63 / 600
第一部「六色の瞳と魔の支配者」編
祭り直前
しおりを挟む
「あんたはもう少し女心を理解した方が良いわ!」
「ディアナ先輩、落ち着いてください。」
しばらく後、猛るディアナと、それを宥めるアイシアの図があった。
(これだと、どちらが先輩なのか分からないね。)
二人を微笑みながら見守るクロト。
「ちょっと、聞いてるの?」
「聞いてるよ。それはさておき・・・。」
「さておかないでよ!」
「ディアナ先輩、どうどう。」
「私は馬かっ!?」
猛り続けるディアナ。
「ディアナ、周りの人が見てるよ?」
「えっ・・・・・・!?」
ディアナは急に縮こまって、静かになった。
恥ずかしいせいか、顔が赤い。
「そういえば、武闘大会の参加登録はしたの?」
クロトはアイシアに尋ねた。
大会に出場するには、前日までに登録が必要なのだ。
「あっ、これからするところなんでした。ディアナ先輩、行きますよ?」
「・・・・・・。」
何も言わずについて行くディアナ。
これでは本当に、どちらが先輩なのか分からない。
「では、これで失礼しますね。」
「ああ、ディアナをよろしくね。」
「はい、もちろんです!」
アイシアは笑顔でそう答えた。
祭りを前日に控えたこの日、クロトはリンカを迎えに行った。
「リンカ、準備はできてるかな。」
「はい、準備万端ですよ!」
リンカは少し興奮しているようだ。
「昨日は一日中ソワソワしていたのよね・・・。」
「女将さんっ!」
どうやら、少しどころでは無かったようだ。
「じゃあ、王都に飛ぶよ。」
「・・・はい。」
少し赤い顔で返事をしたリンカであった。
王都の外に転移した二人。
いつもより長い列に並ぶのは面倒だ。
「デント君、ここから入っても良いかな?」
かつてこの場所で、魔人から助けたデントに話しかける。
兵士の通る通路から入ろうという寸法だ。
「えっ?あ、クロトさん。・・・まあ、クロトさんなら、良いですよ。」
衛兵隊長のフリードの方をちらっと確認して、許可を出すデント。
クロトは身分証を見せる。
「はい、確認しました。それで、そちらの方は・・・?」
「あっ・・・。」
リンカは自分が身分証を持っていないことに気がついて、顔が青くなる。
だが、クロトは落ち着いて、アイテムボックスの中から、何かを取り出した。
「これを見てもらっていいかな。できればフリードにも。」
それをデントに手渡したクロト。
フリードも近くに寄ってくる。
「・・・っ!?クロトさん、これって・・・!」
驚愕するデント。
フリードは何事かと覗き込む。
「これは、王子殿下の身分証明状・・・!」
そう、リオンに頼んで、リンカの身分証になるものを用意しておいたのだ。
「・・・問題ない。通して構わないぞ。」
「っはい!どうぞお通りください!」
「ん、ありがとう。」
そうして王都の中に入った二人。
リンカは申し訳なさそうに口を開いた。
「あの、すみません。何から何までお世話になってしまって。」
「気にしないで。それより、これを仕舞っておいて。」
いざと言う時は身分証明状を出すようにと言って、渡す。
「あ、ありがとうございます。」
それを大事そうに仕舞うリンカ。
「じゃあ、まずは宿に案内するね。」
梟の止まり木亭にやってきたクロトとリンカ。
看板娘のセレンに、部屋をとってもらう。
「リンカ、祭りの前に、王都の中を見て回ってみる?」
「はい、少しだけ・・・。」
「分かった。じゃあナツメ、よろしくね。」
「わかったでござるよ。」
ナツメはリンカに、簡単な自己紹介をしていく。
護衛役ではあるが、友人として接してほしい、とも。
リンカも侍には興味津々で、これなら、すぐに仲良くなれそうだと思った。
本来なら、クロトが案内するつもりだったのだが、少し事情ができた。
そのため、急遽ナツメに頼んだのだ。
その事情と言うのが何なのかというと・・・。
「ライトさん、これはどういうことですか!」
「セ、セレン・・・待て、話せばわかる!」
「そのセリフ、一体何度目ですか!?」
「うっ・・・。」
という、ライトとセレンの痴話喧嘩などでは無く。
たった今、梟の止まり木亭の扉を開いた人。
「あ、いらっしゃいませ。ご宿泊ですか?」
「はい。10日程お願いしてもよろしいですか?」
「承りました。」
青い髪と青い瞳を持つ女性。
「・・・!クロトさん、お久ぶりです!」
王都へ向かっていた、アクアのことであった。
「ディアナ先輩、落ち着いてください。」
しばらく後、猛るディアナと、それを宥めるアイシアの図があった。
(これだと、どちらが先輩なのか分からないね。)
二人を微笑みながら見守るクロト。
「ちょっと、聞いてるの?」
「聞いてるよ。それはさておき・・・。」
「さておかないでよ!」
「ディアナ先輩、どうどう。」
「私は馬かっ!?」
猛り続けるディアナ。
「ディアナ、周りの人が見てるよ?」
「えっ・・・・・・!?」
ディアナは急に縮こまって、静かになった。
恥ずかしいせいか、顔が赤い。
「そういえば、武闘大会の参加登録はしたの?」
クロトはアイシアに尋ねた。
大会に出場するには、前日までに登録が必要なのだ。
「あっ、これからするところなんでした。ディアナ先輩、行きますよ?」
「・・・・・・。」
何も言わずについて行くディアナ。
これでは本当に、どちらが先輩なのか分からない。
「では、これで失礼しますね。」
「ああ、ディアナをよろしくね。」
「はい、もちろんです!」
アイシアは笑顔でそう答えた。
祭りを前日に控えたこの日、クロトはリンカを迎えに行った。
「リンカ、準備はできてるかな。」
「はい、準備万端ですよ!」
リンカは少し興奮しているようだ。
「昨日は一日中ソワソワしていたのよね・・・。」
「女将さんっ!」
どうやら、少しどころでは無かったようだ。
「じゃあ、王都に飛ぶよ。」
「・・・はい。」
少し赤い顔で返事をしたリンカであった。
王都の外に転移した二人。
いつもより長い列に並ぶのは面倒だ。
「デント君、ここから入っても良いかな?」
かつてこの場所で、魔人から助けたデントに話しかける。
兵士の通る通路から入ろうという寸法だ。
「えっ?あ、クロトさん。・・・まあ、クロトさんなら、良いですよ。」
衛兵隊長のフリードの方をちらっと確認して、許可を出すデント。
クロトは身分証を見せる。
「はい、確認しました。それで、そちらの方は・・・?」
「あっ・・・。」
リンカは自分が身分証を持っていないことに気がついて、顔が青くなる。
だが、クロトは落ち着いて、アイテムボックスの中から、何かを取り出した。
「これを見てもらっていいかな。できればフリードにも。」
それをデントに手渡したクロト。
フリードも近くに寄ってくる。
「・・・っ!?クロトさん、これって・・・!」
驚愕するデント。
フリードは何事かと覗き込む。
「これは、王子殿下の身分証明状・・・!」
そう、リオンに頼んで、リンカの身分証になるものを用意しておいたのだ。
「・・・問題ない。通して構わないぞ。」
「っはい!どうぞお通りください!」
「ん、ありがとう。」
そうして王都の中に入った二人。
リンカは申し訳なさそうに口を開いた。
「あの、すみません。何から何までお世話になってしまって。」
「気にしないで。それより、これを仕舞っておいて。」
いざと言う時は身分証明状を出すようにと言って、渡す。
「あ、ありがとうございます。」
それを大事そうに仕舞うリンカ。
「じゃあ、まずは宿に案内するね。」
梟の止まり木亭にやってきたクロトとリンカ。
看板娘のセレンに、部屋をとってもらう。
「リンカ、祭りの前に、王都の中を見て回ってみる?」
「はい、少しだけ・・・。」
「分かった。じゃあナツメ、よろしくね。」
「わかったでござるよ。」
ナツメはリンカに、簡単な自己紹介をしていく。
護衛役ではあるが、友人として接してほしい、とも。
リンカも侍には興味津々で、これなら、すぐに仲良くなれそうだと思った。
本来なら、クロトが案内するつもりだったのだが、少し事情ができた。
そのため、急遽ナツメに頼んだのだ。
その事情と言うのが何なのかというと・・・。
「ライトさん、これはどういうことですか!」
「セ、セレン・・・待て、話せばわかる!」
「そのセリフ、一体何度目ですか!?」
「うっ・・・。」
という、ライトとセレンの痴話喧嘩などでは無く。
たった今、梟の止まり木亭の扉を開いた人。
「あ、いらっしゃいませ。ご宿泊ですか?」
「はい。10日程お願いしてもよろしいですか?」
「承りました。」
青い髪と青い瞳を持つ女性。
「・・・!クロトさん、お久ぶりです!」
王都へ向かっていた、アクアのことであった。
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
6,340
1 / 5
この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
このユーザをミュートしますか?
※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。