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二章
二章 三分の二
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主導権を掴み損ねた、守田の口は重い。
「その、甥御さんの鞄から未清算の商品が出てきまして……」
「甥御と言うのは、この鶴太郎のことでしょうか?」
「え、はい。そうですが?」
「この鞄から清算前の商品が出てきた、と?」
「ええ、そうです!」
「それが『この商品』と言うことですか?」
和哉は机の上のCDを指して確認した。
「ええ、これです。間違いありません」
明らかに守田を挑発するようなやり取りが続く。
「お二人がそれを確認されたと……」
「いえ、確認しているのは私だけですが!」
ここで少し間でも開いていれば、守田にも挽回のチャンスはあった。
しかし、和哉の詰問は容赦なく続いた。
「では、鶴太郎が鞄の中に商品を入れるところを店長さんが目撃されたということで宜しいでしょうか?」
「あ、いや、私ではなく保安員が目撃しております」
「その方は何方に?」
「既に退店しておりますが?」
先程の聴取と同じような問答が繰り返される。
「なるほど……では、防犯カメラの映像を確認させて頂けますか?」
ここで少し、風向きが変わった。
「そんなの出来ませんよ!」
これまでと違い、守田の意思がハッキリと伝わる物言い。その強度は『拒否』を通り越して『拒絶』の領域。
「何故でしょう? 少なくとも犯行の瞬間を説明してもらえないうちは、こちらも納得できませんが……」
「未清算の商品が出てきているんですよ! それで、もう十分でしょう!」
守田はCDを指差し、ここぞ、とばかりに主導権を奪いにかかる。
しかし、一転して冷静な和哉が、これを去なす。
「ええ、それは伺いました。ただ、状況を知るためにも映像の確認は必須に思うのですが……」
平行を辿る会話に、妙な既視感を抱いた洸平が無意識に割って出る。
「確かに、盗んだと言うのが伝聞だけというのは良くありません」
「ですが、防犯上の理由から簡単にお見せする訳にもいかんのです!」
守田の頑なな姿勢に、洸平は既視感の理由に辿り着く。
(まさか、同業者?)
雰囲気が取り調べにそっくりなのだ。実際、ここまでの質問も先程の聴取と重複している。
同じことを繰り返し聞かれると言うのは、それだけでも苦痛が伴う。ましてや、刑事が同席するとなると負荷は相当……素人なら簡単に感情が乱れる。店長の反応が正にソレ。
感情を揺さぶってボロを出させるのは、取り調べの常套手段だ。
会話のやり取りに既視感を覚えて無意識に合いの手まで入れた、洸平に浮かんだ懸念が『同業者』……。
(だったら、視線が盗まれたことも納得がいく)
「その、甥御さんの鞄から未清算の商品が出てきまして……」
「甥御と言うのは、この鶴太郎のことでしょうか?」
「え、はい。そうですが?」
「この鞄から清算前の商品が出てきた、と?」
「ええ、そうです!」
「それが『この商品』と言うことですか?」
和哉は机の上のCDを指して確認した。
「ええ、これです。間違いありません」
明らかに守田を挑発するようなやり取りが続く。
「お二人がそれを確認されたと……」
「いえ、確認しているのは私だけですが!」
ここで少し間でも開いていれば、守田にも挽回のチャンスはあった。
しかし、和哉の詰問は容赦なく続いた。
「では、鶴太郎が鞄の中に商品を入れるところを店長さんが目撃されたということで宜しいでしょうか?」
「あ、いや、私ではなく保安員が目撃しております」
「その方は何方に?」
「既に退店しておりますが?」
先程の聴取と同じような問答が繰り返される。
「なるほど……では、防犯カメラの映像を確認させて頂けますか?」
ここで少し、風向きが変わった。
「そんなの出来ませんよ!」
これまでと違い、守田の意思がハッキリと伝わる物言い。その強度は『拒否』を通り越して『拒絶』の領域。
「何故でしょう? 少なくとも犯行の瞬間を説明してもらえないうちは、こちらも納得できませんが……」
「未清算の商品が出てきているんですよ! それで、もう十分でしょう!」
守田はCDを指差し、ここぞ、とばかりに主導権を奪いにかかる。
しかし、一転して冷静な和哉が、これを去なす。
「ええ、それは伺いました。ただ、状況を知るためにも映像の確認は必須に思うのですが……」
平行を辿る会話に、妙な既視感を抱いた洸平が無意識に割って出る。
「確かに、盗んだと言うのが伝聞だけというのは良くありません」
「ですが、防犯上の理由から簡単にお見せする訳にもいかんのです!」
守田の頑なな姿勢に、洸平は既視感の理由に辿り着く。
(まさか、同業者?)
雰囲気が取り調べにそっくりなのだ。実際、ここまでの質問も先程の聴取と重複している。
同じことを繰り返し聞かれると言うのは、それだけでも苦痛が伴う。ましてや、刑事が同席するとなると負荷は相当……素人なら簡単に感情が乱れる。店長の反応が正にソレ。
感情を揺さぶってボロを出させるのは、取り調べの常套手段だ。
会話のやり取りに既視感を覚えて無意識に合いの手まで入れた、洸平に浮かんだ懸念が『同業者』……。
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