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第四話
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おんなは異国のことばで叫んでいるが、なぜかその意味がおれにはわかる。
種子島が、一斉に火を吹いた。
巨人の身体は火花につつまれたが、まったく傷ついた気配はない。
金属の装甲にはばまれ、種子島の弾は全てはじかれているようだ。
巨人は、おそろしく分厚い装甲を持った鎧を身につけているらしい。
「聖なるかな、聖なるかな!」
隊列は、入れ替わりもう一度種子島が火を吹く。
巨人は意に介さず、一歩すすむ。
「汝らに、祝福を!聖なるかな、聖なるかな!」
燃え盛る夕陽のように金色に輝く目をしたおんなが、魔のように笑いつつ両手を振り回す。
その動作にこたえるように巨人は、両手を顕にした。
「我らが祝福を受けるがいい、愚かな羊たちよ!」
その両腕は、十本ほどの銃身を束ねたものでできている。
種子島と違い、火縄を使わず火打石と火皿を持つ型の銃であった。
その束ねられた銃身が回転しながら、銃弾をまき散らす。
衛士たちが、月明かりのした赤い血をまき散らしながら凶弾にたおれていく。
「愚かな羊たち、汝に祝福を!」
おんなが叫び、再び巨人の両腕が火を吹く。
瞬く間に衛士は全滅し、広場は血で染め上げられた。
おんなはとても楽しそうに笑いつつ、叫んだ。
「聖なるかな、聖なるかな!」
最後に残ったイノウエサマは昏く目をつりあげると、刀を抜いて巨人に向かっていった。
おんなは、けらけらと楽しそうに笑いつつ、手をふるう。
巨人の手から束ねられた銃身が地におち、替わりに鋼鉄の杭が出現する。
刀を振り上げたイノウエサマに向かって、鋼鉄の杭が発射された。
イノウエサマの絶叫が、夜に谺する。
巨人は心臓を串刺しにしたイノウエサマを、夜空に向かって掲げた。
月明かりが死体を、蒼く照らす。
おんなはひらりと巨人の肩から、大地に降りた。
神父さまは、呆然としながらおんなを見つめる。
「あなたはバチカンから派遣されたのか」
おんなは、頷く。
「わたしはイスカリオテ機関のものだ。名はエイレシア」
神父さまは、縋るようにエイレシアと名乗ったおんなをみる。
「では、吊るされたものたちを助けてくれ」
「いいとも」
エイレシアは、凶悪な笑みをうかべると手をふる。
巨人は、杭となっていない銃身が残っている方の手を吊るされた信徒たちに向けた。
銃身の束が回転し銃声が轟き、信徒たちの呻きが消える。
真の静寂が、月明かりの下に降りてきた。
「いったいなぜ」
神父さまは、絶叫するように言った。
「なぜ主は、このようなことをおゆるしになる!」
種子島が、一斉に火を吹いた。
巨人の身体は火花につつまれたが、まったく傷ついた気配はない。
金属の装甲にはばまれ、種子島の弾は全てはじかれているようだ。
巨人は、おそろしく分厚い装甲を持った鎧を身につけているらしい。
「聖なるかな、聖なるかな!」
隊列は、入れ替わりもう一度種子島が火を吹く。
巨人は意に介さず、一歩すすむ。
「汝らに、祝福を!聖なるかな、聖なるかな!」
燃え盛る夕陽のように金色に輝く目をしたおんなが、魔のように笑いつつ両手を振り回す。
その動作にこたえるように巨人は、両手を顕にした。
「我らが祝福を受けるがいい、愚かな羊たちよ!」
その両腕は、十本ほどの銃身を束ねたものでできている。
種子島と違い、火縄を使わず火打石と火皿を持つ型の銃であった。
その束ねられた銃身が回転しながら、銃弾をまき散らす。
衛士たちが、月明かりのした赤い血をまき散らしながら凶弾にたおれていく。
「愚かな羊たち、汝に祝福を!」
おんなが叫び、再び巨人の両腕が火を吹く。
瞬く間に衛士は全滅し、広場は血で染め上げられた。
おんなはとても楽しそうに笑いつつ、叫んだ。
「聖なるかな、聖なるかな!」
最後に残ったイノウエサマは昏く目をつりあげると、刀を抜いて巨人に向かっていった。
おんなは、けらけらと楽しそうに笑いつつ、手をふるう。
巨人の手から束ねられた銃身が地におち、替わりに鋼鉄の杭が出現する。
刀を振り上げたイノウエサマに向かって、鋼鉄の杭が発射された。
イノウエサマの絶叫が、夜に谺する。
巨人は心臓を串刺しにしたイノウエサマを、夜空に向かって掲げた。
月明かりが死体を、蒼く照らす。
おんなはひらりと巨人の肩から、大地に降りた。
神父さまは、呆然としながらおんなを見つめる。
「あなたはバチカンから派遣されたのか」
おんなは、頷く。
「わたしはイスカリオテ機関のものだ。名はエイレシア」
神父さまは、縋るようにエイレシアと名乗ったおんなをみる。
「では、吊るされたものたちを助けてくれ」
「いいとも」
エイレシアは、凶悪な笑みをうかべると手をふる。
巨人は、杭となっていない銃身が残っている方の手を吊るされた信徒たちに向けた。
銃身の束が回転し銃声が轟き、信徒たちの呻きが消える。
真の静寂が、月明かりの下に降りてきた。
「いったいなぜ」
神父さまは、絶叫するように言った。
「なぜ主は、このようなことをおゆるしになる!」
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