俺と彼女は入れ替わり

三毛猫

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壁ドン、床ドン、ドンドンエスカレート……

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ミズキは電車のドアに壁ドンして、俺に迫った。ミズキに睨まれてる。気まずい。怖い。逃げたい。

「なぁ、おっさん誰?」

超怖い。さっきまで可愛いミズキは何処行ったの?

「なんのことかなー私はアヤミだよ」

作り笑いで誤魔化す。頼むから信じて。

「じゃぁーさぁ。あやちの大好物言ってみて!」

いちご、メロンか?スイカ……テレビで女子高生
にずっと人気なのはマカロンって言ってたような……。


「ま、マカロン!」

「ちがう!冷奴だよ!!」

アヤミの舌、おっさんじゃねーか!

「それでおっさん誰?」

「あやちだよ」

「それは外見だろ?中身はどう見てもおっさんだろ!」

ミズキは苛立ち電車の床をドンと踏んで威嚇した。

「ひっ!……ごめんなさい。お、俺のこと見えてるの?」

「全部見えてるよ!不思議と中身が別人だって見えるの!最初からなぁぁあぁ!」



「叫ぶな、叫ぶな。周りにも迷惑だろ。皆見てるから」

ミズキは周りを見て我に返った。

「あっ!……ごめんなさい」

目的の駅に着いた。
俺とミズキは電車を降りて学校に行く道中で全てを語った。

「それでテメェの願いは叶った結果、あやちの中身は何処行った?」

ミズキの口調の悪さがドンドンエスカレートしていく。顔もずっと怖い。

「わかりません」

「わかりませんだと!?今日の放課後、あやちを探す」

今から探さないのは理由があるのか?
ミズキはアヤミの親友だと思っていたが、そうでもないのか?疑問符が沢山浮かぶ。

アヤミとミズキが通う高校に着いた。
校舎は6棟あり、生徒数は約3000人を誇る県内でも有名な男女共学のマンモス高校だった。

「みずち、あやち、おはろーん」

下駄箱で後ろから女子が声をかけてきた。

「おはおは」とミズキは返す。

何この朝の挨拶の多様性……。

「アヤミおはらうぃーー」
今度はパリピの男子だ。

行き交う生徒の殆どが俺に挨拶してくる。やっぱりアヤミは人気なんだ。

教室に入るといきなり
「テメェ、アヤミが戻った時に困らないよう変な行動するなよ」と小声でミズキが耳打ちされた。

「はい!」

「テメェの席は、そこ」

ミズキの案内で席に座ると男子と女子が席に群がってくる。

「あやち、ホームルーム前に喋ろぜー」
「あやち、おはろん。昨日のテレビで関西ティアーズの星羅くん出ててさぁ……」

むっちゃ俺に話しかけてくる!
そこにミズキが割って入る。

「あやち、昨日のカラオケで今日喉の調子悪いから集まらないでね」

ナイス!ミズキ!無駄に話してボロが出ておっさんバレなくてよかった。


チャイムが鳴った。
懐かしい学校のチャイムの音。俺にとっては楽しくない学校の始まりの合図。
でもアヤミは違う。学校に着いてこの数分で皆から愛されている事が伝わる。

「はい。席について」

担任の先生だろう。20代ぐらいの若い男性教諭だ。教壇に立ち、皆に向けて今日一日の事や今後の行事の事をスラスラと喋る。
俺もこんなに緊張せず流暢に喋れたらいいのに。

「ホームルーム、終わるぞー」

「起立、礼」

「「ありがとうございました」」


1限目が始まり、6限目が終わり、特に問題もなくミズキと学校を出た。
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