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6、これは夜伽指導なのですから ★
しおりを挟むエリオスの言葉通り、それは男根を象った黒い張型だった。
「なにせ急なことでしたので、これがご用意できた愛玩用人形用の擬似男性器の中で一番小さなものです。……サイズはまあ、人並みといったところでしょうか」
はしたないことだとわかりつつも、リリベットはまじまじと観察してしまった。
張型の形状はわずかに反り返り、先端に大きく膨らんだくびれがあった。
おっかなびっくり触れてみると、表面はすべすべしていて弾力がある。すべてはリリベットの両手に収まるほどの大きさだ。
「ねえ、これ、この間座学で見た姿絵とちょっと形が違うわ……?」
先日王宮での講義で見せられた図本の記憶と目の前の張型を見比べて、リリベットは首を傾げた。
エリオスの持つそれは、反った茎部の内側にでこぼこした丸い突起が並んでいる。
「ええそうなんです。表側の筋の部分に真珠が入っています」
「どうして!?」
「その方がご婦人が悦ぶからですね」
しれっと答えられて、リリベットは言葉を失くした。
「まあとにかく。これは通常の人間のものとは少々形状が異なりますので、それだけは覚えておいてください」
この後に控える儀式を想像して、リリベットは神妙にうなずく。
その姿を横目に、「それともうひとつ重要なことですが――」とエリオスは言葉を続けた。
「人間男性の陰部は常にこのように漲っているわけではありません。性的興奮が高まった時にだけ膨張――つまり勃起します」
「ええ、それはその、……座学で聞いたわ」
「ではお嬢様が、手と口を使って男性器を勃起させてください」
「!!?!」
突然の提案にリリベットは目を白黒させる。しかしエリオスは貼り付いた笑みを絶やさない。
「……と言っても張型は最初からこの状態なので、代わりに指を」
「むぐっ!?」
次の瞬間、エリオスは有無を言わさずリリベットの口に右の二本指を突っ込んだ。
「ほら、私の指をこの張型だと思ってしゃぶってください。……歯を立ててはいけませんよ」
「ほんなほほ、いっはっへぇ……」
必死の抗議を無視して、エリオスは空いている手でリリベットの手に張型を握らせた。
「いいですか、ここ。この陰茎の裏の筋の部分が、男性の好いところです」
張型を持つリリベットの手を上から包んで、具体的な箇所を触らせる。同時に口に突っ込んだ指を折り曲げて、これを男性器に見立ててみせろと言う。
リリベットは指示されるまま、なんとか人差し指と中指の間を舌で吸い、撫で上げた。
「ふう、ぁ……」
「あとはそう、この先端との段差。……ふふ、お上手ですよ」
喉の奥まで圧迫されてえずきそうになる。上手く呼吸ができずに苦しい。
だがなぜか、それに逆らえない自分がいる。
リリベットは目にいっぱい涙を溜めたまま、エリオスの長い指を頬張った。
口の端から唾液が垂れ、髪が頬に張り付く。だんだん脳に酸素が行かなくなり、ぼーっとしてきてしまう。
「おや、赤子のように指をしゃぶらされて感じているんですか?」
「んーっ!?」
いつの間にかエリオスの手がリリベットの下腹部へ伸びていて、下着越しにカリカリ、と花芯を爪で弾いた。途端にむず痒さが襲ってきて、リリベットは身体をくねらせる。
「ん、んぅっ!」
「お口をお留守にしないでください。これは夜伽指導なのですから」
「……っん、ふう……」
「上の口からも下の口からも滴らせて……。はしたないですね」
彼の言葉通り、リリベットの下の口は既にびっしょりと濡れていた。エリオスが下着の上から撫でるたび、くちゅ、くち、といやらしい水音がする。
ついにリリベットは快感と羞恥に耐えきれなくなって、ぽろぽろと涙を零した。
「少しやりすぎてしまいましたか……」
そこでようやく、口から指が引き抜かれた。
「申し訳ありません。……あまりに愛らしかったので、つい」
「っぷは、え、エリオスのばかぁ!」
噎せたリリベットは、思わず握らされていた張型を投げつけた。
エリオスはあっさりそれをキャッチして、しゅんと眉根を下げる。
「怒っておいでですか?」
「…………。もう、大丈夫」
「本当に?」
「本当よ」
「それはよかった」
言質を取られた、と思った時にはもう遅かった。
「では……お詫びも兼ねて次は私が、お嬢様を高めてさしあげます」
「やぁあっ!?」
突然エリオスがリリベットの両膝を割った。ぐしょぐしょで用を為さなくなった下着を脚の間から抜き取り、ぬかるんだ秘部に顔を近付ける。
「だめ、エリオス、そんな、汚いわ!」
「お嬢様の身体に汚いところなどひとつもありません」
エリオスの白髪の先が、尖った鼻が、熱い吐息が、恥じらうリリベットの秘部に触れた。かと思うやそのままかぷりと食らいつかれる。
ちゅぷ、……じゅく、じゅるり、卑猥な音で肉芽を吸い上げられると、これまで感じたこともないような途方も無い焦燥が下半身を駆け巡る。
「あ、ど……して、そこ、んぁ……っ!」
「ついでにこちらもほぐしておきましょう」
「ああああっ!」
中指が蜜口に差し入れられ、リリベットは跳ねた。既に十分すぎるほど潤ったそこは、痛みなく指一本を受け入れていた。
浅く出し入れされて、同時にエリオスの唇が花芯に吸いつく。指の動きとリンクするように、膨らんだ突起を舌がこねて、舐めあげる。
くちゅ、くち……ぐちゅ、くちゅる、断続的に加わる刺激に、リリベットの理性は追い立てられた。
「だめ、だめ、なにか来る、あっ、だめぇっ」
迫りくる快感の捌け口を求めて、バタバタと膝が暴れ出す。定まらない視界でチカチカと星が舞った。それでもなお、エリオスの動きは止まない。
そして――ついに、足下からひときわ大きな痺れの波が駆け上がって下腹部で弾けた。
「ふあ、あ、あ……、~~~~~~っっっっ!!」
リリベットはエリオスの頭を両手で押さえたまま、がくがくと脚を震わせ痙攣する。生まれてはじめての絶頂だった。
「大変よくできました」
くたりと脱力したリリベットの横で、頭を持ち上げたエリオスは妖艶に微笑んだ。
細い月のように弧を描く口の周りは、てらてらと淫らに濡れている。
「……ぅぅ……」
「はじめてでこれほどいやらしく乱れられるなんて、お嬢様は淫乱の素質がおありだ」
よしよし、と乱れた髪を梳き、頭を撫でられて。リリベットは放心状態のまま、ぼんやりした表情でエリオスを見上げていた。
「さあ。――ではいよいよ、メインレッスンへと参りましょうか」
濡れた唇をぐいと手の甲で拭って、紫黄水晶の瞳がまた、笑った。
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