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CHAPTER 8
しおりを挟む星岬技術研究所 所内ネットワーク(電脳空間にて)
サーディアは邦哉の情報を求めて所内ネットワークに接続されているあらゆるデバイスの記録を洗っていた。
どこを訪ねても防壁プログラムに阻まれるのだが、サーディアはその尽くを突破してしまっていた。
すると、眼の前によく知った顔が現れた。
「キミは誰だい?」
そうか、自分は知っていても、向こうは自分を知らないのだ。
「返答が無いので20秒後に排除プログラムを始動する。立ち去れば良し! 消滅を望むのならそのまま待つがいい。」
なるほど、邦哉が教えてくれた通りの人物像だ。と、サーディアは得心した。
「再度尋ねる! キミは誰だ!?」
語気に緊張感が現れた! 邦哉と最後に一緒にいたと思しき人物、星岬開。この研究所の所長にしてCEO。その人の組んだ防壁プログラムであれば触れてみるのもオモロイか?
・・・やめておこう。
サーディアは一旦ネットから落ちる事にすると、いつもの、窓際の陽だまりのぬくぬくでまったりした あの場所 に戻った。
星岬技術研究所南研究棟2F 開発主任室(紀伊邦哉自室)
スリープが解除されたモニター画面の中で、サーディアは頬杖をついて窓の外を想像していた。機密保持の為に、研究棟の大部分の窓はワイヤー入り型ガラスを採用しているので、外の景色はクリアに視認できない。
チチチ・・・
窓辺に小鳥が飛んできた。何という小鳥だろうか?
画像を検索する。
これかな?
スズメ目スズメ科・・・
一度この目でハッキリと見てみたいものだ。・・・って、自分には決まった目なんか無いのだけれど。
ん?
何をやっているのだ、今はそれどころじゃ無いだろう!?
邦哉を探す!
データ処理速度が遅くなってきたようだ。
一度クリーンアップしてから出直そう。
そう決めると、サーディアは一旦自らを眠らせるように再起動をかけた。
見られている。
サーディアは視線を感じていた。最近、頻繫に感じるようになっていた。
気のせいではない。
何者だ?
およそ見当もつかない。
それはそうである。
サーディアは邦哉のオリジナルであり、オンリーワンなのだ。
口外していないのだから、知るヒトなどあろう筈もない。
だが、何者かが自分に注目しているのだ。
コレはかなりヤバい状況である。
いつからだ!?
思い出せ!
しばらくの間、自分のメモリーを洗ってみて、1ヶ所だけ、他人と関わった事があるのを思い出した。あの時の・・・
自殺は願望であり、生存は本能である。
この時か!?
寂しい、というのがどういう事か? サーディアには今ひとつ解らない感覚であったが、きっと一番しっくりくる感覚であったろう。あの時の彼女は、これも女性で当たっているのか解らないが、とにかく彼女は寂しそうにポツンと情報の潮流の中に立ち尽くしていたのだ。両肩を落としたそのシルエットは非常に特徴的で、まるで三角形。
出会った時も自分はココに居て、彼女が佇んでこちらを伺っているという状況であった。
彼女は一体、何者であろうか?
友達に、なれるだろうか?
これは話が飛躍し過ぎか。
良いヒトだといいな。
ヒトかどうか分からないけど。
・・・じゃなくて!
自分を何者かが見ている。それに心当たりは無いか? という話しではなかったか。
であれば、心当りは”有り”だ。そして今、見られている。
それで、どうする?
今はクリーンアップ中だ。
プログラムをキャンセルするか?
それは今でなくていい。
対象の動きに警戒を怠らずクリーンアップの完了を待つ。
こんなとこね。
一通り思考を終えてサーディアは自ら立案したコマンドを実行した。
モニターが消灯しスリープモードに入ると、窓の外にいたスズメがつまらなそうに飛び去った。
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