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第三部「全能神座争奪戦」編
クロト VS 『蒼炎神』サヴァイブ 2
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クロトが声のした方を確認すると、そこには剣を突き付けられたアクアの姿が。
「この女を傷つけられたくなければ剣を捨てろっ!」
「でかしたミュースっ!! これでコイツは―――」
手も足も出なくなる。
そう言おうとしたサヴァイブだったが、それは叶わなかった。
何故なら――――
「―――『創世十字閃・神断』」
「なっ、『神拳・蒼炎蹴撃』っ、があああっ!?」
「サヴァイブ様っ!?」
クロトがそんなものは関係ないとばかりに攻撃を続行したからだ。
サヴァイブは意表を突かれ、何とか迎撃したものの、多大なダメージを受けて吹き飛ばされた。
これに一番面食らったのはミュースで、これでもかとばかりに狼狽えている。
「貴様っ、正気かっ!? 恋人である女の命が惜しくないのかっ!?」
クロトはそんなミュースの叫びを無視してサヴァイブに追撃。
「―――『神天十字閃・黒曜』っ!」
「クソがっ!〖炎神突破〗ァ!!」
吹き飛ばされたことで数瞬とはいえクロトから目を離してしまったサヴァイブ。
その〈黒魔法〉が重ねられた隠密状態になったクロトを見失い、本能的な危機を感じて切り札であるユニークスキルを使用した。
それはアクアの〖水神突破〗と同系統のスキルであり、当然リスクもある。
能力値二倍と炎による攻撃に絶大なる補正がかかる代わりに、制限時間が存在する。
効果時間が終了すれば、弱体化を強いられるのは間違いない。
しかし、結果から言えば、使用したのは間違いではなかった。
その直後に横合いから迫っていたクロトの十字閃を喰らったからだ。
もし使用していなかったら、今の攻防で勝負が決まっていただろう。
なにせ、平均Sへと到達したサヴァイブでも大ダメージを受けたのだから。
壁に叩きつけられたサヴァイブを見ながら、クロトは思考する。
(リュノアがこの場に居ないことが悔やまれる。今ので決めたかった・・・!)
仕留めるつもりだったクロトからすれば、満足のいく結果ではない。
勝敗を決める最大のチャンスを逃してしまったのだから。
そう、訳あってリュノアは、今は手元に居ない。
おつかいに出した選択こそ後悔していないのだが、歯噛みはしてしまう。
(これ以上となると〖神界突破〗に頼るしかない。先行き不透明な状況で気絶するのは到底許容できないリスク。でも、他に手はない、か。)
クロトの切り札〖神界突破〗は効果絶大だが、そのリスクは尋常ではない。
敵地で気を失うなど、命を捨てているようなものなのだから。
だがそれでも、他に目の前の敵を倒す手段は存在しない。
・・・少なくとも、現状では。
(可能性は・・・スキルの覚醒、か。賭けにはなるが、分は良さそうだね。)
果てしない怒りと嫉妬に身を焼かれながらも、クロトは冷静な思考を手放さない。
それこそが自分の持ちうる最大の武器だと分かっているからだ。
冷静に激怒することこそが、人間の潜在能力を最大まで引き出すやり方。
ならば、理性を手放すことは馬鹿のすること。
それがクロトの持論である。
(かつてないほどの激情に煽られて、進化の兆しは見せている。後は―――)
「よくもサヴァイブ様をっ!! これが見えないのかっ!?剣を捨てろっ!!」
クロトの思考を遮って、ミュースが再び叫んだ。
手に持っている剣はアクアの首に接触しており、血が流れている。
脅しではないのだと示すために敢えてやっているのだろう。
クロトは血を流しているアクアと目が合った。
彼女は欠片も怯えることなく、確かな意思を持ってクロトを見つめていた。
即ち、「信じています、クロトさん」と。
それは、助けてくれることを信じている、ではない。
最善の行動をとってくれることを信じている、だ。
つまり、場合によっては自分が見捨てられることも視野に入れている。
「―――どれだけ脅しても無駄だよ。」
「何故だっ!この女が大切なのではないのか!?所詮自分の命が優先なのか!?」
「違う。助けることも手を止めることも、アクアが望んでいないからだよ。」
「・・・は?」
ミュースはクロトの言葉を理解できなかった。
「それに、助ける選択も武器を捨てる選択も、その先に望む未来なんて無い。だとしたら、その選択をするなどあまりにも非合理的だ。」
「ふざけるなっ!たとえそうであっても、その選択をするのが人間だろうっ!?」
ミュースの言い分は正しい。
たとえ非合理的だと分かっていても、愛しい人を人質に取られて抵抗できる男など居ない。誰しもが武器を捨てて投降するか、命懸けで助けようとする。
しかし、クロトには当てはまらない考え方だ。
仮にクロトが投降したとして、その先に待っているのは死あるのみ。
そんな結末をアクアが望むはずが無いと分かっている。
彼にとって最も優先されることは、愛しき人の意志なのだ。
「―――だから、彼女の意志に従うことが、僕の最大級の優しさだよ。」
「なっ・・・!」
「コイツ、狂ってやがるっ・・・!!」
ミュースと、瓦礫の中から出てきたサヴァイブが揃って驚愕を露わにしている。
自分の存在の前提に愛しき人の意志が存在していることをまざまざと見せつけられ、その異常さを嫌というほど理解させられたのだ。
二人はまるで化け物を見るような目でクロトを見ている。
「―――もっとも、そうならないに越したことはないけどね。こうして会話している間にも準備は整ったし。」
「アァ? テメェ、何言ってやが―――」
「―――『白天の千刃』っ!!」
サヴァイブがクロトの真意を知ろうと口を開いた直後のこと。
辺り一帯に斬撃がばら撒かれた。
「ヒーローは遅れてやってくるものなのだっ!『白天神シロナ』参上っ!!」
「この女を傷つけられたくなければ剣を捨てろっ!」
「でかしたミュースっ!! これでコイツは―――」
手も足も出なくなる。
そう言おうとしたサヴァイブだったが、それは叶わなかった。
何故なら――――
「―――『創世十字閃・神断』」
「なっ、『神拳・蒼炎蹴撃』っ、があああっ!?」
「サヴァイブ様っ!?」
クロトがそんなものは関係ないとばかりに攻撃を続行したからだ。
サヴァイブは意表を突かれ、何とか迎撃したものの、多大なダメージを受けて吹き飛ばされた。
これに一番面食らったのはミュースで、これでもかとばかりに狼狽えている。
「貴様っ、正気かっ!? 恋人である女の命が惜しくないのかっ!?」
クロトはそんなミュースの叫びを無視してサヴァイブに追撃。
「―――『神天十字閃・黒曜』っ!」
「クソがっ!〖炎神突破〗ァ!!」
吹き飛ばされたことで数瞬とはいえクロトから目を離してしまったサヴァイブ。
その〈黒魔法〉が重ねられた隠密状態になったクロトを見失い、本能的な危機を感じて切り札であるユニークスキルを使用した。
それはアクアの〖水神突破〗と同系統のスキルであり、当然リスクもある。
能力値二倍と炎による攻撃に絶大なる補正がかかる代わりに、制限時間が存在する。
効果時間が終了すれば、弱体化を強いられるのは間違いない。
しかし、結果から言えば、使用したのは間違いではなかった。
その直後に横合いから迫っていたクロトの十字閃を喰らったからだ。
もし使用していなかったら、今の攻防で勝負が決まっていただろう。
なにせ、平均Sへと到達したサヴァイブでも大ダメージを受けたのだから。
壁に叩きつけられたサヴァイブを見ながら、クロトは思考する。
(リュノアがこの場に居ないことが悔やまれる。今ので決めたかった・・・!)
仕留めるつもりだったクロトからすれば、満足のいく結果ではない。
勝敗を決める最大のチャンスを逃してしまったのだから。
そう、訳あってリュノアは、今は手元に居ない。
おつかいに出した選択こそ後悔していないのだが、歯噛みはしてしまう。
(これ以上となると〖神界突破〗に頼るしかない。先行き不透明な状況で気絶するのは到底許容できないリスク。でも、他に手はない、か。)
クロトの切り札〖神界突破〗は効果絶大だが、そのリスクは尋常ではない。
敵地で気を失うなど、命を捨てているようなものなのだから。
だがそれでも、他に目の前の敵を倒す手段は存在しない。
・・・少なくとも、現状では。
(可能性は・・・スキルの覚醒、か。賭けにはなるが、分は良さそうだね。)
果てしない怒りと嫉妬に身を焼かれながらも、クロトは冷静な思考を手放さない。
それこそが自分の持ちうる最大の武器だと分かっているからだ。
冷静に激怒することこそが、人間の潜在能力を最大まで引き出すやり方。
ならば、理性を手放すことは馬鹿のすること。
それがクロトの持論である。
(かつてないほどの激情に煽られて、進化の兆しは見せている。後は―――)
「よくもサヴァイブ様をっ!! これが見えないのかっ!?剣を捨てろっ!!」
クロトの思考を遮って、ミュースが再び叫んだ。
手に持っている剣はアクアの首に接触しており、血が流れている。
脅しではないのだと示すために敢えてやっているのだろう。
クロトは血を流しているアクアと目が合った。
彼女は欠片も怯えることなく、確かな意思を持ってクロトを見つめていた。
即ち、「信じています、クロトさん」と。
それは、助けてくれることを信じている、ではない。
最善の行動をとってくれることを信じている、だ。
つまり、場合によっては自分が見捨てられることも視野に入れている。
「―――どれだけ脅しても無駄だよ。」
「何故だっ!この女が大切なのではないのか!?所詮自分の命が優先なのか!?」
「違う。助けることも手を止めることも、アクアが望んでいないからだよ。」
「・・・は?」
ミュースはクロトの言葉を理解できなかった。
「それに、助ける選択も武器を捨てる選択も、その先に望む未来なんて無い。だとしたら、その選択をするなどあまりにも非合理的だ。」
「ふざけるなっ!たとえそうであっても、その選択をするのが人間だろうっ!?」
ミュースの言い分は正しい。
たとえ非合理的だと分かっていても、愛しい人を人質に取られて抵抗できる男など居ない。誰しもが武器を捨てて投降するか、命懸けで助けようとする。
しかし、クロトには当てはまらない考え方だ。
仮にクロトが投降したとして、その先に待っているのは死あるのみ。
そんな結末をアクアが望むはずが無いと分かっている。
彼にとって最も優先されることは、愛しき人の意志なのだ。
「―――だから、彼女の意志に従うことが、僕の最大級の優しさだよ。」
「なっ・・・!」
「コイツ、狂ってやがるっ・・・!!」
ミュースと、瓦礫の中から出てきたサヴァイブが揃って驚愕を露わにしている。
自分の存在の前提に愛しき人の意志が存在していることをまざまざと見せつけられ、その異常さを嫌というほど理解させられたのだ。
二人はまるで化け物を見るような目でクロトを見ている。
「―――もっとも、そうならないに越したことはないけどね。こうして会話している間にも準備は整ったし。」
「アァ? テメェ、何言ってやが―――」
「―――『白天の千刃』っ!!」
サヴァイブがクロトの真意を知ろうと口を開いた直後のこと。
辺り一帯に斬撃がばら撒かれた。
「ヒーローは遅れてやってくるものなのだっ!『白天神シロナ』参上っ!!」
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