異世界隠密冒険記

リュース

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第一部「六色の瞳と魔の支配者」編

プロローグ13

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 クロトたちは、ユフィと別れて、カラーヴォイス王国王都に戻って来た。


 二人ほど人数が増えているが、全員怪我もなく、無事に帰って来た。

 増えた二人は、孤児院の先生として雇ったエリスと、その娘のアリシア。

 クロトは二人を孤児院に送り届け、色々と説明をした。

 ついでに、支度金なども渡した。

 エリスは恐縮していたが、最後には受け取った。



 その後、皆に先に向かってもらった、梟の止まり木亭へ向かう。



 宿にやって来てすぐ、ライトに尋ねられた。


「おい、クロト。カレンまで落としたってのは本当かよ。」

「・・・その言い方はどうかと思うけど、本当だよ。」

「前は違うとか言ってた癖に、結局こうなるとはな・・・。」

「それは、私たちにも色々と事情がだな・・・。」


 クロトは、ライトとカレンの話を聞きながら、周囲を見回す。

 すると、みんな思い思いに会話しているのが分かった。
 

 アクアはヴィオラと、マリアとナツメはエメラと、それぞれ話していた。


「・・・と、そういう訳で、色々あったのだ。」

「なんつーか、惚気を聞かされた気分だぜ・・・。」

「なっ・・・!?私はそんなつもりなど・・・!」

「はいはい、お熱いことで。」

「っ、ライトっ・・・!」


 カレンが真っ赤になっているので、クロトはフォローを入れた。


「はいはい、そこまで。カレンは落ち着いて。」

「うっ・・・。しかし、だな・・・。」


 カレンはクロトに頭を撫でられて、少しクールダウンしたようだ。


「よくもまあ、人前で堂々とイチャつけるよな・・・。」

「・・・ライト、いい加減にしないと、例の件をセレンに教えるよ?」

「すんませんっした!」


 ニヤニヤしながらカレンを揶揄うライトは、クロトに制裁を下されたのだった。










 あと二週間ほどで魔王の侵略が開始される。

 クロトは、エドワード国王に状況を聞きに来ていた。


「それで、状況はどうですか?」

「その件について、国内への注意勧告は万全だ。ただな・・・。」


 エドワードの話では、外国、特にブルータル王国とレモニア王国に問題が。

 なんでも、カラーヴォイスからもたらされた情報を信じていないようだ。

 それゆえに、なんの対策もしていない、らしい。


「では、シンクレア王国については?」

「そっちの方は、何とか信じてくれたぞ。最初は半信半疑だったんだが・・・。」

「自分で言うのもなんですが、よく信じてもらえましたね?」

「ああ、グリーンフォレスト家から熱心に説得を受けたみたいでな。」


 エメラの父親、アルフォンスが頑張ってくれたらしい。

 なお、エドワードは始めから疑っていない。

 魔物の強力化で一番被害を受けている国だからだ。

 クロトが嘘を吐くとは思っていないというのもある。


「なるほど・・・。まあ、そんな所でしょうね・・・。」


 クロトは話を締めて、王城を後にした。








 その次にクロトが向かったのは、学園だ。

 昨日、卒業に必要な単位数が揃い、禁書庫への立ち入りも許可された。


 すでに夜遅かったので、翌日である今日、禁書庫を訪れたのだが・・・。


 これが、かなりの蔵書数で、一人では大変だった。

 やむを得ず、手の空いている魔法存在を動員。

 数日で全ての内容を把握した。


 あまり期待はしていなかったのだが、幾つか気になる情報があった。

 その中でも、特にクロトの興味を引いたのが二つ。


 一つ目は、黄道の迷宮らしき情報。


 そして二つ目は・・・・・・


(天の塔、か・・・。そんなダンジョンがあるんだね・・・。)


 とあるダンジョンの情報だった。


 天の塔とは、存在自体があやふやで、とある学者のホラ話だと記されていた。

 だが、クロトはこのダンジョンが実在すると、直感的に思った。

 最高値になった天感は、いい仕事をしている。


 クロトが調べていたエルフの里やドワーフの里についても僅かな記述があった。

 残念ながら、満足できる情報は得られなかったが。


 なお、やはりゲイザーらについての情報は無かった。





 禁書庫を後にしたクロトが向かったのは、採掘師ローナの元だった。


「・・・繁盛してるね?」

「うん、だいぶん収まってはいるんだけど・・・。」


 クローナ雑貨店は相変わらず繁盛していた。

 ローナは仕事に忙殺されながらも、とても幸せそうだ。


「ところでローナ、お願いがあるんだけど・・・。」

「ボクに?クロトの頼みなら何でも聞くよ?」

「そっか。では、お言葉に甘えて・・・。」


 そこで、一度言葉を切ったクロト。

 そのせいでローナは、何を頼まれるのか考えてしまい、ドキドキさせられていた。


(経営方針の変更?・・・もしかして、ボ、ボクの体、を求めたりとか?)


 さすがにそれは無いだろうと確信しているローナ。

 自分の貧相な体のことは、よくよく理解しているのだ。

 しかし、緊張するのはやめられない。


 やがて、口を開いたクロトが頼んだのは・・・。





「ローナ、君の(労働力としての)体が欲しいんだ。」




 ローナは一瞬で真っ赤になった。

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