桜の朽木に虫の這うこと

朽木桜斎

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第3章 そして虫たちは這い出す

第45話 決着

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「こうするんだよ――!」

 脇腹わきばらを押さえていた右手の阿呼あこを顔の前、左手の吽多うんたを頭の後ろへかざす。

 わせかがみの原理で、星川雅ほしかわ みやび顔面がんめんが、大刀だいとうに映し出された。

「雅、お前こそ最強だ、お前こそ支配者だ、お前こそ帝王だ……!」

 自己催眠じこさいみんの要領で、自分自身に強力な暗示あんじをかける。

「ふう、復活」

 心臓の活動を増大させ、神経のレベルで身体能力にブーストをかける。

 パワーアップした彼女の肉体には、成人男性を超える筋力きんりょくそなわっていた。

「やめておけ、雅。その鏡地獄かがみじごくは使い方を間違えば、名前のとおり地獄となる。爆発的なパワーは得られるが、体がボロボロになり、最悪、死にいたるぞ? 悪いことは言わん、いますぐじゅつくのだ」

「うるさいよ、叔父様おじさま。あんたに負けるくらいなら死んだほうがマシだって」

「せっかく忠告ちゅうこくしておるのにな。わかった、来るがいい」

「これでも食らいなっ!」

 コマのようにくるくると回転しながら、二本の大刀がうずを作る。

 かまいたちよろしくてきを切り刻む、似嵐流にがらしりゅう大技おおわざだ。

 彼女は風のかたまりとなって、似嵐鏡月にがらし きょうげつおそいかかる。

秘剣ひけん纏旋風まといつむじか。姉貴あねき得意技とくいわざだったな。だが――」

 似嵐鏡月は低くかがんでから、反発の力を利用し、高くジャンプした。

「やはり劣化れっかコピーよ!」

「なにっ――!?」

 中空ちゅうくうでくるっとひるがえり、回転する渦の中心を真上からいた。

「があっ!?」

 頭頂部とうちょうぶをしたたかに打たれ、星川雅はもんどりうって地面に転がった。

 患部かんぶを両手で押さえながら、大地をうような姿勢しせいもだくるしむ。

二竪にじゅを手から放したな。武芸者ぶげいしゃにとって武器をほうるのは、すなわち死を意味する。まだまだだな、雅」

「ううっ……」

「さて雅、どうする? 命乞いのちごいでもするかね? まあ、いまさら許してなどやらんがな。どれ、ゆっくりと貴様きさまを切り刻んで――」

「ド」

「ああ?」

「チクショウがあああああっ!」

 地面に両手をつき、天をあおいで、少女は咆哮ほうこうした――

(『第46話 狂態きょうたい』へ続く)
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