サバイバル能力に全振りした男の半端仙人道

コアラ太

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7章 魔王と半仙人

第135話 冒険者ギルド ブルンザ支部

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「ギルドに行くなんていつぶりだろー?」
「こっちに聞かれても知らないよ」

 エリンはちょくちょく話しかけてくるけど、知らないことが多い。

「里にギルサリオンが居てさ、懐かしいと思ってね」
「それがどうしてこっちに来る話になるの?」
「いや、ギルサリオンだよ? 彼ならこの国でしょ?」
「だからなんで?」

 時々こういう話がある。
 同じ長命だからと思って、知ってる程《てい》で話してくるから困るんだ。

「あー。ノールは会ったことなかったっけ?」
「会ったことないし、知らないし」
「あれだよ。ここの王様と友達のハイエルフ。」
「へー。それは初耳だな」

 よく聞いてみると、ギルサリオンという男は、昔色々な場所で落書きして遊んだ仲間らしい。今でも秘密基地に落書きが残っているとか。
 ドラちゃんもイタズラ小僧みたいな性格してたしな。ワインをキメると、すぐ悪ノリしてたっけ。お酒飲まないからその気持ちはわからないけど、楽しそうだった。

「ギルの話だと、王様の他にもう1人面白いのが居たらしいんだけど、私がきた時には出て行っちゃっててね」

 もうギルドの話はどこへ行ったのやら。それでも楽しそうに話しているから、止めるのも悪いと思ってしまう。

「ハイエルフってこんな人ばっかりなんですか?」
「アオイも覚えておくと良い。長命も500歳を超えると、曲者しかいないということを」
「その話だと、実さんにブーメランですけど、良いんですか?」
「ん?うーん。曲者ってのは他人がつける物だからね。気にすることはないさ!」

「はぁ」という気の無い言葉だけ返ってきて、その後はギルドに着くまでエリンの独奏会が続いていた。

「エリン。もう着いたよ」
「お。そうか! ここがギルドねぇ。こんな名前だっけ?」
「良いから入るよ」

 エリンを押し込み中に入ると、ギルド内の視線が一斉に集まる。
 一拍置いた後、中にいたエルフ達が一斉に跪《ひざまず》き始めた。
 他者から見ても、明らかにエリンに対して行っている行為だとわかる。張本人の表情はニコニコしているのに、不機嫌を全身から醸《かも》し出している。

「ちょっと」
「は、はい!」
「外では止めてって言ってたでしょ?」
「す、すみません!」
「次からはダメだよ?」

 一瞬でエルフ達に近付き、耳元で軽く諭しながら回る姿は、まさに女王様。

「エリンがいきなり来るから、こういうことになるんだよ」
「だって来たかったんだ! 仕方ないじゃないか!」
「もう良いから、依頼見にいこうよ。みんなも行くよ?」

 お前は何者だという視線が、痛いほど刺さってくる。それでもエリンを動かす方が先決だと思った。

「よ、ようこそ。ギルド証をおも、もももちでしょうか?」

 先程の様子が恐ろしかったのか、受付嬢の言葉がおかしくなっている。それが可哀想だったのか、後ろで見ていたコワモテ職員が変わってあげた。

「すまんな。入ってまだ浅いんだ」

(嘘だろ?)
(もう10年はやってるじゃないか)
(黙っとけ、普段から優しい受付なんだ)
(そうだそうだ)
(あの状況なら、俺でもビビるぜ)

 小声でも黙っていてあげた方が良かったな。中が静かだから、思ったより聞こえてくる。職員達にも聞こえたのか、受付嬢は顔を真っ赤にして後ろに引っ込み、コワモテの額には血管が浮き出ている。

「すまんが。ちょっと待ってくれな」
「どうぞどうぞ」

 返事をした瞬間には、カウンターを飛び越え、ヒソヒソ話をしていた奴らにゲンコツを食らわしに行っていた。
 後方から気持ちのいい音が5つ響くと、血管を薄くしつつ戻ってきた。

「待たせた。さっきのは忘れてやってくれ」
「ふうん?別に良いけど」

 コワモテの血管がまた浮き出してきた。
 今のところは、言い方だけでも気をつけて欲しかった。

「すみませんね。こいつは元から気にしてないだけなんで」
「ふぅぅぅ。お互い大変だなぁ」

 なんか同情されてしまった。俺はそこまで背負ってないんですけど、と訂正するのもな。まぁ、苦労キャラでも良いけど、問題を押し付けるのは止めて欲しい。

「それで、ギルド証はあるか?」
「はい!」

 エリンは、先程から用意していた証を置き、俺たちもそれに続く。

「ほーん。エルフだから古いのもあると思ったが、これほど古いのは初めてだな。他のは新しいやつだな」
「あれ? ノールのやつ変わってない?」

 目敏《めざと》い奴だ。コワモテも気になってチラチラ見てくるから、古い方も出してやった。

「これも……お前人族じゃないのか? 何年ものだよ」
「これでも人族だよ。長生きなだけの」

 俺の返事が面白かったのか、エリンが後ろで吹き出している。

「ぷぷ。人か疑われてるの? でも、人よりエルフに近いもんね!」
「そういう余計なのは言わなくても良いの!」

 可哀想に、一緒に来たメインの3人が置いてけぼりじゃないか。
 若干1名だけ、まだグロッキーだけど……。
 イツキよ。お前はどんな訓練してたんだ?

「若いの3人は問題無しだ。お前さんのも古いが、一応範囲内だな。特殊3級ってのも初めてだな。そんでエルフの姉ちゃんだが」
「私か! どう?」
「古すぎて確認出来ねぇわ。そいつは大事に取っておいて、一応新しいの作っとくか?」
「ダメだったかー。とりあえず作ってみようかな」

 コワモテは、「はいよ」と言うとエリンに書類とペンを渡して、裏に入って言った。

「エリンさんに作る必要あるんですか? 力や権力、お金もあるみたいですし」

 先ほどから気になっていたのかカオルが尋ねる。

「うーん。あったほうが便利かなと思って。たまに人と関わりたいんだけど、いつもの役職だと、みんな謙《へりくだ》っちゃうのよね」
「そういうもんか?」
「ふふん。そういうもんよ」

 壁の依頼表を眺めながら話していると、コワモテが戻ってきた。

「待たせたな。えっと……年齢不明って。いや、エルフだからな。あの様子だと300歳以上で良いか」

 ギルド証に書き込む際に、年齢部分を見てエリンが嬉しそうにしている。それとは違い、周りのエルフ達は驚愕している。

「ほれ。新しいギルド証だ。ランクは8にしておいたが、それで良かったか?7までなら上げられるが」
「大丈夫よ。ランクは昔から変わってない?」
「ほとんど同じだな。ただ、街ごとに変わる所もある」
「小冊子ね!」
「そういうことだ」

 話を聞くとすぐにカウンター端へ移動し、小冊子を開き出した。

「みんなもいらっしゃい!」
「「「はい」」」

 遠目で見ても、キラキラした目で一番子供っぽい。

「俺もいろんなエルフを見てきたが、あそこまでぶっ飛んだ奴は初めてだな」
「むしろ、俺は一般的なエルフとあまり関わってないかもしれない……」
「それは、ご苦労さん」

 色々あったが、話せるギルド員と知り合いになれたのは良かった。

「職員さんの名前を聞いても良いですか?」
「言ってなかったな。俺はマーカリスだ。よろしく」

「ノール! いつまで待たせるんだ!」

 ぷんすこ怒るエリンが見えた。

「じゃあこれで」
「良い依頼無かったら来いよ。良いの見繕ってやる」

 手を振って、エリスの元へ向かう。
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