3 / 13
特に問題なし!
しおりを挟む
ミズキと学校を出て、電車に乗り、アヤミの住む街まで帰ってきた。
ミズキはずっと無言だった。
おそらくアヤミになりきっていた俺にビックリして口も出ないのだろうと思ってた矢先、ミズキは低い声で「おい」と手招きした。
「なんだよあれは!テメェはあやちだろ!だったらあやちっぽく振る舞えよ!」
アヤミに成り切るのは全然駄目だったー!
「テレビの話もしたよ……アイドルの話も、ゲームの話もしたよ……」
「何年前のバラエティ番組の話してんの!アイドルも女性アイドルグループの話だし、あやちはピーエム5もエッキセルボックスとかゲームしないの!」
頭を抱えるミズキ。こんな時は慰めようとそっと肩に手を伸ばそう……
「慰めようとして肩に手を当てようとか考えて触んじゃないよ」と睨まれた。
エスパーかよ!心読まれてる!
「これから、テメェの家に行く。きっとテメェとあやちは入れ替わった」
「分かるの?」
「ドラマとか映画であるあるの展開だろうが!テメェは黙って付いてこい」
こえーよミズキさん。
俺はミズキを俺の実家に案内した。
なんだかプライベートを覗かれたみたいで恥ずかしい。
俺は家のチャイムを鳴らした。
俺の母親が出てきた。
「おか……(お母さんって言いかけた)マサトさん居ますか?」
母親の顔は若干引き攣っていた。それもそうだろう。なんせ引き籠もりニートの家に女子高生が二人も現れたのだから。
「ま、マサトはねぇ。走りに行ったわよ……何かされた?」
母親よ、俺を不審者扱いか。その言い方はないだろう。俺って母親からの信頼度ゼロなんだな。しかし、俺が運動?
「この辺りにいますか?」
「えーっと。公園の方に行ったわよ」
「ありがとうございます」
「ええ……」
終始困り顔の母親の元を去り、公園へ向かった。
公園には沢山の子どもが遊んでいる。砂遊びや鬼ごっこ、駆け回る子ども達に、子ども達を見守る保護者達。
その美しい夕方の日常の光景の中で異彩を放つ存在があった。鉄棒に必死に食らいつき懸垂をしている。全身から汗が噴き出し、グレーのジャージが汗で濃いグレーに変色している。頭から湯気が出て顔は滝行の最中のような水分が額から流れ落ちるマサト(俺)がいた。
「あの鉄棒で懸垂しているのが俺です」
「あのデブがテメェか?」
昨日電車の中ではアヤミがデブって言ってミズキが止めてくれたよね!?普通にデブって言ったぁぁぁ!
懸垂するマサトはミズキに気付いて汗を飛ばしながら小走りで近寄ってきた。
ミズキもマサトに近づく。
「みーちゃん!」
マサトが叫んだ。
「あやちー!」
ミズキも叫ぶ。
まさに感動的な再会に公園にいた子どもと保護者が注目する。
これはもう抱き合う勢い!
「ダメダメ!だめー!その汗だくな姿で近付かないで!」
「みーちゃん、ごめん!」
アヤミの体の俺は静かに近づく。
「俺が願った結果、体が入れ替わったのか?本当にマサトの中身はアヤミなのか?」
「疑ってるの?私には分かる。このキモデブのおっさんの体の中にあやちはいる!」
キモデブって言ったー(泣)
「あやちの大好物は?」
「冷奴!」
マサトは瞬時に答えた。
「あやちの2番目に好きな食べ物は?」
「枝豆!」
アヤミの好物、おっさんが居酒屋で最初に頼むつまみじゃねーか!
「ほら、絶対あやちだよ」
ミズキは特殊能力でもあるようだ。人の中身の姿を見抜く能力がある。
「あー。クラスの女子で1番可愛いあやちー。早く元に戻ってよ」
ミズキは願った。
「……」
しかしアヤミは反応しない。
あれ?アヤミ?何か返事しないのか?どうした?空気が変わったぞ?
さっきまでの勢いとノリどうした?
「でも、入れ替わってあやちの中身が消えたかと思ったから、あやちの中身が無事でよかった」
「私もみーに会えてホッとした。このおっさんの体嫌だから」
「そうだよね。早く元の体に戻りたいよね」
二人とも無茶苦茶暴言吐いて失礼ですよ。
「あのー。ちょっといい?」
俺はマサトを手招きする。
俺はマサトを呼び出してミズキと距離を置いて公園の日陰で二人共屈んで小声で話し始めた。
「アヤミさん例のあのこと言ってないの?」
「例のあのこと?」
マサトは首を傾げた。
「俺、このアヤミさんの体になって知ってしまいました!下に男の大切な部分付いてますよね?」
マサトの顔が真っ赤になる。
「あ、あの……それはぁ、ぜ、ぜっ絶対、言ったら駄目だからぁ!」
「アヤミさん男の娘ですよね?」
マサトはコクリと頷いた。
「絶対みーちゃんには言わないで」
「わかりました。同級生は全員アヤミさんが男の娘だって知らないの?」
「誰にも言ってない。知ってるのは家族と学校の先生達だけ。私ね……この街に今年引っ越してきたん。前の学校では男なのに女装してるからイジメられて……。でも転校した初日から女装して、学校でも特例で名前もアヤミにしてもらって生活してた。そしたら、皆仲良しになって。みーちゃんとも仲良しなって……だからもう今更男に戻れないし……せっかく仲良くなったの壊したくない。私、生まれてからずっと可愛い女の子になりたかったから夢も諦められないから……」
この子も俺と同じ願いだった訳か。
俺も可愛い女子高生になってモテたい。チヤホヤされたいと願っていた。
可愛い女の子になりたいと願ったから……だから俺とアヤミの中身は入れ替わったのか?
「よし!分かった!俺は今はアヤミだから。俺とアヤミさんが元に戻るまで男の娘だって絶対バレないようにするから!」
俺はアヤミを真っ直ぐ見つけて宣言した。
「ありがとう。頑張ってね。絶対言わないでね」
マサト(中身はアヤミ)が初めて笑った。
「みーちゃんのとこ戻りましょ」
「へー。あやちは男の娘やったん」
立ち上がると背後にミズキがいた。
「みーちゃん!」
「ミズキさぁん!?」
ミズキはずっと無言だった。
おそらくアヤミになりきっていた俺にビックリして口も出ないのだろうと思ってた矢先、ミズキは低い声で「おい」と手招きした。
「なんだよあれは!テメェはあやちだろ!だったらあやちっぽく振る舞えよ!」
アヤミに成り切るのは全然駄目だったー!
「テレビの話もしたよ……アイドルの話も、ゲームの話もしたよ……」
「何年前のバラエティ番組の話してんの!アイドルも女性アイドルグループの話だし、あやちはピーエム5もエッキセルボックスとかゲームしないの!」
頭を抱えるミズキ。こんな時は慰めようとそっと肩に手を伸ばそう……
「慰めようとして肩に手を当てようとか考えて触んじゃないよ」と睨まれた。
エスパーかよ!心読まれてる!
「これから、テメェの家に行く。きっとテメェとあやちは入れ替わった」
「分かるの?」
「ドラマとか映画であるあるの展開だろうが!テメェは黙って付いてこい」
こえーよミズキさん。
俺はミズキを俺の実家に案内した。
なんだかプライベートを覗かれたみたいで恥ずかしい。
俺は家のチャイムを鳴らした。
俺の母親が出てきた。
「おか……(お母さんって言いかけた)マサトさん居ますか?」
母親の顔は若干引き攣っていた。それもそうだろう。なんせ引き籠もりニートの家に女子高生が二人も現れたのだから。
「ま、マサトはねぇ。走りに行ったわよ……何かされた?」
母親よ、俺を不審者扱いか。その言い方はないだろう。俺って母親からの信頼度ゼロなんだな。しかし、俺が運動?
「この辺りにいますか?」
「えーっと。公園の方に行ったわよ」
「ありがとうございます」
「ええ……」
終始困り顔の母親の元を去り、公園へ向かった。
公園には沢山の子どもが遊んでいる。砂遊びや鬼ごっこ、駆け回る子ども達に、子ども達を見守る保護者達。
その美しい夕方の日常の光景の中で異彩を放つ存在があった。鉄棒に必死に食らいつき懸垂をしている。全身から汗が噴き出し、グレーのジャージが汗で濃いグレーに変色している。頭から湯気が出て顔は滝行の最中のような水分が額から流れ落ちるマサト(俺)がいた。
「あの鉄棒で懸垂しているのが俺です」
「あのデブがテメェか?」
昨日電車の中ではアヤミがデブって言ってミズキが止めてくれたよね!?普通にデブって言ったぁぁぁ!
懸垂するマサトはミズキに気付いて汗を飛ばしながら小走りで近寄ってきた。
ミズキもマサトに近づく。
「みーちゃん!」
マサトが叫んだ。
「あやちー!」
ミズキも叫ぶ。
まさに感動的な再会に公園にいた子どもと保護者が注目する。
これはもう抱き合う勢い!
「ダメダメ!だめー!その汗だくな姿で近付かないで!」
「みーちゃん、ごめん!」
アヤミの体の俺は静かに近づく。
「俺が願った結果、体が入れ替わったのか?本当にマサトの中身はアヤミなのか?」
「疑ってるの?私には分かる。このキモデブのおっさんの体の中にあやちはいる!」
キモデブって言ったー(泣)
「あやちの大好物は?」
「冷奴!」
マサトは瞬時に答えた。
「あやちの2番目に好きな食べ物は?」
「枝豆!」
アヤミの好物、おっさんが居酒屋で最初に頼むつまみじゃねーか!
「ほら、絶対あやちだよ」
ミズキは特殊能力でもあるようだ。人の中身の姿を見抜く能力がある。
「あー。クラスの女子で1番可愛いあやちー。早く元に戻ってよ」
ミズキは願った。
「……」
しかしアヤミは反応しない。
あれ?アヤミ?何か返事しないのか?どうした?空気が変わったぞ?
さっきまでの勢いとノリどうした?
「でも、入れ替わってあやちの中身が消えたかと思ったから、あやちの中身が無事でよかった」
「私もみーに会えてホッとした。このおっさんの体嫌だから」
「そうだよね。早く元の体に戻りたいよね」
二人とも無茶苦茶暴言吐いて失礼ですよ。
「あのー。ちょっといい?」
俺はマサトを手招きする。
俺はマサトを呼び出してミズキと距離を置いて公園の日陰で二人共屈んで小声で話し始めた。
「アヤミさん例のあのこと言ってないの?」
「例のあのこと?」
マサトは首を傾げた。
「俺、このアヤミさんの体になって知ってしまいました!下に男の大切な部分付いてますよね?」
マサトの顔が真っ赤になる。
「あ、あの……それはぁ、ぜ、ぜっ絶対、言ったら駄目だからぁ!」
「アヤミさん男の娘ですよね?」
マサトはコクリと頷いた。
「絶対みーちゃんには言わないで」
「わかりました。同級生は全員アヤミさんが男の娘だって知らないの?」
「誰にも言ってない。知ってるのは家族と学校の先生達だけ。私ね……この街に今年引っ越してきたん。前の学校では男なのに女装してるからイジメられて……。でも転校した初日から女装して、学校でも特例で名前もアヤミにしてもらって生活してた。そしたら、皆仲良しになって。みーちゃんとも仲良しなって……だからもう今更男に戻れないし……せっかく仲良くなったの壊したくない。私、生まれてからずっと可愛い女の子になりたかったから夢も諦められないから……」
この子も俺と同じ願いだった訳か。
俺も可愛い女子高生になってモテたい。チヤホヤされたいと願っていた。
可愛い女の子になりたいと願ったから……だから俺とアヤミの中身は入れ替わったのか?
「よし!分かった!俺は今はアヤミだから。俺とアヤミさんが元に戻るまで男の娘だって絶対バレないようにするから!」
俺はアヤミを真っ直ぐ見つけて宣言した。
「ありがとう。頑張ってね。絶対言わないでね」
マサト(中身はアヤミ)が初めて笑った。
「みーちゃんのとこ戻りましょ」
「へー。あやちは男の娘やったん」
立ち上がると背後にミズキがいた。
「みーちゃん!」
「ミズキさぁん!?」
0
あなたにおすすめの小説
大好きな幼なじみが超イケメンの彼女になったので諦めたって話
家紋武範
青春
大好きな幼なじみの奈都(なつ)。
高校に入ったら告白してラブラブカップルになる予定だったのに、超イケメンのサッカー部の柊斗(シュート)の彼女になっちまった。
全く勝ち目がないこの恋。
潔く諦めることにした。
あるフィギュアスケーターの性事情
蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。
しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。
何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。
この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。
そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。
この物語はフィクションです。
実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。
天才天然天使様こと『三天美女』の汐崎真凜に勝手に婚姻届を出され、いつの間にか天使の旦那になったのだが...。【動画投稿】
田中又雄
恋愛
18の誕生日を迎えたその翌日のこと。
俺は分籍届を出すべく役所に来ていた...のだが。
「えっと...結論から申し上げますと...こちらの手続きは不要ですね」「...え?どういうことですか?」「昨日、婚姻届を出されているので親御様とは別の戸籍が作られていますので...」「...はい?」
そうやら俺は知らないうちに結婚していたようだった。
「あの...相手の人の名前は?」
「...汐崎真凛様...という方ですね」
その名前には心当たりがあった。
天才的な頭脳、マイペースで天然な性格、天使のような見た目から『三天美女』なんて呼ばれているうちの高校のアイドル的存在。
こうして俺は天使との-1日婚がスタートしたのだった。
隣に住んでいる後輩の『彼女』面がガチすぎて、オレの知ってるラブコメとはかなり違う気がする
夕姫
青春
【『白石夏帆』こいつには何を言っても無駄なようだ……】
主人公の神原秋人は、高校二年生。特別なことなど何もない、静かな一人暮らしを愛する少年だった。東京の私立高校に通い、誰とも深く関わらずただ平凡に過ごす日々。
そんな彼の日常は、ある春の日、突如現れた隣人によって塗り替えられる。後輩の白石夏帆。そしてとんでもないことを言い出したのだ。
「え?私たち、付き合ってますよね?」
なぜ?どうして?全く身に覚えのない主張に秋人は混乱し激しく否定する。だが、夏帆はまるで聞いていないかのように、秋人に猛烈に迫ってくる。何を言っても、どんな態度をとっても、その鋼のような意思は揺るがない。
「付き合っている」という謎の確信を持つ夏帆と、彼女に振り回されながらも憎めない(?)と思ってしまう秋人。これは、一人の後輩による一方的な「好き」が、平凡な先輩の日常を侵略する、予測不能な押しかけラブコメディ。
ヤンデレ美少女転校生と共に体育倉庫に閉じ込められ、大問題になりましたが『結婚しています!』で乗り切った嘘のような本当の話
桜井正宗
青春
――結婚しています!
それは二人だけの秘密。
高校二年の遙と遥は結婚した。
近年法律が変わり、高校生(十六歳)からでも結婚できるようになっていた。だから、問題はなかった。
キッカケは、体育倉庫に閉じ込められた事件から始まった。校長先生に問い詰められ、とっさに誤魔化した。二人は退学の危機を乗り越える為に本当に結婚することにした。
ワケありヤンデレ美少女転校生の『小桜 遥』と”新婚生活”を開始する――。
*結婚要素あり
*ヤンデレ要素あり
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
小さい頃「お嫁さんになる!」と妹系の幼馴染みに言われて、彼女は今もその気でいる!
竜ヶ崎彰
恋愛
「いい加減大人の階段上ってくれ!!」
俺、天道涼太には1つ年下の可愛い幼馴染みがいる。
彼女の名前は下野ルカ。
幼少の頃から俺にベッタリでかつては将来"俺のお嫁さんになる!"なんて事も言っていた。
俺ももう高校生になったと同時にルカは中学3年生。
だけど、ルカはまだ俺のお嫁さんになる!と言っている!
堅物真面目少年と妹系ゆるふわ天然少女による拗らせ系ラブコメ開幕!!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる