引きこもり天使の救済奇譚〜引きこもりだった天使が親のいいつけで人間界に舞い降りて嫌々アナタを助けてくれます〜

しゃる

文字の大きさ
47 / 65
第一章カトリの街

エピソード47 幸せになって下さい

しおりを挟む
「入ってみましょう」


 本当に今でも奴隷たちがいるのか、中に入って確かめないといけません。


「え、ええ⋯⋯」


 私が中に入ろうと進めても、ジュリーナさんは返事だけで一向にその場から動こうとしませんでした。


「怖いですか?」


「そんな訳⋯⋯ないでしょ⋯⋯」


 強がり言う割に足は震えています。想像を絶する様な酷い目にあったのでしょう。


「私が先に中を見てきます」


「まって!私も行くわ」


 ジュリーナさんが着いてきていることを確認にして、扉を開けます。


「ここが⋯⋯」


 扉を開けると直ぐに沢山の牢屋の様な物が目に飛び込んできました。


 牢屋の中には親から売られたであろう少年少女たちが私たちをまるで化け物を見るかのように見つめています。


 まさに、この世の終わりの様な光景です。


「何も、変わっていない⋯⋯」


 ジュリーナさんは過去を思い出したかの様に呼吸を荒くしています。


「お、お客さんですか?」


 何処からか、下衆な面持ちの男が私たちに話しかけてきました。


「いえ、お客さんではないですが。ここでは何をしているんですか?」


「客じゃねえのかよ。見てわかんねえのか、奴隷で金儲けだよ」


 男は私たちが客ではないと分かると、態度をころっと変えてきました。


 私の嫌いなタイプです。


「え、お前⋯⋯ジュリーナ?」


「っ⋯⋯!?」


 男はジュリーナさんを指さしました。

 ジュリーナさんはビクッと怯えるように肩を震わせました。


「アイツ、アイツに閉じ込められてたの⋯⋯」


 消え入りそうな小さな声で、ジュリーナさんは私に囁きました。


「なんだ?逃げ出したのに戻ってくるなんて馬鹿な女だ」


 男はジュリーナさんに近付いて来ます。


 あの時は、誰にも助けて貰えなかったでしょうが今は私がいます。


「奴隷商売は今日で終わりですよ」


 私は、男の目の前で魔法で次々と牢を壊していきました。


 閉じ込められていた少年少女たちは未だと外へと飛び出していきました。


「お前っ、何をしている⋯⋯!?」


「貴方に人を縛る権利はありません」


 男は私を敵と認識したのか、杖を取りだし炎魔法を放ってきました。


 なので丁寧に水魔法で全て消化して差し上げました。


「なんだと⋯⋯っ、俺の魔法が通じない⋯⋯」


 彼に魔法使いとしての格の違いを見せつけたところで、ジュリーナさんに問いかけます。


「さて、この男。どうしてやりましょうか」


 ジュリーナさんは考え込むように俯いた後、「痛みを教えてあげて」と呟きました。


「了解しました」


 私は彼女とここに閉じ込められていた方々の無念を晴らすべく、致命傷にならない程度に魔法を放ちました。


 男は直ぐに崩れ落ちました。


 ジュリーナさんが国を乗っ取ってまでやろうとしたことは呆気なく達成されました。


 この男が崩れても、他の奴隷商人たちが出てくる様子もなく、恐らく一人でやっていた事なのでしょう。


「終わりましたね、ジュリーナさん」


「まだよ⋯⋯まだ終わってないわ」


 ジュリーナさんは倒れている男に近づきいつの間に持ち込んだのか、短刀を手に持っていました。


「死ね!!この悪魔!」


 ジュリーナさんは倒れている男に、思い切り短刀を振り上げて突き刺そうとしました。


「っ⋯⋯」


 間一髪、私は彼女の手を掴んで止めることが出来ました。


「何するの、この男はまだ生きてるのよ」


 ジュリーナさんはきっと私を睨みつけました。


「辛い思いをしてきたのなら、これ以上手を汚す必要はないと思うんです。」


 黙るジュリーナさんに更に問いかけます。


「国王様のことは好きですか?」


「は?」


「本当に、国王様を殺せたと思いますか?」


 国王様は、ジュリーナさんの為にありとあらゆる事を尽くしたと言います。そこにはきっと心の底から彼女を想う気持ちがあったと信じたいです。


 なので、私は彼女から見た国王様が本当はどう映っていたのか知りたいのです。


「煩いわね⋯⋯利用するだけ利用して、消す予定だったのよ」


「本当に?嘘偽りないですか?」


 私が聞きたいのは、本心の方です。どうにも、ジュリーナさんが本気で国王を殺せるほど憎んでいると思えないんです。


「あんなに優しくしてくれた人⋯⋯あの人が初めてなんだよっ⋯⋯」


 ジュリーナさんは泣きました。


 その場で泣き崩れました。


「お城に戻りましょう⋯⋯」


 奴隷商人の処遇や少年少女達の保護はエリスに任せて、私はジュリーナさんを抱えて城に戻りました。


 城へ戻るとジュリーナさんが居なくなったと大騒ぎになっていました。


 ジュリーナさんが戻った事を聞いた国王様は慌てて駆けつけてきました。


「ジュリーナ!城を抜け出して今までどこに言ってたんだ」


「まあ、それは」


「心配したんだぞっ⋯⋯⋯⋯」


 国王様は、ジュリーナさんの頭を優しく撫でました。


「そちらは?」


「ああ、彼女は噂の天使様よ」


 私の存在に気が付いた国王様にジュリーナさんが紹介をします。


「お初にお目にかかります。天使、レミリエルです」


 さすがに国王様の前なので、それらしい自己紹介です。


「貴女が天使⋯⋯国王の、クリムです」


 クリムさんは私に一礼をしました。国王様に頭を下げさせてしまっていいのでしょうか。


「どうも。それでは私はこれで」


「まって! 本当に⋯⋯ありがとう」


 お礼の言葉を述べるジュリーナさん。


 まるで、初めてあった時のことが嘘のようです。


 今まで辛い思いをしてきた彼女だからこそ、これからの人生を本気で謳歌して欲しいと心の底から思います。


「また会いましょう」


 私は、何時までも手を振るジュリーナさんを尻目に城を後にしました。


 そして一つ決心したことがあります。


 それは、このカトリの街を出ることです。



しおりを挟む
感想 3

あなたにおすすめの小説

完結 辺境伯様に嫁いで半年、完全に忘れられているようです   

ヴァンドール
恋愛
実家でも忘れられた存在で 嫁いだ辺境伯様にも離れに追いやられ、それすら 忘れ去られて早、半年が過ぎました。

異世界ママ、今日も元気に無双中!

チャチャ
ファンタジー
> 地球で5人の子どもを育てていた明るく元気な主婦・春子。 ある日、建設現場の事故で命を落としたと思ったら――なんと剣と魔法の異世界に転生!? 目が覚めたら村の片隅、魔法も戦闘知識もゼロ……でも家事スキルは超一流! 「洗濯魔法? お掃除召喚? いえいえ、ただの生活の知恵です!」 おせっかい上等! お節介で世界を変える異世界ママ、今日も笑顔で大奮闘! 魔法も剣もぶっ飛ばせ♪ ほんわかテンポの“無双系ほんわかファンタジー”開幕!

40歳のおじさん 旅行に行ったら異世界でした どうやら私はスキル習得が早いようです

カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
部長に傷つけられ続けた私 とうとうキレてしまいました なんで旅行ということで大型連休を取ったのですが 飛行機に乗って寝て起きたら異世界でした…… スキルが簡単に得られるようなので頑張っていきます

真祖竜に転生したけど、怠け者の世界最強種とか性に合わないんで、人間のふりして旅に出ます

難波一
ファンタジー
"『第18回ファンタジー小説大賞【奨励賞】受賞!』" ブラック企業勤めのサラリーマン、橘隆也(たちばな・りゅうや)、28歳。 社畜生活に疲れ果て、ある日ついに階段から足を滑らせてあっさりゲームオーバー…… ……と思いきや、目覚めたらなんと、伝説の存在・“真祖竜”として異世界に転生していた!? ところがその竜社会、価値観がヤバすぎた。 「努力は未熟の証、夢は竜の尊厳を損なう」 「強者たるもの怠惰であれ」がスローガンの“七大怠惰戒律”を掲げる、まさかのぐうたら最強種族! 「何それ意味わかんない。強く生まれたからこそ、努力してもっと強くなるのが楽しいんじゃん。」 かくして、生まれながらにして世界最強クラスのポテンシャルを持つ幼竜・アルドラクスは、 竜社会の常識をぶっちぎりで踏み倒し、独学で魔法と技術を学び、人間の姿へと変身。 「世界を見たい。自分の力がどこまで通じるか、試してみたい——」 人間のふりをして旅に出た彼は、貴族の令嬢や竜の少女、巨大な犬といった仲間たちと出会い、 やがて“魔王”と呼ばれる世界級の脅威や、世界の秘密に巻き込まれていくことになる。 ——これは、“怠惰が美徳”な最強種族に生まれてしまった元社畜が、 「自分らしく、全力で生きる」ことを選んだ物語。 世界を知り、仲間と出会い、規格外の強さで冒険と成長を繰り広げる、 最強幼竜の“成り上がり×異端×ほのぼの冒険ファンタジー”開幕! ※小説家になろう様にも掲載しています。

異世界転生したおっさんが普通に生きる

カジキカジキ
ファンタジー
 第18回 ファンタジー小説大賞 読者投票93位 応援頂きありがとうございました!  異世界転生したおっさんが唯一のチートだけで生き抜く世界  主人公のゴウは異世界転生した元冒険者  引退して狩をして過ごしていたが、ある日、ギルドで雇った子どもに出会い思い出す。  知識チートで町の食と環境を改善します!! ユルくのんびり過ごしたいのに、何故にこんなに忙しい!?

異世界に転生したら?(改)

まさ
ファンタジー
事故で死んでしまった主人公のマサムネ(奥田 政宗)は41歳、独身、彼女無し、最近の楽しみと言えば、従兄弟から借りて読んだラノベにハマり、今ではアパートの部屋に数十冊の『転生』系小説、通称『ラノベ』がところ狭しと重なっていた。 そして今日も残業の帰り道、脳内で転生したら、あーしよ、こーしよと現実逃避よろしくで想像しながら歩いていた。 物語はまさに、その時に起きる! 横断歩道を歩き目的他のアパートまで、もうすぐ、、、だったのに居眠り運転のトラックに轢かれ、意識を失った。 そして再び意識を取り戻した時、目の前に女神がいた。 ◇ 5年前の作品の改稿板になります。 少し(?)年数があって文章がおかしい所があるかもですが、素人の作品。 生暖かい目で見て下されば幸いです。

転生貴族の領地経営〜現代日本の知識で異世界を豊かにする

ファンタジー
ローラシア王国の北のエルラント辺境伯家には天才的な少年、リーゼンしかしその少年は現代日本から転生してきた転生者だった。 リーゼンが洗礼をしたさい、圧倒的な量の加護やスキルが与えられた。その力を見込んだ父の辺境伯は12歳のリーゼンを辺境伯家の領地の北を治める代官とした。 これはそんなリーゼンが異世界の領地を経営し、豊かにしていく物語である。

【完結】異世界で魔道具チートでのんびり商売生活

シマセイ
ファンタジー
大学生・誠也は工事現場の穴に落ちて異世界へ。 物体に魔力を付与できるチートスキルを見つけ、 能力を隠しつつ魔道具を作って商業ギルドで商売開始。 のんびりスローライフを目指す毎日が幕を開ける!

処理中です...