可愛げがないと疎まれた侯爵夫人は、隣国の王子に略奪され、溺愛される

甘塩ます☆

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 重なり合う唇から漏れる吐息が、静まり返った寝室に熱を帯びて響く。
 エドワードはメアリアの首筋に顔を埋め、震える指先で彼女の金色のチョーカーに手をかけた。 

「……外しても、いいか」

「ええ……。もう、隠すものなんて、何もありませんわ」

 パチン、と小さな音を立てて金具が外される。
 露わになった白く細い喉元には、昨夜彼が刻んだ紫色の痕が、夕闇の中で誇らしげに浮かび上がっていた。エドワードはその痕をなぞるように愛おしげに口づけ、そのまま彼女のドレスの背の紐を、一つずつ丁寧に解いていく。
 重厚な布地が床に滑り落ち、メアリアの白い肌が茜色の光に照らされた。エドワードは息を呑み、まるで聖壇の女神を仰ぎ見るかのような眼差しで彼女を見つめる。

「美しい……。リア、お前をこうして抱くことが、どれほどの罪になるとしても……俺はもう、お前を離さない」

「罪だなんて仰らないで、エドワード様。……私を、貴方の色に染めて」

 メアリアは自ら腕を伸ばし、エドワードのワイシャツのボタンを一つずつ外し、脱がせていく。
 現れた彼の胸板は厚く、逞しい。メアリアがその胸にそっと触れると、エドワードは耐えかねたように彼女を抱きしめ、ふかふかのシーツの上へと押し倒した。
 重なり合った肌の熱さに、メアリアは一瞬だけ身を竦める。けれど、見上げたエドワードの瞳には、飢えた獣のような渇望と同時に、泣き出しそうなほどの深い情愛が揺れていた。

「痛くないように……と願っているが、俺は……俺の牙は、お前を強く求めてしまう」

「いいのです。その痛みも、熱さも……全部、私が私であるための証。貴方に愛されているという、証なのですから」

 エドワードの指がメアリアの指に絡められ、恋人繋ぎの形でシーツに縫い留められる。彼はゆっくりと、けれど確実に、メアリアの深淵へと入り込んでいった。

「あ……っ、ふ、ぁ……!」

 身体が熱い塊で満たされていく感覚に、メアリアは仰け反り、彼の背中に爪を立てた。初めて知る、圧倒的な存在感。元夫との事務的で冷めきった夜とは違う、魂を直接揺さぶられるような衝撃。
 エドワードは彼女の耳元で「愛している」と何度も、呪文のように囁きながら、彼女の首筋に再び牙を立てた。吸血の快楽と、交わりの情熱。二つの熱が混ざり合い、メアリアの視界は白く弾ける。

「あぁ……エド、様……エド……っ!」

「リア、お前を抱いているのは誰か、よく見ろ。……お前を、誰にも、地獄にさえ渡しはしない」

 エドワードは彼女の涙を唇で拭い、さらに深く、彼女のすべてを暴くように突き進む。吸血族としての「所有」ではなく、一人の男としての「献身」。メアリアもまた、彼の中に自分のすべてを注ぎ込むように腰を浮かせ、彼を迎え入れた。
 茜色の光が徐々に紫紺の帳へと溶け、部屋を夜の静寂が包み込んでいく。二人の境界線は消失し、ただ一つの熱い塊となって、果てしない絶頂の海へと沈んでいった。
 ――それは、世界から捨てられた王女が、たった一人の「王」に選ばれた、永遠の誓いの夜だった。





 誰かが優しく頬に触れている。 

 メアリアが気がつくと、すでに夜の帳が降りていた。窓から月明かりが差し込み、エドワードの美しいプラチナブロンドを銀色に輝かせている。ブルーの瞳が、慈愛を湛えて自分を映していた。
 
「大丈夫か、リア。また気絶させてしまったな。痛かっただろう? 耐えさせてしまった……」

 事を終えてもなお、壊れ物を扱うように自分の様子を伺ってくれるエドワード。その優しさに、メアリアは愛おしさを噛みしめながら身体を寄せた。

「痛みは、少しだけでしたわ」

 メアリアは頬を染めて微笑む。本当に、元夫との行為とは何もかもが違っていた。痛みは一瞬。その後すぐに、未知の快感が全身を駆け抜け、心までが満たされていった。エドワードと一つになれたことが、何よりも嬉しかった。

「リア、愛している」

「私も……エドワード様をお慕いしておりますわ。ずっと、お傍に置いてくださいね」

 エドワードはメアリアを強く抱きしめ、誓いを刻むように優しく口づけを落とした。
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