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38話

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 湯あたりしてしまった伊吹を部屋に運び、団扇で仰ぐ春岳。

 またやらかしてしまった。

 どうしてこうも伊吹相手には自制が聞かないのか。
 春岳は元々物欲も少なかった。
 どうしても欲しい物など無かった。
 寧ろ人に譲る事の方が多かった。
 だからこうなってしまう自分に、春岳が一番戸惑っていた。
 自分が伊吹に何をしてしまうのか、怖い。
 
「んん……」

 伊吹が身動ぐ。
 意識が浮上した様だ。

「伊吹? 目が覚めましたか?」
「殿…… あれ?」

 目を開けた伊吹は、今、どういう状態なのか解らず、目をパチクリさせていた。

「すみません逆上せさせてしまいました。何処痛いとか、気持ち悪いんとか無いですか?」
「いえ…… もしかして殿が私の面倒を?」
「はい、私の責任ですので」
「殿…… 客人の対応はどうされたですか?」
「それは……」
「今すぐ行って下さい!」

 伊吹は声を荒らげると、春岳を部屋の外に追いやる。

「殿のお仕事は家臣の面倒を見る事では無い筈です。よく考えて下さい!」

 伊吹は春岳を部屋の外に出すと、手を叩いて人を呼ぶ。

「今井様、お目が覚めたのですね」

 駆け寄って来たのは千代だ。

「千代、ちゃんと殿の行動を律しなさい。殿の頼む」
 
 伊吹は千代に春岳を頼むと部屋に引っ込む。

 ハァハァと、息を整えると布団に戻った。
 殿や千代に気付かれなかっただろうか。
 何でこんな事になっているのか解らないが、自分の摩羅が大きくなっているのだ。

 何でだ??
 何でこんな事に??

 伊吹は自分が倒れる前の事を思い出す。


 確か、自分は夜道に途方に暮れていた。
 そこへ殿が颯爽と迎えに来て下さり、見事な馬裁きで城まで連れて来て下さった。
 それから湯殿に入れて、殿はお戯れに……

 あれ? 夢??

 そう、夢だよな。

 殿が俺の乳首を弄り倒して遊ばれるなんて。夢に違いない。
 夢でなければ困る。

 あぁ、殿に乳首を弄り倒して欲しくて、とうとうこんな夢まで見てしまうとは……

 最悪だ。

 伊吹は頭を抱える。

 猛った物をどうしようも無く、春岳には申し訳ないと思いつつも、夢の内容で自慰してしまうのだった。

 面には出さないし、少しずつおさまって来たと思っていのに何故?

 あの、過労で倒れた日に見た夢のせいで、伊吹は春岳と居ると乳首がジンジンしてしまう事がある。
 殿に触って欲しい、そんな風に思ってしまうのだ。

 他の人と居てもそんな事は無いのに……
 何故?

 乳首が熱い。

 見れば自分の乳首はぷっくりと膨らみ、まるで触って欲しいと主張している様だ。

 乳首を触って欲しいなんておかしい。
 
 伊吹は良く解らないし、人に聞いた事も無いので解らないが、今まで自慰していて魔羅を千摺する事し無かったのに、何故急に乳首がこんな事になるのが解らなかった。

 これは何か変な病気とかなのだろうか?

 乳首が腫れる病気?

 でも殿が介抱してくれたとなると、乳首も見られていると思う。
 殿は医学にも精通しているし、何も言わないとなると違うのだと思うが……

 こんな乳首を春岳に見られたと思うと羞恥心でたまらなくなる伊吹。
 それに殿が介抱して下さったとなれば、やはり魔羅が腫れてしまっているのも見られている筈である。
 伊吹は顔から火が出るかと思う程恥ずかしかった。

 本当に最悪である。

 こんなのを見せられた殿も最悪だと思っているだろう。

 穴が空いていたら入りたい。
 そして、そこから出たくない。
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