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7章 魔王と半仙人
第136話 採取依頼1
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「どの依頼が良いの?」
「エリン。この子達がメインなんだから、邪魔しちゃダメだよ」
「ごめんごめん」
俺たちの会話を気にせず、3人はどの依頼が良いか話し合っている。
「まずは簡単なものからやったほうが良いと思う」
「いやいや、薬草自体は結構覚えたんだ。少し難易度高くても」
「私はペロちゃんの食料も獲りたい」
ペロちゃんは、カオルの使役してる鉄トカゲ。良く食べるからペロちゃんと名付けた。
肝心の依頼は、決まらずまだ話し合っている。
「実さんはどう思いますか?」
「え? どうした?」
「だから! どんな依頼を受けたら良いかです!」
「自分が出来る依頼にしたら良いよ」
あれ? 俺の回答間違ってた?
「いや、どの依頼が出来るか話し合ってたんですけど、まとまらなくて」
ん? まとめないといけないのか?
「いくつも受けたら良いじゃん。別々に受けても良いし」
大口を開けてアホ面を晒してるぞ。
「まさかの全部取りとは思いませんでした」
「そうだよな。よくよく見たら、依頼も数日あったりするし」
「実さん達も着いてくるから、少しは無茶出来ますね」
無茶はしないで欲しい!
エリンの面倒だけで手一杯だよ。
「決まったようだし、依頼確認しようか」
マーカリスのところに依頼を持っていくと、すんなり受諾してくれた。
「そんなあっさりで良いの?」
「お前、特殊でも3級じゃねーか。このくらい出来ないとなれねーよ」
「そっか。自分が3級なの忘れてた」
「ふーん。やっぱお前もそっち側っぽいな」
それはどういうことだ?
「まぁ、依頼に関しちゃ信頼できるってことだ! 噂じゃ昔のギルドメンバーの方が優秀だって言われている。結果で見せてくれよ?」
「俺とエリンは付き添いだよ。というわけで、3人共がんばってくれ」
「「「はーい」」」
彼らの選んできた依頼は2つ。
元気草の採取と、発光苔の採取。
「元気草? 聞いたことないけど、どんなやつ?」
「前に実さんから教えてもらったんですけど、名前が違うんです。えっと……」
アオイに見せてもらった冊子を覗くと、まんま癒し草だった。
「名前変わっちゃったのか? 地域が違うと変わることもあるからなぁ。そっちは良いとして、発光苔か」
「こっちも知ってますか?」
「前に見たことあるけど、一応マーカリスに聞いてみよう」
再びカウンターに戻り話を聞くと、湿気のある暗い場所を好んでいるみたいなので、以前洞窟で見たものと同系統の種類だろう。
依頼を受諾し、出発する。
元気草は、そこら中に生えているので、状態の良いものを選んで採取出来ている。
「発光苔も自分たちで探してみたら?」
元気草に期限は無いし、発光苔の依頼は3日も猶予があるので、遅くなっても構わない。
3人で予測を立てながら探っていき、年長2人は後に着いていく。
「ノールは、普段どうやって探しているの?」
「俺は、地形の起伏と生態から予想して、怪しい場所を探る感じ。エリンは?」
「私は魔力で形を見ちゃうかなー」
そんなの、エリンくらい魔力が無いと出来ない芸当だぞ。全く参考にならない。むしろその魔力で薬草育てた方が得じゃないか?
「近場にあればな。3人も俺も無理だよ」
「ノールは……別の方法で出来そうだけどね?」
「生態調査も趣味だから、今の方が楽しいのさ」
そうこう話していると、だんだん森が深くなって来た。
持っていた枝で、薮や枝を払いながら進む。
「世界樹の枝をそんな風に使うの……」
「え? ダメだった? 結構便利なんだけど」
「嫌がってないから良いんじゃ無い? でも、堅物のエルフが発狂しそうだね!」
発狂とか言いながら楽しそうな顔するのやめた方が良いぞ。
「ペロちゃんどうかした?」
「何かいましたか?」
「敵か?」
ペロ君の反応に呼応して、3人が身構える。
数秒すると、木々の向こうから元凶が現れた。口に収まらない程の長い牙を携《たずさ》えた虎が2体。ノッシノッシと地を踏みしめながら向かってくる姿は、完全にこちらを下に見ている。
「お、おぉ! こいつは大物だな!」
「カオルさん! どうする!?」
「ペロ! いけるのね? みんなで倒しましょう!」
物怖じしないペロを見て、3人は倒す覚悟を決める。2人ずつに別れ、左右に展開すると、挟み込む形になった。
エリンは、イツキとアオイのペア。俺は、カオルとペロの補助にまわる。
何の合図も無しに、2体の虎がそれぞれ飛びかかり、こちらの思惑通り別れてくれる。
ペロに狙いを付けて爪を振りかぶるが、金属音だけ響かせて、体当たりの反撃を食らっている。戦闘面で見ても、ペロは優秀だった。
「良い調子! もう少し押さえてて!」
ペロが虎に乗っかっている間に、カオルは腰から棘付きのメイスを取り出す。虎の視界から逸れるように移動すると、激しく頭を振っているにもかかわらず、ピンポイントに一本の牙へぶち当てる。
「ぎゃああああ!」
この声はカオル。牙に当てたのは良かったが、頑丈だったせいか、折れずに首が一回転してしまった。そのせいで自分に精神的にダメージを負ってしまう。
向こう側の戦闘も、俺が見た時には、アオイの振るう鉄棍が直撃していたタイミング。あとは、脳震盪を起こしている虎にトドメを刺すだけ。
「お、おぉぉ。」
鉈を持ったイツキが躊躇している。
「うーん。やっぱり僕がやるよ」
アオイが鉈を受け取ると、綺麗に脊柱の関節を狙って叩き落とした。
下手すると俺よりうまいんじゃないか?
「イツキは殺しに慣れないね」
「すまん。なんかやっちゃダメな気持ちになったんだ」
俺と同じタイプか。だけど、必要な時はやらないと困るぞ。
「はっはっは! エリン先生が鍛えてあげよう!」
「えぇ!? 今でも辛いのに? これ以上!?」
「遠慮したくて良いよ! 私が教えればソードタイガー程度なんでもないぞ?」
こいつソードタイガーって言うのか。確かに牙は鋭くて剣にも見える。
ふと顔を上げると、またアオイがむくれた顔をしている。上手く倒した後なのに、何が不満なのか。
「エリン。イツキの瞑想時間が無くなるから、やりすぎは困るぞ?」
「あー、そっかぁ。人族はそれが必要だったね」
横から「助かった」と聞こえてきたが、楽になるわけじゃない。とりあえず、手が止まっているので解体を進めさせる。イツキも解体は自分から出来ていた。
「これでペロちゃんの食料はしばらく平気そうです!」
嬉しそうな顔で、取り分けた肉を包んみ、内臓はペロがその場で食べていた。
「この牙は持って帰ろうか」
鋭さも良いので、売れるだろう。世界樹の枝でペシペシ叩いたらすぐに折れた。こいつの万能さは助かるね。
「ちょっと待ってね。すぐに骨埋めちゃうから」
すぐさま取り掛かろうとしたら、全員参加することになった。骨を埋めたら手を合わせて祈る。
「ノール達はそうやるんだ」
「エリンは違うのか?」
「私たちは歌うんだよー」
そう言った後に、エリンが歌い出すと、森の精霊達が集まり出した。骨の埋まった場所の周りで踊り出すと、周囲に芽が出始める。ほんの数十秒だったが、埋めた場所は草花が生い茂っていた。
「ははぁ。そういうやり方もあるのか……」
この方法も良いな。やっぱりイツキも覚えた方が良いかな?
「ねぇ。イツキ」
「え? どうした?」
「やっぱりエリンに教えてもらう?」
「えぇぇぇぇ!?」
響いた声の後、エリンのニヤつく顔とアオイの不機嫌な顔が、視界に映っていた。
「エリン。この子達がメインなんだから、邪魔しちゃダメだよ」
「ごめんごめん」
俺たちの会話を気にせず、3人はどの依頼が良いか話し合っている。
「まずは簡単なものからやったほうが良いと思う」
「いやいや、薬草自体は結構覚えたんだ。少し難易度高くても」
「私はペロちゃんの食料も獲りたい」
ペロちゃんは、カオルの使役してる鉄トカゲ。良く食べるからペロちゃんと名付けた。
肝心の依頼は、決まらずまだ話し合っている。
「実さんはどう思いますか?」
「え? どうした?」
「だから! どんな依頼を受けたら良いかです!」
「自分が出来る依頼にしたら良いよ」
あれ? 俺の回答間違ってた?
「いや、どの依頼が出来るか話し合ってたんですけど、まとまらなくて」
ん? まとめないといけないのか?
「いくつも受けたら良いじゃん。別々に受けても良いし」
大口を開けてアホ面を晒してるぞ。
「まさかの全部取りとは思いませんでした」
「そうだよな。よくよく見たら、依頼も数日あったりするし」
「実さん達も着いてくるから、少しは無茶出来ますね」
無茶はしないで欲しい!
エリンの面倒だけで手一杯だよ。
「決まったようだし、依頼確認しようか」
マーカリスのところに依頼を持っていくと、すんなり受諾してくれた。
「そんなあっさりで良いの?」
「お前、特殊でも3級じゃねーか。このくらい出来ないとなれねーよ」
「そっか。自分が3級なの忘れてた」
「ふーん。やっぱお前もそっち側っぽいな」
それはどういうことだ?
「まぁ、依頼に関しちゃ信頼できるってことだ! 噂じゃ昔のギルドメンバーの方が優秀だって言われている。結果で見せてくれよ?」
「俺とエリンは付き添いだよ。というわけで、3人共がんばってくれ」
「「「はーい」」」
彼らの選んできた依頼は2つ。
元気草の採取と、発光苔の採取。
「元気草? 聞いたことないけど、どんなやつ?」
「前に実さんから教えてもらったんですけど、名前が違うんです。えっと……」
アオイに見せてもらった冊子を覗くと、まんま癒し草だった。
「名前変わっちゃったのか? 地域が違うと変わることもあるからなぁ。そっちは良いとして、発光苔か」
「こっちも知ってますか?」
「前に見たことあるけど、一応マーカリスに聞いてみよう」
再びカウンターに戻り話を聞くと、湿気のある暗い場所を好んでいるみたいなので、以前洞窟で見たものと同系統の種類だろう。
依頼を受諾し、出発する。
元気草は、そこら中に生えているので、状態の良いものを選んで採取出来ている。
「発光苔も自分たちで探してみたら?」
元気草に期限は無いし、発光苔の依頼は3日も猶予があるので、遅くなっても構わない。
3人で予測を立てながら探っていき、年長2人は後に着いていく。
「ノールは、普段どうやって探しているの?」
「俺は、地形の起伏と生態から予想して、怪しい場所を探る感じ。エリンは?」
「私は魔力で形を見ちゃうかなー」
そんなの、エリンくらい魔力が無いと出来ない芸当だぞ。全く参考にならない。むしろその魔力で薬草育てた方が得じゃないか?
「近場にあればな。3人も俺も無理だよ」
「ノールは……別の方法で出来そうだけどね?」
「生態調査も趣味だから、今の方が楽しいのさ」
そうこう話していると、だんだん森が深くなって来た。
持っていた枝で、薮や枝を払いながら進む。
「世界樹の枝をそんな風に使うの……」
「え? ダメだった? 結構便利なんだけど」
「嫌がってないから良いんじゃ無い? でも、堅物のエルフが発狂しそうだね!」
発狂とか言いながら楽しそうな顔するのやめた方が良いぞ。
「ペロちゃんどうかした?」
「何かいましたか?」
「敵か?」
ペロ君の反応に呼応して、3人が身構える。
数秒すると、木々の向こうから元凶が現れた。口に収まらない程の長い牙を携《たずさ》えた虎が2体。ノッシノッシと地を踏みしめながら向かってくる姿は、完全にこちらを下に見ている。
「お、おぉ! こいつは大物だな!」
「カオルさん! どうする!?」
「ペロ! いけるのね? みんなで倒しましょう!」
物怖じしないペロを見て、3人は倒す覚悟を決める。2人ずつに別れ、左右に展開すると、挟み込む形になった。
エリンは、イツキとアオイのペア。俺は、カオルとペロの補助にまわる。
何の合図も無しに、2体の虎がそれぞれ飛びかかり、こちらの思惑通り別れてくれる。
ペロに狙いを付けて爪を振りかぶるが、金属音だけ響かせて、体当たりの反撃を食らっている。戦闘面で見ても、ペロは優秀だった。
「良い調子! もう少し押さえてて!」
ペロが虎に乗っかっている間に、カオルは腰から棘付きのメイスを取り出す。虎の視界から逸れるように移動すると、激しく頭を振っているにもかかわらず、ピンポイントに一本の牙へぶち当てる。
「ぎゃああああ!」
この声はカオル。牙に当てたのは良かったが、頑丈だったせいか、折れずに首が一回転してしまった。そのせいで自分に精神的にダメージを負ってしまう。
向こう側の戦闘も、俺が見た時には、アオイの振るう鉄棍が直撃していたタイミング。あとは、脳震盪を起こしている虎にトドメを刺すだけ。
「お、おぉぉ。」
鉈を持ったイツキが躊躇している。
「うーん。やっぱり僕がやるよ」
アオイが鉈を受け取ると、綺麗に脊柱の関節を狙って叩き落とした。
下手すると俺よりうまいんじゃないか?
「イツキは殺しに慣れないね」
「すまん。なんかやっちゃダメな気持ちになったんだ」
俺と同じタイプか。だけど、必要な時はやらないと困るぞ。
「はっはっは! エリン先生が鍛えてあげよう!」
「えぇ!? 今でも辛いのに? これ以上!?」
「遠慮したくて良いよ! 私が教えればソードタイガー程度なんでもないぞ?」
こいつソードタイガーって言うのか。確かに牙は鋭くて剣にも見える。
ふと顔を上げると、またアオイがむくれた顔をしている。上手く倒した後なのに、何が不満なのか。
「エリン。イツキの瞑想時間が無くなるから、やりすぎは困るぞ?」
「あー、そっかぁ。人族はそれが必要だったね」
横から「助かった」と聞こえてきたが、楽になるわけじゃない。とりあえず、手が止まっているので解体を進めさせる。イツキも解体は自分から出来ていた。
「これでペロちゃんの食料はしばらく平気そうです!」
嬉しそうな顔で、取り分けた肉を包んみ、内臓はペロがその場で食べていた。
「この牙は持って帰ろうか」
鋭さも良いので、売れるだろう。世界樹の枝でペシペシ叩いたらすぐに折れた。こいつの万能さは助かるね。
「ちょっと待ってね。すぐに骨埋めちゃうから」
すぐさま取り掛かろうとしたら、全員参加することになった。骨を埋めたら手を合わせて祈る。
「ノール達はそうやるんだ」
「エリンは違うのか?」
「私たちは歌うんだよー」
そう言った後に、エリンが歌い出すと、森の精霊達が集まり出した。骨の埋まった場所の周りで踊り出すと、周囲に芽が出始める。ほんの数十秒だったが、埋めた場所は草花が生い茂っていた。
「ははぁ。そういうやり方もあるのか……」
この方法も良いな。やっぱりイツキも覚えた方が良いかな?
「ねぇ。イツキ」
「え? どうした?」
「やっぱりエリンに教えてもらう?」
「えぇぇぇぇ!?」
響いた声の後、エリンのニヤつく顔とアオイの不機嫌な顔が、視界に映っていた。
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