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第4章 女神降臨
第45話 帰って来たぞと勇ましく
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さあさあ、祖国にご帰還だ。
久しぶりの我が国、スターツ王国に戻ってきたよ。
私はガッシリと壺を抱えて、帰りの三日間はご満悦だった。
だって、味噌と醤油を手に入れたんだよ?
踊れるよ? 今なら元気に花笠音頭でぐーるぐるだ。
あちらの国を立つ前に、一応少しの醤油とか味噌を残しておいた。
レシピも置いて来たから、色々と試しに作ってみるといいよ。
時間があれば、ディランでも色々と試してみたかったのだが、なぜか兄が帰国を急いだのだ。
帰りの馬車内でも、兄はあきらかに機嫌が悪い。
いや、私には隠そうとして甘々ではあるのだが、ふと気づくと爪を噛んで思い悩んでいる。
「にーたん、お爪はメッでしゅ」
「ああ、すまない。ははっ、悪い癖だな。よくメリッサ様にも怒られたものだ」
「かーたん」
「そうだよ。私はね、彼女が初恋だったんだ」
「へー」
果てしなく、どうでもいい情報だった。
とりあえず適当に返事をしたのだが、勝手にロマンスを語る兄は夢見がちなんだろう。
まあ、まだ聞けば十八歳の青年だ。
私が生まれる前なら、彼は年ごろ十五歳とかそれ位。
思春期真っ只中だね、うんうん。
兄の話を聞いてる振りをしつつ、お宝の醤油と味噌をどう使おうか、私の頭はワクワクしていた。
「それで侍女であったメリッサ様は私のって、おいまた外で何か揉めてるな」
放っておけばいいのに、兄はちょっと待っててと告げて飛び出した。
どうせまた、アールとエバが揉めているのだ。
今回はディランより護衛はなし。共に旅するのは、私と兄とアール、あちらはしゅーさんとエバだけ。
つまり、隠すことなくやりたい放題というわけだ。
精霊が二人もついてるんだから、魔物が現れてもへのかっぱ。
というか、エバが火をつけ山火事寸前だったり、笑って魔物を追いかけまわしたアールを止めに行った兄が行方不明なったりとドタバタだ。
私? 私は基本的には外に出ないよ?
ああ、森の奥に入った時は、しゅーさんと木苺をみつけて貪った程度だ。
口から服から汁で染まって、そのあと近くの泉でドボンとされた。
泉でチャプチャプする、妖精のような幼女が誕生。
それは、わ・た・し。
可愛い? 可愛いでしょ?
つまり私は最強なのだ! 泳ぎ苦手だけどな!
陸地のマーメイドと、呼びたまえ。
こうして最強で無敵な私が、まもなく凱旋する。
遠くに見えた城が、だんだんと近づいて来て、とうとう私たちは大きな門をくぐった。
馬車の外からでもわかる。
城の者たちが一斉に、私たちを出迎えてくれている。
「凄いね、いつもこうなのですか?」
しゅ-さんが尋ねると、兄は否定した。
「いや、私の時は誰も来ない」
「……なんというか、すいません」
チラリと窓の外を見ると、本気で沢山の使用人たちや兵士が列をなして並んでいた。
チョイと顔を出すだけで、大きなどよめきが起こった。
「きゃーっ! 姫様よ姫様!」
「やっと、やっと俺の癒しが帰ってきた!」
「おいまて、俺の天使だぞ! あの窓からチョンが最高に可愛すぎる!」
「ちっちゃい天使万歳! 万歳! 万歳!」
盛り上がってるなーと、私は一度席に着く。
向かいに座る兄が、闇を抱えて一言言った。
「よし、どこかに行こうか?」
「ダメですよ。とりあえず僕も改めてお話したいですし、何より彼らはまゆまゆを待っています」
どうも外ではアールがイェーイして、お前じゃねーよと突っ込まれ、なんだとーとキレている。あれがうちの守護精霊だとは、誰も思わないだろう。
エバはひたすら、キャーッとノリにノリつつ、きちんとアールの腕にしがみついて離れないのは流石だった。
「エバ様は元気いっぱいで嬉しいです」
しゅーさん、本当にそれでいいんだな?
ま、いっかと私は兄にダッコされて馬車を降りた。
私の姿が現れた途端に、うわぁーっ! と大歓声が湧きあがった。
これはもう、私って神じゃない? 神降臨!
ワーだのキャーだの、本当にうるさい。
だけど、私の信者たちなのだ。あえて耐えつつ手を振ってやる。
うむ、何人か興奮の限界突破で気絶したみたいだ。
何気にアールが、好みの侍女の介抱に向かった瞬間に、エバに首締められていて笑った。
あっちはあっちで楽しそうだ。
ああ、帰って来たんだなと、感慨深くすらある。
そう、目の前に見覚えのある、いかついオッサンが両手広げて向かってくるまでは……だ。
「ア~ちゃん! お帰りっ! お帰りぃぃいいいーっ!」
涙目で、豪勢な服をきた国王が勢いよく向かってくるのだが?
なんとか兄の腕から抜けして逃げようとしたのだが、察した兄の腕に力がこもる。
「あきらめようアーリー、これが現実だ」
「嫌でしゅ! ヒゲヅラは嫌でしゅ!」
「悲しくても、あれが実の父なのだ」
「キモイでしゅ! いかついオッサンの笑顔と涙がキモイでしゅ!」
だが無念。私はキモ王こと、父に熱烈に抱きしめられてしまった。
しかも、ズリズリと頬ずりまでされてしまう。
「ぴぎぃいいーっ」
「ああ無事で良かった! 本当に良かった!」
「父上おちついて下さい。そして私もいるのですが」
「あ、お前もいたなシリウス」
「……とりあえず、アーリーを休ませてあげてください」
「おおそうだな。ところで、ディランの王子がなぜまたいるんだ?」
「それも後でお話しますから」
「ぷしゅぅ」
精魂尽き果てた私は、父に抱えられて連行されて行ったのだった。
久しぶりの我が国、スターツ王国に戻ってきたよ。
私はガッシリと壺を抱えて、帰りの三日間はご満悦だった。
だって、味噌と醤油を手に入れたんだよ?
踊れるよ? 今なら元気に花笠音頭でぐーるぐるだ。
あちらの国を立つ前に、一応少しの醤油とか味噌を残しておいた。
レシピも置いて来たから、色々と試しに作ってみるといいよ。
時間があれば、ディランでも色々と試してみたかったのだが、なぜか兄が帰国を急いだのだ。
帰りの馬車内でも、兄はあきらかに機嫌が悪い。
いや、私には隠そうとして甘々ではあるのだが、ふと気づくと爪を噛んで思い悩んでいる。
「にーたん、お爪はメッでしゅ」
「ああ、すまない。ははっ、悪い癖だな。よくメリッサ様にも怒られたものだ」
「かーたん」
「そうだよ。私はね、彼女が初恋だったんだ」
「へー」
果てしなく、どうでもいい情報だった。
とりあえず適当に返事をしたのだが、勝手にロマンスを語る兄は夢見がちなんだろう。
まあ、まだ聞けば十八歳の青年だ。
私が生まれる前なら、彼は年ごろ十五歳とかそれ位。
思春期真っ只中だね、うんうん。
兄の話を聞いてる振りをしつつ、お宝の醤油と味噌をどう使おうか、私の頭はワクワクしていた。
「それで侍女であったメリッサ様は私のって、おいまた外で何か揉めてるな」
放っておけばいいのに、兄はちょっと待っててと告げて飛び出した。
どうせまた、アールとエバが揉めているのだ。
今回はディランより護衛はなし。共に旅するのは、私と兄とアール、あちらはしゅーさんとエバだけ。
つまり、隠すことなくやりたい放題というわけだ。
精霊が二人もついてるんだから、魔物が現れてもへのかっぱ。
というか、エバが火をつけ山火事寸前だったり、笑って魔物を追いかけまわしたアールを止めに行った兄が行方不明なったりとドタバタだ。
私? 私は基本的には外に出ないよ?
ああ、森の奥に入った時は、しゅーさんと木苺をみつけて貪った程度だ。
口から服から汁で染まって、そのあと近くの泉でドボンとされた。
泉でチャプチャプする、妖精のような幼女が誕生。
それは、わ・た・し。
可愛い? 可愛いでしょ?
つまり私は最強なのだ! 泳ぎ苦手だけどな!
陸地のマーメイドと、呼びたまえ。
こうして最強で無敵な私が、まもなく凱旋する。
遠くに見えた城が、だんだんと近づいて来て、とうとう私たちは大きな門をくぐった。
馬車の外からでもわかる。
城の者たちが一斉に、私たちを出迎えてくれている。
「凄いね、いつもこうなのですか?」
しゅ-さんが尋ねると、兄は否定した。
「いや、私の時は誰も来ない」
「……なんというか、すいません」
チラリと窓の外を見ると、本気で沢山の使用人たちや兵士が列をなして並んでいた。
チョイと顔を出すだけで、大きなどよめきが起こった。
「きゃーっ! 姫様よ姫様!」
「やっと、やっと俺の癒しが帰ってきた!」
「おいまて、俺の天使だぞ! あの窓からチョンが最高に可愛すぎる!」
「ちっちゃい天使万歳! 万歳! 万歳!」
盛り上がってるなーと、私は一度席に着く。
向かいに座る兄が、闇を抱えて一言言った。
「よし、どこかに行こうか?」
「ダメですよ。とりあえず僕も改めてお話したいですし、何より彼らはまゆまゆを待っています」
どうも外ではアールがイェーイして、お前じゃねーよと突っ込まれ、なんだとーとキレている。あれがうちの守護精霊だとは、誰も思わないだろう。
エバはひたすら、キャーッとノリにノリつつ、きちんとアールの腕にしがみついて離れないのは流石だった。
「エバ様は元気いっぱいで嬉しいです」
しゅーさん、本当にそれでいいんだな?
ま、いっかと私は兄にダッコされて馬車を降りた。
私の姿が現れた途端に、うわぁーっ! と大歓声が湧きあがった。
これはもう、私って神じゃない? 神降臨!
ワーだのキャーだの、本当にうるさい。
だけど、私の信者たちなのだ。あえて耐えつつ手を振ってやる。
うむ、何人か興奮の限界突破で気絶したみたいだ。
何気にアールが、好みの侍女の介抱に向かった瞬間に、エバに首締められていて笑った。
あっちはあっちで楽しそうだ。
ああ、帰って来たんだなと、感慨深くすらある。
そう、目の前に見覚えのある、いかついオッサンが両手広げて向かってくるまでは……だ。
「ア~ちゃん! お帰りっ! お帰りぃぃいいいーっ!」
涙目で、豪勢な服をきた国王が勢いよく向かってくるのだが?
なんとか兄の腕から抜けして逃げようとしたのだが、察した兄の腕に力がこもる。
「あきらめようアーリー、これが現実だ」
「嫌でしゅ! ヒゲヅラは嫌でしゅ!」
「悲しくても、あれが実の父なのだ」
「キモイでしゅ! いかついオッサンの笑顔と涙がキモイでしゅ!」
だが無念。私はキモ王こと、父に熱烈に抱きしめられてしまった。
しかも、ズリズリと頬ずりまでされてしまう。
「ぴぎぃいいーっ」
「ああ無事で良かった! 本当に良かった!」
「父上おちついて下さい。そして私もいるのですが」
「あ、お前もいたなシリウス」
「……とりあえず、アーリーを休ませてあげてください」
「おおそうだな。ところで、ディランの王子がなぜまたいるんだ?」
「それも後でお話しますから」
「ぷしゅぅ」
精魂尽き果てた私は、父に抱えられて連行されて行ったのだった。
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