異世界隠密冒険記

リュース

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第一部「六色の瞳と魔の支配者」編

祭り直前

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「あんたはもう少し女心を理解した方が良いわ!」

「ディアナ先輩、落ち着いてください。」


 しばらく後、猛るディアナと、それを宥めるアイシアの図があった。


(これだと、どちらが先輩なのか分からないね。)

 
 二人を微笑みながら見守るクロト。


「ちょっと、聞いてるの?」

「聞いてるよ。それはさておき・・・。」

「さておかないでよ!」

「ディアナ先輩、どうどう。」

「私は馬かっ!?」


 猛り続けるディアナ。


「ディアナ、周りの人が見てるよ?」

「えっ・・・・・・!?」


 ディアナは急に縮こまって、静かになった。

 恥ずかしいせいか、顔が赤い。


「そういえば、武闘大会の参加登録はしたの?」


 クロトはアイシアに尋ねた。

 大会に出場するには、前日までに登録が必要なのだ。

 
「あっ、これからするところなんでした。ディアナ先輩、行きますよ?」

「・・・・・・。」


 何も言わずについて行くディアナ。

 これでは本当に、どちらが先輩なのか分からない。


「では、これで失礼しますね。」

「ああ、ディアナをよろしくね。」

「はい、もちろんです!」


 アイシアは笑顔でそう答えた。










 祭りを前日に控えたこの日、クロトはリンカを迎えに行った。


「リンカ、準備はできてるかな。」

「はい、準備万端ですよ!」


 リンカは少し興奮しているようだ。


「昨日は一日中ソワソワしていたのよね・・・。」

「女将さんっ!」


 どうやら、少しどころでは無かったようだ。


「じゃあ、王都に飛ぶよ。」

「・・・はい。」


 少し赤い顔で返事をしたリンカであった。





 王都の外に転移した二人。

 いつもより長い列に並ぶのは面倒だ。

 
「デント君、ここから入っても良いかな?」


 かつてこの場所で、魔人から助けたデントに話しかける。

 兵士の通る通路から入ろうという寸法だ。


「えっ?あ、クロトさん。・・・まあ、クロトさんなら、良いですよ。」


 衛兵隊長のフリードの方をちらっと確認して、許可を出すデント。

 クロトは身分証を見せる。


「はい、確認しました。それで、そちらの方は・・・?」

「あっ・・・。」


 リンカは自分が身分証を持っていないことに気がついて、顔が青くなる。

 だが、クロトは落ち着いて、アイテムボックスの中から、何かを取り出した。


「これを見てもらっていいかな。できればフリードにも。」


 それをデントに手渡したクロト。

 フリードも近くに寄ってくる。


「・・・っ!?クロトさん、これって・・・!」


 驚愕するデント。

 フリードは何事かと覗き込む。


「これは、王子殿下の身分証明状・・・!」


 そう、リオンに頼んで、リンカの身分証になるものを用意しておいたのだ。


「・・・問題ない。通して構わないぞ。」

「っはい!どうぞお通りください!」

「ん、ありがとう。」


 そうして王都の中に入った二人。


 リンカは申し訳なさそうに口を開いた。


「あの、すみません。何から何までお世話になってしまって。」

「気にしないで。それより、これを仕舞っておいて。」


 いざと言う時は身分証明状を出すようにと言って、渡す。


「あ、ありがとうございます。」


 それを大事そうに仕舞うリンカ。


「じゃあ、まずは宿に案内するね。」


 



 梟の止まり木亭にやってきたクロトとリンカ。

 看板娘のセレンに、部屋をとってもらう。


「リンカ、祭りの前に、王都の中を見て回ってみる?」

「はい、少しだけ・・・。」

「分かった。じゃあナツメ、よろしくね。」

「わかったでござるよ。」


 ナツメはリンカに、簡単な自己紹介をしていく。

 護衛役ではあるが、友人として接してほしい、とも。

 リンカも侍には興味津々で、これなら、すぐに仲良くなれそうだと思った。


 
 本来なら、クロトが案内するつもりだったのだが、少し事情ができた。

 そのため、急遽ナツメに頼んだのだ。


 その事情と言うのが何なのかというと・・・。


「ライトさん、これはどういうことですか!」

「セ、セレン・・・待て、話せばわかる!」

「そのセリフ、一体何度目ですか!?」

「うっ・・・。」


 という、ライトとセレンの痴話喧嘩などでは無く。


 たった今、梟の止まり木亭の扉を開いた人。


「あ、いらっしゃいませ。ご宿泊ですか?」

「はい。10日程お願いしてもよろしいですか?」

「承りました。」


 青い髪と青い瞳を持つ女性。



「・・・!クロトさん、お久ぶりです!」



 王都へ向かっていた、アクアのことであった。
 
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