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第三話
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彼女が、わたしを見つめている。
美しいひと。
けれど、何処か何かを決定的な欠いているような、不思議なひとだ。
薄暗い部屋。
何か工房のような、あるいは倉庫のような雰囲気もある雑多なガラクタが並んだ部屋に、わたしたちはいる。
そこはなんだか、彼女の頭の中なんじゃあないかという、気がした。
わたしは、彼女に尋ねる。
「ねぇ、こんな話聞いて、何か面白いのかな?」
彼女は、ふふっと笑う。
「あぁ、面白いね。とても面白い」
わたしは、ため息をつき、話を続けることにした。
❖
そうね、それじゃあ彼とのエピソードでちょっとしたハプニングがあった時のことを話すわね。
わたしはひとの身体にペイントする時には、アクリル絵の具を使う。
もちろんアクリル絵の具にはカドミウムとかを使った、人体にはとても危険なものがある。
だから絵の具を選ぶ時には、とても慎重になる必要があるのだけれど。
でも結局人体にある程度定着して、発色がいいのはアクリルなのよね。
ま、おんなのひとなら嫌がるだろうけど、彼は肌荒れに頓着しないので助かる。
で、ホテルにいったらまずお風呂で彼に身体を綺麗にしてもらう。
その間にわたしは、部屋を養生する。
まあ行くのはいつも古めかしいラブホで今更多少汚れたってって感じはあるけれど、一応ビニールシートとかを敷くの。
身体を洗い終わった後は肌をよく乾かしてから、地塗りをする。
地塗りはいくつかのメディウムを混交して作ってるんだけれど、あまり全身に塗るのは危険な気がするから使用箇所は限定してる。
はじめの頃わたしは作業着に着替えてたんだけれど、まあ面倒くさくなって何も着なくなった。
下着も絵の具がつくのがいやなので、それもつけなくなってる。
わたしは裸で彼の身体というキャンバスへ、色を塗ってゆく。
ボディ・ペイントというより、昔シンディ・シャーマンがやってた肖像画を人体に描く感じに近いの。
光源の方向を決めて、陰影も作り出し架空の立体感を刻む。
人体の平面部分に、例えば胸の膨らみを描くのはできるんだけどね。
下半身のまあ、立体的なところ?
ま、そこをペイントで平面にするのは無理があるので、テープとかで押さえつける感じにするのね。
いつもはそれでいけるんだけれど。
その日は、うまくいかなかったっていうか。
彼のそこが、存在を主張しすぎてたのよね。
古いラブホだからかけっこう防音がいいかげんで、他の部屋でハッスルする声がよく響いてたせいかもと思う。
わたしはすっかり天井めざして背伸びしてる、彼のものの根元を持ってぶらぶらさせてみた。
「ねぇ、ちょっと邪魔なんだけど、これ」
彼は、苦笑交じりに応える。
「邪魔、って言われてもなあ。外せるもんなら、とりはずすけどそうもいかんしね」
そりゃまあ、そうだとは思う。
わたしは、彼のそれを改めてみてみる。
ま、おとこのひとのものなんて、明るいところでしげしげと生でみることないしね。
奇妙な形をしているような、気がする。
なんだか、別の生き物みたいだなと思う。
彼の先端を、少し触ってみる。
根元とか胴体は凄く固いんだけれど、先端は滑らかで意外と柔らかい。
わたしは、生き物の口みたいに見える先端の切れ目に指を這わせてみた。
それは、指を咥えるような感じになる。
口の中はピンク色で、なんか生々しい。
ま、遊んでる場合でもないかと思い、彼に声をかける。
「なんとかならないかなあ、これ」
わたしの言葉に、彼は応える。
「まあ、こればっかりは自分の意思では如何ともしがたい」
そうなんだろうなあ、と思う。
結局なんだか、どうでもいいかという気になってくる。
わたしのやってるのはひとの肌と塗料の相性を確認する実験みたいなものなので、どうせ作品として公開できるような類いのものじゃあない。
美しいひと。
けれど、何処か何かを決定的な欠いているような、不思議なひとだ。
薄暗い部屋。
何か工房のような、あるいは倉庫のような雰囲気もある雑多なガラクタが並んだ部屋に、わたしたちはいる。
そこはなんだか、彼女の頭の中なんじゃあないかという、気がした。
わたしは、彼女に尋ねる。
「ねぇ、こんな話聞いて、何か面白いのかな?」
彼女は、ふふっと笑う。
「あぁ、面白いね。とても面白い」
わたしは、ため息をつき、話を続けることにした。
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そうね、それじゃあ彼とのエピソードでちょっとしたハプニングがあった時のことを話すわね。
わたしはひとの身体にペイントする時には、アクリル絵の具を使う。
もちろんアクリル絵の具にはカドミウムとかを使った、人体にはとても危険なものがある。
だから絵の具を選ぶ時には、とても慎重になる必要があるのだけれど。
でも結局人体にある程度定着して、発色がいいのはアクリルなのよね。
ま、おんなのひとなら嫌がるだろうけど、彼は肌荒れに頓着しないので助かる。
で、ホテルにいったらまずお風呂で彼に身体を綺麗にしてもらう。
その間にわたしは、部屋を養生する。
まあ行くのはいつも古めかしいラブホで今更多少汚れたってって感じはあるけれど、一応ビニールシートとかを敷くの。
身体を洗い終わった後は肌をよく乾かしてから、地塗りをする。
地塗りはいくつかのメディウムを混交して作ってるんだけれど、あまり全身に塗るのは危険な気がするから使用箇所は限定してる。
はじめの頃わたしは作業着に着替えてたんだけれど、まあ面倒くさくなって何も着なくなった。
下着も絵の具がつくのがいやなので、それもつけなくなってる。
わたしは裸で彼の身体というキャンバスへ、色を塗ってゆく。
ボディ・ペイントというより、昔シンディ・シャーマンがやってた肖像画を人体に描く感じに近いの。
光源の方向を決めて、陰影も作り出し架空の立体感を刻む。
人体の平面部分に、例えば胸の膨らみを描くのはできるんだけどね。
下半身のまあ、立体的なところ?
ま、そこをペイントで平面にするのは無理があるので、テープとかで押さえつける感じにするのね。
いつもはそれでいけるんだけれど。
その日は、うまくいかなかったっていうか。
彼のそこが、存在を主張しすぎてたのよね。
古いラブホだからかけっこう防音がいいかげんで、他の部屋でハッスルする声がよく響いてたせいかもと思う。
わたしはすっかり天井めざして背伸びしてる、彼のものの根元を持ってぶらぶらさせてみた。
「ねぇ、ちょっと邪魔なんだけど、これ」
彼は、苦笑交じりに応える。
「邪魔、って言われてもなあ。外せるもんなら、とりはずすけどそうもいかんしね」
そりゃまあ、そうだとは思う。
わたしは、彼のそれを改めてみてみる。
ま、おとこのひとのものなんて、明るいところでしげしげと生でみることないしね。
奇妙な形をしているような、気がする。
なんだか、別の生き物みたいだなと思う。
彼の先端を、少し触ってみる。
根元とか胴体は凄く固いんだけれど、先端は滑らかで意外と柔らかい。
わたしは、生き物の口みたいに見える先端の切れ目に指を這わせてみた。
それは、指を咥えるような感じになる。
口の中はピンク色で、なんか生々しい。
ま、遊んでる場合でもないかと思い、彼に声をかける。
「なんとかならないかなあ、これ」
わたしの言葉に、彼は応える。
「まあ、こればっかりは自分の意思では如何ともしがたい」
そうなんだろうなあ、と思う。
結局なんだか、どうでもいいかという気になってくる。
わたしのやってるのはひとの肌と塗料の相性を確認する実験みたいなものなので、どうせ作品として公開できるような類いのものじゃあない。
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