サバイバル能力に全振りした男の半端仙人道

コアラ太

文字の大きさ
133 / 165
7章 魔王と半仙人

第132話 傭兵団

しおりを挟む
 畑の借り受けが決まり、早速人手を探すことになった。

「と言っても、この国の伝手なんて無いしな。誰か知り合いがいたら良かったんだが」
「にゃああああ!」
「いた!」

 買い食いしながら、大通りを練り歩く集団を見つけた。

「おっす。数日ぶり!」
「何だおまえは!?」

 知らない奴らを連れて歩いている?
 前の奴らとは別れたのか?

「んー? おまえは!」

 こいつだけは、見たことある。少女の隣にいた青年だな。

「副長! 前の街で会った男ですよ」
「にゃ?」

 串焼きを頬張りながら、こちらをジーッと眺めている。

「んにゃ! 臭い飯にゃかま!」
「君は臭い飯食ってないだろ。それに……食べ終わってからで良いよ」

 こっちの顔まで食べかけが飛んでくる。

「それで、何か用かにゃ?」
「ちょっと人手を探しててさ、余ってたら貸してもらおうかと」
「あちきはわからんにゃ。知ってるにゃ?」

 取り巻きも知らないと首を振っている。

「それにゃら、アジトに来るにゃ」
「副長!」
「良いにゃ。それにほっとけにゃい」

 アジトというフレーズも気になるけど、人手が集まるなら良いか。
 彼女達の後に着いていくと、街の外周近くに建つ、大きめの館に辿り着いた。

「端っこだと言っても、この大きさは……良い物持ってるんだな」
「驚くにょは早い!」

 少女が扉を開け放つと、中には冒険者ギルドみたいな内装になっていた。
 中に入る前から「副長! おかえり!」「おかえりー」「今日もかわいい」「毛並みも最高ですね!」など声が飛んでくる。

「にゃははー! 仕事がんばるにゃー!」
「がんばるにゃ。じゃねー!」

 奥から聞こえる怒鳴り声。
 その声が聞こえてすぐ、使いパシリが少女に耳打ちすると、顔を青くして駆け出していく。

「え? 俺どうすれば良いの?」
「えーと……とりあえず受付に行きましょう。事情は私からも話しますので」
「あ、ありがとう」

 受付に着くと、メガネを掛けた女性が話しかけてくる。

「ようこそ」
「どうも人手を探しているようです。副長が連れて来て良いと判断しました」
「ミコ副長ですね。手続きします」

 女性は書類を取り出すと、さらさらと書き始めていく。

「身分証があればお願いします」
「え?もしかしてここってギルド?」
「コリンさん。何も説明されてないのですか?」

 女性の鋭い目が青年に突き刺さると、モジモジしつつ頷いた。

「ここは傭兵団の館ですので、依頼も受け付けています。現在は初回の客人登録という形で、身分証を頼む形となっています。ご理解いただけましたか?」
「なるほど」

 身分証を取り出して渡そうとした時に、間違って古い方を出してしまった。

「んー? こちらは」
「ごめん! 古い方だった。冒険者ギルドの方はこっち」
「いえ。しかしこれは……」
「どうかした?」

 探索者ギルドのカードを眺めてしばらくすると、カウンターの下から分厚い本を取り出した。受付嬢は、その本をパラパラと捲りながら「これじゃない。これでもない」と呟く。

「これってどういうこと?」
「僕にもわかりませんね」

 状況を掴めぬまま、5分程待たされている。暇な間、青年と話していると、あの副長のことが少しわかった。
 先ほどもあったが、ミコという名前で、猫人族の少女。元々は西方の国で傭兵業をやっていたらしいが、こちらまで派遣というか、移住してきた。
 その時に、多くの仲間を引き連れてやってきたという話。

「あった。これだ」
「あ。そちらも終わりました?」
「失礼致しました。ノール様ですね?」
「えぇ」

 もしかして探索者の方も使えたのかな?西方から来たから大丈夫だったとかかな?

「えっと。こちらの照会したところですと、我々の傭兵団の一員となっています」
「ん? 違う人じゃないか?」

 周りを見てもさっぱり。
 みんな首傾げている。
 受付も困惑した表情だが、しっかりと書いてあったと繰り返すのみ。

「とにかく、この話については師団長と話していただきたいです。あの方は、私よりわかっているかと思いますので」
「はぁ。そういうことなら」

 受付嬢は分厚い本を抱え、席を立つと俺の隣にいる青年に声をかける。

「コリン。しばらく離れるので、ここを変わってください」
「うええ!?」
「あなたが師団長に説明出来ますか?」
「了解です!」
「では、行きましょう」

 後ろに着いていきながら、カウンターを振り返りると、コリンはため息を吐いていた。
 苦労人のポジションとは大変そうだな。「頑張れよ」と心の中でエールを送る。

 3階まで上がると、どこか懐かしい気配を感じ始めた。
 知ってるような気配と、向こうからも探る感じがしている。

「師団長。古い仲間をお連れしました」
「入って良いぞ!」

 質素な部屋に、広めの机が2つ。
 部屋の隅っこに、魂の抜けた少女が倒れている。
 何があったんだ?

「やっぱりお前さんだったか!」

 ドワーフ? 獣王国にいた時も何度か見かけたけど、ここまでしっかり対峙するのは久しぶりだな。

「あ。どうもー」
「何じゃその反応は。あぁー! そうじゃった!」

 そのドワーフは1人で納得し、俺には良くわからなかった。

「あれじゃ。書いてる日記はあるか?」
「日記は2冊持ってるけど……」
「最初の方にドワーフのこと書いてないか?」
「ちょっと待ってくださいね」

 最初の方ってどこら辺かね。ドワーフ。ドワーフ。ドワーフはどこかねー?

「あった。久しぶりに見たな」
「名前は何だった?」
「ダインって書いてあるね」
「そっちじゃない方じゃ」

 そっちじゃないって、どこだ?
 パラパラとページ進めると、少し先にもドワーフがあった。

「あぁ、ノーリも居たね」
「儂じゃ! 儂がノーリじゃ!」
「えぇ? ノーリはもっと若かったよ。ダインさんならまだわかるんだけど」
「いつの話じゃ! 儂ももう200歳近くなっとる!」

 ノーリと会った年は、大地歴2104年か。

「今って何年ですか?」

 むくれてるドワーフには声をかけづらいので、受付嬢に聞く。

「えっと、大地歴ですと2255年です」
「あれ? パロ教授のところに居た時は、2200年だったはず」

 こっちに来る前のページだと、確かに2200年になっている。

「そもそも、2200年の時で儂は150歳手前じゃ」

 ぶつぶつ小言が止まらなくなって、ますますダインさんに見えてきた。

「ともかく、儂がノーリじゃ。話を進めるぞ」
「はい」
「お主は、パロ教授のところからどうやってこっちに来た?」
「何か変な召喚に巻き込まれたんですよね」

 マイナール国の召喚について話し、現状について伝える。

「3人を育ててるとなぁ。昔からガキンチョ共の面倒見とったな」
「そうでしたっけ?」
「ほれ。そこの隅っこの娘」
「副長のミコさん」
「お前の作った魔鴨団。ミーアの孫じゃ」

 日記を探って行くと、途中に書いてある。

「ブルーメンのミーアね。確かにいたけど、俺は魔鴨団作ってないですよ?」
「そこはどうでも良いわい。そんで儂のいるこの傭兵団が、その魔鴨団じゃ」

 壁をよく見ると、鴨の旗が掛けてある。
 人の腕にも鴨の腕章。
 確かにこんなマークを使ってたな。

「儂も大体の事情は飲み込めた。それで、ここに用事があったんじゃろう?」
しおりを挟む
感想 3

あなたにおすすめの小説

生贄にされた少年。故郷を離れてゆるりと暮らす。

水定ゆう
ファンタジー
 村の仕来りで生贄にされた少年、天月・オボロナ。魔物が蠢く危険な森で死を覚悟した天月は、三人の異形の者たちに命を救われる。  異形の者たちの弟子となった天月は、数年後故郷を離れ、魔物による被害と魔法の溢れる町でバイトをしながら冒険者活動を続けていた。  そこで待ち受けるのは数々の陰謀や危険な魔物たち。  生贄として魔物に捧げられた少年は、冒険者活動を続けながらゆるりと日常を満喫する!  ※とりあえず、一時完結いたしました。  今後は、短編や別タイトルで続けていくと思いますが、今回はここまで。  その際は、ぜひ読んでいただけると幸いです。

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

雑用係の回復術士、【魔力無限】なのに専属ギルドから戦力外通告を受けて追放される〜ケモ耳少女とエルフでダンジョン攻略始めたら『伝説』になった〜

霞杏檎
ファンタジー
祝【コミカライズ決定】!! 「使えん者はいらん……よって、正式にお前には戦力外通告を申し立てる。即刻、このギルドから立ち去って貰おう!! 」 回復術士なのにギルド内で雑用係に成り下がっていたフールは自身が専属で働いていたギルドから、何も活躍がないと言う理由で戦力外通告を受けて、追放されてしまう。 フールは回復術士でありながら自己主張の低さ、そして『単体回復魔法しか使えない』と言う能力上の理由からギルドメンバーからは舐められ、S級ギルドパーティのリーダーであるダレンからも馬鹿にされる存在だった。 しかし、奴らは知らない、フールが【魔力無限】の能力を持っていることを…… 途方に暮れている道中で見つけたダンジョン。そこで傷ついた”ケモ耳銀髪美少女”セシリアを助けたことによって彼女はフールの能力を知ることになる。 フールに助けてもらったセシリアはフールの事を気に入り、パーティの前衛として共に冒険することを決めるのであった。 フールとセシリアは共にダンジョン攻略をしながら自由に生きていくことを始めた一方で、フールのダンジョン攻略の噂を聞いたギルドをはじめ、ダレンはフールを引き戻そうとするが、フールの意思が変わることはなかった…… これは雑用係に成り下がった【最強】回復術士フールと"ケモ耳美少女"達が『伝説』のパーティだと語られるまでを描いた冒険の物語である! (160話で完結予定) 元タイトル 「雑用係の回復術士、【魔力無限】なのに専属ギルドから戦力外通告を受けて追放される〜でも、ケモ耳少女とエルフでダンジョン攻略始めたら『伝説』になった。噂を聞いたギルドが戻ってこいと言ってるがお断りします〜」

【完結】剣の世界に憧れて上京した村人だけど兵士にも冒険者にもなれませんでした。

もる
ファンタジー
 剣を扱う職に就こうと田舎から出て来た14歳の少年ユカタは兵役に志願するも断られ、冒険者になろうとするも、15歳の成人になるまでとお預けを食らってしまう。路頭に迷うユカタは生きる為に知恵を絞る。

【一時完結】スキル調味料は最強⁉︎ 外れスキルと笑われた少年は、スキル調味料で無双します‼︎

アノマロカリス
ファンタジー
調味料…それは、料理の味付けに使う為のスパイスである。 この世界では、10歳の子供達には神殿に行き…神託の儀を受ける義務がある。 ただし、特別な理由があれば、断る事も出来る。 少年テッドが神託の儀を受けると、神から与えられたスキルは【調味料】だった。 更にどんなに料理の練習をしても上達しないという追加の神託も授かったのだ。 そんな話を聞いた周りの子供達からは大爆笑され…一緒に付き添っていた大人達も一緒に笑っていた。 少年テッドには、両親を亡くしていて妹達の面倒を見なければならない。 どんな仕事に着きたくて、頭を下げて頼んでいるのに「調味料には必要ない!」と言って断られる始末。 少年テッドの最後に取った行動は、冒険者になる事だった。 冒険者になってから、薬草採取の仕事をこなしていってったある時、魔物に襲われて咄嗟に調味料を魔物に放った。 すると、意外な効果があり…その後テッドはスキル調味料の可能性に気付く… 果たして、その可能性とは⁉ HOTランキングは、最高は2位でした。 皆様、ありがとうございます.°(ಗдಗ。)°. でも、欲を言えば、1位になりたかった(⌒-⌒; )

備蓄スキルで異世界転移もナンノソノ

ちかず
ファンタジー
久しぶりの早帰りの金曜日の夜(但し、矢作基準)ラッキーの連続に浮かれた矢作の行った先は。 見た事のない空き地に1人。異世界だと気づかない矢作のした事は? 異世界アニメも見た事のない矢作が、自分のスキルに気づく日はいつ来るのだろうか。スキル【備蓄】で異世界に騒動を起こすもちょっぴりズレた矢作はそれに気づかずマイペースに頑張るお話。 鈍感な主人公が降り注ぐ困難もナンノソノとクリアしながら仲間を増やして居場所を作るまで。

異世界転生、防御特化能力で彼女たちを英雄にしようと思ったが、そんな彼女たちには俺が英雄のようだ。

Mです。
ファンタジー
異世界学園バトル。 現世で惨めなサラリーマンをしていた…… そんな会社からの帰り道、「転生屋」という見慣れない怪しげな店を見つける。 その転生屋で新たな世界で生きる為の能力を受け取る。 それを自由イメージして良いと言われた為、せめて、新しい世界では苦しまないようにと防御に突出した能力をイメージする。 目を覚ますと見知らぬ世界に居て……学生くらいの年齢に若返っていて…… 現実か夢かわからなくて……そんな世界で出会うヒロイン達に…… 特殊な能力が当然のように存在するその世界で…… 自分の存在も、手に入れた能力も……異世界に来たって俺の人生はそんなもん。 俺は俺の出来ること…… 彼女たちを守り……そして俺はその能力を駆使して彼女たちを英雄にする。 だけど、そんな彼女たちにとっては俺が英雄のようだ……。 ※※多少意識はしていますが、主人公最強で無双はなく、普通に苦戦します……流行ではないのは承知ですが、登場人物の個性を持たせるためそのキャラの物語(エピソード)や回想のような場面が多いです……後一応理由はありますが、主人公の年上に対する態度がなってません……、後、私(さくしゃ)の変な癖で「……」が凄く多いです。その変ご了承の上で楽しんで頂けると……Mです。の本望です(どうでもいいですよね…)※※ ※※楽しかった……続きが気になると思って頂けた場合、お気に入り登録……このエピソード好みだなとか思ったらコメントを貰えたりすると軽い絶頂を覚えるくらいには喜びます……メンタル弱めなので、誹謗中傷てきなものには怯えていますが、気軽に頂けると嬉しいです。※※

異世界勇者のトラック無双。トラック運転手はトラックを得て最強へと至る(トラックが)

愛飢男
ファンタジー
最強の攻撃、それ即ち超硬度超質量の物体が超高速で激突する衝撃力である。 ってことは……大型トラックだよね。 21歳大型免許取り立ての久里井戸玲央、彼が仕事を終えて寝て起きたらそこは異世界だった。 勇者として召喚されたがファンタジーな異世界でトラック運転手は伝わらなかったようでやんわりと追放されてしまう。 追放勇者を拾ったのは隣国の聖女、これから久里井戸くんはどうなってしまうのでしょうか?

処理中です...