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第7章 四大精霊と救世主
第105話 甘い香りのパウンドケーキ
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「うらぁぁーっ、行ってきたぁ、食わせてきたぁ、あと半分程度足りないから鍋持って帰ってきたぁ!」
「アールうるしゃい!」
何か投げてぶつける物ないかと探していると、エバも口うるさい。
「ちゃんとゼファーみたいに私も、あるだけは食べさせてきたけど、やっぱり足りないわ。もうあと一回は必要よ。あとこれ、追加の豆腐とかキノコとか、うちの国の食材も入れてって、うちの子たちが細かくしてくれているから」
持って行った鍋の中身が、下ごしらえ済みの食材に入れ替えられていた。
そして静かな亀は、背中に乗れる程度のゾウガメの大きさで、のそりのそりと暖炉の前に移動していた。
背中の甲羅にくくりつけられていた鍋の中身には、剥いたエビと白身魚の切り身が大量に入っていた。
「ジョージの国も足りないでしゅか?」
「わしの国は島だけになっておるから、全員にいき渡ったのう」
「なら、どうして鍋と食材持ってきたんでしゅか?」
「そりゃあ、他の国の者たちが食べるようにと、うちの国の者たちが用意したんじゃよ」
ふぇふぇふぇと笑う言葉も力ない。よぼと寒さが堪えるらしい。
甲羅に手を当てると、私にはわかった。
他の精霊たちよりも、ジョージはここにいるだけで力を消耗していた。
という事は……私はエバの手を握る。
「あら? どうしたのチビちゃん?」
「やっぱり、エバも力の消費がヒドイでしゅ」
「うふふ、まあ私はサウス程じゃないから、大丈夫よ」
「田中さんと一緒で、強がらなくていいでしゅよ」
「田中さんて誰?」
前世でお前に似ていた、姉後肌の頼れるご近所さんだよ。
アールが外に鍋をセットしに行ってくれた。
食材はそれぞれの鍋に、また後で配分するなり、それこそ各種違う味にしてもいい。
なんにせよ私は決めた。
暖炉の前に湯を張ったタライが用意されると、ジョージのサイズがシュルシュルと両手サイズに小さくなった。そしてチャポンと浸される。
エバには用意された分厚い毛布が手渡され、即座に暖炉の前でグルグルと体を包み込んでいた。
「ジョージとエバはここにいるといいでしゅ」
「ちょっと、亀はともかく私は……」
「ちゃんと必要な時は呼ぶでしゅ。ここで力を蓄えてろいっ!」
私が説得していると、戻ったアールも同意した。
「そうだ、お前らは役に立ちそうにないから、ここにいろ」
「やだっ、そんなに私が心配なのね」
「うっとおしいからな。そして姫様、私めも二人をここで見張って……」
「アールは今からおやつ出すでしゅけど、いらないんでしゅね」
「誠心誠意を込めて、働かせて頂きます」
わかりゃーいいんだよ、馬鹿狼め。サボろうとすんな。
暖炉の前で色々としてくれていた、しゅーさんとティナが交代した。
「じゃ、僕も残り湯頂きます」
「ん? 残り湯? なんだ風呂か? なら俺も一緒に入る」
「いえ、僕は自分で……」
「男同士が遠慮するな、あーっはっはっは」
肩を抱いて無理やり連行して行った。うん、あの馬鹿狼は逃げた。
ともかく、焼けたパウンドケーキを取り出した。
たぶん、まだ中が生焼けの気がするが、そんなものはこうだ!
「ふわふわモコモコ、おいちくなぁーれ!」
ほれ発酵しろい、ふわっと膨らむがいいっ!
ピカッと光ったその後に、テラテラと香ばしい匂いを放つパウンドケーキが出来上がった。
「クンクン、いい匂いねぇ~」
エバが期待に満ちた顔でこちらを見つめている。
私は教えてやった。
「くっくっくっ、これはバニラ風味のパウンドケーキでしゅよ」
「バニラ風味?」
「バニラはさっき台所で見つけたんでしゅよ、盲点だったでしゅ」
そう、この国でバニラもどきがとれるとは。
本来は黒い粒なのだが、台所の隅に干されていた乾いた花が、まさかのバニラの代用に!
食用の甘味の補助と香り付けに使うときいて、くんかくんかしてみたら、間違いなくバニラだったのだ。
粉にして生地に練り込んだので、焼けた生地から甘い香りが漂っている。
ティナがケーキを、2センチ程度の厚みに切っていく。
うむ、急ぎの思いつきだから量がないのだが、代わりに特製生クリームをたっぷりと乗っけてやろう。
「お、おいしそうっ!」
エバの再度の感嘆の声に被さるように、ドタタタッと何かが落ちる音がした。
「お、おおおお、お嬢ちゃん! またむっちゃ美味いモノ作ったんちゃうか!」
「やだ、取り分減ったわ」
鳥は素直だな……。どうやらスキルのせいか、匂いのせいか、ゼンが釣られて起きてきた。
「もっと寝てていいでしゅよ」
「こんなモノ見つけて、寝てられるわけあらへん!」
ゼンが階段を転がる音がドスンドスンとして、必死の形相で懇願してきた。
「後生や! ぜひ食わせてくれ……いや、下さいっ!」
「いいでしゅけど、とりあえず外に冷やしているアイス取ってこいでしゅ」
「アイス!」
嬉し嬉しと、鳥が目をキラキラさせている。
そう、これだけではないのだよ。
「あ、あ、あの冷たくて甘いのをケーキに乗せる……素敵だね」
「違うでしゅティナ。いいからデブは、外に出たら目印の棒が突き出た所に埋めてある容器を持ってくるでしゅ」
ああ忙しいと、私が一人台所に向かおうとすると、黒い毛玉が現れた。
いや、毛玉ではなくゼファー、黒い羊だ。
「ただ今帰りました。米はどこに置けばいいですか? っと、良い香りがします」
羊が目を細めて鼻を鳴らす。目が怖い、目が怖い。
とりあえず米の入った鍋は、他の皆が持ってきた鍋と一緒にまとめて置いて来てもらった。
私は戻った羊の手を引いて、台所に向かったのだった。
「アールうるしゃい!」
何か投げてぶつける物ないかと探していると、エバも口うるさい。
「ちゃんとゼファーみたいに私も、あるだけは食べさせてきたけど、やっぱり足りないわ。もうあと一回は必要よ。あとこれ、追加の豆腐とかキノコとか、うちの国の食材も入れてって、うちの子たちが細かくしてくれているから」
持って行った鍋の中身が、下ごしらえ済みの食材に入れ替えられていた。
そして静かな亀は、背中に乗れる程度のゾウガメの大きさで、のそりのそりと暖炉の前に移動していた。
背中の甲羅にくくりつけられていた鍋の中身には、剥いたエビと白身魚の切り身が大量に入っていた。
「ジョージの国も足りないでしゅか?」
「わしの国は島だけになっておるから、全員にいき渡ったのう」
「なら、どうして鍋と食材持ってきたんでしゅか?」
「そりゃあ、他の国の者たちが食べるようにと、うちの国の者たちが用意したんじゃよ」
ふぇふぇふぇと笑う言葉も力ない。よぼと寒さが堪えるらしい。
甲羅に手を当てると、私にはわかった。
他の精霊たちよりも、ジョージはここにいるだけで力を消耗していた。
という事は……私はエバの手を握る。
「あら? どうしたのチビちゃん?」
「やっぱり、エバも力の消費がヒドイでしゅ」
「うふふ、まあ私はサウス程じゃないから、大丈夫よ」
「田中さんと一緒で、強がらなくていいでしゅよ」
「田中さんて誰?」
前世でお前に似ていた、姉後肌の頼れるご近所さんだよ。
アールが外に鍋をセットしに行ってくれた。
食材はそれぞれの鍋に、また後で配分するなり、それこそ各種違う味にしてもいい。
なんにせよ私は決めた。
暖炉の前に湯を張ったタライが用意されると、ジョージのサイズがシュルシュルと両手サイズに小さくなった。そしてチャポンと浸される。
エバには用意された分厚い毛布が手渡され、即座に暖炉の前でグルグルと体を包み込んでいた。
「ジョージとエバはここにいるといいでしゅ」
「ちょっと、亀はともかく私は……」
「ちゃんと必要な時は呼ぶでしゅ。ここで力を蓄えてろいっ!」
私が説得していると、戻ったアールも同意した。
「そうだ、お前らは役に立ちそうにないから、ここにいろ」
「やだっ、そんなに私が心配なのね」
「うっとおしいからな。そして姫様、私めも二人をここで見張って……」
「アールは今からおやつ出すでしゅけど、いらないんでしゅね」
「誠心誠意を込めて、働かせて頂きます」
わかりゃーいいんだよ、馬鹿狼め。サボろうとすんな。
暖炉の前で色々としてくれていた、しゅーさんとティナが交代した。
「じゃ、僕も残り湯頂きます」
「ん? 残り湯? なんだ風呂か? なら俺も一緒に入る」
「いえ、僕は自分で……」
「男同士が遠慮するな、あーっはっはっは」
肩を抱いて無理やり連行して行った。うん、あの馬鹿狼は逃げた。
ともかく、焼けたパウンドケーキを取り出した。
たぶん、まだ中が生焼けの気がするが、そんなものはこうだ!
「ふわふわモコモコ、おいちくなぁーれ!」
ほれ発酵しろい、ふわっと膨らむがいいっ!
ピカッと光ったその後に、テラテラと香ばしい匂いを放つパウンドケーキが出来上がった。
「クンクン、いい匂いねぇ~」
エバが期待に満ちた顔でこちらを見つめている。
私は教えてやった。
「くっくっくっ、これはバニラ風味のパウンドケーキでしゅよ」
「バニラ風味?」
「バニラはさっき台所で見つけたんでしゅよ、盲点だったでしゅ」
そう、この国でバニラもどきがとれるとは。
本来は黒い粒なのだが、台所の隅に干されていた乾いた花が、まさかのバニラの代用に!
食用の甘味の補助と香り付けに使うときいて、くんかくんかしてみたら、間違いなくバニラだったのだ。
粉にして生地に練り込んだので、焼けた生地から甘い香りが漂っている。
ティナがケーキを、2センチ程度の厚みに切っていく。
うむ、急ぎの思いつきだから量がないのだが、代わりに特製生クリームをたっぷりと乗っけてやろう。
「お、おいしそうっ!」
エバの再度の感嘆の声に被さるように、ドタタタッと何かが落ちる音がした。
「お、おおおお、お嬢ちゃん! またむっちゃ美味いモノ作ったんちゃうか!」
「やだ、取り分減ったわ」
鳥は素直だな……。どうやらスキルのせいか、匂いのせいか、ゼンが釣られて起きてきた。
「もっと寝てていいでしゅよ」
「こんなモノ見つけて、寝てられるわけあらへん!」
ゼンが階段を転がる音がドスンドスンとして、必死の形相で懇願してきた。
「後生や! ぜひ食わせてくれ……いや、下さいっ!」
「いいでしゅけど、とりあえず外に冷やしているアイス取ってこいでしゅ」
「アイス!」
嬉し嬉しと、鳥が目をキラキラさせている。
そう、これだけではないのだよ。
「あ、あ、あの冷たくて甘いのをケーキに乗せる……素敵だね」
「違うでしゅティナ。いいからデブは、外に出たら目印の棒が突き出た所に埋めてある容器を持ってくるでしゅ」
ああ忙しいと、私が一人台所に向かおうとすると、黒い毛玉が現れた。
いや、毛玉ではなくゼファー、黒い羊だ。
「ただ今帰りました。米はどこに置けばいいですか? っと、良い香りがします」
羊が目を細めて鼻を鳴らす。目が怖い、目が怖い。
とりあえず米の入った鍋は、他の皆が持ってきた鍋と一緒にまとめて置いて来てもらった。
私は戻った羊の手を引いて、台所に向かったのだった。
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