転生幼女は発酵スキルで、異世界に和食革命を起こす!味噌、醤油、酢を作って餌付けしたら、いつの間にか世界に名が轟いていた件

西野和歌

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第7章 四大精霊と救世主

第102話 おかわりいきまーしゅ

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 トコトコと減った後の鍋を確認。
 四つある鍋のほとんどの具材は消え失せた。

 やはり具ありだと、たとえ一人一口だとしても。量はギリギリだったみたいだ。
 残りの汁を薄めて、今度はこの世界の残り全ての人間に飲ませなくてはいけない。

 いくら百倍で薄めても足りないかも知れない。
 私は幸いにも体調がいいし、これはおかわりが必須だなと確信した。

「では、薄めてかさ増しするでしゅよー」

 私は各鍋に両手をかざして、再度フローズン水をぶち込んでいく。
 消えかかった火に、残り少ない我が国の木をくべて貰い、私の火の力で再度の火力の調節をすると、スルスルと鍋は透明なスープが出来上がる。

「絶好調でしゅ」
「そりゃそうよ。うちの坊やが元気を分けたんだから」
「でしゅ?」
「エバ様!」

 私は動きを停止して、エバに羽交い絞めされて乳に埋もれる元・夫と、少し厳しい目で私を見るエバを見つめた。

「女神様に坊やが頼んだのよ。チビちゃんが気絶している間に、何か自分でできる事はないのか? 魂を捧げてもいいってね」
「しゅーさん!!」

 私の叫びに、しゅーさんが顔をそむけたから、より乳に埋もれていく。おい。

「心配しなくても、魂までは影響ないよ。ただ、僕の元気を君に分けるだけだから」
「それは命に影響ないんでしゅか?!」」
「平気だよ、一緒に寝たら回復する、ただの疲労だから」

 そう誤魔化そうとしたしゅーさんの言葉をエバが否定した。

「本来の治癒の能力はね、命を削るものなのよ。少し程度なら影響がなくても使い続ければ魂を傷つけるの」
「魂が傷ついたら……どうなるでしゅか……」
「転生ができなくなるわね」

 あまりの内容に、私は全ての動きを停止してホロホロと涙を流した。
 どうして、なんで、そこまで……しゅーさん。

 大丈夫だから、大げさだとエバに捕獲されながら必死で伝える彼の言葉も耳に入らない。
 だから気づかなかった。
 後ろから足音も立てず近づいたアールが、背後から私をソッと抱き上げた。
 私は無抵抗のままボロボロと泣き続ける。

「いじめるなエバ。決めたのはその小僧だ」
「うちの可愛い坊やの魂に傷一つ入るのは嫌よ」
「女神のした事だ。乱用しないように我らが見守ればいい」

 ずっと頭をナデナデされているが、私は私のせいだと自分を責めていた。
 やっぱり私は、以前と違ってしまった。
 思考も感じ方も、そうか、私は真由美ではなくアリアナでもなく、二つが一つになった新しい存在だから、不安定なんだ。

 耳元でアールに囁かれた。

「ほら、声を殺して泣くんじゃない。お前の取り柄は生意気さと元気だろ?」
「……っ、ふぐっ」
「我ら全ての加護を受けた愛し子に、そんな感情をされると辛い」
「ふぁっ、うわぁぁーっ!」
「よしよし、お前はがんばっている。あの小僧もそうだ。我らがちゃんと力になるから心配するな」

 赤子をあやすように、アールの言葉が染みわたる。
 私はバンバンとアールの首を叩いて抗議した。

「お前らはアタチのしもべでしゅーっ!」
「うんうん、そうだそうだ」
「しゅーさんが無理しないように見張ってほしいでしゅーっ」
「当り前よ、任せて」
「鳥は焼き鳥にしてやるから、とっとと乳から夫を解放しろいでしゅ」
「あら?」

 やっと脂肪から解放されたしゅーさんが、私の元にやってくる。
 アールはゆっくりと降ろした私を、しゅ-さんに手渡した。
 私を全身で受け止めてくれたしゅ-さんが、謝罪してくれる。

「君に頼られたかったんだ。今度こそ君の為だけに何かしたかった」
「ふぇえーん、魂は消えちゃ嫌でしゅ!!」
「うんうん、女神様も無理せず加減したら、ただの疲労で終わるから大丈夫って言ってるから」
「勝手に馬鹿女神なんか頼ったらロクな事にならないでしゅーっ」

 なぜか、後ろで大きく頷くアールがいる。

「ともかく、しゅーさんは無茶するタイプでしゅ」
「信用ないな」
「深夜の残業と、休日バイトーっ」
「うっ……」

 ほら、無茶した自覚あるじゃないか。

「ほら、僕って今若いし……うん」
「若いというより、子供すぎるから自制しなさいという事です。愛しい者の為に頑張るのは美徳ですがね、無茶をして心配させるのは愚か者です」

 羊の説教に、しゅーさんが項垂れる。
 だが、羊はスルリと人の姿になり、しゅ-さんに近づき肩を叩いた。

「それでも、逃げた私と違って、まっすぐに全力なあなたが眩しいですよ」

 そのまま、しゅ-さんに全身ダッコされた私の背中をゼファーは撫でた。

「歪んで与えた私の力を、正常に戻しましょう。これで正しく私の加護が通じるはずです」

 背中に冷たい細い水が走った感覚に、ビクリとしたが一瞬で終わる。
 そしてわかった。
 やっと、私の中でぐるぐると四つの光が渦を巻き、それが一つにまとまって黄金の光になり、七色に変化していく。

「まゆまゆ……光ってる」
「ホタルじゃないでしゅ、アリアナちゃんニューバージョンに進化したでしゅよ!」

 全ての力が、ねるねるねるね! 

 キタァアアアア――――っ!!

「しゅーさんは、本当に困ったときに、ちょっとだけ充電できる乾電池でしゅ」
「うん、再生可能の再利用電池だよ!」
「精霊どもは便利なウーバーなんちゃらとして、今から鍋の中身を配ってこいでしゅ。なんなら、各国のみんなにも手伝って貰うでしゅ」
「おうよ!」
「あのぉ……ワイはどうすれば……」

 それまで景色と同化して、火で暖まっていたデブがそろりと片手を挙げた。
 私はピシャリと指示を出す。

「デブは鍋かき混ぜてろっ」
「わ、わかった」
「精霊どもよ、持っていったついでに、再度材料も調達してこーいっ!」
「次は鶏肉もいいが、豚肉も良くね?」
「私はパナマナで食べたエビがいいなー」
「キノコとかどうでしょうか?」

 なんで舌がこえて味変に積極的なんだ。
 面倒なんで私は叫ぶ。

「どうでもいいから、とっとと運んでこーいっ!」
「「「はいっ!」」」
「って、ジョージにも言っておいてね」

 ちゃんと最後に付け足して、私は去っていく精霊たちの為に、異次元通路を出現させ、各種の襖から旅立っていった。
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