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第二部「創世神降臨」編
セーラ
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「また負け、なのです!?」
「残念でしたわね?わたくしの勝ちですわ。」
「悔しいのです!」
ユフィとマリアが、模擬戦を終えたようだ。
結果は、マリアの全勝。
「これからは、マリアにもくっつくのです!」
「なっ!?やめてくださいましっ!?」
「いやなのです!」
マリアがユフィから逃げ回るようになってしまった。
「クロト・・・。何だろうか、この微妙な気持ちは・・・?」
「ん?やきもちじゃないかな?」
「・・・・・・。」
カレンは、ユフィが自分以外にも抱き着くことに、複雑な感情のようだ。
この日から、ユフィのスキンシップを以前より嫌がらなくなったとかなんとか。
それはさておき。
セーラ宅の裏庭で模擬戦をすることになったのだが、ユフィとレフィも参加。
結果、レフィは若干だが、自信を無くし気味に。
あれだけ負ければ、仕方ないのかもしれないが。
クロトは当然の如く全勝していた。
・・・のだが、セーラが来てクロトに挑戦状を叩きつけた。
「クロト君、私と戦ってみない?」
「・・・お断りしておきます。」
「・・・えっ!?どうして!?」
「セーラさんが相手だと加減が出来ませんので、危険なんです。」
「・・・言われてみればそうよね。私も同感かも。」
・・・と、超越者同士の戦闘は起こらなかった。
互いに手加減の出来る戦いでは無くなるので、相手を殺してしまう恐れもある。
やめておいて正解だ。
エルフの里に来てから20日。
クロトが目覚めてからは、約一か月となったこの日、進展があった。
この日のクロトは朝早くから、世界樹の根元に来ていた。
「セーラさん、わざわざ付き合って頂かなくても良かったんですよ?」
「良いのよ。私が付き合いだけなんだから。それとも、迷惑だったかしら?」
「いえ、そういう訳では・・・。」
クロトとしても、セーラの付き添いはありがたい。
主に、異変の調査的な意味合いで。
「だったら、問題ないわよね?」
「・・・そうですね。ありがとうございます。」
「・・・もう、クロト君は真面目なんだから。」
クロトがお礼を言ったところ、セーラに呆れられてしまった。
「そうですか?真面目な自覚はありませんが・・・?」
「真面目で、誠実な人だと思うわよ?」
「・・・前者はともかく、後者はあり得ませんね。」
「そんなことは・・・えっ?」
クロトの雰囲気が急に変わったために、セーラは戸惑う。
先程までは優しい雰囲気だったのだが、今は何かに対する怒りを湛えていた。
「クロト君?何か気に障ったかな?だとしたら、謝るわ。」
「えっ?・・・いえ、セーラさんには怒ってはいませんよ?」
クロトは怒りの感情を消し去って、セーラの勘違いを正した。
「でも、さっきのクロト君、怒っているようで、少し怖かったわよ?」
先程感じた怒気は、セーラをして、背筋が凍るレベルのものだった。
とても怒っていないとは思えなかった。
クロトはセーラの主張を聞くと、誤解を解こうと試みる。
「本当に違いますよ。怒っていたのだとしたら、それは自分自身に対してです。」
「自分自身に・・・それは、どうしてなの?」
「セーラさんもご存じの通り、僕には恋人が複数居ます。」
「ええ、一緒に来ている三人よね?それがどうかしたの?」
「今回は連れてきていませんが、もう二人。合わせて五人の恋人が居ます。」
「・・・別に、おかしなことでは無いと思うけれど?」
セーラはクロトの意図を察しかねた。
クロトほどの男性なら、それくらいの妻が居ても、不思議ではない。
寧ろ、当然とさえ言える。
「同時に五人もの女性に愛を捧げるなんて、口が裂けても、誠実とは言えません。」
「でもそれは、ごく普通のことで・・・。」
「普通なのだとしても、不誠実という事実は、消えませんよ。」
「・・・・・・。」
セーラは、黙り込んでしまった。
クロトの言い分に一定の正しさがあることに気づいてしまったからだ。
「ですので、僕が僕を許す日は、一生来ないのだと思います。」
そう断言しながら、儚げに微笑むクロト。
セーラはそれを見て、ギュッと胸が締め付けられる思いだった。
(どうして、それほどまでに・・・。それに、そんな辛そうな顔を・・・っ!)
セーラはクロトを抱き締めてあげたい衝動に駆られるが、それは出来ない。
それこそ、クロトが忌避する、不誠実な行いになってしまうゆえに。
だが、放って置くことも出来ない。
クロトがそんな辛そうにする必要など、何処にも無いのだから。
セーラは、慎重に言葉を選びながら、クロトに告げていく。
「あなたが自分を許さないということ、それについては何も言わないわ。」
「・・・・・・。」
「でも、あなたの恋人たちは、とても幸せそうだった。それこそ・・・。」
若干躊躇いながらも、その先の重要な部分を告げる。
「・・・それこそ、あの中の誰か一人だけを、愛していたときよりも、ね。」
クロトは無表情で聞いていたが、僅かに表情が動いた。
決してあり得ない話ではない、と思わされたようだ。
「だから、自分を責めるだけで無く、あなたも、もっと幸せになるべきよ。」
でないと、現状に幸せを感じている彼女たちに対して、失礼だから、と。
セーラの言葉を聞いたクロト。
だがしかし、儚げな雰囲気は、消えて無くならない。
それくらいで楽になってしまうなら、とっくの昔に吹っ切って居ただろう。
「ありがとうございます、セーラさん。少しだけ楽になりました。」
「っ・・・!」
決して嘘では無い、ということは理解できた。
だがこれでは、全く効果が無いのと殆ど変わらないではないか。
(私の言葉では、あなたに、届かないの・・・?)
儚げな表情で感謝を告げるクロトを見て、再び胸が苦しくなるセーラ。
そして、踵を返して歩いていくクロト。
気づいたときには、クロトを後ろから抱き締めていた。
「残念でしたわね?わたくしの勝ちですわ。」
「悔しいのです!」
ユフィとマリアが、模擬戦を終えたようだ。
結果は、マリアの全勝。
「これからは、マリアにもくっつくのです!」
「なっ!?やめてくださいましっ!?」
「いやなのです!」
マリアがユフィから逃げ回るようになってしまった。
「クロト・・・。何だろうか、この微妙な気持ちは・・・?」
「ん?やきもちじゃないかな?」
「・・・・・・。」
カレンは、ユフィが自分以外にも抱き着くことに、複雑な感情のようだ。
この日から、ユフィのスキンシップを以前より嫌がらなくなったとかなんとか。
それはさておき。
セーラ宅の裏庭で模擬戦をすることになったのだが、ユフィとレフィも参加。
結果、レフィは若干だが、自信を無くし気味に。
あれだけ負ければ、仕方ないのかもしれないが。
クロトは当然の如く全勝していた。
・・・のだが、セーラが来てクロトに挑戦状を叩きつけた。
「クロト君、私と戦ってみない?」
「・・・お断りしておきます。」
「・・・えっ!?どうして!?」
「セーラさんが相手だと加減が出来ませんので、危険なんです。」
「・・・言われてみればそうよね。私も同感かも。」
・・・と、超越者同士の戦闘は起こらなかった。
互いに手加減の出来る戦いでは無くなるので、相手を殺してしまう恐れもある。
やめておいて正解だ。
エルフの里に来てから20日。
クロトが目覚めてからは、約一か月となったこの日、進展があった。
この日のクロトは朝早くから、世界樹の根元に来ていた。
「セーラさん、わざわざ付き合って頂かなくても良かったんですよ?」
「良いのよ。私が付き合いだけなんだから。それとも、迷惑だったかしら?」
「いえ、そういう訳では・・・。」
クロトとしても、セーラの付き添いはありがたい。
主に、異変の調査的な意味合いで。
「だったら、問題ないわよね?」
「・・・そうですね。ありがとうございます。」
「・・・もう、クロト君は真面目なんだから。」
クロトがお礼を言ったところ、セーラに呆れられてしまった。
「そうですか?真面目な自覚はありませんが・・・?」
「真面目で、誠実な人だと思うわよ?」
「・・・前者はともかく、後者はあり得ませんね。」
「そんなことは・・・えっ?」
クロトの雰囲気が急に変わったために、セーラは戸惑う。
先程までは優しい雰囲気だったのだが、今は何かに対する怒りを湛えていた。
「クロト君?何か気に障ったかな?だとしたら、謝るわ。」
「えっ?・・・いえ、セーラさんには怒ってはいませんよ?」
クロトは怒りの感情を消し去って、セーラの勘違いを正した。
「でも、さっきのクロト君、怒っているようで、少し怖かったわよ?」
先程感じた怒気は、セーラをして、背筋が凍るレベルのものだった。
とても怒っていないとは思えなかった。
クロトはセーラの主張を聞くと、誤解を解こうと試みる。
「本当に違いますよ。怒っていたのだとしたら、それは自分自身に対してです。」
「自分自身に・・・それは、どうしてなの?」
「セーラさんもご存じの通り、僕には恋人が複数居ます。」
「ええ、一緒に来ている三人よね?それがどうかしたの?」
「今回は連れてきていませんが、もう二人。合わせて五人の恋人が居ます。」
「・・・別に、おかしなことでは無いと思うけれど?」
セーラはクロトの意図を察しかねた。
クロトほどの男性なら、それくらいの妻が居ても、不思議ではない。
寧ろ、当然とさえ言える。
「同時に五人もの女性に愛を捧げるなんて、口が裂けても、誠実とは言えません。」
「でもそれは、ごく普通のことで・・・。」
「普通なのだとしても、不誠実という事実は、消えませんよ。」
「・・・・・・。」
セーラは、黙り込んでしまった。
クロトの言い分に一定の正しさがあることに気づいてしまったからだ。
「ですので、僕が僕を許す日は、一生来ないのだと思います。」
そう断言しながら、儚げに微笑むクロト。
セーラはそれを見て、ギュッと胸が締め付けられる思いだった。
(どうして、それほどまでに・・・。それに、そんな辛そうな顔を・・・っ!)
セーラはクロトを抱き締めてあげたい衝動に駆られるが、それは出来ない。
それこそ、クロトが忌避する、不誠実な行いになってしまうゆえに。
だが、放って置くことも出来ない。
クロトがそんな辛そうにする必要など、何処にも無いのだから。
セーラは、慎重に言葉を選びながら、クロトに告げていく。
「あなたが自分を許さないということ、それについては何も言わないわ。」
「・・・・・・。」
「でも、あなたの恋人たちは、とても幸せそうだった。それこそ・・・。」
若干躊躇いながらも、その先の重要な部分を告げる。
「・・・それこそ、あの中の誰か一人だけを、愛していたときよりも、ね。」
クロトは無表情で聞いていたが、僅かに表情が動いた。
決してあり得ない話ではない、と思わされたようだ。
「だから、自分を責めるだけで無く、あなたも、もっと幸せになるべきよ。」
でないと、現状に幸せを感じている彼女たちに対して、失礼だから、と。
セーラの言葉を聞いたクロト。
だがしかし、儚げな雰囲気は、消えて無くならない。
それくらいで楽になってしまうなら、とっくの昔に吹っ切って居ただろう。
「ありがとうございます、セーラさん。少しだけ楽になりました。」
「っ・・・!」
決して嘘では無い、ということは理解できた。
だがこれでは、全く効果が無いのと殆ど変わらないではないか。
(私の言葉では、あなたに、届かないの・・・?)
儚げな表情で感謝を告げるクロトを見て、再び胸が苦しくなるセーラ。
そして、踵を返して歩いていくクロト。
気づいたときには、クロトを後ろから抱き締めていた。
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