冥界からのラブソング

ルサルカ

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第八話

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「あんたさぁ、稲妻旅団のミナコだろ」

 黒衣の男は、わたしを見据える。
 わたしは頷いた。
 このライヴハウスは記憶にある。
 わたしたちはここでギグをしたことがあった。

「おれがさあ、まだこいつらみたいにガキだったころだよ。
 10年以上昔になるよなあ。
 忘れられないよ、あんときのことはよ。
 あの時のあんたの歌はよぉ。
 忘れたくても、忘れられねぇ」

「サカキさん」

 金髪が割って入ろうととするのを、サカキと呼ばれた黒衣の男は目で制する。

「なあ、ミナコさん。
 どうだい。
 もういちどあのころの歌を、聞かせてくれねえか。
 それでおれが満足できりゃあ、100万の話は無しにしようや」

「サカキさん!」

 金髪が詰め寄る。
 サカキは目をわたしにむけたまま、ドスの利いた声を出した。

「てめぇ、おれのやることに文句があるのか」

 金髪は少し逡巡し、後ろに下がった。

「どうだい、ミナコさん」

「稲妻旅団は終わったのよ。
 随分前に」

「残念だな」

 サカキはつぶやくように言った。

「あんたの弟は、傷害罪だ」

 テツオが叫ぶ。

「ねえさん、頼むよ。
 なあ、おれのために歌くらい歌ってもいいじゃねぇか。
 おれたちは、姉弟だろ。
 家族だろ。
 なあ、ねえさん」

 わたしはため息をつく。

「いいわ。
 聞かせてあげる。
 稲妻旅団の最後の歌を」

 わたしは、CDケースを取り出すと、中のCDを抜いた。
 それをサカキに渡す。

「このCDをかけて」

 サカキはCDを若者の一人に手渡し、指示を出す。
 サカキはわたしの方に向き直って言った。

「なあ、ひとつ教えてくれよ」

 わたしは黙ってサカキの視線を受ける。

「なぜ、稲妻旅団は終わったんだ」

「死んだからよ」

 サカキは目で問いかける。

「稲妻旅団は稲妻旅団を作った男、ミツオの死と共に終わったの」

 電子ピアノの音が響いた。

 アキオのピアノ。

 あの時のピアノ。

 終わりの日にアキオが弾いていた、あの曲が流れる。

 ミツオが死んだ日。

 あの日のピアノ。

 わたしは再び記憶の中へ沈んでいく。
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