引きこもり天使の救済奇譚〜引きこもりだった天使が親のいいつけで人間界に舞い降りて嫌々アナタを助けてくれます〜

しゃる

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第一章カトリの街

エピソード25 私はこの街が好きなのかもしれません

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「さようなら」


 悪魔が彼を踏み潰そうと、飛行速度を上げて飛び降りてきます。


 彼は私が願いを聞きいれて、助けてくれないことを悟ると、覚悟の決まらないままギュッと目を瞑りました。


「うぅっ⋯⋯」


「グギュウ!!」


 しかし、目を瞑れど彼の身には何も起こりません。


 不思議と彼は目を開けると、おかしな事に傷一つついていません。


「なんで⋯⋯助かった?」


 男性は不思議そうにしています。


「助かっていませんよ。命が先延ばしされただけです」


 実は、私が魔弾で悪魔を一時的に吹き飛ばしました。


 やはり、罪というのは正当に裁かれるのが理想ですから。こんな所で死なれては困るんですよ。


 それに、命というのは先延ばしされればされるほど死ぬのが惜しくなるというものです。せいぜいその苦しみを味わってください。


「グギュウ!!」


 吹き飛ばされて腹が立ったのか、悪魔は怒り狂いながら私に突進してきます。

 私の十倍以上はあるであろう悪魔に体当たりされては一溜りもありません。されればの話ですが。


「喰らって下さい!」


 連続して魔弾を悪魔に当てます。しかし、突進が止まっただけで差してダメージは無いようです。


「グギュギュギュ」


「へぇ、随分とタフネスですね」


 どうやらこれは長期戦になるなと覚悟した時、「レミー!」と何処かで私を呼ぶ声が聞こえました。


「なんですか、今それ所では⋯⋯」


「レミ!来たよ、無事!?」


 私の目の前に颯爽と羽を広げ駆けつけてくれたのは、数少ない友人、エリルでした。


「さっきそこでカムちゃんに会った、事情は聞いたよ」


「それは話が早いです」


「カトリの街の皆も悪魔が召喚されたのに気付いている。カムちゃんには街のみんなを守るようにお願いした」


 成程、エリルにしてはナイスな判断です。もしもの事があって民衆が傷付いては元も子もないですから。


 エリルは、「そのせいで私と二人きりだけどね」と笑います。


「いいじゃないですか、二人で。悪魔祓いは私達天使がやるものでしょう」


「それもそっか、よしやろう!」


 さっきまで突進ばかりだった悪魔は、魔法を駆使してきました。灼熱の炎を放ちます。


「それ、熱いんだからやめてよ!」


 エリルは水魔法で灼熱の炎を完全に消化します。攻撃が止まった隙に私が攻撃を仕掛けます。


「効いてくださいよ!」


 雷魔法を悪魔に浴びせます、少し怯んだ程度で、決定打になっていない事に嫌気が差します。


「レミ、ぜんっぜん効いてないと思う!」


「知ってます。全く、本気でやったんですよ⋯⋯?」


 再び悪魔が灼熱の炎を放ちます。それを消化して、攻撃を仕掛けて。


 延々とそれを繰り返しました。


「これじゃ拉致があきませんね」


「レミ⋯⋯私そろそろ魔力切れそうかも」


 ちょ、私もヤバいんですから。困りますよ。

 魔力が切れたら、誰がこの悪魔の相手をするんですか。


「グルゥ!」


「うるさいです!黙ってて下さい!」


 いい加減倒れろ、という意味で氷魔法を悪魔に放ちました。鋭い氷の刃が悪魔に刺さります。


「グ、グルゥゥ!」


 悪魔が初めて痛みによって鳴きました。

 これは、もしかして⋯⋯。


「レミ、効いてるんじゃない?」


「ですね。本当にやっとって感じですが」


 何十発と魔法を放ってタフネスが崩れましたか。


「これでもう一押し!」


「グルゥ!」


 油断したのか、突進してきた悪魔にエリルが吹き飛ばされます。


「エリルっ!?」


 吹き飛ばされたエリルは、生えていた木に叩きつけられました。直撃です。


「ったァ⋯⋯」


 生きているみたいです。エリルが無駄に頑丈で本当に良かったです。


「本当に、いい加減にしてください!」


 今度は雷魔法を悪魔に直撃させます。炎魔法、氷魔法も続けて浴びさせます。


 連撃をくらい、悪魔はフラついたような様子です。脳震盪的な物でも起こしているのでしょうか。


「今だ!私の仇!」


 エリルがフラついている悪魔に、自分の仇と称して魔法の連撃をあびせます。


「これが最後の一発!私の魔力的にね!」


 エリル渾身の最後の炎魔法が悪魔に炸裂します。そしてエリルが魔力を使い果たして使い物にならなくなりました。


「お疲れ様です。これ以上ここにいられても困るので何処かにはけて下さい」


「魔力が底を尽きたら用無しかぁ⋯⋯」


 仕方ないでしょう。エリルを守って戦える程器用ではないんですよ。


「アグゥゥゥ!」


 悪魔は今までにない金切り声声を上げて、こちらに腕を振り上げて攻撃の意を見せます。


 エリルの最後の一撃で大人しく沈んでくださいよ。


「私もこれが最後の一発ですらね⋯⋯!」


 腕を振り上げている悪魔目掛けて、残り少ない全ての魔力を込めて氷魔法を放ちます。


 悪魔が腕を振り下ろすより早く、氷魔法が悪魔を貫きます。


「グッ⋯⋯ギャアア⋯⋯」


 悪魔は弱々しい声で鳴くと同時に、その異形の姿は塵となって消えていきました。


「勝った⋯⋯んですか?」


 全ての魔力を使い果たした私はその場で尻もちを着きます。


 すぐさまエリルが駆け寄ってきます。エリルも魔力を使い果たしているので足取りはフラフラですが。


「ギリギリだったけど、私達の勝ちだよ!」


「ほんと、最後の一撃で倒せなかったら私達死んでいましたね」


「あはは、そう考えたら笑えないね」


 にこやかに言うエリル。いや、笑ってるじゃないですか。


 とにかく、悪魔は祓いました。


「そして私は疲れました」


「ははは、私も~」


 エリルが疲れただなんて、相当の事ですので私の疲労は容易く察することが出来るでしょう。


 そして、ここから先の事はあまり覚えていません。


 かろうじて覚えているのは悪魔が消えるとエリスの方々が来て事情を説明して、犯人を捕まえて頂いて。後は、えーと⋯⋯。


 そうだ、エリスの方々に表彰されたんでした。まあ今回もお手柄でしたからね、それくらいはされて当然でしょう。


 本来の目的、魔法使いのイメージ復興についてですが。やはり悪魔召喚、連続殺人の犯人が魔法使いという事で魔法使いへの偏見は強まりましたが、スピールさん達が「魔法使いを捕らえたのは善良な魔法使い」と公表してくれたおかげで思った程、魔法使いたちは酷い扱いを受けませんでした。


「おつかれ、レミリエルさん」


 生きて家に帰った私は、リルさんに膝枕されながら疲れを癒していました。


「疲れました」


 何だかんだで、私があそこまで踏ん張れたのはこの人間界が気に入っているからかもしれん。


 事実、人間界に来てから友達が沢山増えました。幸せか不幸せかで言えば絶対に前者でしょう。


 次に悪魔が現れても、私の大好きなこの街はきっと守り抜いてみせます。


 では私は本当に疲れたので。


「おやすみなさい」


 私のそのまま意識は闇へと沈んでいきました。





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