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新聞を手に取ったエドワードは、この朗報をいち早く伝えたい一心で寝室へと足早に戻った。
「リア! この新聞を……メアリア!?」
ベッドに潜って眠ってしまったのかと思ったが、顔を上げたメアリアは、驚くほど目を泣き腫らしていた。
「どうしたんだ、俺の愛しいルナ。何がそんなに悲しい、誰がお前を泣かせた」
「エドワード様に、置いていかれたと思ったので……」
「すまん……。そんなに辛い思いをさせるとは思わなかったんだ」
メアリアがこれほどまで塞ぎ込み、傷つくとは予想だにしなかったエドワードは、狼狽してあわあわと彼女を抱き寄せた。
「……もう、私に飽きてしまわれたのですか?」
「まさか! 飽きるわけがなかろう!」
大粒の涙を流し続けるメアリアを、エドワードは壊れ物を扱うように強く抱きしめた。
「では、私の何に怒っていらっしゃるのですか?」
「リアに対して怒ることなど、何一つない。ただ……俺自身に腹が立っているだけだ」
「どういうことですか……?」
メアリアは潤んだ瞳でエドワードを見つめる。彼は言いづらそうに視線を泳がせた。
「その……俺は吸血族だ。その性質上、俺に血を吸われた女性は俺に溺れる。リアもそうだろう? またあの快楽が欲しいと、俺に求めてくれた。……それが、俺を愛しているからではなく、種族の抗えない本能によるものだとしたらと思うと、虚しくて堪えられなかったんだ」
「私は……」
(ただ、エドワード様に求められることが嬉しくて。それに精一杯応えたくて。……好きだから、一つになりたいと願っただけなのに)
自分が感じた熱は、ただの「機能」によるものだったのだろうか。メアリアの心に不安がよぎる。しかし、エドワードは彼女をさらに強く抱きしめて続けた。
「それにな、リア。俺がお前を妃に選べば、俺は帝国の正当な後継者にはなれないかもしれない。たとえ王になれたとしても、お前との子供を嫡子にすることは許されないだろう……。それでも、俺はお前が欲しい。何を引き換えにしても、お前と一緒にいたいんだ。……俺が王でなくなっても、お前は俺の側にいてくれるか?」
「ええ……。私は、貴方が帝国の王子だから想いを寄せたわけではありません。たとえ貧しい暮らしになろうとも、変わらず私を愛してくださるなら、地の果てまでついて行きます」
「リア……。快楽でお前を縛り、運命を狂わせてしまう俺を許してくれ」
エドワードは愛おしさに耐えかねるように、メアリアと深い口づけを交わした。
「……あの、そういえば何か朗報があったのでは?」
「そうだった! これを見てくれ」
エドワードに手渡された新聞を、メアリアはおずおずと受け取った。そこには大きな見出しで、彼女を陥れた侯爵の爵位剥奪と島流し、そして不倫相手の女も同罪に処されたことが克明に記されていた。
「……あ……」
文字を追うメアリアの指先が、微かに震える。記事には、新王となった彼女の兄が、メアリアへの不当な扱いと冤罪を公式に謝罪し、彼女を「国の至宝であった」と称えていることも書かれていた。
「お兄様が、私のためにここまで……」
「お前の兄上は、お前が死んだと思って死に物狂いで真相を暴いたようだ。……もっとも、俺が奪い去ったことに気づいてからは、軍を動かそうと息巻いているようだがな」
エドワードは少しだけ困ったように、けれどどこか誇らしげに口角を上げた。
「リア、お前を苦しめた連中はもういない。お前を魔女と罵った過去も、もうお前の敵ではないんだ。……それでも、お前は俺を選んでくれるか? 王の座も、何不自由ない世継ぎの地位も、お前の愛に比べれば俺には塵に等しい」
メアリアは読み終えた新聞をそっと置き、もう震えていない手でエドワードの首に腕を回した。復讐がしたかったわけではない。ただ、誰かに自分を信じてほしかった。そして今、目の前の男はすべてを投げ打って自分を愛していると言ってくれている。
「エドワード様。私は……たとえ明日から王宮を追われ、森の小屋で暮らすことになったとしても、貴方の側を離れません。……私の心は、本能ではなく、私の意志で貴方を求めているのですから」
瞳に宿っているのは悲しみではなく、愛する人を守ろうとする強い「女王」の輝きだった。
「……リア。お前は、本当に強くて……残酷なほど愛おしい女だ」
エドワードは今度はもう、躊躇わなかった。
彼女をシーツの上へと優しく押し倒し、吸血族としての渇望と、一人の男としての情熱をすべて込めて、その唇を塞ぐ。
窓の外は茜色の夕焼け。二人を祝福するように、部屋の中を赤く、熱く照らしていた。
帝国の王位よりも、故郷の称号よりも。
今、この腕の中に流れる熱こそが、二人にとっての唯一の真実だった。
「リア! この新聞を……メアリア!?」
ベッドに潜って眠ってしまったのかと思ったが、顔を上げたメアリアは、驚くほど目を泣き腫らしていた。
「どうしたんだ、俺の愛しいルナ。何がそんなに悲しい、誰がお前を泣かせた」
「エドワード様に、置いていかれたと思ったので……」
「すまん……。そんなに辛い思いをさせるとは思わなかったんだ」
メアリアがこれほどまで塞ぎ込み、傷つくとは予想だにしなかったエドワードは、狼狽してあわあわと彼女を抱き寄せた。
「……もう、私に飽きてしまわれたのですか?」
「まさか! 飽きるわけがなかろう!」
大粒の涙を流し続けるメアリアを、エドワードは壊れ物を扱うように強く抱きしめた。
「では、私の何に怒っていらっしゃるのですか?」
「リアに対して怒ることなど、何一つない。ただ……俺自身に腹が立っているだけだ」
「どういうことですか……?」
メアリアは潤んだ瞳でエドワードを見つめる。彼は言いづらそうに視線を泳がせた。
「その……俺は吸血族だ。その性質上、俺に血を吸われた女性は俺に溺れる。リアもそうだろう? またあの快楽が欲しいと、俺に求めてくれた。……それが、俺を愛しているからではなく、種族の抗えない本能によるものだとしたらと思うと、虚しくて堪えられなかったんだ」
「私は……」
(ただ、エドワード様に求められることが嬉しくて。それに精一杯応えたくて。……好きだから、一つになりたいと願っただけなのに)
自分が感じた熱は、ただの「機能」によるものだったのだろうか。メアリアの心に不安がよぎる。しかし、エドワードは彼女をさらに強く抱きしめて続けた。
「それにな、リア。俺がお前を妃に選べば、俺は帝国の正当な後継者にはなれないかもしれない。たとえ王になれたとしても、お前との子供を嫡子にすることは許されないだろう……。それでも、俺はお前が欲しい。何を引き換えにしても、お前と一緒にいたいんだ。……俺が王でなくなっても、お前は俺の側にいてくれるか?」
「ええ……。私は、貴方が帝国の王子だから想いを寄せたわけではありません。たとえ貧しい暮らしになろうとも、変わらず私を愛してくださるなら、地の果てまでついて行きます」
「リア……。快楽でお前を縛り、運命を狂わせてしまう俺を許してくれ」
エドワードは愛おしさに耐えかねるように、メアリアと深い口づけを交わした。
「……あの、そういえば何か朗報があったのでは?」
「そうだった! これを見てくれ」
エドワードに手渡された新聞を、メアリアはおずおずと受け取った。そこには大きな見出しで、彼女を陥れた侯爵の爵位剥奪と島流し、そして不倫相手の女も同罪に処されたことが克明に記されていた。
「……あ……」
文字を追うメアリアの指先が、微かに震える。記事には、新王となった彼女の兄が、メアリアへの不当な扱いと冤罪を公式に謝罪し、彼女を「国の至宝であった」と称えていることも書かれていた。
「お兄様が、私のためにここまで……」
「お前の兄上は、お前が死んだと思って死に物狂いで真相を暴いたようだ。……もっとも、俺が奪い去ったことに気づいてからは、軍を動かそうと息巻いているようだがな」
エドワードは少しだけ困ったように、けれどどこか誇らしげに口角を上げた。
「リア、お前を苦しめた連中はもういない。お前を魔女と罵った過去も、もうお前の敵ではないんだ。……それでも、お前は俺を選んでくれるか? 王の座も、何不自由ない世継ぎの地位も、お前の愛に比べれば俺には塵に等しい」
メアリアは読み終えた新聞をそっと置き、もう震えていない手でエドワードの首に腕を回した。復讐がしたかったわけではない。ただ、誰かに自分を信じてほしかった。そして今、目の前の男はすべてを投げ打って自分を愛していると言ってくれている。
「エドワード様。私は……たとえ明日から王宮を追われ、森の小屋で暮らすことになったとしても、貴方の側を離れません。……私の心は、本能ではなく、私の意志で貴方を求めているのですから」
瞳に宿っているのは悲しみではなく、愛する人を守ろうとする強い「女王」の輝きだった。
「……リア。お前は、本当に強くて……残酷なほど愛おしい女だ」
エドワードは今度はもう、躊躇わなかった。
彼女をシーツの上へと優しく押し倒し、吸血族としての渇望と、一人の男としての情熱をすべて込めて、その唇を塞ぐ。
窓の外は茜色の夕焼け。二人を祝福するように、部屋の中を赤く、熱く照らしていた。
帝国の王位よりも、故郷の称号よりも。
今、この腕の中に流れる熱こそが、二人にとっての唯一の真実だった。
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