異世界に飛ばされたおっさんは何処へ行く?

シ・ガレット

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タクマの決心

嫌な予感

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「……」
「「……」」

 久しぶりに顔を合わせることになったパミルたちはお互いどう話して良いのか考えあぐねているようで、執務室は重い空気に包まれていた。
 その様子を窺うタクマと夕夏だったが、この場に自分たちが居ては話しにくいだろうと二人で執務室のドアへと向かう。

「た、タクマ殿。何処へ行くのだ!?」
「俺たちが居ても仕方ないでしょう?これはあくまでも夫婦で話し合うべき事ですし」

 タクマの言葉に顔を俯かせるパミルに夕夏も続けて話しかける。

「パミル様。私たちに出来るのはここまでです。しっかりと話し合ってくださいね。王妃様方もですよ?」
「は、はい……」
「ありがとうございます……」

 三人ともタクマ達の言いたい事はしっかりと理解しているようで、退席しようとする二人を引き留める事を諦めた。
 タクマ達が執務室から出ると、そこには夕夏と王妃たちを案内した使用人が待っていてくれた。

「タクマ様、ユウカ様。今回はこのような場をつくっていただきありがとうございます。出ていらっしゃると思いましたので、ご案内させてください」
「ありがとうございます。でもあの様子だと時間もかかりそうですし、日を改めて伺った方が良いですかね?」

 タクマはダラダラと落ち着かない場所で待つのが嫌で、一旦帰って出直しても良いか確認するのだが……
 使用人からの返事は違うものだった。

「タクマ様とユウカ様には申し訳ないのですが……出来ればお待ちいただくようにとノートン様から伺っております」

 使用人は既にノートンへの報告を済ませて指示を受けているのだという。

「はぁ……まじか……」

 若干うんざりとした表情を隠さないタクマに、夕夏は苦笑いを浮かべながらフォローをする。

「まあまあ。ここまで来たら待ちましょ。嫌な顔してるとこちらの方も困るでしょ」
「い、いえ……こちらは全く気にしませんから……」

 タクマは自分の態度を使用人に謝ってから待機に応じると答えた。
 その後は使用人に案内されることになった。

「これで良い感じに解決すると良いが……」
「後は三人次第じゃない?ただ……お二人は相当に不満を溜めていたようだし、パミル様の言動次第って感じでしょうね」

 湖畔で相当愚痴の嵐だったのはタクマも聞いている。それを解消するのはパミル次第だろう。
 突き放すように出てきたタクマ達だったが、三人には是非とも仲直りしてほしかった。タクマはパミルの反省を見ているし、夕夏はスージーたちが不満を抱えていても彼を見限っていないと分かっているからだ。

「まあ、パミル様には二人の不満を全部受け止めて反省してもらうしかないな。それをした上で心から謝ればお二人なら許してくれるだろうし……ん?あれはノートン様か?」

 そんなことを話しながら歩いていると、前からバタバタと走ってくるノートンの姿が見えた。

「タクマ殿!王妃様を連れてきてくれたと聞いた!本当にありがとう!君たちの家が逃げ場所になってくれていなかったらと思うと感謝しかない。そしてやり直す機会を作ってくれた事にも」

 来るなり頭を下げて感謝するノートンに驚きを隠せなかったタクマだが、家出に関わった手前、出来る事はしたと笑って返す。

「後は三人次第という事で。まあ正確にはパミル様が二人の不満を受け止め、真摯に反省を見せるって言うのが本質でしょうが」

 そんな言葉にノートンも同意する。そもそも今回の家出はパミルが悪いと彼も分かっているのだ。

「だな。ここまでお膳立てされて拗れさせるのなら、それはパミル様が悪い。後は結果を待つしかあるまい。で、だ。使用人から話を聞いてはいるだろうが、話し合いが終わるまで待ってもらえないだろうか。無為に時間を過ごすのも辛いだろうし、少し見せたいものがあるのだ」

 ノートンは自分の仕事もあるだろうに、タクマ達の為に時間を設けてくれたようだ。

「いや……宰相であるノートン様に態々時間を作ってもらうのは……」

 責任者である宰相を長時間拘束することは申し訳ないというタクマに、ノートンは見せたいものがある場所まで案内をするだけだという。案内をする時間くらいは問題ないと笑いながら、ノートンは自分が案内する理由を教えてくれた。

「実は今から案内する場所は王国でも限られた者だけなのだよ。しかもソレ自体の存在すらも知られていないという代物だ」
「え?それは……出来ればお断りを……」

 ノートンの言葉に嫌な予感を抱いたタクマは即座に断ろうとする。情報を秘匿している様な場に好んでいきたくはないのだ。
 難色を示すタクマに、ノートンは続ける。

「そう言うと思って途中でアークス殿も同行してもらえるように段取りを組んでいる。だからどうか頼めないだろうか」

 その言葉を聞いてタクマは理解する。ノートンが暇つぶしで案内をしている訳ではないという事に。タクマの正式な臣下であるアークスを伴わせるほどには重要な案件なのだ。しかも段取りを済ませているならばアークスもそれに応じているという事である。
 新たな厄介ごとの予感を抱きつつ、タクマと夕夏はノートンの後を付いて行くのだった。
 


 
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