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メアリアを寝室に連れ込んだエドワードは、彼女を自分の腿の上に、向かい合う形で座らせた。そのまま、奪うような熱い口づけを贈る。
メアリアの太ももには、エドワードの隠しきれない熱い昂りが確かに当たっていた。
(いよいよ、なのね……)
メアリアは期待と緊張で、胸の鼓動が早まるのを感じた。
「エドワード様、その……ベッドへ、行きませんか?」
「何だリア、さっきまで『日がまだ高い』と言っていたではないか。夜まで我慢できないのか?」
「はい……。私、エドワード様の本当のものになりたいのです」
それは、メアリアにとって一世一代の勇気を振り絞った言葉だった。
しかし、エドワードの顔色は一瞬で強張った。
「……すまない。今は、その気分ではないんだ」
彼はそう言い捨てると、メアリアを突き放すように立ち上がり、足早に部屋を出ていってしまった。
後に残されたメアリアは、その場で石のように固まった。
(……拒絶、されたの?)
脳裏に、元夫のことが不吉に蘇る。彼も結婚前は熱く愛を語っていた。それなのに、手に入れた瞬間に私を疎み、魔女と呼んで捨てた。
エドワード様も、同じなの?
私が気位ばかり高くて、可愛げのない女だから?
勝手にクッキーを焼いて、周りに振りまいたのがいけなかったの?
それとも、一度血を吸ってしまえば、もう興味を失うタイプなの……?
メアリアには、何も分からなかった。追いかける力もなく、彼女はベッドに飛び込み、声を殺して涙を流すしかなかった。
部屋を飛び出したエドワードは、激しい自己嫌悪に混乱していた。
メアリアが心を開き、自分を求めてくれたことは、本来なら狂喜乱舞するほど嬉しいはずだった。
しかし、同時に冷徹な思考が彼を苛む。
(彼女が俺を求めているのは、俺を愛しているからではない。吸血行為によって、本能を狂わされたからに過ぎないのではないか……?)
吸血族の牙が与える快楽は、この世の何よりも甘美だ。
昨夜の彼女は、あまりの快感に絶頂し、気を失ってしまうほどだった。側近が言っていた通り、その行為は女性を虜にする吸血鬼の機能そのものなのだ。
(メアリアはあの快楽を求めているだけだとしたら、俺は……)
彼女を愛しているからこそ、快楽という名の「毒」で繋がるのが虚しかった。
本当は、目覚めなければ手を出すつもりはなかった。だが、あの美しいアメジストの瞳を見てしまったら、欲情を抑えきれなかった。再会のタイミングが、あまりにも残酷すぎた。
「殿下、壁が壊れます」
冷ややかな側近の声に、エドワードはハッと我に返った。
いつの間にか廊下の壁を何度も拳で殴りつけており、頑丈な石壁に無惨なひびが入っていた。側近が指を鳴らすと、魔法で壁が修復されていく。
「何を躊躇っておられるのですか?」
「……お前には、分かるまい」
「分かりませんね。それに殿下、貴方は貴重な吸血族の純血種です。血筋を守る責務がある。あの人間の娘との結婚は、貴方にとって破滅でしかありません。弟君である第二王子に、政権を譲るおつもりですか?」
「……今は、そんなことは考えたくない」
「いつまでも子供のようなことを言わないでください」
側近の正論が、エドワードの胸を抉る。
帝国の国民の大半は、吸血の力を失った混血種だ。それゆえ彼らはメアリアを歓迎したが、帝国王家は「雑種」を何よりも忌み嫌う。このことが父や母、野心家の弟たちに知られれば、身分を剥奪される恐れすらある。
そんなことは分かっている。だが、今はただ、現実を直視したくなかった。
側近は深い溜息を吐くと、一通の封書を差し出した。
「……殿下、気分転換になるかは分かりませんが」
それは隣国の新聞の号外だった。そこには、メアリアの元夫である侯爵が身分を剥奪され、不倫相手とともに島流しになったという記事が、大きく綴られていた。
メアリアの太ももには、エドワードの隠しきれない熱い昂りが確かに当たっていた。
(いよいよ、なのね……)
メアリアは期待と緊張で、胸の鼓動が早まるのを感じた。
「エドワード様、その……ベッドへ、行きませんか?」
「何だリア、さっきまで『日がまだ高い』と言っていたではないか。夜まで我慢できないのか?」
「はい……。私、エドワード様の本当のものになりたいのです」
それは、メアリアにとって一世一代の勇気を振り絞った言葉だった。
しかし、エドワードの顔色は一瞬で強張った。
「……すまない。今は、その気分ではないんだ」
彼はそう言い捨てると、メアリアを突き放すように立ち上がり、足早に部屋を出ていってしまった。
後に残されたメアリアは、その場で石のように固まった。
(……拒絶、されたの?)
脳裏に、元夫のことが不吉に蘇る。彼も結婚前は熱く愛を語っていた。それなのに、手に入れた瞬間に私を疎み、魔女と呼んで捨てた。
エドワード様も、同じなの?
私が気位ばかり高くて、可愛げのない女だから?
勝手にクッキーを焼いて、周りに振りまいたのがいけなかったの?
それとも、一度血を吸ってしまえば、もう興味を失うタイプなの……?
メアリアには、何も分からなかった。追いかける力もなく、彼女はベッドに飛び込み、声を殺して涙を流すしかなかった。
部屋を飛び出したエドワードは、激しい自己嫌悪に混乱していた。
メアリアが心を開き、自分を求めてくれたことは、本来なら狂喜乱舞するほど嬉しいはずだった。
しかし、同時に冷徹な思考が彼を苛む。
(彼女が俺を求めているのは、俺を愛しているからではない。吸血行為によって、本能を狂わされたからに過ぎないのではないか……?)
吸血族の牙が与える快楽は、この世の何よりも甘美だ。
昨夜の彼女は、あまりの快感に絶頂し、気を失ってしまうほどだった。側近が言っていた通り、その行為は女性を虜にする吸血鬼の機能そのものなのだ。
(メアリアはあの快楽を求めているだけだとしたら、俺は……)
彼女を愛しているからこそ、快楽という名の「毒」で繋がるのが虚しかった。
本当は、目覚めなければ手を出すつもりはなかった。だが、あの美しいアメジストの瞳を見てしまったら、欲情を抑えきれなかった。再会のタイミングが、あまりにも残酷すぎた。
「殿下、壁が壊れます」
冷ややかな側近の声に、エドワードはハッと我に返った。
いつの間にか廊下の壁を何度も拳で殴りつけており、頑丈な石壁に無惨なひびが入っていた。側近が指を鳴らすと、魔法で壁が修復されていく。
「何を躊躇っておられるのですか?」
「……お前には、分かるまい」
「分かりませんね。それに殿下、貴方は貴重な吸血族の純血種です。血筋を守る責務がある。あの人間の娘との結婚は、貴方にとって破滅でしかありません。弟君である第二王子に、政権を譲るおつもりですか?」
「……今は、そんなことは考えたくない」
「いつまでも子供のようなことを言わないでください」
側近の正論が、エドワードの胸を抉る。
帝国の国民の大半は、吸血の力を失った混血種だ。それゆえ彼らはメアリアを歓迎したが、帝国王家は「雑種」を何よりも忌み嫌う。このことが父や母、野心家の弟たちに知られれば、身分を剥奪される恐れすらある。
そんなことは分かっている。だが、今はただ、現実を直視したくなかった。
側近は深い溜息を吐くと、一通の封書を差し出した。
「……殿下、気分転換になるかは分かりませんが」
それは隣国の新聞の号外だった。そこには、メアリアの元夫である侯爵が身分を剥奪され、不倫相手とともに島流しになったという記事が、大きく綴られていた。
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