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第三話
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神父さまは、よろよろと月明かりに照らされた闇をお歩きなさる。
そして神父さまは、広場に吊るされた7人の信徒に気づく。
地の底から響くような呪詛の声を、信徒たちはあげながら吊るされていた。
信徒たちは頭を下に吊るされており、全身につけられた傷跡から血が流れているため。
皆顔を真紅に染めて、苦しんでいた。
吊るされたものたちの下には、赤い血だまりができている。
さながら、地獄の景色というところか。
神父さまは信徒を救おうと歩み寄られたが、棒をもった獄卒にはばまれ大地に膝をつく。
そして、獣のように慟哭の声をおあげになられた。
その神父さまの前に衛士をひきつれた、イノウエサマがおいでになられる。
陣羽織に陣笠という、なぜか戦装束に身をつつまれたイノウエサマは神父さまの前に立っておられた。
おれは虫けらのように地にひれふしながら、全てを眺めている。
「助けてやってくれ、あのものたちを」
イノウエサマは、慈父の笑みを浮かべると神父さまの前に「あの方」の似姿を差し出された。
「助けるのは簡単なこと、形だけでいい。踏みなされ」
おれは、おれ自身が踏むときのようにぞくぞくしながらそれを眺めていたけれど。
神父さまは、首を横にふられた。
「わたしを、殺してくれ」
イノウエサマは、悲しげな笑みをうかべなされた。
「おお、そなたらは自害をゆるされていないのであったな。でも、それはできぬのだよ」
イノウエサマは、薄く笑みを浮かべながら神父さまに話しかける。
「この小さな島国では、殺されたものは神になるといわれていてな。テンジンサマしかり、マサカド公しかり。殺すと祟められ、祭られる。それはこまるのだよ。まあ、不自由なもの」
イノウエサマは、神父さまを見下ろしながらにいっと笑みを浮かべなさる。
「だからのう。踏みなされ。楽になりますぞ」
ふっと、神父さまは立ち上がった。
見えぬ糸であやつられる人形のように、意志をもっているとはおもえぬ動作で一歩ふみだそうとする。
月明かりに照らされた、「あの方」の似姿へ向かって。
夢遊病者が繰り出す一歩を踏み出そうとした、その瞬間に。
イノウエサマは、うるさげに神父さまをおしのけ一歩前にすすまれた。
無様に尻餅をついた神父さまは、呆然としてイノウエサマの眼差しの先をみつめる。
その先には、濃厚な不吉の気配があった。
「ええい、であえ、であえい!」
イノウエサマの叫びに応える形で、屋敷から帷子をまとい種子島をかまえた衛士たちが走り出てくる。
十人ほどの衛士が、イノウエサマの前に三列の隊列をつくった。
種子島の火縄が赤い火を灯され、煙をあげる。
闇のおくから、不吉が形をとって立ち現れた。
巨人である。
身の丈九尺は越えようかという、とてつもない巨人が月明かりの下に姿を現した。
化け物じみて巨大なその姿は、黒い長衣につつまれており立ち上がった影のようでもある。
そしてその肩には、ひとりのおんなが立っていた。
神父さまと同じように、黒衣を纏っているが夜に狂い咲いた赤い花のような唇を持つおんなが。
両手を天に捧げながら、月に向かって叫んでいる。
「聖なるかな、聖なるかな!」
そして神父さまは、広場に吊るされた7人の信徒に気づく。
地の底から響くような呪詛の声を、信徒たちはあげながら吊るされていた。
信徒たちは頭を下に吊るされており、全身につけられた傷跡から血が流れているため。
皆顔を真紅に染めて、苦しんでいた。
吊るされたものたちの下には、赤い血だまりができている。
さながら、地獄の景色というところか。
神父さまは信徒を救おうと歩み寄られたが、棒をもった獄卒にはばまれ大地に膝をつく。
そして、獣のように慟哭の声をおあげになられた。
その神父さまの前に衛士をひきつれた、イノウエサマがおいでになられる。
陣羽織に陣笠という、なぜか戦装束に身をつつまれたイノウエサマは神父さまの前に立っておられた。
おれは虫けらのように地にひれふしながら、全てを眺めている。
「助けてやってくれ、あのものたちを」
イノウエサマは、慈父の笑みを浮かべると神父さまの前に「あの方」の似姿を差し出された。
「助けるのは簡単なこと、形だけでいい。踏みなされ」
おれは、おれ自身が踏むときのようにぞくぞくしながらそれを眺めていたけれど。
神父さまは、首を横にふられた。
「わたしを、殺してくれ」
イノウエサマは、悲しげな笑みをうかべなされた。
「おお、そなたらは自害をゆるされていないのであったな。でも、それはできぬのだよ」
イノウエサマは、薄く笑みを浮かべながら神父さまに話しかける。
「この小さな島国では、殺されたものは神になるといわれていてな。テンジンサマしかり、マサカド公しかり。殺すと祟められ、祭られる。それはこまるのだよ。まあ、不自由なもの」
イノウエサマは、神父さまを見下ろしながらにいっと笑みを浮かべなさる。
「だからのう。踏みなされ。楽になりますぞ」
ふっと、神父さまは立ち上がった。
見えぬ糸であやつられる人形のように、意志をもっているとはおもえぬ動作で一歩ふみだそうとする。
月明かりに照らされた、「あの方」の似姿へ向かって。
夢遊病者が繰り出す一歩を踏み出そうとした、その瞬間に。
イノウエサマは、うるさげに神父さまをおしのけ一歩前にすすまれた。
無様に尻餅をついた神父さまは、呆然としてイノウエサマの眼差しの先をみつめる。
その先には、濃厚な不吉の気配があった。
「ええい、であえ、であえい!」
イノウエサマの叫びに応える形で、屋敷から帷子をまとい種子島をかまえた衛士たちが走り出てくる。
十人ほどの衛士が、イノウエサマの前に三列の隊列をつくった。
種子島の火縄が赤い火を灯され、煙をあげる。
闇のおくから、不吉が形をとって立ち現れた。
巨人である。
身の丈九尺は越えようかという、とてつもない巨人が月明かりの下に姿を現した。
化け物じみて巨大なその姿は、黒い長衣につつまれており立ち上がった影のようでもある。
そしてその肩には、ひとりのおんなが立っていた。
神父さまと同じように、黒衣を纏っているが夜に狂い咲いた赤い花のような唇を持つおんなが。
両手を天に捧げながら、月に向かって叫んでいる。
「聖なるかな、聖なるかな!」
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