)
(そういえば最近そんな奴もいたな。)
門の前で集まっていると、急に人が押しのけられていく。
「どくにゃ! 騒がしくし過ぎだにゃ! 門の前で何やってるにゃ!」
ミーアが部下を連れてやってくる。
(魔鴨団だぞ!)
(目をつけられるとやっかいだ。)
(早めに離れよう。)
(もうちょっと見ていたかったが)
「何の騒ぎだにゃ!」
「どうやら街道の悪魔が現れたらしいよ。そいつとゴロツキが戦ってるみたい」
「さっき話してた奴かにゃ。あちき達が成敗してやるにゃ」
「見てくるだけって言ってなかった?」
「まだ会議も終わってないのに……」
「良いから行くにゃ! かかれー!」
魔鴨団も参加して、ごちゃごちゃ。乱闘会場には総計100人程が入り乱れている。
「街道の悪魔はお前かにゃ!」
「ち、ちが! うわぁ」
「お前かー!」
「べつの……ぎゃ」
新手がやってきたか。
「ジャン君! 何か来たから気をつけるんだよ!」
「でも、そのおかげでこっちは楽になったぞ」
話す余裕が出来たみたいだな。
そこに地鳴りを伴って、何人かやってくる。
「うにゃぁぁぁ!」
「どけどけー!」
むむ!
こいつらは勢いがあるな。
「ジャン君。相手は強そうだぞ!?」
「了解!」
先頭の奴が俺に来たか。
「お前が悪魔かにゃー!!」
「悪魔じゃない!」
「む。これまでの悪魔とは違うようにゃにゃ?出来る悪魔にゃ」
「俺はただのおじさんだ!」
「王子《おーじ》とは大きく出たにゃ。ここではそんな階級も意味にゃいことを教えてやる!」
「話を聞かない奴だ。猫耳小娘め! かかってこーい!」
「首領と戦ってるやつうまいな」
「同じ棒術使いか」
「僕らが教わったのと似てるから、近い流派かもしれないな」
そこに遅れて、白い魔鴨に乗った少年エルフがやってきた。
「なかなか戻ってこないと思ったら、結構苦戦してるね。相手は誰?」
「リンドルさん! 街道の悪魔らしいですよ?」
「うまい棒術使いで、良い勝負してるんですよ」
「棒術ね。どんな相手かな?」
リンドルが目をこらすと、見たことある服が目に入った。確か作務衣とか言って、服のうまい奴が何着か作ってたっけ。
「見たことあるはずなんだけど、誰だっけなぁ?」
「リンドルさんの知り合いですか?」
「たぶんそうなんだけど……」
「じゃあ止めないと!!」
そこに斧を持った少年がやってくる。
「なんで、ノールさんと首領が戦ってるの?」
「それだ! ノールさんだよ!」
む?
「え? 呼んだ?」
「隙ありにゃ」
「……あふん」
残心する少女の映像を最後に意識が途切れる。
◆◆◆
なんと清々しい目覚めだろうか。
「良い朝だな。しかしここは?ブレーメンの探索者ギルドだな」
最悪の印象を植え付けた場所だ。
忘れるはずもない。
「今は魔鴨団のアジトの一つだよ」
「誰だお前?」
エルフの知り合いは何人かいるが、もっと大人ばかりだしな。
「僕ですよ! リンドルです」
そう言われても記憶に無い。
手帳を取り出して探してみること15分。
「あぁ。ここにあったね。確かに知り合いだ。元気してた?」
「えぇぇ。思い出してすら無いよ」
「お前も忘れてただろ。おあいこだ」
斧持った子がいる。
「オーインです……」
「ちょっと待ってね」
再び手帳を見ると書いてあった。
「あった。んー? なんか覚えてるかも?」
「数ヶ月前会ってますからね。なんで首領2人揃って他人の顔覚えないんだ……」
ふむ。
苦労しているようだが、ちゃんとストレス発散しないと、体に来るぞ?
「んー。何してたんだっけ?」
「こっちが聞きたいくらいですよ!」
「付き添いの子は、先に南村へ行きましたよ?」
「南村だ! 調子も良いからすぐに行こうか。じゃあね!」
長椅子からぴょんと降りて扉へ向かおうとするが、止められる。
「ちょっと待った!」
「何?」
「ノールさんのクラゲと鳥も連れてってください!」
「そういえば居たな」
メサとオスクを迎えに行く。
大通りに出たが、1本丸々静けさが漂っている。
「こんなに閑散としちゃったんだね。ブルーメンも大変だ」
ピッピィィィ!
ブルブル!
「メサか。それと君誰?」
鮮やかな色合い、確かあれだ。
「オーシドリ!」
ピピピィ!
「え? オスクなの?」
そこで、バシっと拱手を見せてくれた。
確かにその音と傾きはオスクだ。
「進化したのか! おめでとう! それでどんな種類なんだ? わからないの? そのうち詳しそうな人に聞いてみようか」
オスク本人もよくわからないみたいだ。
下半身は強化されているけど、足から上はほとんど色しか変わってないな。多少飾り羽増えたかな? これだと進化というより、変色だな。
ブルブル!
メサが早く行こうと急かしてくる。
「ここ飽きたの? 仕方ないな。ちょうど出発しようと思ってたところだよ」
屋台に乗っかり、オスクに出発の合図をする。
「2人ともまたねー」
「主人より強い従魔なんて……、ノールさんはどうやって捕まえたんだ?」
「いやいや、主人を守らない従魔捕まえてどうするんだよ。まだ、僕らの魔鴨は従順だよ?」
「そうだな。それよりも、やっと店を開けられるな」
「あいつら出て行ったぞー!!」
その声を合図に、建物から人がワラワラと出てくる。
「やっと行ったか」
「何でか知らねーが、ゴロツキ見分ける感がパネー」
「ここにはチンピラとゴロツキばっかりだからな」
「俺なんて、貴重な毒草全部食われちまったよ……とほほ」
「街道の悪魔はクラゲの方だったな」
「鳥は屋台で水出してきたぞ」
「俺も飲んだがうまかったな。その後クラゲに捕まったんだ」
「完全に罠だったんだよ。俺も騙されたぜ」
「しかし聞いたか? あの鳥」
「確かに聞いた」
「「「怨死鳥《おんしどり》」」」
「危険生物に2匹追加だな」
_______________
「メサもオスクも機嫌が良いな」
ピィィ!
ブルブル!
「街の人に遊んでもらったのか。良かったな。ふむ。意外と犯罪者いないのかな?」
道すがら2匹と色々話してると、寝ている間のことを教えてくれた。
日が10回昇ったらしいので、10日も寝ていたことになる。その間にジャン君が出発して、先に南村へ向かって行った。それで、暇になったメサ達は街で遊んでもらっていたということだ。
猫耳小娘も何度か見にきたらしいが、俺を見るたびに『誰こいつ』みたいなことを言ってたらしい。記憶力の乏しい小娘だ。
知り合い?あんな奴いたかなぁ…。
メモ帳を探ってみると、ミーアという名前をメサが指す。そんな子もいたような気もするが、猫耳娘の顔もオボロ気だ。次会ったら思い出すだろう。
やっと半亜人村へ到着すると、俺に待ってたのは、怒涛の依頼完了サインと愚痴だ。
来るのが遅いとか、目立つことするなとか色々言われたが、全部不可抗力だって。
そんな俺の発言は誰も聞いてくれない。
探索者達は足早に出発し、獣族達に夜まで叱られていた。
やっと解放されたかと思ったら、ここの村長さんから言われる。
「アルゲン様に手紙を書いて欲しいのです。今日中に」
やれやれ。
モテる男はつらいぜ。
***********
<オスク成分表>
真鴨真
鴨真鴨真鴨真鴨
真鴨真鴨真
鴨真
鴨真
鴨真鴨真鴨真 鴨真
鴨真鴨真鴨真鴨真鴨真鴨
真鴨真鴨真鴨真鴨真鴨
鴨鴨鴨鴨鴨鴨鴨
ダ
チ
ョ
ウ
オスク
↓進化↓
オシ
ドリ
オシドリ
オシドリオシドリ
オシドリオシ
ドリ
オシ ドリ
オシドリオシドリオシドリ
オシドリオシドリオシドリオシ
ドリオシドリオシドリオシドリ
オシドリオシドリオシドリ
ダ
チ
ョ
ウ
オスク
0
あなたにおすすめの小説
生贄にされた少年。故郷を離れてゆるりと暮らす。
水定ゆう
ファンタジー
村の仕来りで生贄にされた少年、天月・オボロナ。魔物が蠢く危険な森で死を覚悟した天月は、三人の異形の者たちに命を救われる。
異形の者たちの弟子となった天月は、数年後故郷を離れ、魔物による被害と魔法の溢れる町でバイトをしながら冒険者活動を続けていた。
そこで待ち受けるのは数々の陰謀や危険な魔物たち。
生贄として魔物に捧げられた少年は、冒険者活動を続けながらゆるりと日常を満喫する!
※とりあえず、一時完結いたしました。
今後は、短編や別タイトルで続けていくと思いますが、今回はここまで。
その際は、ぜひ読んでいただけると幸いです。
【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。
三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎
長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!?
しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。
ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。
といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。
とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない!
フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!
雑用係の回復術士、【魔力無限】なのに専属ギルドから戦力外通告を受けて追放される〜ケモ耳少女とエルフでダンジョン攻略始めたら『伝説』になった〜
霞杏檎
ファンタジー
祝【コミカライズ決定】!!
「使えん者はいらん……よって、正式にお前には戦力外通告を申し立てる。即刻、このギルドから立ち去って貰おう!! 」
回復術士なのにギルド内で雑用係に成り下がっていたフールは自身が専属で働いていたギルドから、何も活躍がないと言う理由で戦力外通告を受けて、追放されてしまう。
フールは回復術士でありながら自己主張の低さ、そして『単体回復魔法しか使えない』と言う能力上の理由からギルドメンバーからは舐められ、S級ギルドパーティのリーダーであるダレンからも馬鹿にされる存在だった。
しかし、奴らは知らない、フールが【魔力無限】の能力を持っていることを……
途方に暮れている道中で見つけたダンジョン。そこで傷ついた”ケモ耳銀髪美少女”セシリアを助けたことによって彼女はフールの能力を知ることになる。
フールに助けてもらったセシリアはフールの事を気に入り、パーティの前衛として共に冒険することを決めるのであった。
フールとセシリアは共にダンジョン攻略をしながら自由に生きていくことを始めた一方で、フールのダンジョン攻略の噂を聞いたギルドをはじめ、ダレンはフールを引き戻そうとするが、フールの意思が変わることはなかった……
これは雑用係に成り下がった【最強】回復術士フールと"ケモ耳美少女"達が『伝説』のパーティだと語られるまでを描いた冒険の物語である!
(160話で完結予定)
元タイトル
「雑用係の回復術士、【魔力無限】なのに専属ギルドから戦力外通告を受けて追放される〜でも、ケモ耳少女とエルフでダンジョン攻略始めたら『伝説』になった。噂を聞いたギルドが戻ってこいと言ってるがお断りします〜」
【完結】剣の世界に憧れて上京した村人だけど兵士にも冒険者にもなれませんでした。
もる
ファンタジー
剣を扱う職に就こうと田舎から出て来た14歳の少年ユカタは兵役に志願するも断られ、冒険者になろうとするも、15歳の成人になるまでとお預けを食らってしまう。路頭に迷うユカタは生きる為に知恵を絞る。
【一時完結】スキル調味料は最強⁉︎ 外れスキルと笑われた少年は、スキル調味料で無双します‼︎
アノマロカリス
ファンタジー
調味料…それは、料理の味付けに使う為のスパイスである。
この世界では、10歳の子供達には神殿に行き…神託の儀を受ける義務がある。
ただし、特別な理由があれば、断る事も出来る。
少年テッドが神託の儀を受けると、神から与えられたスキルは【調味料】だった。
更にどんなに料理の練習をしても上達しないという追加の神託も授かったのだ。
そんな話を聞いた周りの子供達からは大爆笑され…一緒に付き添っていた大人達も一緒に笑っていた。
少年テッドには、両親を亡くしていて妹達の面倒を見なければならない。
どんな仕事に着きたくて、頭を下げて頼んでいるのに「調味料には必要ない!」と言って断られる始末。
少年テッドの最後に取った行動は、冒険者になる事だった。
冒険者になってから、薬草採取の仕事をこなしていってったある時、魔物に襲われて咄嗟に調味料を魔物に放った。
すると、意外な効果があり…その後テッドはスキル調味料の可能性に気付く…
果たして、その可能性とは⁉
HOTランキングは、最高は2位でした。
皆様、ありがとうございます.°(ಗдಗ。)°.
でも、欲を言えば、1位になりたかった(⌒-⌒; )
備蓄スキルで異世界転移もナンノソノ
ちかず
ファンタジー
久しぶりの早帰りの金曜日の夜(但し、矢作基準)ラッキーの連続に浮かれた矢作の行った先は。
見た事のない空き地に1人。異世界だと気づかない矢作のした事は?
異世界アニメも見た事のない矢作が、自分のスキルに気づく日はいつ来るのだろうか。スキル【備蓄】で異世界に騒動を起こすもちょっぴりズレた矢作はそれに気づかずマイペースに頑張るお話。
鈍感な主人公が降り注ぐ困難もナンノソノとクリアしながら仲間を増やして居場所を作るまで。
異世界転生、防御特化能力で彼女たちを英雄にしようと思ったが、そんな彼女たちには俺が英雄のようだ。
Mです。
ファンタジー
異世界学園バトル。
現世で惨めなサラリーマンをしていた……
そんな会社からの帰り道、「転生屋」という見慣れない怪しげな店を見つける。
その転生屋で新たな世界で生きる為の能力を受け取る。
それを自由イメージして良いと言われた為、せめて、新しい世界では苦しまないようにと防御に突出した能力をイメージする。
目を覚ますと見知らぬ世界に居て……学生くらいの年齢に若返っていて……
現実か夢かわからなくて……そんな世界で出会うヒロイン達に……
特殊な能力が当然のように存在するその世界で……
自分の存在も、手に入れた能力も……異世界に来たって俺の人生はそんなもん。
俺は俺の出来ること……
彼女たちを守り……そして俺はその能力を駆使して彼女たちを英雄にする。
だけど、そんな彼女たちにとっては俺が英雄のようだ……。
※※多少意識はしていますが、主人公最強で無双はなく、普通に苦戦します……流行ではないのは承知ですが、登場人物の個性を持たせるためそのキャラの物語(エピソード)や回想のような場面が多いです……後一応理由はありますが、主人公の年上に対する態度がなってません……、後、私(さくしゃ)の変な癖で「……」が凄く多いです。その変ご了承の上で楽しんで頂けると……Mです。の本望です(どうでもいいですよね…)※※
※※楽しかった……続きが気になると思って頂けた場合、お気に入り登録……このエピソード好みだなとか思ったらコメントを貰えたりすると軽い絶頂を覚えるくらいには喜びます……メンタル弱めなので、誹謗中傷てきなものには怯えていますが、気軽に頂けると嬉しいです。※※
異世界勇者のトラック無双。トラック運転手はトラックを得て最強へと至る(トラックが)
愛飢男
ファンタジー
最強の攻撃、それ即ち超硬度超質量の物体が超高速で激突する衝撃力である。
ってことは……大型トラックだよね。
21歳大型免許取り立ての久里井戸玲央、彼が仕事を終えて寝て起きたらそこは異世界だった。
勇者として召喚されたがファンタジーな異世界でトラック運転手は伝わらなかったようでやんわりと追放されてしまう。
追放勇者を拾ったのは隣国の聖女、これから久里井戸くんはどうなってしまうのでしょうか?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる