3 / 18
自習室だから、安心だろ?
しおりを挟む
部屋に入ろうとしたところで、中から羽瀬川が教科書とノートを抱えて出て来た。
「もしかして、これから自習室?」
「おう」
「じゃあ、ちょっと待っててくれ。俺らも一緒に行く」
「わかった」
「え?」
羽瀬川の『わかった』と岡田の『え?』が被ったが、無視。あえて知らないふりを通した。
部屋に入って、必要な教科書と筆記用具を持ってササッと部屋を出る。
「お待たせ、行こうか」
案の定、岡田は不本意な表情をしていたけれど無駄な揉め事はごめんだし、これ以上和基と別れた方がいいとか変な説得をされるのはやっぱり不愉快なので、正直2人にはなりたくないんだ。
自習室は相変わらず混んでいた。
それには、ちょっと理由もある。ここには時々ふらりと先生方が立ち寄ってくれて、分からないところがあったりすると教えてくれたりもするんだ。だから部屋で勉強するよりも効率が上がるという事で、三年のたまり場にもなっている。
もちろん勉強目的なら、三年生だけでなく下級生でも出入りは自由だ。
「あ、太ちゃん!」
廊下の向こうから自習室に向かってくる一年の夕月が、羽瀬川に向かって手を振っている。ちなみに、太ちゃんというのは、羽瀬川の名前が太輔なので太ちゃんと呼んでいるようだ。……仲のよろしいことで。
空いてる席を探して四人で腰かけた。
岡田は俺の隣に座り、数学の教科書を開く。向かいに腰かけ羽瀬川たちも、大人しく勉強をしていた。
ここは遊び目的は厳禁なので、無駄口を叩くものはいない。
岡田も、時々何か言いたげに俺を見たりしていたけど、解き方を教わる以外に無駄なおしゃべりは一切しかけて来なかった。
壁にかかった時計の針が六時を回った頃、凄い勢いでダダダダーと足音が聞こえて来た。それは廊下から近づいて、自習室の中までやって来る。
そろそろ部屋に戻ろうとする人たちもいる中で、ガタガタと席を立つ音が聞こえてくる時間でもあったから、そこまで迷惑な足音では無いけれどあまりにもドタドタと走り過ぎる。
誰だと思って顔を上げると、和基がキョロキョロと辺りを見回していた。
……こいつか。
凄い足音の犯人が和基だと分かった時点で、『こいつならしょうがない』とみんなは思ったようだ。ほとんど気にも留めずに、戻り支度を始めている。
俺も教科書を纏めて立ち上がり、手を上げて和基に合図を送った。
「青葉さん!」
目が合うと同時に、和基は満面の笑みを俺に向ける。
おかげで俺の心臓が、キュウッとなった。
本当に、なんなんだ。この和基の俺に対する半端ない破壊力は。
……俺が好きすぎるだけか。許せん。
「もう、部屋にいないから一瞬焦りましたよ」
「ああ……。悪かったな。岡田に誘われたから、効率のいい自習室に来たんだよ。ここならみんないるから、分からない時に誰かに聞けるだろ? 運が良ければ先生方も来てくれるし」
それとなく言い訳をしておいた。
お前も、岡田と俺が2人で部屋にいるよりはいいだろう?という意味も込めて。
和基は、俺の言葉に初めて岡田が傍にいることに気づいたらしい。
「岡田先輩、青葉さんに変なちょっかい出さないでくださいよ」
「ハア? 変なちょっかいってなんだよ。俺に言わせりゃ、お前の方が青葉に纏わりついて迷惑かけてるんじゃないのかって話だぞ?」
「なに言ってるんですか。俺は青葉さんの恋人なんですよ?」
「…………」
……和基、お前なに堂々と恋人宣言してるんだよ。
ヤバイ。顔がどんどん熱くなる。これだから和基のバカは嫌なんだ。
「和基。腹減った、そろそろ学食に行こう。部屋に戻らないといけないし」
俺はみんなに顔を見られないように少し俯いて、和基の腕を引っ張って歩き出した。
「はい!」
途端に機嫌のいい声に代わった和基は、大人しく俺に引かれて歩き出す。
俺の視界の隅に、さも可笑しそうに笑う羽瀬川が見えた。
……あのヤロー。楽しんでやがったな。
俺は引率するように廊下を進みながら、未だ忙しなく鳴り続ける心臓を宥めるため、呼吸を整えようと細く口から息を吐きだした。
「もしかして、これから自習室?」
「おう」
「じゃあ、ちょっと待っててくれ。俺らも一緒に行く」
「わかった」
「え?」
羽瀬川の『わかった』と岡田の『え?』が被ったが、無視。あえて知らないふりを通した。
部屋に入って、必要な教科書と筆記用具を持ってササッと部屋を出る。
「お待たせ、行こうか」
案の定、岡田は不本意な表情をしていたけれど無駄な揉め事はごめんだし、これ以上和基と別れた方がいいとか変な説得をされるのはやっぱり不愉快なので、正直2人にはなりたくないんだ。
自習室は相変わらず混んでいた。
それには、ちょっと理由もある。ここには時々ふらりと先生方が立ち寄ってくれて、分からないところがあったりすると教えてくれたりもするんだ。だから部屋で勉強するよりも効率が上がるという事で、三年のたまり場にもなっている。
もちろん勉強目的なら、三年生だけでなく下級生でも出入りは自由だ。
「あ、太ちゃん!」
廊下の向こうから自習室に向かってくる一年の夕月が、羽瀬川に向かって手を振っている。ちなみに、太ちゃんというのは、羽瀬川の名前が太輔なので太ちゃんと呼んでいるようだ。……仲のよろしいことで。
空いてる席を探して四人で腰かけた。
岡田は俺の隣に座り、数学の教科書を開く。向かいに腰かけ羽瀬川たちも、大人しく勉強をしていた。
ここは遊び目的は厳禁なので、無駄口を叩くものはいない。
岡田も、時々何か言いたげに俺を見たりしていたけど、解き方を教わる以外に無駄なおしゃべりは一切しかけて来なかった。
壁にかかった時計の針が六時を回った頃、凄い勢いでダダダダーと足音が聞こえて来た。それは廊下から近づいて、自習室の中までやって来る。
そろそろ部屋に戻ろうとする人たちもいる中で、ガタガタと席を立つ音が聞こえてくる時間でもあったから、そこまで迷惑な足音では無いけれどあまりにもドタドタと走り過ぎる。
誰だと思って顔を上げると、和基がキョロキョロと辺りを見回していた。
……こいつか。
凄い足音の犯人が和基だと分かった時点で、『こいつならしょうがない』とみんなは思ったようだ。ほとんど気にも留めずに、戻り支度を始めている。
俺も教科書を纏めて立ち上がり、手を上げて和基に合図を送った。
「青葉さん!」
目が合うと同時に、和基は満面の笑みを俺に向ける。
おかげで俺の心臓が、キュウッとなった。
本当に、なんなんだ。この和基の俺に対する半端ない破壊力は。
……俺が好きすぎるだけか。許せん。
「もう、部屋にいないから一瞬焦りましたよ」
「ああ……。悪かったな。岡田に誘われたから、効率のいい自習室に来たんだよ。ここならみんないるから、分からない時に誰かに聞けるだろ? 運が良ければ先生方も来てくれるし」
それとなく言い訳をしておいた。
お前も、岡田と俺が2人で部屋にいるよりはいいだろう?という意味も込めて。
和基は、俺の言葉に初めて岡田が傍にいることに気づいたらしい。
「岡田先輩、青葉さんに変なちょっかい出さないでくださいよ」
「ハア? 変なちょっかいってなんだよ。俺に言わせりゃ、お前の方が青葉に纏わりついて迷惑かけてるんじゃないのかって話だぞ?」
「なに言ってるんですか。俺は青葉さんの恋人なんですよ?」
「…………」
……和基、お前なに堂々と恋人宣言してるんだよ。
ヤバイ。顔がどんどん熱くなる。これだから和基のバカは嫌なんだ。
「和基。腹減った、そろそろ学食に行こう。部屋に戻らないといけないし」
俺はみんなに顔を見られないように少し俯いて、和基の腕を引っ張って歩き出した。
「はい!」
途端に機嫌のいい声に代わった和基は、大人しく俺に引かれて歩き出す。
俺の視界の隅に、さも可笑しそうに笑う羽瀬川が見えた。
……あのヤロー。楽しんでやがったな。
俺は引率するように廊下を進みながら、未だ忙しなく鳴り続ける心臓を宥めるため、呼吸を整えようと細く口から息を吐きだした。
52
あなたにおすすめの小説
その首輪は、弟の牙でしか外せない。
ゆずまめ鯉
BL
養子ゆえに、王位継承権を持たないオメガで長男のレイン(24)は、国家騎士団として秘密裏に働き、ただ義弟たちを守るためだけに生きてきた。
第一継承権を持つアルファで次男のリオール(19)は、そんな兄に「ごく潰し」と陰口を叩く連中を許せなかった。自分を犠牲にしてまで守る価値はないと思っていた。なにかと怪我の多い国家騎士団を辞めさせたかった。
初めて訪れた発情期のとき。約束をすっぽかされたリオールが不審に思い、兄の部屋へ行くと、国家騎士団の同僚──グウェンソード(28)に押し倒されるところを目撃して激高する。
「今すぐ部屋から出ろ!」
独占欲をあらわにしたリオールは、グウェンソードを部屋から追い出し、兄であるレインを欲望のままに抱いた。
翌朝、差し出されたのは特注の首輪──外せるのはリオールのみ。
「俺以外に触らせるな」
そう囁かれたレインは、何年も首輪と弟の執着に縛られ続けてきた。
弟には婚約者がいるのに、こんな関係を続けてもいいのか。
本当にこのままでもいいのか。
ひたすら執着して独占したがる弟と、罪悪感に苛まれる兄。
その首輪は、いつか弟の牙で血に染まるのか──。
どうにかしてレインを落としたいリオールと、弟との関係に悩むレインのオメガバースです。
リオール・グランケット(19)×レイン・グランケット(24)
※この作品は2015年頃に本文を書き、2017年頃にオメガバースに改稿、さらに2026年に手直しした作品になります。読みにくいかもしれません。ご了承ください。
三人称ですが攻めだったり受けだったり視点がよくかわります。攻め視点多めです。
番を拒み続けるΩと、執着を隠しきれないαが同じ学園で再会したら逃げ場がなくなった話 ――優等生αの過保護な束縛は恋か支配か
雪兎
BL
第二性が存在する世界。
Ωであることを隠し、平穏な学園生活を送ろうと決めていた転校生・湊。
しかし入学初日、彼の前に現れたのは――
幼い頃に「番になろう」と言ってきた幼馴染のα・蓮だった。
成績優秀、容姿端麗、生徒から絶大な信頼を集める完璧なα。
だが湊だけが知っている。
彼が異常なほど執着深いことを。
「大丈夫、全部管理してあげる」
「君が困らないようにしてるだけだよ」
座席、時間割、交友関係、体調管理。
いつの間にか整えられていく環境。
逃げ場のない距離。
番を拒みたいΩと、手放す気のないα。
これは保護か、それとも束縛か。
閉じた学園の中で、二人の関係は静かに歪み始める――。
「イケメン滅びろ」って呪ったら
竜也りく
BL
うわー……。
廊下の向こうから我が校きってのイケメン佐々木が、女どもを引き連れてこっちに向かって歩いてくるのを発見し、オレは心の中で盛大にため息をついた。大名行列かよ。
「チッ、イケメン滅びろ」
つい口からそんな言葉が転がり出た瞬間。
「うわっ!?」
腕をグイッと後ろに引っ張られたかと思ったら、暗がりに引きずり込まれ、目の前で扉が閉まった。
--------
腹黒系イケメン攻×ちょっとだけお人好しなフツメン受
※毎回2000文字程度
※『小説家になろう』でも掲載しています
イケメンダブルセンターとアンチ>ファンな平凡な俺
スノウマン(ユッキー)
BL
アイドルグループ【オーバーウェルミング】は圧倒的な歌唱力の深山影月、圧倒的なパフォーマンス力の漣陽太、そして圧倒的な平凡力な俺間桐真緒の3人で結成されている。
大人気の二人と違いアンチしかいない俺だが、メンバーからもファンからも愛される日が果たしてくるのか!?
竜帝陛下の愛が重すぎて身代わりの落ちこぼれ薬師は今日も腰が砕けそうです 〜呪いを解いたら一生離さないと宣言されました〜
レイ
BL
「死ぬ覚悟はできています。でも、その前に……お口、あーんしてください」
魔力を持たない「無能」として実家で虐げられていた薬師のエリアン。
彼に下されたのは、触れるものすべてを焼き尽くす「死の竜帝」ヴァレリウスへの、身代わりの婚姻だった。
こっそりバウムクーヘンエンド小説を投稿したら相手に見つかって押し倒されてた件
神崎 ルナ
BL
バウムクーヘンエンド――片想いの相手の結婚式に招待されて引き出物のバウムクーヘンを手に失恋に浸るという、所謂アンハッピーエンド。
僕の幼なじみは天然が入ったぽんやりしたタイプでずっと目が離せなかった。
だけどその笑顔を見ていると自然と僕も口角が上がり。
子供の頃に勢いに任せて『光くん、好きっ!!』と言ってしまったのは黒歴史だが、そのすぐ後に白詰草の指輪を持って来て『うん、およめさんになってね』と来たのは反則だろう。
ぽやぽやした光のことだから、きっとよく意味が分かってなかったに違いない。
指輪も、僕の左手の中指に収めていたし。
あれから10年近く。
ずっと仲が良い幼なじみの範疇に留まる僕たちの関係は決して崩してはならない。
だけど想いを隠すのは苦しくて――。
こっそりとある小説サイトに想いを吐露してそれで何とか未練を断ち切ろうと思った。
なのにどうして――。
『ねぇ、この小説って海斗が書いたんだよね?』
えっ!?どうしてバレたっ!?というより何故この僕が押し倒されてるんだっ!?(※注 一月十日のアルファポリス規約改定を受け、サブ垢にて公開済みの『バウムクーヘンエンド』をこちらへ移しましたm(__)m サブ垢の『バウムクーヘンエンド』はこちらへ移動が出来次第、非公開となりますm(__)m)
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる