転生幼女は発酵スキルで、異世界に和食革命を起こす!味噌、醤油、酢を作って餌付けしたら、いつの間にか世界に名が轟いていた件

西野和歌

文字の大きさ
44 / 134
第3章 ディラン王国へ

第44話 さらばだ! ディラン!

しおりを挟む
 炊き込みご飯パワーで、エバはたちまち王様の痔を治したらしい。
 そして、今私たちは「元・痔主」であった事など、なかったかのように澄ました王様の前にいる。

「息子ともども、我が精霊様が世話になった。心より感謝申し上げる。君は小さな聖女だよ」
「でへへでしゅ」

 褒められるとテレテレします。もっと、もっとだ、もっと褒めろ。
 なぜか他人事みたいなエバがパチパチパチと手を叩く。

「良かったですなエバ様」
「本当よ~。ところで今後は私のご飯どうなるの?」
「だから、うちの国からお前の所に何か送るって言ってるだろうが馬鹿鳥」

 アールが、さも自分の取り分が減るとばかりに嫌そうな顔をした。

「はははっ、そちらの彼はなんと勇ましい事か」
「心より、スターツ王国には感謝と、今後の友好を誓います」

 いやいや、むしろ忠誠を誓うがいい。
 私の国スターツではなく、私個人にね! あはははははっ!

「悪い顔してるよ……まゆまゆ」
「あら、いやんでしゅ」
「ところでシュヴァルツ、なぜアリアナ王女をまゆまゆと?」
「僕の中では、命より大事な人を、まゆまゆと呼ぶのですよ父上」
「お前はたまに不思議な事を言うが……まあ、仲良くするがいい」
「はい、そこで父上にお願いがあります」

 しゅーさんは、自らの父親の前で膝をついた。

「どうか僕に、世界を見るための旅に出る事をお許しください」
「いきなりどうした?」
「きっと、まゆまゆは、このスキルを使って他国にも赴くでしょう。その時に僕は傍にいたい」
「しかし、お前はまだ子供だろう」
「僕は子供でも男です。何より愛しい人を守れる立派な男でいたいのです」

 しっかりと目を逸らさずに、父親にそう告げたしゅーさんに、私の胸は熱くなった。
 カッコいいよしゅーさん。

 余所見して、あのメイド可愛かったなーと独り言を言ってる馬鹿犬と、わざとらしくハンカチで目元を拭うエバがいた。

「感動よ! 愛よ! 燃え上がるわよ! いいわ私も一緒に行くわ!」
「いやいや精霊様、それは他国に行くという事ですか!」

 慌てたしゅー父が席を立つ。うん、お尻元気だねーとても元気だねーふふふん。
 燃え上がるエバは、情熱のままに国王を説得しはじめた。
 うん、説得だよね?

「だからっ、チビ姫ちゃんがいれば少しは離れても大丈夫だって! ちゃんと遠くから加護も送るし、私も愛に生きたいのよっ!」
「よし逝け、とっとと天に逝け!」

 アールは必死だなぁ、ざまあ。
 ひたすらアールに胸を押し付けて抱き着くエバと、それを引き離すアールの阿鼻叫喚は見ものではあるが、一応精霊様とやらで、見守る誰もが止めることは出来ない。
 ポップコーンないの? 食べながら見学したいなぁ。
 そして、エバがキレた。

「いい事よくお聞き、私はこの子たちと共に行く。これはもう、精霊が決めた決定事項である。わらわに逆らうか!」

 激しい威圧と、エバから立ち上がる炎のような影に、私たちはアールを覗いて本能で畏怖して体が動かなくなる。

「びぃっ!」
「くっ、大丈夫」

 兄がビリビリと震える空気の中、必死に怯えた私を抱きしめてくれる。
 私もなんとか動けるが、見ると並んでいた侍女や、しゅー兄は汗すら流して震えているが、ヤバそうに体を揺らしてる。
 国王はかろうじて、大丈夫そうだという事は……スキルが関係しているのだろう。

「行くわよ、わかったわね!」
「息子を、息子を宜しくお願いしますエバ様!」
「任せなさい!」

 やっと、フッと威圧が消えて、私たちは楽に息をする事ができた。
 見ると、スキルのない者たちは気絶していた。

「おいおい、やり過ぎでしゅよ」
「うふっ、ともかく許可が出たから、王子付きの侍女としてお供するわね」
「というか、お前正体バラして大丈夫なの? 放火魔だってバレちゃうでしゅよ?」
「まかせて! お腹いっぱいだから力がみなぎってるのよ! あっそーれ」

 私はエバの体から、何かが飛び出す気配を感じた。
 これが、エバの力……感じるのは契約したからだ。

 フォンと赤い光が飛び散って、キラキラと気絶した者たちへ落ちて溶けていく。
 黙ってエバを引き離したアールが薄く笑った。

「記憶を消したのか」
「そうよ、この瞬間だけね。あくまで使えるのは、この国の者たちだけよ」

 王はガクリと膝をついて、大きなため息をついた。
 しゅーさんは、そんな父の肩を叩いて励ました。

「ただ彼女と共にいるだけです。何より精霊様がついてくれています」
「ああ、だが王である前に父として、お前も大事なのだ」
「ありがとうございます。僕も父上が大好きですよ」

 ガハッと抱き合った親子愛に、私とエバはパチパチと拍手を送る。
 そして冷めた男どもが言った。

「おいアール、私はアーリーを旅に出すのは認めていない。そもそもどこに行くのだ、何の為に? 美味いものの為に? ならば別にアーリーは国にいればいい。他国の精霊様には、私が外交と共に、アーリーの作った食料を届けよう」
「私もそれがいいと思うのですがね王子、ですが一つ見誤ってますよ?」
「何だ? アール」
「チビが大人しくしてる訳がない。ともかく、とっとと帰りましょうぜ。ここの用事も終わったみたいだ」

 そうだ。ともかく帰宅しよう。
 この国も見たし、エバも元気になった。

 何より戦利品を手に入れて、私は大変ホクホクだった。
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

積みかけアラフォーOL、公爵令嬢に転生したのでやりたいことをやって好きに生きる!

ぽらいと
ファンタジー
アラフォー、バツ2派遣OLが公爵令嬢に転生したので、やりたいことを好きなようにやって過ごす、というほのぼの系の話。 悪役等は一切出てこない、優しい世界のお話です。

ヒロインですが、舞台にも上がれなかったので田舎暮らしをします

未羊
ファンタジー
レイチェル・ウィルソンは公爵令嬢 十二歳の時に王都にある魔法学園の入学試験を受けたものの、なんと不合格になってしまう 好きなヒロインとの交流を進める恋愛ゲームのヒロインの一人なのに、なんとその舞台に上がれることもできずに退場となってしまったのだ 傷つきはしたものの、公爵の治める領地へと移り住むことになったことをきっかけに、レイチェルは前世の夢を叶えることを計画する 今日もレイチェルは、公爵領の片隅で畑を耕したり、お店をしたりと気ままに暮らすのだった

元侯爵令嬢の異世界薬膳料理~転生先はみんな食事に興味が無い世界だったので、美味しいご飯で人の身も心も癒します~

向原 行人
ファンタジー
 異世界へ転生して数日。十七歳の侯爵令嬢、アリスとして目覚めた私は、早くも限界を迎えていた。  というのも、この世界……みんな食事に興味が無くて、毎食パンとハムだけとか、ハムがチーズに変わるとか、せいぜいその程度だ。  料理というより、食材を並べているだけって感じがする。  元日本人の私としては温かいご飯がたべたいので、自分で食事を作るというと、「貴族が料理など下賤なことをするのは恥だ!」と、意味不明な怒られ方をした。  わかった……だったら、私は貴族を辞める!  家には兄が二人もいるし、姉だっているから問題無いでしょ。  宛てもなく屋敷を飛び出した私は、小さな村で更に酷い食事事情を目の当たりにする。  育ち盛りの子供たちや、身体を使う冒険者たちが、それだけしか食べないなんて……よし、美味しいご飯でみんなも私も幸せになろう!  医食同源! 大食いモフモフ聖獣に、胃袋を掴んでしまった騎士隊長と一緒に、異世界で美味しくて身体に良い食材探しだ! ※第○話:主人公視点  挿話○:タイトルに書かれたキャラの視点  となります。

不倫されて離婚した社畜OLが幼女転生して聖女になりましたが、王国が揉めてて大事にしてもらえないので好きに生きます

天田れおぽん
ファンタジー
 ブラック企業に勤める社畜OL沙羅(サラ)は、結婚したものの不倫されて離婚した。スッキリした気分で明るい未来に期待を馳せるも、公園から飛び出てきた子どもを助けたことで、弱っていた心臓が止まってしまい死亡。同情した女神が、黒髪黒目中肉中背バツイチの沙羅を、銀髪碧眼3歳児の聖女として異世界へと転生させてくれた。  ところが王国内で聖女の処遇で揉めていて、転生先は草原だった。  サラは女神がくれた山盛りてんこ盛りのスキルを使い、異世界で知り合ったモフモフたちと暮らし始める―――― ※第16話 あつまれ聖獣の森 6 が抜けていましたので2025/07/30に追加しました。

貴族令嬢、転生十秒で家出します。目指せ、おひとり様スローライフ

ファンタジー
第18回ファンタジー小説大賞にて奨励賞を頂きました。ありがとうございます! 貴族令嬢に転生したリルは、前世の記憶に混乱しつつも今世で恵まれていない環境なことに気が付き、突発で家出してしまう。 前世の社畜生活で疲れていたため、山奥で魔法の才能を生かしスローライフを目指すことにした。しかししょっぱなから魔物に襲われ、元王宮魔法士と出会ったり、はては皇子までやってきてと、なんだかスローライフとは違う毎日で……?

転生チート薬師は巻き込まれやすいのか? ~スローライフと時々騒動~ 

志位斗 茂家波
ファンタジー
異世界転生という話は聞いたことがあるが、まさかそのような事を実際に経験するとは思わなかった。 けれども、よくあるチートとかで暴れるような事よりも、自由にかつのんびりと適当に過ごしたい。 そう思っていたけれども、そうはいかないのが現実である。 ‥‥‥才能はあるのに、無駄遣いが多い、苦労人が増えやすいお話です。 「小説家になろう」でも公開中。興味があればそちらの方でもどうぞ。誤字は出来るだけ無いようにしたいですが、発見次第伝えていただければ幸いです。あと、案があればそれもある程度受け付けたいと思います。

【完結】転生7年!ぼっち脱出して王宮ライフ満喫してたら王国の動乱に巻き込まれた少女戦記 〜愛でたいアイカは救国の姫になる

三矢さくら
ファンタジー
【完結しました】異世界からの召喚に応じて6歳児に転生したアイカは、護ってくれる結界に逆に閉じ込められた結果、山奥でサバイバル生活を始める。 こんなはずじゃなかった! 異世界の山奥で過ごすこと7年。ようやく結界が解けて、山を下りたアイカは王都ヴィアナで【天衣無縫の無頼姫】の異名をとる第3王女リティアと出会う。 珍しい物好きの王女に気に入られたアイカは、なんと侍女に取り立てられて王宮に! やっと始まった異世界生活は、美男美女ぞろいの王宮生活! 右を見ても左を見ても「愛でたい」美人に美少女! 美男子に美少年ばかり! アイカとリティア、まだまだ幼い侍女と王女が数奇な運命をたどる異世界王宮ファンタジー戦記。

異世界リナトリオン〜平凡な田舎娘だと思った私、実は転生者でした?!〜

青山喜太
ファンタジー
ある日、母が死んだ 孤独に暮らす少女、エイダは今日も1人分の食器を片付ける、1人で食べる朝食も慣れたものだ。 そしてそれは母が死んでからいつもと変わらない日常だった、ドアがノックされるその時までは。 これは1人の少女が世界を巻き込む巨大な秘密に立ち向かうお話。 小説家になろう様からの転載です!

処理中です...