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7、存分に楽しみましょう ★

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「今からお嬢様の膣内に、張型を挿入します」

 いつの間にかエリオスの下腹部の付け根に、先ほどの黒い張型が装着されていた。潤滑油が塗り込められ、ぬらりと妖しく輝いている。

「ねぇ、エリオス……」
「どうしましたか? 不安ですか? 大丈夫ですよ。貴女はただ、委ねてくださればいい」

 エリオスが猫をあやすようにすりすりと耳を撫でたので、リリベットは緩慢な動きで「ううん」と首を左右に振る。

「怖くは……ないわ」
「では、何が――」
「……張型それに挿れたら……。さっきより、もっと気持ちいいの……?」

 予想外のあるじの言葉に、エリオスは少しだけ目を見開いた。
 彼を見上げるリリベットの顔は淡く上気し、可憐な口元は物欲しげに開いている。瞳には情欲の光が宿っていた。

 エリオスは極上の笑みを浮かべると、リリベットの右手の甲を持ち上げ肯定のキスを落とす。

「ええ、もちろん。――はじめ少しだけ、我慢してくださればね」

 そのままその手に、自身の陰部で黒光りする張型を握らせた。そうして、耳元へ優しくささやく。

「――お嬢様、を貴女自身の手で胎内なかへ導いてください」

 無茶な要求に、リリベットはもはや驚きも抵抗もしなかった。熱っぽく潤んだ目でこくんと小さく頷くと、ゆっくりした動作で己の秘所へとあてがう。

「ふふふ、お嬢様はみ込みが早く、その上勤勉でいらっしゃる」
「っあ……!」

 薄い下生えから覗く合わせ目は期待に濡れ、透明な愛液を滴らせていた。エリオスがわざと焦らして張型の先をぐりぐりと蜜口の周囲に押し付けると、リリベットはわずかに身悶える。

「……おねがい……」
「ん? よく聞こえませんでした」
「……ちょうだい……! エリオスのそれ、欲しい……!」
おおせのままに。マイマスター」

 そのままじわりと。エリオスの仮の雄がリリベットに侵入をはじめた。

「……ぁ、ぐ……」

 みち、みち、固くじられた裂け目を引き剥がし抉じ開けるように、しかし決して急くことなく。
 じっくりと時間をかけてエリオスは狭路を押し進んだ。
 リリベットは身を引き裂く破瓜の痛みに歯を食いしばり、シーツを掴んで耐えようとする。するとそれを見たエリオスはりきむリリベットの手を取り、両腕を己の首の後ろへと回させる。

「お嬢様。貴女のその痛みを、どうか私にもください」
「……、っ、」

 声にならないうめきを漏らす口を、そっと口が塞いだ。

「っ、ふ、……ぁ」
「とても可愛らしいですよ、お嬢様」
「……んっ……、エリ、オス……」
「ええ、もっと私の名を呼んで……」

 吐息の合間に交わされる睦言。とめどなく与えられる優しい蹂躙。
 リリベットは必死に彼の舌を追いかけ、絡め、吸った。エリオスの白いうなじに爪を立ててしがみつく。
 その間にも胎内の征服は進み、太く固い張型は徐々に最奥へと近づいてゆく。


 ――そしてやがて。


「おめでとうございます。すべてが胎内なかに入りましたよ。お嬢様の処女膜を、このエリオスが貫いて」

 ついに張型が根元まで、お腹いっぱいに収まった。
 エリオスはこれを「一番小さな張型」「人並みのサイズ」と言っていたが、今のリリベットには途方もない質量に感じられた。
 ぱんぱんになったリリベットの薄い腹を、エリオスの手が撫で上げる。途端にぞわぞわとくらい快感が駆け抜けて、リリベットは全身を震わせた。

「さて、これで夜伽指導の儀式は無事終わりです。おつかれさまでした、お嬢様」
「え……?」

 王宮で行われる夜伽指導は、処女膜を貫くことで達成される。エリオスは高らかに儀式の成立を宣言し、張型の先をわずかに引き抜いた。

(まだ、これからじゃなかったの……?)

 失望に視界すべての色が抜け落ちる感じがして、リリベットはあわててエリオスの首にすがった。

「っ、でも、エリオス……!」
「はい。ですからこの先は――――です」

 ずぐん。
 重たい震動とともに、引き抜かれかけた猛りが再度押し込まれた。

「さあお嬢様、存分に楽しみましょう。愛らしい貴女の痴態を、たくさん見せてくださいね」
「ひ、ぐ……っ!?」

 エリオスは上半身を起こすとリリベットの膝を持ち上げた。そのままゆっくり、ゆっくりと律動を開始する。
 まだ十分慣れきっていないリリベットの内部に己の形を覚えこませるかのように、静かに容赦なく杭を打ち込んでゆく。
 ずろり、ずるり。
 エリオスの腰が前後するたびに、水っぽい打擲音が部屋に響きはじめる。

「はぁ、はぁ、ん……っ、あ……」

 はじめは苦しげにあえぐだけだったリリベット。だが何度も何度もエリオスに貫かれるうちに、次第に声に戸惑いと喜色が交じりだした。

「ぅあ、んっ、エリ、オス……っわたし……、なんか、へん……っ」
「好きなだけ変になっていただいてかまいませんよ」
「あ、んぁ、ふ、あっ、だめぇっ、こわい……!」
「快楽に呑まれることを恐れないで。欲望に素直になって、貴女のすべてを見せてください」

 ぐじゅる、ぐじゅる、ずる、ぐじゅ。

 未曾有みぞうの感覚に身をよじるリリベットを逃すまいと、エリオスは持ち上げていた膝ごと彼女の脚を己の肩にかけ、代わりに弓なりに反った細腰を掴んだ。

 ぐじゅ、ぐじゅ、ずちゅ、ぐちゅ。

 そのまま動きを早めれば、リリベットの喘ぎはいよいよ切羽詰まりはじめる。

「でもぉっ、おなか、あついのに……くるし……っ、たす、けてぇ……っ!」
「ご安心を。手伝って差し上げます」
「ああああっ!」

 エリオスはうっとりとした表情で、リリベットの下腹部の芽を撫で上げた。そのまま親指と人差し指で挟んで摘み、しごき上げる。
 さらに腰の角度をやや浅く変えると、張型の真珠の突起がひっかかってごりごりと内壁を擦りはじめた。
 身体の内部と表面。両方を同時に刺激され、快楽に五感を支配されたリリベットは本能のままにいた。

「あっ、それ、や……っ! すごいの来ちゃう、やだ、だめ、あっ、やああっっ」
「大丈夫ですよ。ほら……」
「いやぁっ、あっ、あっ、ぁふ、ああっ、ああああ…………!!」

 エリオスの優しい声に意識を奈落へ突き落とされ、すぐに法悦のきざはしを駆け上った。
 リリベットの身体は硬直し、頭から足の指先まで真白の波が駆けめぐる。そして、長い痙攣の後にくたりと脱力した。あまりの虚脱具合に、しばらく声も出ない。

「とても可愛らしかったですよ。本当に――貴女をはらまませられないのが残念だ」

 エリオスは上の空のリリベットの頬にキスをして、ぎゅ、と身体を抱きしめる。
 たったそれだけで、リリベットの胸は言いようのない切なさと幸福に包まれた。

 しばらく彼の素肌に顔を寄せ微睡んでいると――――エリオスがリリベットの腕を引っ張って、ぐるんとうつ伏せに寝かせ直す。

「……? なあに……?」
「さあ、次はもっと上手に達せるようになりましょうね」

 平然とした口調でそう述べて、背中にちゅ、ちゅ、とキスの雨を降らせてきた。

「終わりじゃ、ないの……?」
「まさか。これは夜伽指導ですよ。オーソドックスな体位はすべて試すのでしょう? 後背位、立位、座位、それから――」

(さっき、夜伽指導は終わりだって言ってたじゃない……!)

 何かとんでもない宣言をされていることを察して、急に冷静な思考が戻ってくるリリベット。
 だが――その意識はすぐにエリオスのもたらす快感の波に浚われ、悦楽の海に溶けた。


 そうして、手を変え品を変え夜通し蹂躪され、何度も意識を飛ばし、夜半の月が明け方へと傾きはじめた頃。


 ふたりはまだ繋がっていた。

 裸のリリベットは部屋の窓辺にあるカウチソファに座らされている。片脚を座面に乗せて大きく広げられた状態でエリオスの膝に乗り、後ろから貫かれていた。
 ふたりの前には姿見が置かれ、結合して白く泡立つ秘部が丸見えになっている。

 しかし、既にリリベットの意識は朦朧もうろうとしていて恥じらいに震える体力もなかった。くたりと背を預ける主の肩に、エリオスは相変わらずちゅ、ちゅ、と口付けている。

「身体にあとは残さない、というのが旦那様とのお約束です。……ふふ、そんなことは当たり前だ。いつかは消えてしまう愛撫の痕など、なんの意味がありましょう」
「ぁ、んん、あ……っ」

 ゆるゆると揺するだけの腰の動きの代わりに、じっくりねっとりと花芽を摘まみ、こね上げる。そのすべてが、目の前の鏡に丸映しだ。
 既にリリベットが何度その手で導かれ、何度達したのかは遠い記憶の彼方である。

「お嬢様。私はね、一時の痕、ロマンティックな感傷の相手にはなれません。……私は……」
「ふああ、あっ、ああっ、エリオス……っ」
「――貴女の最奥にきつき、一生消えぬ傷になりたいのです」

 はじめと変わらずそそり立つ造り物の男根が、ぐんっ、とリリベットの腰を突き上げた。

「ああっ、エリオスぅ、好き、すきぃ……っ!」

 分厚い理性の衣を剥げば、隠していた本音が零れ出す。
 もはや夢ともうつつとも区別がつかぬ中で、リリベットは幾度も幾度も募る想いを口にした。

 するとエリオスは、いつもと変わらぬ涼しげな笑顔でこう答えるのだ。


「私も愛していますよ――リリベットお嬢様」


 たとえこの恋が、決して実らぬものだとしても。

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