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CHAPTER 7
しおりを挟む星岬技術研究所 本部棟7F 役員執務室
役員ナンバー11は、人生に於いて一番と言っても過言ではない爽快感を感じていた。
とにかく頭がスッキリして冴えわたる、そんな感じでいた。
そうだ、星岬所長にお礼を申し上げねば。
我ながら良い考えだ、そう考えると柄にもなく笑みが零れてしまう。
早速、秘書に所長とのアポを・・・って、オイオイどこ行くんだ?
どうしたというのだ?
まったく最近の若い者ときたら何を考えているのやら。
役員ナンバー11はこみ上げる爽快感に至福を感じ、踊り出しそうな自分を抑えるのが精一杯だった。
だがそれは、他者から見るとまるで発狂してしまったとしか見えない状態であった。
ここで一旦、時間は昨夕まで遡る。
星岬技術研究所 東研究棟 第三実験室(通称:開かずの間)
壁のように大きな装置が鳴動している。
まるで気を溜めているかのようだ。
星岬が目で追い、手を伸ばしてそれに応えようとする。
「星岬・・・」
邦哉は横になると苦しがる星岬を、上半身を起こした状態のまま支えるので手いっぱいだった。
「お待たせした。実験再開だ・・・!」
「何を言っている!? そんな状態じゃないだろう?」
ゼェゼェと嫌な音を立てながら星岬が何者かに応えている。
何だ? 誰と話している?
・・・こぽ・・・
「?」
邦哉は一瞬考えてこのままではいけないと判断して立ち上がろうとしたところ、星岬に止められた。
「待て邦哉。これは高濃度のオゾンを吸引した結果、肺の細胞が損傷したことにより、肺に水が溜まってきていると推察される。有機体には限界がある。これまで俺は有機体にこだわって来たが、ここらで視点を変えてもいいかもしれない。」
「何を考えている?」
星岬の言葉に何かしらの分岐点を感じて、邦哉はストレートに聞いた。
「俺は・・・憧れた・・・不死性に・・・」
星岬は、これもまた計算の内!とでもいうような落ち着きようである。
だが、邦哉の腕の中で、星岬は確実に弱っている。たかがオゾン脱臭装置が放出したオゾンで、私は30年来の友人を失うのか? バカな! あり得ない!
「・・肉体・・・の・改造・データ・・は・・・自分自身で・・・」
段々聞き取り難くなる声が、否が応でも星岬の最後を予感させて、邦哉を辛くさせた。
溢れ出す感情に、たまらず上を向いたとき、邦哉は三角形のシルエットをした何者かが自分たちを、まるで観察するかのように見下ろしていたのと目が合った。
「・・・え?・・・」
訳が分からないうちに、何かもの凄い衝撃が身体を直撃した。邦哉は宙を舞ってコンクリートの柱に身体を強打して呼吸が詰まる。息が出来ずに悶絶していると、三角形のシルエットが星岬を大事そうに抱え上げるのが見えた。
声が出ない! 待て! 星岬を連れて行くな!
酸欠で遠のく意識をなんとか繫ぎ止め、気力を振り絞って立ち上がる。
目一杯伸ばした腕が、三角形のシルエットを捕らえたかに思われた。
それは願いに過ぎず、現実はむなしく伸ばした腕は空を切った。
行くな!
声にならないセリフを吐いて、邦哉は気を失うことになる。
どのくらい時間は経ったのだろう?
実際には3分と経ってはいなかった。
激しく咳きこむと、邦哉は目を覚ました。
もう何年も経ってしまったように色褪せて見える室内に星岬は、いない。
ゆっくり立ち上がると、どうしようもない喪失感に邦哉は顎を引いて片手の平で顔を覆った。表情を読まれたくなかったのだ。
誰もいないとわかっているのに。
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