サバイバル能力に全振りした男の半端仙人道

コアラ太

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6章 不老者とクラス召喚

第103話 出立

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 今日は嫌だった食堂へ行く。
 先生達が最後に挨拶したいらしい。


「なんだ。今日はきたのか」

 そんなセリフが聞こえる。
 食事の前に先生がみんなに話し出した。

「私達は城を出ることにします」

 訓練で力の差が痛いほどわかり、迷惑になる。
 だけど、このスキルも街では活かせることが出来そうだ。
 といった話。
 予想通り勇者君が止めに入ったが、「私を庇って勇者君が傷つくと、それを考えたら苦しい。」という言葉がトドメとなった。

「お前が何か吹き込んだのか!?」

 なんでそうなる!
 俺が言わんでもこうなっただろ!
 罪被せ好きかよ。
 一応言っておくか。


「先生ががんばって教官と戦ってたのを君が止めたよね」
「それがどうした?」
「先生ががんばれた最後のチャンスだったんだよ。勇者様が強いのはわかるけど、それを止めちゃったから」

 うっう。
 と先生が泣き出す。

「だけどあれは止めないとマズイだろう」

 これでダメなら国を超えるさ。

(あの教官って、すごい吹っ飛ばしてたよな。)
(先生はめっちゃ手加減してたんだろ?)
(だったら、もう無理じゃないか。)
(死にそうな訓練させるのか?)

「昇。やめようよ」
「メイ!先生がいなくなるんだぞ?」
「あの男が言ってようが関係ないわ。誰も守る余裕が無いのよ。それを先生が一番わかってるわ」

 どうでも良いから早くしてくれ。

「外で待ってるから、終わったら教えてくれる?」
「おい。待て!」

 勇者君が肩を掴んでくる。
 気も魔力も纏ってなかったせいか、指が食い込んでメリメリ鳴ってる!

「ああああああああああ」
 くっそ痛えええ。

「ご、ごめん」

「ふぅふぅ。お前、力ちゃんと使えないのか」

 それ以降は止められることは無かった。





「本当に嫌な奴!」

 城門の手前に座り、肩に賦活をかけて治す。

「地面を叩いても、返事無し。全く精霊いない場所なんて初めてだよ。しばらくお守りしつつ街暮らしかぁ。億劫だ」

 背中の地面から自然の気も弱いし、曇ってるし、気持ちは晴れないなぁ。

「ノールさん」
「来たか。げ」

 なんで勇者いるんだ。

「さっきは怪我させてすまなかった」
「もう謝ってたでしょ」
「でも許してもらってない」

 こいつは何か勘違いをしてないか?

「力をうまく使えなかったのを謝ってるの?」
「そ、そうだ」
「元々それは気にして無いよ」
「それなら良かった」

 全然良く無い。
 罪を擦りつけようとして堂々としてるんだからな。
 こんな感じで今まで問題にならなかったのか?
 と思ったが、あおい達の顔が渋く、なんとなく理解した。

「君達はどこに行くんだ?」
「悪いけど、力の制御が出来てからにしてくれ。それまでは会いたく無い」
「そ、そうだな」
「連絡手段は後日兵士に伝える。会える者も指名させてもらう。君以外にも上手く使えない人は見えていた。じゃあね」





「ノールさん。あの言い方は良く無いと思います」
「彼はそう言われる以上のことをやっている。ところで先生って名前は?」
「私は海野ですけど。って話を逸らさないで」
「海野さんね。あおい君、教えてあげられる?」

 俺の言葉に一瞬飛び上がったが、落ち着いて少しずつ話出す。
 立花君は、時々問題が起きた時、誰かを槍玉にあげていた。それを諭《さと》すように話して、解決した風に見せていたが、間違った話をそのまま糾弾することも少なく無いらしい。

「言ってくれてありがとう。彼にとって、俺らを引き留めようとするのはパフォーマンスなんですよ。俺が食堂でやったのと同じように、周りに見せるためのね」

 必要だと思ったからやったけど、あんなの二度とやりたくない。
 教官とのバトルは面白かったのにな。
 海野さんは全く知らなかったみたいだね。
 良い人かもしれないが、生徒から舐められすぎている。

 話してたら町に着いちゃったな。
 今までの都市と違って、城と離れている。
 なだらかな下り坂を降りて城下町に着くと、活気のある声があちこちで飛び交う。

「これからどうするんですか?」

 魚屋行っても良いけど、先立つ物は必要か。

「探索者ギルドに行こう。ちょっと八百屋のお姉さん!」

 おばさんを褒めつつ聞くと、ここでは冒険者ギルドと言っていた。
 前に何を冒険するんだ?って言われた気がするけど。
 まぁ良いか。

 近くだったので、みんなには八百屋でフルーツを食べながら待っててもらう。
 俺の分の銀貨は残り半分。
 これは必要経費なんだ!

 探索者ギルドと外観は同じ、扉開けて中も同じ。
 何が違うんだ?

 空いてるカウンターに行くと、スキンヘッドのおっさん。
 毎回おっさんばっかりだな。

「新規登録お願いします」
「お前さん。何か仕事やってたのかよ?」
「探索者ギルドでちょろっと」
「はぁ?いつの話だよ。どこかの村で残ってたのか? まぁ良いや。何が得意だ?」

 なぜか、広間のギラつきが変わって、あちこちから視線が飛んでくる。

「森の探索と採取です」

 そう言って、手持ちの薬草を渡す。

「ほうほう、これなら良いだろう。基本は探索者ギルドと変わらん。階級が増えたと思えば良い。お前には8級やるよ。これは買い取って良いんだな?」

 頷いて、お金とギルド証を貰っておく。

「また来ます」
「わかってると思うが、カウンター端の小冊子は今度読んでおけよ?」

 そそくさと出てくると、眠そうな4人を連れて、八百屋さんに聞いていた魚屋ゴンズへ向かう。
 おばさんの評判悪すぎなんだけど、ゴンズは何やったんだ?

 鉢巻にカイゼル髭の魚屋『ゴンズ』

「何か用か?用がねえなら帰れ」
「札を渡してっと。ナイトから」

(お前はアホか!もっと隠してやれよ!)

「そう言われてもなぁ。やれって言われただけだし」
「もう良いわ。後ろに回れ」

 言われた通り後ろ側に行く。
 一応魚を見たが、毒魚しか売ってない。
 評判が悪いというより、売れるのか?
 後ろ側は、木箱ばっかり。

「どこ行けば良いんだ?」
「わからないわ」
「みんなで探そう」

 漁ってもわからん。
 すると、ゴンズが見かねてやってきた。

「お前らみたいのは初めてだよ。この向こうだよ。そっちに人がいるから同じように言え。ったく、ナイトもちゃんと教えてやれよ」

 悪かったな。
 森は良いけど街中は勝手がわからない。


「あの人かな?ナイトから教えてもらいました」
「あぁ、いらっしゃい。悪いけどちょっと歩くよ」

 その言葉にみんな辟易するけど、がんばってついて行く。
 家の中を通って、地下に潜り何度も曲がって通路の端に来ると。

「ここで良いかな。城で貰った指輪を見せて」

 俺から見てもらうか。

「あぁ。やっぱり追跡されてるね。解除するよ」

 何かの針を刺すと、小さく割れる音がした。

「壊れちゃった?もう使えないのかな?」
「残念ながらね。でも、スキルはそのままのはずだよ」

 それなら良いか。

 全員分終わると、順番が逆になったことを謝って説明してくれた。
 そこで問題が起きた。

「何言ってるかわからなくなったわ」

 指輪に変換機能があったらしい。
 とりあえず、俺が通訳しつつ話を進めよう。
 言語は共通語で良かった。

 指輪に監視と精神弱化の魔法陣が付与されていたらしい。
 監視は、対象を追跡して、居場所を特定する効果。
 精神弱化は、理性が弱くなって、抑えが効かなくなってくる効果。
 地下の上は大通りになっているので、そこで消失したことになる。
 もっと説明聞きたいけど、4人とも眠そうだしな。

「とりあえず、寝る場所探したいんだけど、わかる?」
「いくら持ってる?」
「さっきの報酬が、金4かな」
「思ったより多いな。それなら家を借せれるよ。1週間で半金1ね」
「とりあえず1週間頼みます」

 案内されたのは2階建ての一軒家。
 小さな庭付きで良いじゃ無いか。

「うわぁ。一軒家住んでみたかったんだ」
「先生も憧れだったんですよぉ」
「犬飼えるかな?」
「良い絵が描けそう」

 俺たちの反応を見て案内人が話を挟んでくる。

「気に入ったみたいだね。僕はレンジャーとでも呼んでくれ。伝言は最初に会ったところへ来て誰かに言えば良い。じゃあね」
「レンジャーね。ありがとう」

 さて、しばらく言語学習かなぁ。
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