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確信犯の一年生

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空いている席に着いて、何気なく和基の方に視線を向けた。
愛嬌のあるあいつらしく、列に並びながらも楽しそうに誰かれなく話をしているようだ。

……まあ、あれがあいつの長所でもあるわけだし。

年上らしく、少しは大人な考え方をしようと嫉妬心を無理やり流す。

順番が来て、俺の分と自分の分を受け取った和基がこちらに向かって歩いてきた。

「はい、青葉さん」
「ありがとう」

「和基先輩、今からですか?」

え?

和基がテーブルに二人分の定食を置いた時、突然見たこともない一年生が、空になった食器を乗せたトレイを持って近づいてきた。

「よお、小早川。お前はもう済んだんだな」

和基はその一年に、まさしくいい先輩らしい爽やかな笑顔で応対している。

……無駄にその笑顔を振りまくな。
このバカ!

「はい。あ、それと、頼まれていたメンバー表も作っておきました。それと練習時の記録も……、書き方が大丈夫なのか自信が無いので明日見ていただけますか?」

「ああ、分かった。……にしても、お前仕事が早いなー。こないだマネージャーになったばかりだろ?」
「中途入部ですからね、他の人の足を引っ張らないようにしないといけませんから」
「大丈夫だ。脚なんて引っ張ってねーよ」

和基はそう言って、あろうことかそいつの頭をクシャクシャと撫でた。

おい!
なに、スキンシップなんて施してるんだよ!

ムッとして和基の後ろ姿を睨みつけていると、その一年坊主は厭味ったらしい笑顔を俺に向けていた。

この野郎……、確信犯か。

「じゃあ、明日な」
「はい」

一年坊主はにっこりと和基に微笑んで、去って行った。

「……見かけない奴だな」
「小早川ですか? あいつ、最近マネージャーとして入ってきた奴なんですよ。真面目で良い奴ですよ」
「ふうん……」

満面の笑顔でホメられて、だんだんふつふつと怒りがこみあげて来た。

きっと真面目にマネージャーの仕事をしているのだって、きっと和基に好かれたいと思っているからだ。じゃなきゃ、俺にあんな変な笑みを見せるわけが無い。


……やっぱり、許せん。

俺には気を付けろだの、誰かと2人っきりになるなだのと、さんざん煩いくせに自分はいったい何なんだ。
だったら和基みたいに素直に気持ちを伝えろと言うかもしれんが、それが出来ない性分なんだから仕方が無い。
俺だって本当は、もっと素直になりたいんだ。だけどこいつがその方が喜ぶんじゃないかと思うと、なんだか癪に障って出来ないんだからしょうが無いだろう?


目の前で楽しそうにご飯を食べる和基を見ながら、俺は心の中でいつも通りため息を吐いていた。
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