お前以外には触らせてないんだよ!

くるむ

文字の大きさ
7 / 18

和基にお灸を据えてやろう

しおりを挟む
ご飯を食べ終わり、食堂を出た。

「青葉さん、今度は俺の部屋に来ませんか? 今なら多分、同室の篤史も他の部屋に遊びに行ってるはずですから」
「……止めとく。疲れたから部屋に戻るよ」

軽く手を振ってその場で別れようとすると、和基が愕然としたような顔をして、咄嗟にといったふうに俺のひらひらと動く手を両手で挟んだ。

「ちょっと! ちょっと待ってくださいよ、疲れたって……っ」
「……神経すり減ることがあったんだよ」

お前のせいでな。

「ええっ!? そ、そんな……っ!」

どれだけ切羽詰まっているというのか、和基はグイッと真剣な表情で俺を引き寄せる。
そして一応は場をわきまえてなのか、ひそひそと小声で話し始めた。

「……あれで終わりですか? 俺が青葉さんのいうこと聞かなかったから?」
「? なに?」

言う事を聞かない?
なんだ、それ。

「……だって、しょうがないじゃないですか。確かに青葉さんのキスのお強請りなんて、そうそうないから聞いてあげたかったんですけど、あのまま深いキスしちゃってたら今頃……」
「バ、バカッ!」

なに言ってんだ、こいつ!
何でコイツは鈍感なうえに、こんな恥ずかしい勘違いなんてしやがるんだ!

「とにかく! 今日は部屋に戻る。じゃあな!」
「青葉さん!」

和基の手をバシッと振りほどいて、俺はドスドスと荒々しい足取りで部屋へと向かった。


ホント―に、腹が立つ、このバカわんこ!!

あの一年の頭を撫でるのは特別な事じゃないのか?
部活中の日常茶飯事だとでも言うのか!

悔しくて情けなくて涙が出そうだ。

そのままの勢いで部屋のドアをバタンと開けると、既に戻ってきていた羽瀬川が驚いた表情でこちらを見た。

「なんだ、どうした? 荒れてんな、……和基絡みか?」
「どうだっていいだろ、そんなこと」

ボスンとそのままベッドにうつ伏せにダイブした俺に、忍び笑いをした後、羽瀬川が俺の所に近寄って来た。そしてベッドに腰を下ろした。

「お前さー、いい加減、和基に対して素直になってみれば?」
「ああ?」

うつ伏せにしていた顔を羽瀬川の方に向けて、何言ってんだという気持ちで不機嫌に返事を返す。
案の定羽瀬川は、いつもと同じように楽しそうな表情で俺を見ていた。

こういう時の羽瀬川は、たいていからかい半分本気半分だ。だけど、俺にとっては的を射た忠告の方が多いんだから嫌になる。

「……俺がそういうことが出来ない性分だってことは、お前もよく知ってるだろう」

ボソボソと呟く俺に、「そうだなー」と羽瀬川も返した。
そして、

「なあ、お前が一番和基に怒っているのは何だ?」
「な……、なんだっていいだろ! そんなこと」

言えるかよ。そんな恥ずかしいこと!

俺は羽瀬川の方に向けていた顔を、プイッと反対側に向ける。

「――和基に気がありそうな奴らに、和基がふつ―にスキンシップとかしてる事か?」

!!!

だから―、何でお前はそんなにいつもいつも的を射るかな!

鈍感すぎる恋人は腹立たしいが、敏すぎる親友も困りものだ。

無言で何にも返せない俺に、羽瀬川は「やっぱ、そうかー」と言いながら笑っている。


「なあ、青葉。……それ、解決してやろうか」

ギクッ。

「……え、あ、いや。これは俺たちの問題だし……」
「なんで? 親友の危機だろ? ちょっぴり和基にお灸を据えてやるだけだよ。それでついでに、青葉が言えないでいる気持ちもあいつに伝わるかもしれないよ?」

そろりと羽瀬川の顔を窺うと、案の定こいつは口角を上げて静かに笑っている。

羽瀬川は、見た目も中身も爽やかで頼りになる良い奴だが、ちょっぴり冷えた冷酷さを内包している。それはたまに揉め事の核心を冷徹について、一気に解決に進むこともあるのだが……。

コイツがこういう表情をしている時は、過激な解決策の方が多いんだよ!

「……あ、いや。でもさ……」
「なあ、青葉。俺の一番って誰だか知ってる?」
「? 夕月だろ?」
「もちろん、シノは特別だ。恋人だからね。……だけど親友として、友人での一番はお前だぞ? そのお前を、こんなふうにイライラさせる和基には俺もお灸を据えてやりたい」

「羽瀬川……」

なんだ、こいつ!
良い奴だけど……、ムズムズするじゃないか。しかも、俺が天邪鬼だと知ってのこれだ。

……こいつも大概、タチが悪い。

「……酷いことには、ならないんだろうな?」
「ならないだろ。何なら、アフターフォローはしてやる。……ま、その心配は無いだろうがな」

「……じゃあ、頼む」
「りょーかい!」

ニコリと微笑む親友に、俺はちょっぴり背中に冷や汗を掻いていた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

その首輪は、弟の牙でしか外せない。

ゆずまめ鯉
BL
養子ゆえに、王位継承権を持たないオメガで長男のレイン(24)は、国家騎士団として秘密裏に働き、ただ義弟たちを守るためだけに生きてきた。 第一継承権を持つアルファで次男のリオール(19)は、そんな兄に「ごく潰し」と陰口を叩く連中を許せなかった。自分を犠牲にしてまで守る価値はないと思っていた。なにかと怪我の多い国家騎士団を辞めさせたかった。 初めて訪れた発情期のとき。約束をすっぽかされたリオールが不審に思い、兄の部屋へ行くと、国家騎士団の同僚──グウェンソード(28)に押し倒されるところを目撃して激高する。 「今すぐ部屋から出ろ!」 独占欲をあらわにしたリオールは、グウェンソードを部屋から追い出し、兄であるレインを欲望のままに抱いた。 翌朝、差し出されたのは特注の首輪──外せるのはリオールのみ。 「俺以外に触らせるな」 そう囁かれたレインは、何年も首輪と弟の執着に縛られ続けてきた。 弟には婚約者がいるのに、こんな関係を続けてもいいのか。 本当にこのままでもいいのか。 ひたすら執着して独占したがる弟と、罪悪感に苛まれる兄。 その首輪は、いつか弟の牙で血に染まるのか──。 どうにかしてレインを落としたいリオールと、弟との関係に悩むレインのオメガバースです。 リオール・グランケット(19)×レイン・グランケット(24) ※この作品は2015年頃に本文を書き、2017年頃にオメガバースに改稿、さらに2026年に手直しした作品になります。読みにくいかもしれません。ご了承ください。 三人称ですが攻めだったり受けだったり視点がよくかわります。攻め視点多めです。

番を拒み続けるΩと、執着を隠しきれないαが同じ学園で再会したら逃げ場がなくなった話 ――優等生αの過保護な束縛は恋か支配か

雪兎
BL
第二性が存在する世界。 Ωであることを隠し、平穏な学園生活を送ろうと決めていた転校生・湊。 しかし入学初日、彼の前に現れたのは―― 幼い頃に「番になろう」と言ってきた幼馴染のα・蓮だった。 成績優秀、容姿端麗、生徒から絶大な信頼を集める完璧なα。 だが湊だけが知っている。 彼が異常なほど執着深いことを。 「大丈夫、全部管理してあげる」 「君が困らないようにしてるだけだよ」 座席、時間割、交友関係、体調管理。 いつの間にか整えられていく環境。 逃げ場のない距離。 番を拒みたいΩと、手放す気のないα。 これは保護か、それとも束縛か。 閉じた学園の中で、二人の関係は静かに歪み始める――。

Ωの僕がヒート相手のαから逃げる話。

ミカン
BL
オメガバース

貧乏Ωが御曹司αの将来のために逃げた話。

ミカン
BL
オメガバース

「イケメン滅びろ」って呪ったら

竜也りく
BL
うわー……。 廊下の向こうから我が校きってのイケメン佐々木が、女どもを引き連れてこっちに向かって歩いてくるのを発見し、オレは心の中で盛大にため息をついた。大名行列かよ。 「チッ、イケメン滅びろ」 つい口からそんな言葉が転がり出た瞬間。 「うわっ!?」 腕をグイッと後ろに引っ張られたかと思ったら、暗がりに引きずり込まれ、目の前で扉が閉まった。 -------- 腹黒系イケメン攻×ちょっとだけお人好しなフツメン受 ※毎回2000文字程度 ※『小説家になろう』でも掲載しています

イケメンダブルセンターとアンチ>ファンな平凡な俺

スノウマン(ユッキー)
BL
アイドルグループ【オーバーウェルミング】は圧倒的な歌唱力の深山影月、圧倒的なパフォーマンス力の漣陽太、そして圧倒的な平凡力な俺間桐真緒の3人で結成されている。  大人気の二人と違いアンチしかいない俺だが、メンバーからもファンからも愛される日が果たしてくるのか!?

竜帝陛下の愛が重すぎて身代わりの落ちこぼれ薬師は今日も腰が砕けそうです 〜呪いを解いたら一生離さないと宣言されました〜

レイ
BL
「死ぬ覚悟はできています。でも、その前に……お口、あーんしてください」 魔力を持たない「無能」として実家で虐げられていた薬師のエリアン。 彼に下されたのは、触れるものすべてを焼き尽くす「死の竜帝」ヴァレリウスへの、身代わりの婚姻だった。

こっそりバウムクーヘンエンド小説を投稿したら相手に見つかって押し倒されてた件

神崎 ルナ
BL
バウムクーヘンエンド――片想いの相手の結婚式に招待されて引き出物のバウムクーヘンを手に失恋に浸るという、所謂アンハッピーエンド。 僕の幼なじみは天然が入ったぽんやりしたタイプでずっと目が離せなかった。 だけどその笑顔を見ていると自然と僕も口角が上がり。 子供の頃に勢いに任せて『光くん、好きっ!!』と言ってしまったのは黒歴史だが、そのすぐ後に白詰草の指輪を持って来て『うん、およめさんになってね』と来たのは反則だろう。   ぽやぽやした光のことだから、きっとよく意味が分かってなかったに違いない。 指輪も、僕の左手の中指に収めていたし。 あれから10年近く。 ずっと仲が良い幼なじみの範疇に留まる僕たちの関係は決して崩してはならない。 だけど想いを隠すのは苦しくて――。 こっそりとある小説サイトに想いを吐露してそれで何とか未練を断ち切ろうと思った。 なのにどうして――。 『ねぇ、この小説って海斗が書いたんだよね?』 えっ!?どうしてバレたっ!?というより何故この僕が押し倒されてるんだっ!?(※注 一月十日のアルファポリス規約改定を受け、サブ垢にて公開済みの『バウムクーヘンエンド』をこちらへ移しましたm(__)m サブ垢の『バウムクーヘンエンド』はこちらへ移動が出来次第、非公開となりますm(__)m)

処理中です...