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7章 魔王と半仙人
第131話 首都サルマーレ
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この国の首都は、どこかレトロな雰囲気を醸し出している。
獣王国でも、ガラスの使用量は多かったと感じていたが、ここはその比ではない。
ショーウィンドウの大きなガラス張り。
照明には色付きのガラスを使用し、教会にもステンドグラスが取り付けられている。
「予想以上にお金持ちの国だったか」
今までの都市と比べたら、そんな感想しか出てこなかった。
3人は、ちょっと懐かしげのある街並みに喜び、店のガラスに張り付いている。
「夜に壊されたりしないのかな?」
「ちっちっち。誰の国だと思ってるのさ。夜中こそ彼らの時間だよ」
確かに、ダンピール達が監視してたら、おいそれと悪いこと出来ないか。
「みんな、そろそろアポ取りに行くよ」
「実さんの知り合いの!?」
イツキには誰と言ってなかったせいか、恐れは無く、残り2人が不安そうにしている。
都市の中央に聳《そび》え立つ城は国規模からすると、少し控えめの大きさ。
近くまで来ると、門番達の姿が見えてくる。
「何用で参られた」
俺が話そうとしたところで、エリンに止められる。
「ここの王様の知り合いを見つけたんだ。合わせようと思ってね」
門番がエリンから渡された書簡を眺めると、居住まいを正し、敬礼する。
「エリン殿本人とは知らず、失礼致しました」
門番に連れられて、城壁にある広めの部屋に案内される。
しばらく待たされると、燕尾服を着た初老の男性が、若めの男を連れてやってきた。
「私《わたくし》が王様のスケジュール管理をしている執事です。以後お見知り置きを。早速ですが、ご用件をお伺いいたします。」
(執事ってこんなにカッコよかったんだ)
(あの国だと執事に会えなかったもんな)
(ダンディなおじさま……)
「お褒めいただきありがとうございます。雑談も嫌いでは無いのですが、今日は立て込んでいまして」
「ごめんごめん。王様の友達を見つけてきたから、会わせに来たんだよ。要件はこれだけ。」
「王のご友人というのは」
執事が誰かと探しているが、わからない。
しずしずと手を上げると、予想通り驚いていた。
「失礼ですが、証明出来る物はございますか?」
「証明と言ってもなぁ。思い出でも書くか」
残り少ない日記を1枚破り、初めて会った時のことを書く。
あと、食べ物を国の名前にするのはどうかと付け加えて。
「これで良いかな? 俺の友人ならわかると思う」
「ほう。これは……」
執事はそれを大事に仕舞い込むと、「近いうちに連絡します」と言い、執事見習いを残して去っていく。
「宿の手配は済ませていますので、そちらまでご案内致します」
綺麗な所作で俺たちを誘導すると、城から近い豪奢な建物に着いた。
俺の後ろで、「金無い」とコソコソ話しているが、全部ダダ漏れだ。
「ご安心を、エリン様のお連れということで、我が国が負担致しますので」
俺としてはもっと人通りの少ない、小さな小屋が良いんだが。
3人が目をキラキラさせているので断りづらい。
「今日のところはここに泊まろう」
エリンに諭されて、中に押し込まれた。
赤い絨毯に、革張りのソファ、ガラスのテーブルが広いスペースに点在してある。
壁には油絵で描かれた肖像画。
「顔が整っていてイケメンだね」
「それが王様らしいよ」
「え?」
俺のイメージのドラちゃんと全然違うな。
もしかして別人だったというオチか?
「うーん。ちょっと来る国を間違えたかもしれないな」
「大丈夫大丈夫! 会えばわかるよ」
とりあえず城からの知らせを待つだけか。
若手執事は、予定が詰まっているので、1週間は様子を見て欲しいと話していた。
そういえば、ダンディ執事も立て込んでいると言ってたな。
「とりあえず時間は空いたことだし、みんなやりたいことある?」
「おいしい物食べたいです!」
「オレも!」
「他にもおいしいのあるのかな」
各自食べ物に目が向いているようだ。
だが、肝心なことを忘れている。
「君達は、薬草のストックをしているのかな?」
「え?」「あ!」「しまった!」
我々はエリンの果物に頼り、薬草の採取を怠っていた。
つまり食事する元手が無い状況。
「今はこれだけ豪華な部屋にいるが、明日から土と草の香りが待っている!」
食べたい物を獲得するために、俺らは物を調達するんだ!
「お金なら私が持ってるけど?」
エリンの言葉に色めき立つが、それは浅はかな考えだ。
「常にエリンに付き纏ってオコボレをもらうのか? あちこちに屋台があったけど、自由に動けなくて良いのか? 夜になれば別の出店もあるんだろうなぁ」
3人は「やっぱり手持ちは必要だよね」「うん」「そうね」と理解してくれた。
俺としては材料を手に入れて、自分で作れるようにしたい。
そうなると。
「あんたもよく動きますなぁ」
「これも上手い飯を食べるため!」
麦わら帽子のおっちゃんと肩を並べ、揺れる黄色に囲まれて鎌をふるっている。
「飯食いたいなら、街で買えば良いんで無いの?」
「それだけで満足出来たら来てませんよ。俺はその先を目指してるので」
「先って店を出すのか?」
「それもありますが、麺の道を極めるために!」
「最後のは良くわからないが、がんばってくれ」
少し気持ちが昂《たかぶ》りすぎたようだ。
なぜこの畑に来ているかと言うと、無性にラーメンを作りたくなったから。
街の八百屋で、一番おいしい小麦農家を聞いたところ、近場のここを教えてもらった。
他にもキャベツ農家と猟師も聞いてきた。
野菜のみでも良いが、オークを見つけてから、チャーシューを忘れられない。
「ここが終わったら、次は猟師に会いに行かねば……。メサ! ニンニクは任せたぞ!」
ぷるぷる!
ぷるぷる。
くらげ力《りょく》も2倍になり、生産力は増えたが、まだまだ足りない。
ふと遠くにエリンの気配を感じる。
ニヤリ。
「誰か植物を成長させられる人いないかなぁ」
「呼んだ?」
「はや!」
「私に任せればすぐに成長させましょう!」
ふふん。チョロい奴め。
「メサに渡したニンニクを、増やして欲しいんだ」
「ニンニクって、これかぁ」
雲行きが悪くなったか?
「もしかして苦手だった?」
「いや、球根タイプは少し時間かかるからね。……そうだ! あの子にも手伝わせよう」
何か思いついたのか、ピューっと走り去り、いなくなってしまった。
「畑を作ろうとしたら許可入りますよね?」
「そうだなぁ。そんだらうちの空いてる場所使うか?」
「おぉ。助かります! 報酬はいかほどを?」
「出来た物の1割でどうだ? 悪品多くても良いぞ」
かなり良い条件じゃないか?
悪品入れてとか、処分してやるぞと言ってるようなもんだ。
「是非よろしくお願いします!」
「魔物を使った畑づくりは、オイラも気になるところだ。勉強させてもらうよ」
そっちが気になってたか。
ともあれ、場所は確保出来た。あとは人手をどうしようかと考えていると、遠くから徐々に大きくなる声がやってくる。
「ぁぁぁぁぁぁあああああああ!」
「連れてきたよ! この子にもやらせることにした!」
顔を青白くしたイツキがへたり込んでいる。
「そうか! イツキがやってくれるか!」
「私に任せれば、エルフやドワーフと同等。いや、それ以上に精霊と仲良くさせてみせるよ!」
何を言ってるの?畑の手伝いの話じゃないのか?
「うんうん。良くわからないけど頼んだ!」
「任された!」
こいつらには期待せずに、街で人手を探すか。
獣王国でも、ガラスの使用量は多かったと感じていたが、ここはその比ではない。
ショーウィンドウの大きなガラス張り。
照明には色付きのガラスを使用し、教会にもステンドグラスが取り付けられている。
「予想以上にお金持ちの国だったか」
今までの都市と比べたら、そんな感想しか出てこなかった。
3人は、ちょっと懐かしげのある街並みに喜び、店のガラスに張り付いている。
「夜に壊されたりしないのかな?」
「ちっちっち。誰の国だと思ってるのさ。夜中こそ彼らの時間だよ」
確かに、ダンピール達が監視してたら、おいそれと悪いこと出来ないか。
「みんな、そろそろアポ取りに行くよ」
「実さんの知り合いの!?」
イツキには誰と言ってなかったせいか、恐れは無く、残り2人が不安そうにしている。
都市の中央に聳《そび》え立つ城は国規模からすると、少し控えめの大きさ。
近くまで来ると、門番達の姿が見えてくる。
「何用で参られた」
俺が話そうとしたところで、エリンに止められる。
「ここの王様の知り合いを見つけたんだ。合わせようと思ってね」
門番がエリンから渡された書簡を眺めると、居住まいを正し、敬礼する。
「エリン殿本人とは知らず、失礼致しました」
門番に連れられて、城壁にある広めの部屋に案内される。
しばらく待たされると、燕尾服を着た初老の男性が、若めの男を連れてやってきた。
「私《わたくし》が王様のスケジュール管理をしている執事です。以後お見知り置きを。早速ですが、ご用件をお伺いいたします。」
(執事ってこんなにカッコよかったんだ)
(あの国だと執事に会えなかったもんな)
(ダンディなおじさま……)
「お褒めいただきありがとうございます。雑談も嫌いでは無いのですが、今日は立て込んでいまして」
「ごめんごめん。王様の友達を見つけてきたから、会わせに来たんだよ。要件はこれだけ。」
「王のご友人というのは」
執事が誰かと探しているが、わからない。
しずしずと手を上げると、予想通り驚いていた。
「失礼ですが、証明出来る物はございますか?」
「証明と言ってもなぁ。思い出でも書くか」
残り少ない日記を1枚破り、初めて会った時のことを書く。
あと、食べ物を国の名前にするのはどうかと付け加えて。
「これで良いかな? 俺の友人ならわかると思う」
「ほう。これは……」
執事はそれを大事に仕舞い込むと、「近いうちに連絡します」と言い、執事見習いを残して去っていく。
「宿の手配は済ませていますので、そちらまでご案内致します」
綺麗な所作で俺たちを誘導すると、城から近い豪奢な建物に着いた。
俺の後ろで、「金無い」とコソコソ話しているが、全部ダダ漏れだ。
「ご安心を、エリン様のお連れということで、我が国が負担致しますので」
俺としてはもっと人通りの少ない、小さな小屋が良いんだが。
3人が目をキラキラさせているので断りづらい。
「今日のところはここに泊まろう」
エリンに諭されて、中に押し込まれた。
赤い絨毯に、革張りのソファ、ガラスのテーブルが広いスペースに点在してある。
壁には油絵で描かれた肖像画。
「顔が整っていてイケメンだね」
「それが王様らしいよ」
「え?」
俺のイメージのドラちゃんと全然違うな。
もしかして別人だったというオチか?
「うーん。ちょっと来る国を間違えたかもしれないな」
「大丈夫大丈夫! 会えばわかるよ」
とりあえず城からの知らせを待つだけか。
若手執事は、予定が詰まっているので、1週間は様子を見て欲しいと話していた。
そういえば、ダンディ執事も立て込んでいると言ってたな。
「とりあえず時間は空いたことだし、みんなやりたいことある?」
「おいしい物食べたいです!」
「オレも!」
「他にもおいしいのあるのかな」
各自食べ物に目が向いているようだ。
だが、肝心なことを忘れている。
「君達は、薬草のストックをしているのかな?」
「え?」「あ!」「しまった!」
我々はエリンの果物に頼り、薬草の採取を怠っていた。
つまり食事する元手が無い状況。
「今はこれだけ豪華な部屋にいるが、明日から土と草の香りが待っている!」
食べたい物を獲得するために、俺らは物を調達するんだ!
「お金なら私が持ってるけど?」
エリンの言葉に色めき立つが、それは浅はかな考えだ。
「常にエリンに付き纏ってオコボレをもらうのか? あちこちに屋台があったけど、自由に動けなくて良いのか? 夜になれば別の出店もあるんだろうなぁ」
3人は「やっぱり手持ちは必要だよね」「うん」「そうね」と理解してくれた。
俺としては材料を手に入れて、自分で作れるようにしたい。
そうなると。
「あんたもよく動きますなぁ」
「これも上手い飯を食べるため!」
麦わら帽子のおっちゃんと肩を並べ、揺れる黄色に囲まれて鎌をふるっている。
「飯食いたいなら、街で買えば良いんで無いの?」
「それだけで満足出来たら来てませんよ。俺はその先を目指してるので」
「先って店を出すのか?」
「それもありますが、麺の道を極めるために!」
「最後のは良くわからないが、がんばってくれ」
少し気持ちが昂《たかぶ》りすぎたようだ。
なぜこの畑に来ているかと言うと、無性にラーメンを作りたくなったから。
街の八百屋で、一番おいしい小麦農家を聞いたところ、近場のここを教えてもらった。
他にもキャベツ農家と猟師も聞いてきた。
野菜のみでも良いが、オークを見つけてから、チャーシューを忘れられない。
「ここが終わったら、次は猟師に会いに行かねば……。メサ! ニンニクは任せたぞ!」
ぷるぷる!
ぷるぷる。
くらげ力《りょく》も2倍になり、生産力は増えたが、まだまだ足りない。
ふと遠くにエリンの気配を感じる。
ニヤリ。
「誰か植物を成長させられる人いないかなぁ」
「呼んだ?」
「はや!」
「私に任せればすぐに成長させましょう!」
ふふん。チョロい奴め。
「メサに渡したニンニクを、増やして欲しいんだ」
「ニンニクって、これかぁ」
雲行きが悪くなったか?
「もしかして苦手だった?」
「いや、球根タイプは少し時間かかるからね。……そうだ! あの子にも手伝わせよう」
何か思いついたのか、ピューっと走り去り、いなくなってしまった。
「畑を作ろうとしたら許可入りますよね?」
「そうだなぁ。そんだらうちの空いてる場所使うか?」
「おぉ。助かります! 報酬はいかほどを?」
「出来た物の1割でどうだ? 悪品多くても良いぞ」
かなり良い条件じゃないか?
悪品入れてとか、処分してやるぞと言ってるようなもんだ。
「是非よろしくお願いします!」
「魔物を使った畑づくりは、オイラも気になるところだ。勉強させてもらうよ」
そっちが気になってたか。
ともあれ、場所は確保出来た。あとは人手をどうしようかと考えていると、遠くから徐々に大きくなる声がやってくる。
「ぁぁぁぁぁぁあああああああ!」
「連れてきたよ! この子にもやらせることにした!」
顔を青白くしたイツキがへたり込んでいる。
「そうか! イツキがやってくれるか!」
「私に任せれば、エルフやドワーフと同等。いや、それ以上に精霊と仲良くさせてみせるよ!」
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