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八章
八章 五分の一
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「偉いことになったぞ、和哉君。遂に、橘花穂華が代理人を承諾しよった。これで全ての条件が整った。いよいよだ、『やつがれトンキー』を世に出せる!」
質屋の若旦那に昔者が駆け寄って来る。
「それは何よりです、稔侍翁」
和装に不釣り合いな白手袋は、食傷気味に昔者の接近を許した。
「いやいや、先々代も凄かったけど、君の『心眼』は相当だ! こっちは年越しも覚悟しとったんよ」
(ええ、それは私も……そのつもりでしたよ)
偶然のトラブルが糸口になっただけ!
戦利品として回収したCDを甥の鶴太郎にせがまれ、鑑定してみたら……何と、例のアクセサリーと痕跡が一致した!
なりふり構わず、翌日には接触を果たして、後は……。
だが、いよいよ以ってこれで、和哉は稔侍翁を京都に囲い込んでおく理由を無くしてしまった。
御年、七十八歳。日本を代表するアートギャラリー『銀座 匠』の主宰――花山稔侍――日本のバブル経済期に、投資先を不動産から美術品に切り換えて大成功を収めた名伯楽。
トレードマークの山高帽と杖は、敬愛するチャップリンから影響を受けたもの。堅牢な足腰にも関わらず、愛用を続けて半世紀が経つ。そのせいもあって、ついた呼び名が『稔侍翁』。昨今は、それが相応しい年齢になって愛称だったことを知る者も少なくなってきた。
バブル崩壊後に投資先を漫画やアニメに傾け、日本のポップカルチャーが世界に広まる架け橋として果たした功績は類を見ない、陰の立役者でもある。
(これじゃ、瑞稀さんに殺されかねない!)
「少なくとも、来年の春までは絶対、お爺ちゃんを本店に近づけないで!」
足止めのつもりで依頼した、無理難題を年内に解決してしまうのだから……瑞稀が怒るのも無理はない。
(とは言え、視えるものは……しょうがない!)
質屋の若旦那に昔者が駆け寄って来る。
「それは何よりです、稔侍翁」
和装に不釣り合いな白手袋は、食傷気味に昔者の接近を許した。
「いやいや、先々代も凄かったけど、君の『心眼』は相当だ! こっちは年越しも覚悟しとったんよ」
(ええ、それは私も……そのつもりでしたよ)
偶然のトラブルが糸口になっただけ!
戦利品として回収したCDを甥の鶴太郎にせがまれ、鑑定してみたら……何と、例のアクセサリーと痕跡が一致した!
なりふり構わず、翌日には接触を果たして、後は……。
だが、いよいよ以ってこれで、和哉は稔侍翁を京都に囲い込んでおく理由を無くしてしまった。
御年、七十八歳。日本を代表するアートギャラリー『銀座 匠』の主宰――花山稔侍――日本のバブル経済期に、投資先を不動産から美術品に切り換えて大成功を収めた名伯楽。
トレードマークの山高帽と杖は、敬愛するチャップリンから影響を受けたもの。堅牢な足腰にも関わらず、愛用を続けて半世紀が経つ。そのせいもあって、ついた呼び名が『稔侍翁』。昨今は、それが相応しい年齢になって愛称だったことを知る者も少なくなってきた。
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(これじゃ、瑞稀さんに殺されかねない!)
「少なくとも、来年の春までは絶対、お爺ちゃんを本店に近づけないで!」
足止めのつもりで依頼した、無理難題を年内に解決してしまうのだから……瑞稀が怒るのも無理はない。
(とは言え、視えるものは……しょうがない!)
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